No.088『THX-1138』

製作年:1971年
監督:ジョージ・ルーカス
脚本:ジョージ・ルーカス、ウォルター・マーチ
ジャンル:白い空間に追い詰められるディストピアSF映画

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いつものマイナーバカ映画や前衛映画ならDVDがあれば御の字なのに、
ブルーレイにディレクターズカットにディレクターズカット特別版まであるなんて!
ぜいたく過ぎてくらくらしまう。さすが巨匠ジョージ・ルーカス。

今年は白が流行ってるからというくだらない理由で『THX-1138』です。
といってもSF映画は大抵白と銀色使いが多いですが、この映画は嫌になるほど白づくし。画面の8割まっしろしろ。
そして人間はハゲづくし。
なんか観てると潔癖症になりそうな映画だ。

★予告編



1971年オリジナルバージョンの予告。
後でどこにCG入れたか丸わかり。

★あらすじ(青字はネタバレあり

スターウォーズのタイトルロールは上から文字が次々せりあがってきますが、この映画は下から文字が落ちてくる。
エンドロールの早回しみたいでなんか怖い。

舞台は25世紀のどこかの地下都市。
住人は男も女も白の作業服で丸刈りにされ、黒づくめ服のロボコップに見張られ管理されて毎日毎日核物質をいじる仕事やってます。
見るからに神経細かそうな作業なので作業中は脈拍血圧脳波を計測してて、精神不安定になれば作業中止するらしい。

★こんな街に住むのいやざます

仕事は根を詰める作業でも、仕事帰りはほっと一息お遊びタイム?
でも管理社会だからプライベートもがっちり管理されている。
街に盛り場は無く遊びようがない。電子教会でホログラム神様に信仰告白する程度だ。

当局に与えられた家に帰れば、無印良品尽くしの家さえ顔負けする装飾皆無の白づくめシンプルライフ。
トイレの扉すらない超開放住居で人々は宇宙食よりまずそうな飯を食い、当局から与えられた精神安定剤を服用し、ホログラフのテレビを見て暮らしてる。
超機能的生活。やだなー。

主人公THX-1138(ロバート・デュヴァル)と同居女LUH-3417(マギー・マコーミー)は当局から強制的に決められたルームメイト。この社会はどこに誰が誰と住むかまで当局が指示するのである。
でもディストピア映画によくありがちな「野蛮行為は精神を乱すからセックス禁止令」を破って恋に落ちてしまう。

セックスで人間らしい心が芽生えた2人。
THX-1138は精神安定剤の服用を止めてしまい、心が乱れて仕事のミスを連発する。
LUH-3417は腐った地下都市から逃げて2人だけで暮らしたいと願うが、そうは当局が許さない。

ある日突然LUH-3417は行方不明になり、交代でSEN-5241(ドナルド・プレゼンス)なるおっさんがルームメイトになる。
さては当局からの回し者か?
しかしおっさんは最初から言動が怪しく、「当局の指示でなく自分の意思で来た」とか「俺と手を組もう」とか勧誘しだすので、THX-1138は当局にチクる。

おっさんは逮捕されるが、喧嘩両成敗?でTHX-1138も連行される。
白目むいて倒れて血まみれになり目隠しされて連行、裁判にかけられすぐ判決が下る。
「薬物セックス違反。矯正不能で終身拘留」だそうだ。

★恐怖!まっしろしろ牢獄

着いた所は一面まっしろしろな部屋。
THX-1138はロボコップに棒でどつかれ、CTスキャンにかけられ、電波で身体いじられまくり、目や鼻や口に謎の液体を注入される。
嫌な刑だねー。

しかしいい事もあって、愛するLUH-3417と再会する。
彼女は何と妊娠してました。
わーいやったね!とつい喜びのセックスをする2人
でもすぐロボコップに見つかり再び別れ別れに。

かわりに会いたくも無いSEN-5241おっさんと再会。おっさんの正体は地下都市脱出をもくろむレジスタンスだった。
罪人仲間の饒舌ジジイキチ若者フリークスだの、ひでー面子に囲まれてTHX-1138は絶望し、おっさんと地下都市脱出を決行する。
どこまでもどこまでも真っ白な空間を歩き回り、謎のホログラム男PTO(イアン・ウルフ)と遭遇。彼等はPTOを道案内にして、遂にまっしろしろ牢屋から脱出する。

★男達の謎の地下都市めぐり

おっさんと別れてPTOと脱出を目指すTHX-1138。
人間ラッシュ部屋、ホルマリン漬け胎児部屋、巨大スパコン部屋などの謎施設を次々逃げ回る。
遺体安置所で耳に死体用タグをパチンと装着されたり、LUH-3417がホルマリン漬けになった事を知ったり、色々ひどい事も起こるが、未来カーを発見してなんとか脱出に成功する。

一方おっさんは教会部屋で映るホログラム神様の撮影スタジオにたどり着き悪神父を倒すが、脱出口が見つからぬままロボコップに捕まる。
PTOはデカい図体がシャコタン仕様の未来カーにおさまりきらなくて逃げ遅れて死亡。
ホログラムなのに体のサイズ調整できないのか?って疑問はまあいいw

THX-1138は高速道路をひたすら爆走し、ロボコップとのカーチェイスを振り切り逃走に成功。
謎のグレムリンに襲われるが振り切り、長ーいトンネルをひたすら登り、とうとう地下都市から脱出に成功する。
生まれてはじめて見る大きな夕日。
さて、彼が目にした外の世界とは、一体…

………。

エンドロールかよ!!!


という訳で25世紀の外の世界がどうなってるのか一切見せずに映画は終わるのだった。


★感想

あら意外とやな感じでイイ!
ってのが正直な感想である。

現在DVDで出回ってるのは2004年のリマスター版でSFX処理が相当追加されてますが、
基本デザインや演出は、低予算がしのばれる前衛SF映画の匂いが残っています。

かなりペシミスチック。
かなり神経質。
気持ち悪い潔癖感にじわじわ蝕まれる映画です。

物語はディストピアSFエピソードの寄せ集めな感が強い。
ホログラム男PTOの中途半端な設定とか(ホログラムらしい身体特徴を活かした脱出エピソードが、ひとつほしかった)、描写の詰めが甘い個所もありますが、「管理社会で管理される嫌悪感」の描写は秀悦。
特に「どこまでいってもまっしろしろ部屋」でTHX-1138が精神的に追い詰められるシーンや、「人間ラッシュ部屋」で大量の人が無表情でぐるぐる歩いてるシーンはこっちの神経もイヤー!耐えれない!となります。
下手なホラーより悪夢を見れそう。

管理社会だから警察機能も予算管理されていて、ロボコップが時々壊れて道端に倒れてたり、逃亡者を追跡するのも人件費管理されてて予算オーバーすると強制ストップがかかる、金銭面でせこい設定がいいですね。

★気になる俳優ロバート・デュヴァル

人間の心を失った管理社会で、まともな人間らしい感性を取り戻したゆえに神経を侵される主人公。
ロバート・デュヴァルが繊細に演じていて、設定倒れで終わりそうな話に説得力を持たせてます。
ドナルド・プレザンスとの掛け合いも見応えあるし、役者が相当良いので引き込まれます。

でもなにせロバート・デュヴァルなので
いつ地下都市民をバリバリ掃射しまくるかしらと妙にそわそわしてしまうw



そうです。皆様ご存じの通り、主人公THX-1138は後に『フルメタルジャケット』のハートマン軍曹と並んで戦争映画界で永遠に愛される双頭のネタキャラ、『地獄の黙示録』キルゴア中佐様になるのです。
THX-1138の繊細さ被虐性などまるで無し。
サーフィン大好きバカ軍人。
そこがいい。

さてこちらも皆様ご存じの通り、ジョージ・ルーカスは次作の『アメリカン・グラフィティ』が大当たりして一気にメジャー映画の世界に行っちゃいましたが、何年か前に「ハリウッド大作映画から引退して『THX-1138』みたいなインディ映画を撮りたい」と言ってた気がする。
こういう前衛テイストたっぷりの、やな感じの映画なら私は大歓迎ですね。早く観たいです。

(了)
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