No.078『江戸川乱歩の陰獣』

製作年:1977年
原作:江戸川乱歩
監督:加藤泰
脚本:加藤泰、仲倉重郎
ジャンル:昭和妖美エッセンス満載の猟奇サスペンス

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春は文芸映画の季節!
こってりメケメケな昭和文芸映画が見たーい!
季節の変わり目は特濃なのがほしいのだ。

て訳で江戸川乱歩の変態サスペンスをご紹介。
「江戸川乱歩をネタにした俺式フェチ映画」多数の乱歩原作映画の中では、比較的話が原作に近いです。

昭和らしい濃ゆーく妖しーい淫靡美が満開です。そんな脱いでもないのに鼻血が出そう
香山美子の昭和女優演技も特濃で見どころたっぷりですよ。特にラストが。

★予告編



まあっ!香山美子がくるくる回る!
たまらないたまらないわ!これが昭和ロマンよ!な予告。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公は人気推理小説家の寒川光一郎(あおい輝彦)。
ある日美術館で仏像見てたら和服美女とすれ違う。
おお…こいつは妖しい香りのする女!

って期待わくわくなところへ♪ベベン♪ベベン♪とタイトル曲の津軽じょんがら節が賑々しく鳴り響く。
おやまあズッコケ(昭和口調で)…
もうちょいムードある音楽にならなかったのか?

でも本編に入ると妖美ムード復活で一安心。
古書店で美女と再会した寒川は、なんとほぼ初対面なのに美女にお茶に誘われる。

彼女の名は小山田静子(香山美子)。良家の人妻。
寒川のライバル作家・大江春泥の元カノで、なおかつ彼にストーカーされており、「俺は何でも知ってるぜ。お前と旦那の情事もな」な脅迫文を寄越され困ってる、助けてほしいとのこと。
寒川は卑劣なライバルへの義憤(と美女へのデレ心)から快く協力する。

静子の暮らす小山田家は不穏な空気がむんむん。
旦那の六郎(大友柳太朗)は謎の英国娘ヘレン(田口久美)とただならぬ関係にありそう。
ヘレンの身請け人?の仲谷昇&野際陽子夫妻もどうにも怪しそうな雰囲気漂っている。
家の使用人もなんか隠してる様子だし、静子自身も首筋に謎のミミズばれがあるし、天井裏を捜索したら謎のボタンが落ちてるし。
いかにも事件が起こる前夜な気配である。

しかし肝心の大江春泥を突き止められない。
というのもエログロマニア御用達小説家な彼は、マスコミ顔だし厳禁な覆面作家なのだ。
うーん、顔もわからないのにどうやって捕まえる?と寒川が悩んでると、春泥から「旦那を殺すぜ」な脅迫状が届く。
翌日、脅迫状通りに六郎がヅラをかぶった溺死体で隅田川に浮かんでた。

★おじさまと外人娘のひそかな愉しみ

喪服姿で哀しみに暮れる静子のところへ、空気読まないヘレンがすげードレスで焼香に来る。
人の葬式出るのに真っ赤な帽子に黒リボン、緑のプリントドレスに白手袋ですぜ。
辻希美の喪服リボンも真っ青なTPOわきまえなさ。しかも昭和初期の話なのにばりばり70年代デザイン。
周囲の「ウルトラ非常識なこいつは何奴?」な疑惑の視線を無視して、六郎の棺を見て嘆くヘレン。当然ですが寒川も疑惑の目でしげしげ見てたら、なんと白手袋についてるボタンは屋根裏部屋に落ちてたボタンと同じじゃないですか。

って訳で寒川がヘレンを呼んで尋問開始。
するとヘレンはいきなりトランクから乗馬鞭を取り出し、素っ裸になって「ぶって」とお願いする。
お願いされちゃしょーがねーなとしばきまくる寒川。何でお前がしばくんだよw

ともあれ、おかげでヘレンが六郎のマゾ奴隷であり、仲谷昇&野際陽子夫妻はSM調教のお仲間で、六郎は妻の静子さえマゾ奴隷にしてた事実が判明する。

そこで寒川は「脅迫状の犯人=六郎自身」説を推理する。
大江春泥を名乗って嫁を脅迫し、SMプレイのネタに利用してたところ、何か間違いで死んだのでは?と。
でもそれは短絡過ぎだろ?とすぐにボロがでて没。

で、寒川は周囲の人間関係を推理で解きほぐしたり、大江春泥の故郷で過去を聞き込みしたり、手袋の行方とボタンが取れた時期を追及したり、ついでに未亡人静子とちゃっかりデキたりしてると、唐突に昭和いかがわしい花柳幻舟ダンスショーが登場
邪馬台国スタイルの半裸ダンサーがわらわら出てきてボレロみたいなバレエダンスをうねうね踊ってたら、ステージ上でダンサーの男(川津裕介)が死んじゃう。
そこへ春泥の顔を見た事がある編集者が偶然来て「あっ、あいつが春泥だ!」とひとこと。
随分ご都合良すぎる展開で「被疑者死亡により解決」と片が付く。
じゃあなんで死んじゃったのか?となるが、春泥ダンサーにはブサイクメガネ嫁がいて、ダンサーにせがまれて怪しいお薬を渡してた…

などと謎が謎を呼び二転三転する話風に見えて、もう誰が犯人かみんな薄々気づいちゃってるところで、寒川が真犯人をズバリ推理する。
昭和メケメケ映画マニアの皆様、ながらくお待たせいたしました。
いよいよ特濃タイムですよ。

★香川美子大暴れ特濃すぎる解決編

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なんとクライマックスは真っ赤な部屋に裸電球の特設オンステージなのです
素晴らしく淫靡な昭和センス。たまらないわー。

ここで名探偵作家・寒川が静子相手に謎解きを開陳します。

もちろん大江春泥の正体はダンサーではなく、静子の元カレが大江春泥でもない。
エログロ覆面作家大江春泥の正体は静子だった。

SM旦那を遺産目当てに殺したのも静子。
元カレに脅迫されてたってのも自作自演で、むしろ元カレ(=ダンサー)を追いかけ回してたは静子の方。
旦那に隠れてブサイクメガネに変装して不倫してて、でもそろそろ邪魔になったんで殺人犯兼脅迫エログロ作家に仕立て上げて殺しちゃったのだ。


という真相はもはやどーでもよくて
香川美子がオンステージを暴れ回るウルトラ過剰な昭和女優演技にもうくぎ付け

あおい輝彦に真相ばらされては悶える。
頭捕まれ頬っぺたに含み綿詰められ膏薬貼られて、ブサイクメガネ嫁のルックス再現プレーの屈辱に悶える。
かと思うと錯乱して脱ぎはじめて、オンステージにわざとらしく置かれた白薔薇の花束で「ぶって!ぶって!」とSMおねだりして悶える。
何かっつうとああっ!いやあ!あああ!とくんずほぐれつの体当たりキチ悶え演技の果てに


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イッてしまわれましたwww

という訳で(何がだ)、真相を暴かれた犯人は最後にお約束の飛び降り自殺してジ・エンド。

★感想

濃いっ!
江戸川乱歩作品としてどうこうってより、昭和映画の淫靡成分がぶっちぎりで濃い!
メグミルク特濃4.5牛乳より濃いよ!

まずは香川美子。
昭和女優特有のテンション高い薄幸演技好きなら、これを見ずして何を見る?ってくらいすごい。
登場した瞬間から薄幸人妻パワーフルスロットル。
ラストの特設オンステージなんかもうすごいよ。悶えて悶えまくり。
セリフなんか「ああっ!」「いやぁ!」しかないw
真似したくてたまらないw

田口久美も負けじと薄幸オーラを振りまくし、逆に野際陽子はちょい役ながら冷酷サド度満点。周囲の男どもに冷ややかな視線をくれてやる様は、マゾならさぞかし「嗚呼、ピンヒールで踏まれてみたい」と興奮しきりでしょう。

★SM心を掻き立てる加藤泰ローアングル

そんな昭和女優陣のメケメケ美を引き立てるのが、加藤泰監督の凝りに凝ったアングルです。
松竹ヌーベルバーグやATG系監督ほどお芸術的に斬新でも尖り過ぎてもないけど、湿り気たっぷりの和風エロスな演出が光ってる。

這いつくばるほどローなアングルで撮った女優はマゾ奴隷に仰ぎ見られる女王様のごとし、
車中や机の下から撮ったショットは召使が物陰から主人の奥方をそっと覗くがごとし。
静子が春泥の怨み脅迫文を読む時の360度くるくる回る演出は、静子の悶える心をともに味わってるよう。
六郎とヘレンが趣味の碁を打つ時、ピシッ!ピシッ!と響く碁石の音に反応してヘレンの睫毛がおののくショットもいい。
ご奉仕感覚あふれるカメラワークが秘密のSM関係を描いた話にぴったり合います。
やっぱり好きだわー。こういう変態アングル。

女優パワーと隠微エロいカメラに押されて俳優陣は遠慮がちに見えましたが、大友柳太朗の上流SMオヤジがはまってます。
直接SMシーンがある訳じゃ無いけど、鼻筋がピシィッ!と通り過ぎた端正な顔で英国仕込みのサドってのが萌えますね。アイテムが乗馬鞭なのも萌える。
ヅラかぶりパンツ一丁死体は笑いましたが。
あと川津裕介がチョイ役ながら安定の曲者演技で満足でした。

★おまけ 菅井きんをさがせ!

今回は殺されてトイレに捨てられた大友柳太朗の第1発見者のばーちゃん。一瞬ながらインパクト強い。

(了)
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