No.085『太陽を盗んだ男』

製作年:1979年
監督:長谷川和彦
脚本:長谷川和彦、レナード・シュレイダー
ジャンル:自宅DIYの限界に挑んだトンデモ科学映画

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ノーフューチャーでハタ迷惑な自室カスタマイズ犯罪者が主人公の、昭和映画史に燦然と輝く問題児ムービー。

かつてショッキングなテーマや表現で世間に物議をかもした映画って、時を経る間にフォロワー作品とか色々出て年々インパクトが薄まり普遍化するものだが、これは年々インパクトがでかくなるし、諸事情によりフォロワーなど絶対作れない系統の作品。
こんなのがメジャー映画で配給されたなんて昭和日本はフリーダムにもほどがありますね。
昨今のぬるい自主規制だらけのメジャードラマ映画に飽きたらどうぞ。

★予告編



DIYシーンがなんか楽しそうな予告。
作ってみたくなりますねー。ならないか。

★あらすじ(青字はネタバレあり

城戸誠(沢田研二)は中学の理科教師。
こんなイケメン教師いるかよな状態だが、設定は普通の教師兼アマチュア研究者だ。
しかし普通の教師である彼には、日本を軽く転覆できるくらいとんでもない野望があった。

ボロアパートの自室は研究用に徹底的にカスタマイズ。礼金敷金返還はおろか賠償金請求されるレベルでDIY。
学校が休みの日はひたすら研究。研究の合間にそこらへんの野良ネコに牛乳あげる。優しい人ねと思わせて顔に殺虫剤をシュッと噴射。
まあっ動物虐待!教師のくせに!
だがこれはほんの予行演習。
お次は老人になりすまして交番に行き、警官(なんと水谷豊)に殺虫剤噴射してピストル奪う。

凶器を手に入れてお次は何?状態の城戸先生だが、修学旅行の途中でなんとマシンガン強盗(伊藤雄之助)にバスジャックされるトラブル発生。
本物の皇居の御門にガチでバス突っ込みかけるわ、皇宮警察に手りゅう弾投げるわ、これだけで映画1本作れそうな過激なドンパチの末、警視庁丸の内署の山下警部(菅原文太)と先生が協力したおかげで事件は無事解決する。
そのとき先生は警部になんか心ひかれるものを感じる。運命の出会いってやつですね。

★ご家庭で作ろう!3分間プルトニウムクッキング♪

とんだ横槍でしたが一件落着しましたので、
さて城戸先生の野望の続きですが…

東海村の原子力発電所で1人で侵入してピストル強盗をやらかす。
うそぉー。

核物質がある場所で警備員と銃乱射しまくり!火炎放射器で人間丸焼き!
プルトニウムの入ったボトル1個を盗み!ボトルを何のカバーもせず肩にかついで!追手のプロ警備員達を振り切り逃走!
最後は建物爆破のおまけつき!

ちょwwwザル警備すぎだろ!いいのか東海村!
しかも核物質強盗なんて超過激シーンなのにBGMがお気楽フュージョン仕様wノリ軽すぎだろ。

プルトニウムをゲットした城戸先生は満を持して、野望の本丸『原爆なんて誰でも作れる』を実践する。
それがほんとに『誰でも作れる』の言葉通りで想像以上にすげーゆるゆるDIYなのだ。

製作場所は自宅カスタマイズ実験室。外は住宅密集地。
製作費は教師の給料+サラ金から借りた50万円。
作業着は使い捨ての雨カッパとヘルメット。実験器具はご家庭用の市販品使いまくり。

作業風景はまるでキューピー3分間クッキング。
加熱はオーブンでチンするし。
しかもチンする途中でなんかバクハツしてるし!
それを消火器で普通に消すしw
極めつけはプルトニウムを直でいじる空間に野良ネコが出入りできる隙間があるwww
核物質に触れてネコ死亡するし。

ネコにゃんかわいそう…って、いーのかよーー!!!
こんなゆるふわお気楽シチュエーションでリアル原子爆弾の素が作れちゃうんである。

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ちっさい座布団にのっけると木魚に見える爆弾の素。バチでポクポク叩いて拝んでしまいそうだ。
この核物質入り銀の球を緩衝材?入りにボールで包み、アタッシュケースに入れて時限発火装置をつければマイ爆弾の出来上がり。

★できちゃったよ原爆。さてどうする

やったー原爆つくったぜー!
城戸先生は夏休みに工作作った小学生並みに無邪気な大喜び。爆弾ボール転がしてわーいわーいとはしゃぐw
でも自分1人で遊んでばっかりも勿体ないので、とりあえず日本政府を脅してみる。

当時核保有国は8か国だったので、自分は「9番目の核保有者」だから『9番』と名乗った城戸先生は、DIYボイスチェンジャーを使って政府に電話をかけ、山下警部を交渉役に指名して要求を突きつける。
さてその要求は、

「巨人戦のナイター中継を延長しろ」
………しょぼっw

ちっせえ要求にずっこけつつ政府はTV局に電話する。巨人戦中継が最後まで見れてジュリーにんまり。

ここでハリウッド映画なら「最初の脅迫はホンの小手調べに過ぎなかった。城戸先生の本当の要求とは…?」となるが、話はハリウッドじゃありえない超展開。
実は原爆作った後の事を何も考えてなかった城戸先生は、「政府に何要求したらいいかわかんない」と息詰まり、ラジオ番組に生電話かけて「どうしよう?」と相談する。
おいおい!!!
なーんにも考えてなかったのかよ!
そしてDJ零子(池上季実子)に「ローリング・ストーンズ日本公演やれって言えば」と提案されて、ほんとに政府に要求する。ついでにサラ金返済50万円含む5億円も要求しちゃえー。とアバウトに金要求。
うそ…だろ…

行き当たりばったりにも程があるテンションで、城戸先生がサラ金屋(なんと西田敏行&小松方正。顔だけ見ればリアル極悪ヤクザ)に追われたりDJ零子とプチロマンスしてる間に、山下警部ら捜査本部は着々と捜査を進めていた。

そんなこんなで5億円の受け渡し当日。
受け取り場所に東急百貨店を指定した城戸先生に対し、警察は指定時間に満員の客(&先生)入りデパートを全館丸ごと機動隊封鎖して応戦する。
絶体絶命の先生だが、そこは機転をきかせて「5億円をデパート屋上からばらまけ」と脅迫する。
捜査員がヤケクソで札束をぶちまけたら、下の歩行者天国にいた通行人が大パニック(そりゃパニックにもなるわ)。万札5万枚が東京の街を乱舞する中、先生は警備の隙を突き逃亡する。
パニック映画なのによく撮影許可したな。よっ!東急百貨店たら太っ腹!

★超人VS超人

追われる先生は東京のビル群をロープ一本で移動して高層ビル4階の窓ガラス蹴破って捜査本部に侵入www
どこのスパイダーマンだよおまえ!
警察が押収した原爆セットを簡単に奪い返してオープンカーの助手席にDJ零子を乗せ、5億円強奪のラジオ実況中継させながら華麗なドライビングテクでパトカーとカーチェイス。警視庁の包囲網を次々突破して逃げまくる。どんだけ超人先生だよ!とあきれるが、

山下警部こと菅原文太アニキはさらに超人刑事だった。

実況中継するラジオ局のヘリコプターの足に捕まり、走る車に片っ端から無差別発砲!近くを走る何の罪も無い一般車両もかまわず発砲!
原爆積んだオープンカーめがけて銃打ちまくり!原爆かすめて助手席のDJ零子に命中!
飛行中のヘリからダイビング着地してそのまま走って追跡!


す、すがわらー!!無謀すぎるし!
しかもこんだけ派手に追跡した末に先生を見失うwww
有能なんだか無能なんだかわからねえよ!

さて色々ありすぎた逃走劇を制した城戸先生だが、やはりDIY原爆製造中に被ばくしていた。
歯ぐきから出血し、顔はゲッソリして大量脱毛する。一応ヒーローだからハゲにはならないが。
自分の命もいよいよ危ないと悟った先生は、ローリングストーンズ日本公演会場の武道館で、山下警部と最初で最後のタイマン勝負に出る。
もちろん超人先生VS超人刑事だからして勝負も壮絶だ。

警部の肉体に銃弾浴びせるジュリー城戸先生。10発は撃ってるけど弾はどこから?DIY?
でも撃たれても倒れても血まみれで起き上がる警部。弾倉が空なのにまだ撃てるマジカルピストルも不死身の菅原文太アニキには効かねえぜ!
警部は先生&原爆もろとも担ぎ上げると、「逝くぞ9番…」と不敵につぶやき屋上からダイブ!

武道館の観客1万人を地獄へ道連れ!いや東京圏住民3000万人も地獄へ道連れ必至!
す、すがわらー!な無謀プレイアゲインだが、城戸先生&原爆は近くの木に引っ掛かり無事、山下警部だけが地面に叩きつけられ遂に絶命する。

これだけ東京中を引っ掻き回しておいて最後まで殺されず逮捕もされなかった城戸先生は、原爆持って街の雑踏をさまよう。
何の目的もなく、どうにもならない顔をして。
時限爆破装置のタイマーを解除しないで。
やがてタイマーがチクタクとその時を告げ、画面が白くなってジ・エンド。


★感想

扱うテーマはトンデモですが、昭和の東映・角川系の大作娯楽映画らしく、細かい事はどーでもいーんだよ!ドーンといこうぜドーンと!系の面白い映画です。
筋はわかりやすくヤマもオチもバッチリ。
中盤、DJ零子の絡みあたりでややダレますが、2時間超える映画にしては飽きずに観れる。
ジュリー&菅原文太の見せ場もたっぷり。ちょっとばかり超人すぎますがw

城戸先生のキャラがユニークでいい。
原爆作って日本政府を脅迫するという相当大それた野望の割に力ぬけてるというか、「日本を転覆させてやるっ!!」とコメカミに力入れて悪事に走る風でもなく、70年代左翼学生残党ぽい思想も無く、「なんか原爆作れたら自分が変わるかも」なんてボヤッとした目的でサクサク原爆作っちゃう。
作ってから「どうしよう」と悩みはじめるのが平成世代にはなんかリアル。
昭和の熱血ヒーローそのまんまな山下警部とのキャラの対比も活きてて良かったです。

あと池上季実子が女子大生DJ役で、本場のニュートラファッションが見れます。
今年の流行ラインとかぶってて可愛い。

脇は伊藤雄之助がさすがの怪演で良かった。
天皇陛下に会うために日の丸特攻隊服来て皇居に突っ込むマシンガン強盗って凄い役w
『ゆきゆきて神軍』の主人公を彷彿とさせるナチュラルな狂気を感じました。(ちょっと顔似てるよね)

★アクション映画じゃありえないが面白い音楽

あと音楽の選曲センスが面白い。
決めシーンに何故かボブ・マーリーを合わせたり、カーチェイス!死闘!爆発ドカーン!なシーンの背後でやたらメロウなムード音楽を鳴らせたり。

「派手なアクションだろうが戦慄ホラーだろうが場面を無視してフュージョン音楽がダラダラ流れる」という、70年代映画にありがちな残念パターンだが(うめめちはこれが嫌いである。あれにはテクノ育ち世代と相容れない壁がある)、この映画に限っては不思議と合ってる。
なんかシニカルな無常観が胸に迫るんですね。なぜだろう。

★気になる俳優・ジュリー沢田研二

冴えない教師だが1人で原爆作れる天才科学者。
初犯なのに窮地の脱し方は超人天才犯罪者。
どんだけご都合主義主人公だよ!だがジュリーが演じるとあらフシギ。何故かキャラがナチュラルに納まってしまうw

昭和の懐かしテレビ歌番組特集なんかを観るたびにすごく不思議に思うんですが、絶頂期のジュリーさんはなんであんなに楽々とセクシースターを演じれたんだろう?

確かに顔立ちは顔は整ってるが、美輪様やデヴィッド・ボウイみたく人間離れした絶世の美貌ってほどでもなく、アラサーなのにあごラインはダルダルに崩れてて、スタイルは今どきイケメン俳優から考えれない顔デカ、胴長な昭和の日本人体型、がに股…
顔と声以外のパーツのスペックは正直並以下である。

しかしかつてこの人は、フジテレビ『夜のヒットスタジオ』で伝説のパフォーマンスを見せてくれたのだ。
ヤバい十字の軍服&スケスケスパンコール&乳首や背中に牡丹の花のフェイクタトゥー模様で登場し、『サムライ』を熱唱すると、とどめに畳の上で短刀ふりかざすって…
凄いな。
かつて日本全国のお茶の間でこういう映像が流れた事実自体がミラクル。

たとえ十字を隠しても、日本の芸能人で軍服にスケスケにタトゥーを着こなせる男が他にいるか?
ジャニーズの美少年やフィギュアの羽生君が着てすらドン引きするだろうお耽美www衣装ですらジュリーが着るとあらフシギ。
問答無用でセクシー。
違和感ありありなのにジュリー的に自然。

いかなるトンデモシチュエーションでも気づけば自分の身の丈に無理なく納めてしまう、セクシー二枚目耐性の異常な強さ。
あの特殊能力は一体なんだろう。
他のスターアイドルは、たとえ絶頂期でもトンデモ衣装はかっこいい!セクシーな気分になれない。笑えるばかりだ(例:郷ひろみ『裸のビーナス』や本木雅弘の紅白コンドーム衣装)。

じっくり考えてみると結構不思議な、絶頂期ジュリーさんのセクシースターな着こなし問題。
意外と奥深い。かも。

(了)
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