No.005 『ミシマ ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』

製作年:1985年
原作:三島由紀夫『金閣寺』ほか
監督:ポール・シュレーダー
脚本:ポール・シュレーダー

残念ながらこの映画は三島由紀夫氏ご遺族の意向等の事情により、日本語版はDVD、VHSとも未販売。
国内で出回ってるのは違法コピーであります。海外版でしか観れません。

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しかし英語版スペシャル・エディションはDVDのパッケージが素晴らしい。私のメケメケハートを掻き立てるステキ仕様わくわくするじゃないですか。
日本映画の海外版DVDのパッケージデザインは色使いやフォントがおしゃれで、何故か本国よりキテるのが多くて好きです。もし日本版も出るならこのデザインでにしてほしい。

さて、映画の紹介。
制作総指揮がコッポラ&ジョージ・ルーカス。
「幻の芸術映画」とかいっちゃって、ホントはちょっと映像のきれいなハリウッド仕立ての伝記映画じゃないの?とタカをくくってすみません。
キトキトのアヴァンギャルドお芸術映画だった。
さすがカンヌ最優秀芸術貢献賞はダテじゃない。アングラアート好きなら海外版でも何でも駆使してぜひぜひ観てほしい、うめめちお気に入り映画のひとつであります。

はじめにお詫び。
私うめめちは三島由紀夫の生涯・文学作品、また切腹事件全般におきましては、学校で日本史と現代文学を勉強した程度の知識しかございません。
色々間違ってたらすみません。
★予告編



メケメケセットの数々に心躍る予告編!踏み絵にどうぞ。
金閣寺パカーン!は何回観てもすてきぃ。

★とりあえず映画の構成

「作品と生涯をクロスオーバーさせて三島由紀夫の文学世界を描く」がテーマの、ちょっと変わった映画です。4つのパートに分かれてる。

・第1章 金閣寺
・第2章 鏡子の家
・第3章 奔馬
・第4章 三島由紀夫の生涯~切腹事件

実際の進行は、各パートを細切れにつないで4章仕立てにするという凝った構成の脚本だ。
と説明するとやばいわけわかめ難解映画の香りがしますがw、さすがハリウッド。脚本がきちんと整理されてる。
「金閣寺」「鏡子の家」「奔馬」の主人公って全員自爆系な人だよね~
だけおさえとけば、小説読んだ事が無い人でもわかりやすくサクサク進む。

といえ三島のミも金閣寺のキも知らない外国人には?マークの連続だっただろうなぁ。
当時アメリカ全土でロードショーしたらしいが、なんてチャレンジャーなwwよくわかんない知らない日本人の前衛奇天烈映画を普通のアメリカ人に見せてうけると思う方が不思議だよwww
アメリカでの興業収入は惨敗だったらしい。納得です。

★あらすじ(青字はネタバレあり

・第1章 金閣寺

金閣寺で修行中の吃音童貞小坊主(坂東八十助)はイケメンの友達(佐藤浩市)に女を紹介されるが、なぜか本番になると金閣寺が頭に浮かびエッチできなかった。
「女性の美を見ると美しい金閣寺を思い出すから勃たねえんだ」と思い込んだ小坊主は、金閣寺への憎悪をつのらせる。

・第2章 鏡子の家

イケメンだが売れない俳優(沢田研二)は顔の割に貧弱な肉体がコンプレックス。ボディビルを始めて筋肉をつけるも肝心のケンカが弱く、劣等感を拭い去れない。
そんな時、イケメン俳優は母親(左幸子)の借金の肩代わりのため、金貸し業の女社長(李麗仙)の愛人になる。
謎のピンクマンションで女社長に囲われてしばかれてSM倒錯愛に目覚めた俳優は、男として人間として行き詰った挙句に女社長と心中を実行する。

・第3章 奔馬

剣道が上手い国学院大学生の勲(永島敏行)は腐った政財界を浄化するべく、陸軍中尉(勝野洋)や同志達とクーデター計画を立てるが上手くいかなかった。中尉は満洲へ飛ばされ、勲と同志達は逮捕される。
その後保釈された勲は「自分ひとりでも日本を浄化しせねば!」と思い立ち、政界の黒幕(根上淳)を暗殺して切腹する。

・第4章その1 三島由紀夫の回想

三島由紀夫(利重剛)は金持ちのおばあちゃまに甘々に育てられた箱入りお坊ちゃま。頭は良いが虚弱体質で兵役に行けず、大きくなるにつれて貧弱な肉体にコンプレックスを抱く。
月日が経ち、小説書いて成功した三島(緒形拳)は肉体改造でマッスルな筋肉を手に入れ、自分主演のチンピラ趣味映画を撮り、次第にトリックスターぽくなっていく。
ある日左巻き活動をする東大生と討論して「こいつらあかん」と思った三島は、志を同じくする人達と「盾の会」を結成して私設軍隊ごっこを始める。

・第4章その2 1970年11月25日の事件

てな訳で自分の書いた小説の自爆系主人公達と同じ道をたどった三島由紀夫(緒方拳)が、朝起きてから市ヶ谷駐屯地へ乗り込んで演説して切腹するまでの長い一日の再現ドラマ。
三島が楯の会会員4名を連れて駐屯地を訪れ、警視総監を表敬訪問すると偽って総監を監禁。総監解放の条件として自衛隊員たちを集めさせ、彼らの前で檄の垂れ幕を吊るして演説する。
だが演説聞いた自衛隊員たちに野次を飛ばされて、失意のうちに切腹の道を選ぶ。

★感想

・第1章 金閣寺

芸能界デビュー直後の佐藤浩市が若い!学生服姿がイケメンすぎる!
坂東八十助と寝る遊女役で満田久子が一瞬脱いでいる!
ホントにほんの一瞬ですが。
この映画はチョイ役が豪華すぎると有名でしたが、噂通り各パートで映画1本作れるほど充実してます。

そして何より石岡暎子の手掛けた美術セットがアバンギャルドでステキぃ!
やたらどでかいセットの中に、丸ごと金屏風の世界を再現しています。見どころは予告編にもある金閣寺パカーン。もちろんまわりも全部金きらの金づくし。豊臣秀吉が見たら喜びそうw
三角形の茶室やエロい遊女の部屋も超アートで、浮世絵の絵の中に入ったみたいないびつなゴージャス感がたっぷり味わえます。

・第2章 鏡子の家

堕落していくイケメン俳優役の沢田研二がはまり役です。すごいよ!頽廃したセクシーオーラ全開でびっくり。
オーラありすぎてとても売れない俳優に見えないのが難点ですがw
あと烏丸せつこが沢田研二のオンナ役でヘアヌードやってます。これもほんのワンシーンですが、ばっちり

物語は各パートの中で『鏡子の家』が一番好きだ。だって下世話なお話が好きですから
『鏡子の家』は三島由紀夫作品では失敗作らしいが、原作読んでみたら結構面白かった。
同じ自爆系美少年が主人公の『春の雪』も大好きだけど映画には出てこなくて残念です。こういうセットで観たかったなあ。

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うめめちが一番お気に入りのセットがこれ。
新宿の思い出横丁をアートに消化させた黒とピンクのメケメケ世界。ピンク屋台で飲んでる沢田研二と横尾忠則の周りで通行人や町の看板がくるくる回る。いいねえ。
そして李麗仙の女社長のSMの館は、まるでラブホなうねうねエロエロピンク部屋。ファンタジーだわー。すばらしい。

・第3章 奔馬

永島敏行の右翼青年役はルックス、演技ともまず間違いない鉄板の組み合わせ。
尋問する刑事役でほんの一瞬だけ池辺良が出演してる。えー、こんだけー!って驚くくらいチョイ役です。どんだけ豪華やねん。

メインのセットは傾いた大鳥居。大空、白砂、大きな鳥居と学生達のV字フォーメーションのコントラストがすてきぃ。ぶっとんでるがフォルムが美しい。
バラバラと崩れるふすまに透ける壁、ケレン味たっぷりのセットがどれも面白い!
しかしこんな美しいセットの数々を作っときながら、なんでオチの切腹シーンが普通の野っ原?セットと同じ大空と白砂で良かったのでは。謎だ。

・第4章の1 三島由紀夫の回想

三島由紀夫の生涯シーンは、小説パートでのメケメケ&前衛ギラギラ演出でなく話の進め方もセットもオーソドックスな作りです。まあここまでぶっとばしたら何が何やらわけわかめになりますしねw
楯の会の結成記者会見や訓練風景が興味深かった。
『憂国』の執筆から楯の会結成へ右傾化する動機づけのエピソードがちょっと弱いかな?とは思いますが。作家の観念と情念が袋小路にはまってく様を映像で表現するのは難しいですね。

青年三島役の利重剛が意外と似てる!
おばあちゃん役で加藤治子もチョイ役出演。品は良いがワガママなお嬢様おばあさま役がさすがにはまってました。
『薔薇刑』再現シーンもステキぃ。うおお!緒方拳がサン・セバスチャンの殉教やってるよ!裸で木に縛られ矢で打たれてるよ!
たまらないですねぇ

でも三輪明宏(北詰友樹)が三島と逢瀬するシーンはちょっとないだろうと思う。
ゲイボーイが夜の高級住宅街にノコノコやってきて、カミングアウトしてない有名文化人と恋バナするか?狭い日本の住宅街じゃご近所に筒抜けですが。

★で、問題の「1970年11月25日の事件」の欠点はまさかのあの人

こちらも普通のドキュメンタリードラマ調。
映画製作10年前に起こったリアルな事件だし、映像も一杯残ってるからメケメケにしづらかったようです。
だがここのパートでは、他パートで気づき辛かった映画最大のアイタタな欠点が露呈する。

肝心の緒方拳が三島由紀夫に見えない。

決してヘタではない。とても上手い。
有名な市ヶ谷駐屯地での演説の迫力も凄いし、ちょっとしたユーモアを交えるシーンも魅力的です。
でも熱演している緒方拳にしか見えない。

やっぱ緒方拳は三島由紀夫にしては顔とガタイ(とある種の魅力的な男の余裕感)がちょっとご立派すぎるのです。
あの三島由紀夫先生なんだから、ひよわな頭でっかち優等生がムリヤリマッチョやってる右翼文学中年特有のイタさがあってほしかった。
まだ青年時代役の利重剛の方が、雰囲気はつかんでるっぽく見えるのも困る。
でも『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で三島役やったARATAもはまってなかったしなあ。こちらも三島由紀夫にしては顔と体が良すぎるし特有のアクが薄い。

しかし誰が適役なんだろう?考え出すと結構難しい。
顔の系統からすると成田三樹夫が本命?でもやっぱ体が格好良すぎて、三島より右翼の大物黒幕に見えるかも。


また史実か考証不足なのかわからないけど、1月末の東京都内の朝ですよ。無茶しがちな三島由紀夫先生とはいえ、裸にサテンのうっすいガウン1枚を羽織って庭で新聞読むってありか?
寒いだろ。
しかもショッキングブルーのガウンってアメリカン仕様すぎるだろ。
映画自体は1970年当時の考証も凄くちゃんとしていますが、何かガックリ。11月25日自決の朝らしい演出がほしかった。

檄文の字が細かすぎて下から見えないとか、自分で呼んだ報道ヘリの音で演説が聞こえないとか、演説シーンでお粗末な顛末に空しさを覚える辺りは良かった。

★白虎隊と盾の会の制服は若手美形俳優限定アイテムにしてほしい

さて最後は服バカうめめちの気になるファッションチェック。
楯の会の制服が再現されてますが、やっぱり変なデザインだと思う。「帝国ホテルのドアマンみたい」って当時酷評されたらしいが納得できる。
カーキ色の軍服の構造自体は普通だが、腰のラインを絞り過ぎなのと、襟と袖の緑色と金ボタンのチョイスが、どーも。そりゃリアル軍服だって結構派手でキラキラしてるもんもあるけど、なんかリアル軍服にあるストイックさと機能美が感じられない。非軍人が頭で考えた「俺の理想の軍服ゥゥゥ!」ぽい。
自衛隊官舎で籠城まで考えたはいいけど、どこか抜けてる事件の顛末と制服がマッチして、本物のクーデター起こすには詰めが甘くて観念的すぎる人だなあと思った。

あと制服の着こなしについて。
軍服や時代劇の衣装って、普通は若手俳優よりベテラン俳優の方が似合って当然だと思います。体型も風格も、様になる仕草も「衣装に着られてる」若手とベテランは違う。まぁ平成になってからの作品は微妙ですけどw

だがしかし!
白虎隊と楯の会制服&報国ハチマキに限っては若くてきれいな男子に限る。コスチューム映えする若手美形俳優を配役してくれ。

オヤジは似合わん。多少のスタイルの悪さは問わないし(派手な衣装が隠してくれるw)、全員イケメンで揃えろとは言わないが、センターでしょぼい男子はダメだ。
華があってハチマキが似合えば演技力は一切不問。見た目良ければすべてよし。
という意味では『ミシマ』の楯の会男子はキャスティングがなかなか絶妙で良かったです。お水商売的チャラさも薄く青臭さもあり、センター担当・可愛い担当・普通担当と役割もちゃんと振っているwハリウッドはこういう華になる添え物男子の配役は外さないので安心ですね。

個人的には♪勉強しまっせ引っ越しのサカイ~のCMでおなじみ徳井優が楯の会会員役で出てるのが胸熱。
今と芸名が違うから最初わからなかかった。若い!若いよ徳井さん!残念ながら普通担当だったがw結構かわいい!
関西人にはうれしい配役プチネタである。

(了)
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