No.075『クラッシュ』

製作年:1996年
原作:J・G・バラード『クラッシュ』
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:デヴィッド・クローネンバーグ
ジャンル:変態に命かけてるフェチバカ映画

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ジェームズ・スペイダーでもう1本。
『セックスと嘘とビデオテープ』もいいけど、当ブログなら断然『クラッシュ』ですね

巨匠J・G・バラードの頽廃極まるSF小説を、巨匠デヴィッド・クローネンバーグが映画化して、カンヌ映画祭で賛否両論だった真の問題作。まぁ賛否ってより否だらけだった記憶なんだがw

登場人物全員がセックス面でド変態。どこから見ても弁解しようがなく100%変態。
変態という名のバカどもが織り成す不条理世界。
誰ひとりに1㎜たりとも感情移入不可能ですが、それでも一応ラブストーリーです。


★予告編



エロで吊る気満々の予告。踏み絵にどうぞ。

★まずは不思議なタイトルロール

ギターが不協和音的なアルペジオを奏でる中を、青い画面にタイトルがポタリと浮かび、水の波紋のように広がっては消える。

映画のはじまりにしては余りにチープで、火曜サスペンス劇場の再放送みたい。
風邪引いて仕事休んだ午後にテレビつけると、大昔の見知らぬ暗ーいサスペンスドラマの再放送だか再々放送だかの番組にぶち当たり、チャンネル替えるのも面倒だからダルい頭でぼーっと観ている時に襲われた不穏な感覚を思い出す。

不協和音なテーマ曲はタイトルが終わっても消えずに本編へなだれ込み、映画全体を暗く不穏な悪夢世界に染めていく。

★あらすじ(青字はネタバレあり

CMプロデューサーのカナダ人イケメン・ジェームズ(ジェームズ・スペイダー)と金髪美人嫁キャサリン(デボラ・アンガー)は、ゆきずりの不倫セックスしては成果を語り合い興奮してはやっているという、救いようなくセックス倦怠期の夫婦。

そんなジェームズが愛車ポルシェで事故を起こし(大体この人運転中に注意散漫すぎるのだ)、自分は重傷を負い、事故相手は死亡してしまう。

病院でリハビリ生活を送るジェームズは、嫁に手コキしてもらってアッチ方面は一応満たされてたんだが(献身的な嫁じゃねーか)、病院の廊下で全身に怪我負ってリハビリ中の美人女医・ヘレン(ホリー・ハンター)と出会う。
果たして何の運命のいたずらか、彼女は死んだ事故相手の嫁だった。
退院後ジェームズは愛車のスクラップを引き取りに廃車場へ行ったところで、ヘレンと運命の再会!
スペイダーさんだから当然速攻でカーセックスになだれこむ

おおっとこれはドロドロの三角関係か!と期待させるが、天下のデヴィッド・クローネンバーグ監督作品がただの不倫メロドラマで終わる訳ないのだ。
この女医がとんでもないマニアだったために、ジェームズは悪夢のような生活へ転落する。

★自動車事故に萌える変態マニア集団登場

廃車場セックスでジェームズに「同志」の匂いを嗅いだ女医は、真夜中の自動車ショーへ案内する。
それは「ジェームズ・ディーン死亡事故を完全再現する」という何が面白いのかわからないマニアックなショーだ。

主催者は「クラッシュ・マニアの会」なる秘密組織。
傷だらけの教祖ヴォーン(エリアス・コティーズ)、ギブス美女ガブリエル(ロザンナ・アークェット)、女装マニアのシーグレイブ(ピーター・マクネイル)等々、キツいマニアの面々が揃っていた。

彼らの主張する変態フェチ世界は凄い。
「自動車事故にエクスタシーを感じる」のである。

なにせ教祖様いわく、自動車事故は破壊的でなく生産的行為なのだ。性的エネルギーの解放なのだ。
自動車事故で強烈に死んでいった人々が発する性的エネルギーを自分自身で体験して感じる事が、組織のライフワークなのだそうだ。

………はぁ?
あらやだわけわかめ。何をおっしゃってらっしゃるかしらこのひと。

主張はともかく、傍から見ればカーマニア&マゾ&屍体愛好家&自動車事故の野次馬マニアという腐りきったド変態さんの彼らは、各々の萌えを日々探求していらっしゃる。

有名人の自動車事故ショーを開いては悶え、廃車場のスクラップカーを見ては悶え、超危険運転のカーチェイスでわざと事故って悶え、他人の事故現場に勝手に入り込んでは大破炎上した車や転がる死体を見て悶えまくる。
果てはダミー人形の首がもげる新車テスト映像を観て三連結で股間をまさぐり悶えあう始末。
なんでだよwどこに悶える要素があるんだw三連結で自家発電に至っちゃ、もう笑うしかないw

★男と女と男と車が入り乱れるセックスプレイ

ド変態世界にはまっちゃったジェームズは、仕事に趣味に美女達とカーセックスにいそしみ、帰宅して嫁に今日の変態報告&セックスに励む。
元気だねー。
だが嫁は次第にヴォーンに興味を持ちはじめ、旦那がバックから突いてる最中に「彼とやった?ホモセックスって気持ちいい?」と言葉責めしては悶えていた(そっちかよ!)

嫁が変態に開眼したを感じたジェームズは、ヴォーンと3人でとある事故現場を見物に行く。
そこでは金髪ウィッグつけてるシーグレイブが愛犬のチワワと一緒に死んでいた。ジェーン・マンスフィールド死亡事故を自らの肉体で再現するため、特攻自爆した女装カーマニアの最後の勇姿だった。
キー!うらやましいぜこいつ!
興奮冷めやらぬヴォーンは帰り道、GSの洗車コーナーに夫妻を連れ込み、旦那の前で嫁と暴力的セックス
さすがに目の前で嫁を襲うなんてショック!と普通はなるはずがなんとジェームズは、それをオカズに嫁と一発やる。
だめだこいつらwww

同志の自爆が刺激になり、一層変態道に耽るクラッシュマニア。
ていうか登場人物全員、ふと己の姿を振り返り目が醒める瞬間というものが全然無いのね。

ジェームズとヴォーンは体に車タトゥー彫るわ、普通の市街地の路肩にリンカーンコンチネンタル止めて後部座席でゲイセックス始めるわ、最後はジェームズが廃車に勝手に乗り込んで悶えてるところへヴォーンが車で突っ込む始末
ある種車と車が『カーセックス』ではありますな。いやはやー。

もはや人生投げてるも同然の露悪プレイに走った変態バカの末路はひとつしかなかった。

ヴォーンと夫妻が愛のカーチェイスやってるとヴォーン車がハンドル切り損ない橋げたから転落、炎上死というマニアにふさわしい悲惨な最期を遂げる。
廃車場送りになった黒焦げのリンカーンは、ヘレン&ガブリエルの追悼レズビアンカーセックスで慰められた後に修理され、ジェームズ夫妻に引き取られる。

ラストは高速道路で夫妻が愛のカーチェイス。
嫁車を執拗に追い回す、相変わらず危険運転のリンカーン。はずみでハンドル操作を誤り転落して逆さになる嫁車。
幸い浅い傷で車から這い出る嫁に駆け寄るジェームズは、ちょっとやりすぎた?と救助するどころか、性欲ムラムラでその場で嫁とやり始める。もちろんまっ昼間の高速道路脇でです。
野外凌辱プレイであえぐ嫁をバックから突きながら、「この次はきっと…」とジェームズがつぶやいて、映画は不穏に幕を閉じる。


★感想

なんてサイテー!
でもたまらない!
当ブログのためにあるような映画。

嘘偽りなく美男美女がやりまくり。5~10分に1回は誰かが誰かとやっている。
ジェームズ・スペイダーなんかすごいよ。ポルノ男優さえ凌ぐ4人相手のフル回転。ヴォーンとアオカンまでやってるし!
立派なセックス中毒だ。
でも見事にエロくならないんだこれが。
彼らの嗜好に1mmも感情移入できないのも原因だが、なにしろセックスシーンがエロくない。

何故かと言いますと彼らの変態とは「自動車事故に欲情する」ただ1点であって、セックス行為自体はフツーだからである。
若干下品だけどwでも下品ぶりの描写だって、ステレオタイプでそそられない。

セックスしてるシチュエーションも常に暗い。
常に無機質。
常に空気が冷気で澱んでいる。
いくら舞台がカナダのトロントだってセックスはもうちょいぬくもりがあるだろう。零下30℃の冷凍庫でやってるみたいだ。

なかでも映画中にことさら執拗に繰り返される、ジェームズ夫妻の倦怠期セックスの凍り度合が凄い。
金もセンスもあるが生活臭皆無なインテリアの寒々と暗ーい部屋でひたすら性交に励んでる。
死んだ羊のごとき虚ろな目をしてひたすら腰を振る旦那とあえぐ嫁。
2人の綺麗な体から汗も匂いも何も伝わってこない。まるでセックスをプログラミングされたアンドロイドだ。

デヴィッド・クローネンバーグはセックス行為をせせら笑うかのように撮っている。
「なんでこんなに頑張ってんの?バカだねw」って冷笑を薄っすら漂わせてる姿が目に浮かぶ。
まぁーイジワル。根性悪くていいねー。

★クローネンバーグらしいダークなメカエロにうっとり

対照的に、実に冴え冴えしてるのがやっぱり十八番のメタリックなダークネスが支配する機械文明社会です。

鉛を含んだ質量の重い空気が充満する高速道路。
鉄筋コンクリの建物に壊れた車体が暗く沈む廃車場。
芯から冷えた夜の街を走るオープンカーの朽ちた塗装。
触れたら凍傷になりそうなメタリックボディ。
病院の医療器具やギブスの硬質な輝き。
はぁー美しい。

特に力入ってるのが(多分)映画のメインイベント、女装おやじシーグレイヴがチワワ道連れに自爆したジェーン・マンスフィールド事故再現シーンだ。
排気ガスを吐きオイルを垂れ流して潰れる事故車。
アスファルトに散らばるフロントグラスの破片。
額にどす黒い血をこびりつかせて倒れる被害者。
お人形みたいにこわばってるチワワちゃん。
そんな事故現場に吸い寄せられて、現場検証の眩しいライトに照らされた道路をふらふら歩くクラッシュマニアどものシルエットは
悪夢の海を漂う透明なクラゲのよう。
限りなくダークで頽廃な描写に思わずうっとり。
欲情はしないがw

★でも何故だか匂う2サスドラマっぽさ

さらにうめめちが一番気に入ってるのが、クローネンバーグ作品らしい映像で演出も俳優も金かかってるにかかわらず、平日午後の再放送のサスペンスドラマぽい臭みが漂ってるところだ。
具体的に言うと昭和末期に関西テレビで放映してた「現代恐怖サスペンスシリーズ」の再放送臭がする。「赤いハイヒール」や「ししゃもと未亡人」とか。

まさか、ここで感想があらすじ冒頭に戻るとはw
昭和ドラママニア以外誰も知らないドラマだし。自分でも書いてみてびっくりした。本当に風邪ひいて学校休んだ時に、昼過ぎにテレビつけたら時々再放送やってました、こういう怖い2サスドラマが。
ていうかなんでクローネンバーグと「ししゃもと未亡人」がつながるんだよ。理由は自分でもわからないけど、確かに同じ空気がする。

ちなみにエロくねーアンドロイドみたいと散々なこと言いましたが、俳優陣は血の通ってないお人形なルックスに撮れててステキ。
あろうことかジェームズ・スペイダーのカラダは俳優キャリアで一番脂が乗ってて美しいw
さらに!エリアス・コティーズが良い!
地味な老け顔だが硬質な色気をたたえる、クローネンバーグ映像に映える佇まいでセクシー。
(『ゴッド・アーミー/悪の天使』は他のクローネンバーグ系俳優が大暴れして、イマイチ目立たなかったが…)

3女優のヘアも辞さない脱ぎっぷりも良い。
ツンとすました美人嫁デボラ・アンガーもホリー・ハンターの病みドールな女医姿も良いが、ロザンナ・アークェットが強烈。崩れた笑い方がだらしなくて岸田今日子系セクシー。
上はレースすけすけ、下はボンデージミニスカのしまむらで買えそうな安エロファッションと、DQN系リアリティ番組に出てくる貧乏マザーぽいくたびれた三つ編みとのバランスが絶妙。
メカニックな半身ギブスに身を包んでますが、もろ生活臭あふれる着こなしで異彩を放ってました。マリファナ入れポケットを完備した親切設計wなギブスも良かったです。

ともあれクローネンバーグ作品でも負のベクトルに満ちた世界です。
格段にドス黒く根性悪くうすら寒く、エロスは無いけどパトスたっぷり。もしかしてこれは原作のJ・G・バラード小説の特質なんでしょうか。難しすぎて「よくわかんねー」と放り出した原作に、もう1回チャレンジしてみようかな。

(了)
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