No.087『もう誰も愛さない』

放映年:1991年
脚本:吉本昌弘・中山乃莉子・林誠人
ジャンル:元祖ジェットコースタードラマ
注記:フジテレビの連続テレビドラマ

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昭和日本の問題作を扱う当ブログで、いずれ書かねばならぬと思ってた宿命の作品である(なんでだw)。
「ジェットコースタードラマ」の金字塔と呼ばれるドラマ界の鬼っ子的作品。通称『だれ愛』。

ドラマ放映から四半世紀以上経ちましたんで一応説明すると、「ジェットコースタードラマ」とは昭和大映テイストドラマの亜流に当たり、90年代初頭のバブル末期に一世風靡した過激派トンデモドラマであります。
「出生に秘密のある主人公が、身の上にふりかかる不幸の連続&ドロドロ愛憎関係&いじめの嵐を乗り越えて、真実を見出し成長する」というドラマの基本構造は大映テイストドラマと同じですが、バブルの狂った世相に合わせて不幸もドロドロもヒートアップ。毎週毎週登場人物が不幸貧乏どん底&バブル成金のアップダウンに見舞われ、山あり谷あり怪しいプレイありの盛り沢山のエピソードを超高速回転でこなす。高速だから「ジェットコースター」。世紀末の刺激を求めるお茶の間に大人気でした。
愛憎ドロドロ東海ドラマと似てるようで少々違う。90年代ドラマ界の帝王だった野島伸司脚本の過激派ドラマとも、似てるようでやっぱり違う。金・株・土地関係のエピソードが異常に多い。などの特徴があります。

ちなみに世間ですごく誤解されてるが、吉田栄作といえば「ウォー」の叫びが代名詞だが、『だれ愛』では吉田栄作は毎回叫ばないですよ。毎回叫びまくるのは『愛さずにいられない』だ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公は東都銀行のお抱え運転手・沢村卓也(吉田栄作)。
服役中の囚人パパ(佐川満男)の再公判費用を作るため、職場仲間の小百合(田中美奈子)と共謀して、小百合の同僚で資産家お嬢の田代美幸(山口智子)一家の財産ゲット計画をくわだてる所から話が始まる。

ある日美幸と妹の弥生(観月ありさ)と婚約者(薬丸裕英)が別荘へ遊びに行ったら、謎の暴漢に襲われる。
美幸は妹とカレシの目の前で暴漢にレイプされ、婚約解消するわ妹は記憶喪失になるわ不幸の連続。
傷心の美幸を慰めたのが小百合と卓也。小百合のすすめで卓也と美幸は速攻デキる。
ラブラブになったところで卓也が「実はパパが病気で手術代1000万が必要」と泣き落として金借りる。
ありがちなデート詐欺商法ですね。まぁ職場恋愛、しかも会社の仲良い同僚に紹介されて始まった恋愛は、ちょっと警戒心が緩みますわね。

美幸は1000万を工面するため銀行の金を横領するが、銀行員といえド素人の犯罪なのであっさり見つかり逮捕される。
報道陣に連日取材責めにあった実家は放火心中を図り、家は焼失、観月ありさ以外全員死亡。
美幸は一旦釈放されたものの失明するわ家族いないわ、卓也の子を妊娠しても暴漢に腹蹴られて流産するわ、暴漢刺して刑務所逆戻りと不幸スパイラルに陥る。


1000万と美幸実家ゲット寸前だった卓也&小百合だが、横領金の持ち主&小百合の愛人であるバブリーなワル社長・米倉(辰巳琢郎)に金も土地も横取りされ酷い目に遭う。
ところが卓也はまたもスケコマシの腕を発揮。大物財界人・戸川(仲谷昇)の娘、亜紀(荒井乃梨子)を米倉から略奪して、金・土地・社長の座をゲットする。金に土地がついてくるのがバブルやなー。

気鋭の若手社長としてブイブイいわせる卓也。
バブルだから仕事も陰謀も恋愛もやたらイケイケだ。副社長になった小百合ともこっそりデキる。
チンピラ化した婚約者ヤックンの復讐アタックや二枚舌の銭ゲバ女弁護士(伊藤かずえ)が色々仕掛けてくる陰謀もかわしながら上手く立ち回ってた卓也&小百合コンビだが、棚からぼたもち的サクセスは永遠には続かなかった。

★あやしい香港商人王さんの手でワル美幸開眼

実は卓也の成功を美幸に告げ口した奴がいたのだ。
自称・父の友人であるあやしい香港商人王さん(伊武雅刀)だ。

刑務所で牢名主(江波杏子!!)にいじめられる日々を送る美幸は、王さんから卓也&小百合のサクセス事情を知り「あたしをだましたのね!」と復讐を誓う。
出所後王さんの会社の日本代理店社長に就任した美幸は、NHK朝ドラ純情ダサダサ主人公からバブル金融業界成金風ボディコン女に大変身www
落ちぶれたワル社長&チンピラ婚約者を手下にして、社長の癖に警備がゆるい卓也&亜紀宅に強盗に入らせ、ケーキを口に突っ込んで亜紀をレイプさせる。

セコムしなかったせいで嫁を暴行された吉田栄作社長は、戸川に三行半突きつけられ、棚からぼたもち社長の座からあっという間に転落。
(ちなみに身分の割にセキュリティが異常に緩い「アンチセコム」エピソードはジェットコースタードラマのお約束である)
社長解任・スキャンダル・逮捕の3点セットに見舞われて一文無し。ガソリンスタンドのバイトから裸一貫やり直す。
その間に小百合と異母兄妹だいや違う騒動があり、嵐転じてなぜか真実の愛を見つけたのも束の間、一番最初の美幸レイプ犯容疑で小百合が逮捕。
しかしこの話、登場人物の逮捕率が異様に高いな…

一方美幸はゴージャスな新居に観月ありさ妹を引き取り、パトロン王さんの金でいい暮らししてたが、やはり心は満たされなかった。
私、どんな事をされても惚れた男を忘れられなかったのとチンピラ婚約者に刺され半身不随になった卓也を強引に引き取りツンデレ介護する。
卓也も卓也で言いなりになるかよ!と反発しつつ、スケコマシの腕を発動させ、一発やって孕ませる。

★悪の小百合が不治の病で唐突にキャラチェンジ

一方小百合は卓也を奪われガンで子宮全摘。しかも入院中に美幸の妊娠を知らされる。しかもガンが再発して余命半年の不幸スパイラル。
ここで小百合、罪を悔い改めて善人化。
(悪キャラが死亡フラグが経つと手のひらを返したように善人化するエピソードもお約束である)
しかし今更悔いたところで卓也が戻るはずがない。はずだった。

ところが熱い男、吉田栄作が真実の愛を忘れる訳がない!
美幸とラブラブのふりして代理店の懐を探り、なんと美幸が王さんの金を横領してるのを告発。
ひでーな美幸!恩知らずにもほどがあるだろ。
卓也は美幸を捨てて小百合の許へ戻り、真実の愛を貫こうとする。
またも振られて女の怨み骨髄の美幸は小百合暗殺の刺客を放つが、代わりに観月ありさ妹が殺されてしまう。

小百合は幼少の頃に過ごした孤児院で卓也とふたり余生を過ごそうと決めるが、美幸は10億で孤児院の土地を買い(バブリー!)、建物つぶして住人追い出したれー!と横槍入れる。
「やめて!孤児院だけは奪わないで」と孤児たちと一緒に土下座する小百合。
そこへ美幸の足元に、蹴ってと言わんばかりにサッカーボールが転がってるwww
もちろん蹴る。頭直撃。謎の発作が起こる。次の発作が起これば死の危険が!ともう難病ベタネタを畳みかける。
小百合を見かねて卓也は美幸の許しを乞うが、「私と結婚して孤児院を救うか、結婚を拒否して個人を捨てるか」二択を迫られる。

なんて余裕ぶっこいて意地悪してる美幸だが、軍資金の10億も実は王さんの金を横領してた。
堪忍袋の緒が切れた王さんは美幸暗殺を仕掛けるが、間一髪で善人化した江波杏子が助太刀に入る。

★佐川満男パパの真実は忘れた頃にやって来る

なんだか登場人物全員がケツに火がついたところへ、ジェットコースターストーリーの発端である「無実の罪で投獄された佐川満男パパ」が脱獄。
脱獄できるんならもっと早くしろよ。
実は日本を揺るがすでかいスキャンダルを知っていたパパは、息子に「実は俺の本当の子供は小百合だ。お前は樫村健三という男の子供だ」と告白する。

樫村健三って誰だー!と栄作は悩むが、もちろん王さんは実は日本人で本名・樫村健三なのです。
かつて戸川の秘書をやってた王さんは、戸川が「プロ野球界の黒い霧事件」という悪事の首謀者だと知ったために、刺客に口封じされかけ、瀕死のところを美幸父に助けられたのだった。
で、香港へ逃げてサクセスしたと。

佐川満男パパの正体は戸川の刺客。殺し損ねた男の遺児を引き取り育てたと。
元プロ野球選手だったパパは、黒い霧事件の鍵の「秘密の暗号」を知ってしまったために都側にはめられ、無実の罪で刑務所に入れられたのだ。
しかし「秘密の暗号」の仕掛けが数字=アルファベットって単純すぎて笑った。


佐川満男パパのへヴィな告白を聞いたおかげで登場人物が次々と和解の嵐になるなかで、小百合は安らかにお亡くなりになる。
ついでに焼香に来た佐川満男パパが暗殺され、チンピラ婚約者も「美幸、愛してる…」と告白して死亡。
最終回らしくLOVE&DEATHできれいに締めるんだなーと思いきや、この人は期待を裏切らなかった。

銭ゲバ女弁護士伊藤かずえ、黒い霧事件をネタに王さんから金をゆすろうとして香港マフィアにさっくり始末される。
ゴミ捨て場に転がるバラバラ生首手足というTVドラマ史に残るショッキングな惨殺体でご退場。


★吉田栄作最後の聖戦

さてラストはもちろん卓也VS王さんの父子対決。
ピストル相討ちで王さんは死んだものの、卓也も重傷を負った。

それでも卓也は切迫流産の危機の美幸を助け(そりゃマシンガン連射で暗殺されかけたら早産にもなるわ)、流しのタクシーに乗せると、道ばたに倒れ込んだ。
美幸は救急病院で無事男の子を出産。悪を企んだ人々は全員死んだが、未来に希望を残しましたとさ。
「Love…Forever…」のテロップが出て、あんだけ色々と人心が変わりまくったお話をきれいに洗い流してジ・エンド。


★感想

全12話のテレビドラマをムリヤリまとめてみた。

しかしさすがバブル期ドラマである。
金・体力・精力が余りすぎ。
土地の値段は面白いように億単位で上がり、人の足元に1000円札投げ捨てプレイが何回もあり、20代の男女がアホみたいな事業を立ち上げたらパトロンの大人がホイホイ資金調達してくれるw
ネット取引じゃないので万札の札束と小切手が乱れ舞う。
画面が金金金!でギラギラしてます。

後から観ると伊藤かずえの銭ゲバ女弁護士がまだ20代って設定に驚いた。
20代の顔とファッションじゃねえだろ!しかも香港マフィアゆすって金奪おうとするんですよ。命知らずだなー。

吉田栄作はスタンダードなイケメンですね。
「熱血キャラの印象が濃すぎて美形だって事をよく忘れてしまう芸能人」部門では森田健作・松岡修造と並ぶ3大巨頭ですが、今見ると爽やかな笑顔にかえって驚いてしまう。
なんであんな史上最強のネタ俳優になっちゃたんだw高層ビルの窓際からうっかり下をのぞいたからかw
しかし「人がちっぽけに見える」は普通思いつくが、ちっぽけに見える人間達全員に知られるくらいビッグになってやるぜ!までは思いつかないなあ。さすがである。

山口智子のボディコンは毎回笑わせてくれました。似合わないにも程がある。
最近バブルテイストがリバイバルしてますが、あれは平成世代の小顔&体型があってこそ成り立つんだと思い知らされます。
自分もリバイバルの波に乗るべき?と浮き足立つ30代以上の昭和体型な日本人女子は、『だれ愛』を観てよーく考え直しましょうw

★『だれ愛』名物・お楽しみプレイ一覧

さて放送当時、我々過激派バカドラマ大好き世代の間で爆発的に流行ったのが、ドラマで毎回登場するお楽しみフェチ&SMプレイでした。

第1回
米倉社長が自作の手作りシチューに指突っ込み小百合に舐めさせプレイ
卓也&美幸の初夜に手首切った傷舐めあいプレイ
刑務所のガラス越し涙の面会プレイアゲイン
第2回
米倉社長の人の顔にコイン投げプレイ
米倉社長の万札投げて拾えプレイ
銀行重役の靴磨きのチップに1000円札投げ捨てプレイ
第3回
卓也&美幸のりんごむいて切った指の血吸いプレイ
第4回
ミシン針で指を突き刺す女囚いじめプレイ
ブランデー顔にぶちまけプレイ
刑務所のガラス越し涙の面会プレイふたたび
第5回
亜紀が口にケーキ突っ込まれるプレイ
第6回
美幸が床に札束落として卓也に拾わせプレイ
第7回
王さんの部下・林、無駄に殴られプレイ
土下座する卓也の頬を美幸が札束でペチペチプレイ
食事拒否する卓也の夕食に美幸が水ぶっかけプレイ
卓也を脱がせて体ふきふき介護プレイ
第8回
また林、無駄に殴られプレイ
卓也が牛乳床にこぼして体転がしプレイ
&こぼれた牛乳ジャージでふき取りプレイ
伝説の卓也&美幸牛乳足なめプレイ
第9回
やっぱり林、無駄に殴られ&腹グーパンされプレイ
米倉社長の手作りシチューをタッパでお届けプレイ
スーパーの買い物かごにオレンジ投げ入れプレイ
第10回
前述の蹴ってといわんばかりにサッカーボールプレイ
林、かとうれいことデキるがな乳首NGベッドプレイ
林、死ぬ直前まで無駄にビンタされるプレイ
第11回
王さんが薬丸の太股にダーツの屋ぶっ刺しプレイ
最終回
戸川、遂に倒れて車椅子介護プレイ
最後の最後で足元に1000円札捨てられプレイ

特に第8回の牛乳プレイは「『だれ愛』と言えば牛乳足なめ」とドラマの代名詞になるくらいディープインパクトでした。
放送翌日に教室でシーン再現ごっこしまくりました。懐かしいですねー。
小ネタ関係では林クンの毎回ぶったたかれ役と、米倉社長シチューネタが好きだったw「冷ましてタッパに詰める」テクがバブル社長の割に貧乏くさい日常感があっていいw
いつも眉間に黒いもやがかかってる気がする薬丸裕英のクズチンピラ役も結構はまってた。伊藤かずえの強烈な銭ゲバ二枚舌っぷりといい、このドラマは汚れ担当脇役のキャラが秀悦でした。
江波杏子の刑務所シーンは貫禄の演技。何気に頭に三角巾巻くのが似合う人だ。最後が善い人になりすぎたのがちょっと残念。

★気になる渋キャラ・王さん

さて最後はいつもの脇役俳優気になる木。
チャイナ服が異常に似合う伊武雅刀が渋~い低音のカタコト日本語で静かに語る、素敵ぃな香港商人の王さんです。
義理人情などすぐ忘れるバブルな登場人物の中で極悪非情の香港マフィアなのに恩と義理を忘れず、懐が広く、比較的まともな思考回路の持ち主で、登場するとなぜかホッとする癒し系キャラでした。

しかし恩人の娘を救い復讐の支援してやったのに復讐相手とよりを戻して子供作るわ、10億横領されてスイスの銀行に隠し財産作られちゃ、そりゃーマシンガンで蜂の巣にしたくなるわと王さんに同情すらしたくなりますね。
懐が広すぎるよ!太平洋並みだ。

(了)
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