No.006『悪徳の栄え』

製作年:1988年
原作:マルキ・ド・サド『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』
監督:実相寺昭雄
脚本:岸田理生
ジャンル:背徳とデカダンスの昭和モダン前衛映画

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悪趣味だとわかっちゃいるけど観てしまう映画がある。
それが実相寺昭雄監督作品である。

話はたいていぶっ飛んでいる。ぶっ飛びすぎて途中から訳がわからなくなる。だからしばしば観てる途中で寝てしまう。
登場人物が変人だらけ。彼らの気持ちに共感できるとかありえない。変態ばかりのえげつない変態エロシーンがある。

画面は暗い。
あるいは白くもやもやと霞んでる。
あるいは逆行で俳優がシルエットと化している。
あるいは斜めに傾いている。
あるいはのぞき窓から見たような構図である。
どうしようもなく下品で頽廃している。
でも端正で美しい。

本作はなにせ原作がマルキ・ド・サドのエロ名作です。
とはいえ外道SMプレイ全開の原作そのまんまだとR-18とて映画として公開するどころの話じゃないので、舞台を東京にして、話の筋も原作と全然変えて、R指定といえ映倫に通る程度にソフトに仕上げている。
ソフトといえど100%お下品には変わりないんですが。
★あらすじ(青字はネタバレあり

昭和初期、2.26事件直前の東京の上流階級のお話。

主人公・不知火侯爵(清水紘治)のお屋敷では夜な夜な紳士淑女がアブノーマルな晩餐会を開いている。
常連客は大審院の裁判長(寺田農)に財閥会長(石橋蓮司)に女伯爵(米沢美知子)。いずれも悪徳・変態・美食自慢のメンバーばかり。
大皿に並べた肉料理ばかりのディナーを貪り食い、女奴隷に口移しで食べさせてバカ笑い。
食べるのに飽きたら女奴隷をいたぶって遊ぶ。
女奴隷は裸エプロンで、尻に鈴つき白ふんどしだ。
出だしからサイテーである。

頽廃に飢えている不知火侯爵はお下品晩餐会を主催するのみならず、マリー・アントワネットのプチトリアノンみたく自邸の離れにマイ劇場をこしらえ、前科もちのならず者達をお抱え役者にして、「白縫一座」なる不道徳なマイ劇団を持っている。
娼婦上がりの若い嫁・珠江(李星蘭)を主役ジュリエットに据えて、誰に見せるでもない劇『悪徳の栄え』の稽古に日々励んでいる。

一方で、実相寺作品の主人公ですからもちろん性的に変態趣味をお持ちの侯爵は、夜はお友達とハードな外道プレイを愉しんでいる。
ロココな舞台衣装に前髪くるくるパーマ!のキュートな石橋蓮司が女に鞭でしばかれ悶絶する。女伯爵が劇団員のワル男(牧野公昭)を誘惑して、媚薬を飲ませて勃たせてやっちまう。
その様子を嫁にムリヤリ見せて愉しむ不知火侯爵。お貴族様は野卑なまぐわいを陰から覗き見て悶えるエロティシズムがお好きなのだ。

★外道プレイで墓穴を掘った変態貴族

しかし普通のアブノーマルに飽き足らず、さらなる外道を望まれる公爵は、ある夜ワル男を脅して珠江を犯させ、一部始終を隠し部屋からみんなで覗き見るというムリヤリエッチ鑑賞会も開いていた。
だがムリヤリエッチがきっかけでなんと珠江はワル男に惚れてしまい、侯爵・嫁・間男の三角関係に発展する。

で、劇中劇の役者の間でもめごとが起きたり、それが実生活にリンクしたり、2.26事件を企てる将校(佐野史郎)が登場したり。
やっぱり実相寺映画らしく訳わからん展開だ。
でも細かい脇筋はほっといて、本気モードになっちゃった嫁と若いワル男に侯爵は嫉妬メラメラってだけ押さえとけばOK。
あーらーらー侯爵様。自分の性癖が元で墓穴掘っちゃいましたな。

最後は三角関係に決着つけるぞと腹を決めた侯爵が、珠江とワル男の公開生板本番エロ鑑賞会を開き、やってる最中に後ろから剣を突き立てて男女串刺しの刑にする。
ちょっと強引な悲恋エンドになりましてジ・エンド。


★感想

いやぁ実に下品な頽廃映画です。
決して万人におすすめできませんが、私のメケメケハートはとっても満足しました。
見どころはやはり!サド侯爵をダシにして語られるすこぶる妖美な昭和デカダンス美学であります。

原作『悪徳の栄え』のあらすじは劇中劇部分で語られ、東京での侯爵夫妻&間男の三角関係と劇中劇がシンクロしながら進む凝った筋立てである。
でも劇中劇シーンは正直興味無いしどうでもいい。

★なまこはお嫌い?外道女伯爵にしびれるぅ!

なんといってもメケメケ前衛変態映画ファンが心底ふるえてやまない外道プレイが、米沢美知子がど迫力で演じる女伯爵のなまこ食いシーン。

大皿一杯にドカーンと盛られた特大なまこ一本姿煮を手でガシッとつかんで食う!食いちぎるっ!


高貴なご令嬢らしからぬあまりに野獣な捕食に怯える女奴隷に向かって、女伯爵がのたまうセリフがこれまた凄い。
「なまこはお嫌い?おまえの知らない食べ物も、この世の中にはいっぱいあるんだよ!」
さらに「お前もなまこを食え!さあ食うんだよ!」と皿に顔を突っ込ませて食わせる!
尻丸出しで床に這いつくばりなまこ皿に顔を埋め、泣きながらなまこを食う女奴隷たち。それを地獄の高笑いで嘲る女伯爵。

なんて心躍るエログロデカダンス!
しびれるぅ!!

わざとマズそうにグロく撮った美食ディナーの数々。
オープニングから裸の少女ドールの腹が開いて中から苺がわさわさ出てくる不気味ショット。
嫁とワル男が密会する屋根裏部屋は、その道では有名な人形作家、吉田良・天野可淡のオリジナルドールが出てくる恐怖の耽美ドール部屋。球体関節人形に興味があるなら必見のクオリティ。
どれもこれも頽廃のすえた臭いがぷんぷんして素敵ぃ

不知火侯爵役の清水紘治も素晴らしい。
暗く歪んだ昭和バロック美学全開な映画には、端正で神経質そうな顔がぴたりと似合う。じつに実相寺映画映えする佇まいであります。

実相寺昭雄監督映画を未経験な方でも、裸エプロン白ふんどしそしてなまこに興味をひかれたならば、一度知らない世界を覗いてみてはいかがでしょう。

★しかし気になるツタヤのノレンの木

しかし何だか全然関係ないけど気になる木。

実相寺昭雄監督作品をはじめとして昭和のエロありメケメケ前衛芸術系映画ってR-18またはR-15指定がまぁ結構ありまして、しかも精神的には変態AV並みのエログロ頽廃ものも結構あるんですが
私の近所のツタヤさんでは、ノレンかかってない普通の映画コーナーで堂々借りれる位置にエロ前衛置きまくり。

いいんですかねツタヤさん。『アリエッタ』もノレンなしなんですが。
ノレンとノレンじゃない区別が今いちわからんよ。
とか言ってのれんコーナーに移っても困るので、こっそりつぶやいて終わりにします。

(了)
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