No.077『曼荼羅』

製作年:1971年
監督:実相寺昭雄
脚本:石堂淑朗
ジャンル:性と謎思想とユートピアの不条理前衛映画

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やって来ましたラッキーセブン77作品目。
満を持してマイベスト実相寺『曼荼羅』です。

猛者揃いのATG映画の中でも突出してヘンテコシュール極まりない映画。
「なんでそうなるの?」とドン引きしまくりな常人思考の斜め上空3000メートルをいく超展開。
1から100までツッコミ必至な謎ユートピア理論。
役者から演出から効果音まで何もかも謎の電波にねじ曲げられたよう。

前衛ヘンテコ映画マニアなら一度は見るべし珠玉の逸品。
自信を持っておすすめします。

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台は海辺沿いに建つヨーロッパ古城風のラブホ。
大学生の裕(田村亮)&由紀子(森秋子)、信一(清水紘治)&康子(桜井浩子)の2組のカップルが(カップルって響きが昭和だわ)映画冒頭からやりまくっている。
しかし彼らは本当のカップルじゃない。
互いの相手を替えてスワッピングしてるのだ。

スワッピングは元々倦怠期カップルの信一&由紀子の発案で、裕はOKしたが康子はあまり乗り気じゃなかった。
みんなにすすめられて渋々やったけど(の割に盛大にあえいでたが)、すぐ裕の部屋へ帰りお口直しに一発セックス
しかしこれが不幸のはじまりだった。

一方で信一&由紀子は楽しみはしたけれど、倦怠期を解消するほど刺激的でもなかった。
事後に信一は自分の生い立ちをひとしきり語る。
左翼学生活動をやめたニヒルな男って設定なので色々観念的な事言うが、要は子供の頃に体験した「時間のなくなるような感覚」が恍惚的で忘れられなくてまた体験したいなと。
で、2人は部屋を出てぶらりと海辺へ出かける。

だが実はラブホ部屋に隠しカメラが仕掛けられていた。
スワッピングセックスの一部始終を、支配人の真木(岸田森)に監視されてたのだ!
んーなーあほなー。

★ダメダメすぎる彼氏たち、翻弄される彼女たち

学生カップルに何かの「素質」を見出した真木は、手下の草野大悟・富川徹夫コンビ(濃いなw)に海辺で遊んでる2人を襲撃するよう指示。
信一は殴られ失神、由紀子は気絶しレイプされる。

目覚めた信一は由紀子のひどい姿を発見。
ニヒルな男もさすがに怒りに燃える!はずが、屍姦プレイかと思うと何か興奮してセックス「時間のなくなるような感覚」が蘇り恍惚彼女もすごーいナニコレ!と一緒に感じちゃう!倦怠期も解消してラブラブキャッキャウフフもっとやりまくるぞー!とラブホへ逆戻り
…なぜこうなる。

ニヒルな左翼くずれを気取った末に変態ラブラブに目覚めた信一も信一だが、
しかしまだまともにみえた裕は、実はもっとアレだった。

数か月後、ラブホの一発で康子が妊娠。
「子供ができたから結婚して」とすが康子に裕は「子供は欲しくない。堕ろせ」と冷たい態度。
まぁどちらの子かわかんないからねー。だが実相寺映画らしく理由はそこじゃなかった。

「子供の血なんて観念」
「子供を作り人類繁殖に寄与するなんてとんでもない」
「人類なんて個の集合体にすぎない」
「康子もたまたま女の形をした個」
「僕はいつでも死んでやる」
「僕は死ぬために生きてるんや」
と厨二病理論を繰り出し結婚も出産も断固拒否。

だめだこいつ。

康子は渋々由紀子の紹介した病院で子供を堕ろすが、子供のできない身体になってしまう。
だけど裕は泣きじゃくる彼女をいたわるどころか、デート中に対立派の学生活動家集団に追いかけられ、彼女を放置して1人で逃げる。

ほんとだめだこいつ。

この「一応主人公」田村亮のダメ男っぷりが
映画後半の彼の行動にビミョーな影を落とすのだ。

修羅場な友をよそにラブラブな信一&由紀子だが、「俺達のラブラブは何か大きな陰謀の力に仕組まれたものじゃないか?」と疑念を抱き(普通抱くか?)、例のラブホに行くがなんと平日休み。
田舎といえ殿様経営だなー、と海辺でデートしてたら白ふんどしで地引網漁してる真木と手下に遭遇。信一は彼等に導かれて人里離れたユートピアへ赴く。

★さて来ましたよ。岸田森の超理論ユートピア

着いた場所はヨーロピアンラブホと180度違う純和建築寺院。
岸田森がおもてなしの茶を立てながら、ユートピア設立の趣旨、ていうか謎理論を語ります。

人間は一瞬の恍惚を求めて彷徨ってるらしいんだが、その恍惚とはつまり生きながらにして死ぬ感覚、時間のなくなる感覚を味わうことであるそうだ。
人間があらゆる行為の中で時間のなくなる感覚を作り出すためには、「単純再生産」が支配する空間が必要ならしい。しかも究極の「単純再生産」とは、すなわちエロチシズムであるらしい。
そこで真木は単純再生産の法則が全てを支配する世界のユートピアを建設し、農業や漁で完全自給自足生活を送りつつ日々エロチシズムを追及してるんだそうだ。
そしてユートピアと一般世間を結ぶ通路としてラブホを経営。訪れる客の性生活を監視し、ユートピア理論を解する素質がありそうな客を単純再生産なエロチシズム仲間に勧誘するそうだ。

…はぁ?
何をおっしゃってるんですかアナタ?
おひさしぶりですよ。1000%わけわかめ。

でも謎理論に感化された信一&由紀子はユートピアに住み、単純再生産ライフを始める。
毎日農作業に汗を流しつつ、信一は通りすがりの女子高生をレイプし、由紀子はラブホで農協のおっさんに体を売る。
えらくトンデモなエロチシズム追求だが、「古代では女は男をすぐに受け入れ、強姦なる馬鹿馬鹿しいものは成立しなかった。現代人は官能力を失っている」という謎理論に基づく修行なのだ。

そんな真木が絶賛する真のエロチックは「八百万の神々と売春する女」真木の嫁(若林美宏)。
何だよ、嫁ノロケかよ。
っていうかそれより嫁のヴィジュアルが凄い。美女というよりスケキヨやオバQに似てる白塗り眉無しのおばけ巫女が、寺院のど真ん中にある曼荼羅部屋で毎夜神様とスピリチュアルセックスして、トランス状態で独り悶えてらっしゃる。

これがエロチシズムですか…凡人には厳しいです…

一方失踪した友人を探して裕&康子はラブホ再訪。
そこで同じように真木の手下に襲われるが、レイプ寸前で裕が目覚めて反撃し康子を救う。
何しやがる!と怒った裕はユートピアへ乗り込み、「目を覚ませ!ユートピアなど夢まぼろしだ!」と真木や信一と論戦を交える。
まぁ左翼学生らしく理想と世俗の現実は違うとか、カリスマ(真木)が存在するユートピアは原始共産主義の単純再生産思想ではないとかいう話なんだが、
茶室で話してるはずの3人が庭だの森だの奈良の石舞台古墳にまで議論しながらワープするw
最後はきっちり茶室に戻る。不思議現象だ。

★愛と狂気と死と崩壊、チンポ祭りのユートピア

ともあれ論戦は決裂。
裕は仲間入りを拒否してユートピア脱出を図るが、気づけば康子が行方不明。
康子は論戦の間に秘密の部屋で鎖でつながれ監禁され、毎日手下にレイプされて矯正教育を受けていた。
「康子はどこだぁ!」と信一たちを問い詰めるも

ユートピアは運悪く神聖な「種まき祭り」の最中で、住人達はチンポ柱の周りで踊り狂い乱交中。

こりゃダメだ…マジで…
話し合ってもムリだと悟った裕はオバQ巫女嫁を脅して康子の所へ案内させるが時遅し。
彼女は監禁レイプされたショックで首吊り自殺。地面から手が出てる雑な処理で埋められてました。
「この野郎…何の罪も無い康子を…!」と怒る裕。だがちょっと待て。

確かに康子は可哀想すぎる。
しかし発端はお前が子供を堕ろさせたからじゃね?
ヘタレで自分勝手なお前が言うなと。
と、なんか観客は主人公の正義感にも乗り切れないんだが、お構いなしに裕は暴走。
「怨みを晴らす為にお前らの大事な物を奪う!」とオバQ嫁をレイプして滝から落とし死なせる。
おいおい、思想はともあれ手法は同じやないかー!

祭りの翌日滝壺で死んでるオバQ嫁を発見した真木。
嫁を奪った裕へ復讐を誓う…と思う私がバカですね。

「神の宿らん女の死体なんかただの有機物や」
なんだとー!
さらに「あの腰を見ろ。愛撫の跡がある」と断言。
滝に入らず10M超の距離から見えるんか。千里眼ですね。

で、「この土地は汚れた」と結論付けた真木は隠岐の島へ行き新ユートピアを建設すると宣言。
信一達と共に、なぜか徒歩で荷物をかついでモーゼのエジプト脱出のごとく荘厳なノリで、山を歩き野を歩き砂丘を歩き島根の浜に辿り着く。
裕も康子をユートピアごと火葬してから追跡するが、浜に着いたら真木一行は隠岐へ出発した後だった…

★…が、トンデモ映画らしく最期もトンデモなオチがつく

と思ったらやはりユートピアは破たんしていた。

真木一行を乗せた船が難破して全員死亡。死体が島根の浜辺に漂着してましたとさ。

経営者が消えたラブホを裕は勝手に売り払い、その金で京都の古美術屋で名刀を購入。
本屋で万葉集を買い京都駅から新幹線に乗る。
まぶたに浮かぶのは国会議事堂。

っておーい!何すんねん裕!
っていうかなんでだ!WHY!
と、主人公ですら何考えてんだか意味不明なまま、破滅の予感を残してジ・エンド。


★感想

どうすか
電波だろう。

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堂々とワケワカメ1本ご進呈。


物語の骨子は現代史風に言うなら「左翼活動ののなれの果てに原始共産主義と原始宗教が混合したアングラコミューンを作るが
思想の矛盾を生じてカタルシスな崩壊に至る」ってところでしょうか。
学生運動云々のくだりはピンときませんが、オウム事件を体験した私の世代に通じる個所もある。

でもさすが実相寺。
というかさすが石堂淑朗。
トンデモクレイジーです。

話も話なら演出も演出。
まずBGMがカオスでくどい。
執拗にチクタク刻む時計の音、
何かキメればシャキーン!シャキーン!
パイプオルガンは鳴るわお経唱えるわチンポ祭囃子で踊るわ、ここは何の国?
神仏キリスト和洋折衷ごちゃ混ぜだ。

映像はパノラマカメラかよ!な勢いで広角ワイド使いまくりパースきかせまくり。
ただ『あさし夢みし』の暗闇ピンぼけ攻撃が無くて画面自体は観やすかったです。
日本家屋は勿論、今回は空の色が印象に残った。

★ATG名物エロ&セクシーはバッチリ

公開当時鳴り物入りだったらしい過激エロシーン。
実相寺監督のマニアなエロ表現はいつも賛否分かれるが、今回はきれいセクシーで満足(ただし貧乳好き)、激しい絡みもあえぎもたっぷりサービス。
エロ目当てなら序盤だけ見よう。(後半はオバQ嫁とか激しくマニアック化します)

メインキャラもどいつもこいつもイッてますが(比較的まともな康子は酷い目に合うし)、うめめち好みの俳優揃いで嬉しい。
清水紘治がうわぁエロいわー!セクシー!
ゆるい口元がチュート徳井に似てる。
女が脱ぎ捨てたパンストをつまんで匂い嗅いでる変態な仕草さえセクシーw
田村亮は『無常』の方が奔放で好きかなぁ。前半のヘタレキャラがイライラするのだ。

★岸田森がクレイジーすぎて最高

しかしやはり一番の見どころは岸田森。

先祖代々の土地を相続した(多分)坊ちゃまで茶道・書道・剣道の達人な純正日本男子なのにヨーロピアン古城風ラブホを経営。仕事は客のセックスを監視カメラで凝視。手下や同志には「やりまくれ!女を犯しまくれ!原始社会のエロチシズムだ!」と推奨しながら、自分は男の手下とホモホモしく健全に戯れ(まぁ由紀子が来るまでユートピアの女はオバQと花柳幻舟くらいだったから判らなくも無いが…)、オバQ嫁とは一発もやらず、他の男にやられりゃ汚れたと捨てる。

言ってることやってることが支離滅裂なクレイジーカリスマさえ、岸田森の手に掛かれば自然体に見えるwww

どうしてこの人は冷静に見たら普通の日本人の容姿なのに、表情やたたずまいが浮世離れしすぎるのでしょう。
眼力強いのにどこを見てるかわからない目
微笑みにも苦悶にも哀しみにも想える唇の歪み
まるでラテックスな質感の肌
時に身長3Mにも錯覚する幻の長身感(実寸は169㎝)
他の映画でも謎キャラっぷりは凄いですが、『曼荼羅』はもはや「異星からの物体X」状態です。
岸田森という存在の摩訶不思議が凝縮されてます。
もし他の映画で岸田森にちょっとでも興味を覚えて、この映画を観ようか躊躇してる人がいるならば、トンデモ展開にめげずチャレンジしてみてほしい。

最後に是非とも素敵なお顔を紹介したい。
難破してドザエモンになったカリスマが、命の曼荼羅を守りながら息絶えるもはや伝説となった死顔で締めくくるシーン。

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最高です

★おまけ 菅井きんをさがせ!

今回は妊娠した康子が子供堕ろしに行く産婦人科の看護婦さん。きびきび仕事しそう。

(了)

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