No.089『未来惑星ザルドス』

製作年:1974年
監督:ジョン・ブアマン
脚本:ジョン・ブアマン
ジャンル:破壊的前衛センスのディストピアSF映画

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映画評論家が高得点をつけてなくても、映画ムックで面白い!カルトだ!と紹介されなくても、写真1枚、映像が数秒目に入っただけで、見たくて見たくてたまらない映画に時々遭遇する。
一目惚れというやつである。

真の一目惚れで結婚した夫婦は離婚が少ないと聞くが、一目惚れした映画は自分基準で大当たりの確率が高い。
『盲獣』『田園に死す』『不思議惑星キンザザ』とか。
あくまで自分基準なんですが。

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例えばこの写真1枚見ただけで
どんな手を尽くしても映画を観る輩は、
私のほかに世界に数百人はいると思いますwww


ショーン・コネリーのあられも無い姿の向こうに、私の心を掻き立てるサムシングドリームがある
理屈じゃねえんだ。本能だ。だから観た。
★予告編



予告からびんびん伝わる唯我独尊の世界。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

映画はまず頭に青ターバン巻いてバカ髭描いた狂言役、アーサー・フレイン(ナイオール・バギー)が人をなめた感じで不思議な話をひとくさりする。
アングラなツカミからして期待わくわく。

時は2293年。舞台は戦で荒れ果てたマッドマックスな土地。
珍衣装の殺し屋ゼッド(ショーン・コネリー)は、「ザルドス様」と呼ばれる石頭の宇宙船から武器をもらって一般市民を殺しまくっていた。
人々は石頭を神を崇めて穀物を貢いでたが、神から与えられるのは殺し屋による殺戮。なかなか理不尽な仕打ちであります。

しかしザルドス様は毎回どこからやって来るのだろう?
ゼッドはふと興味を持って口から乗り込み、操縦士のアーサー・フレインを殺害。ビニール袋に包まれたダッチワイフがわんさかいる怪しい内部空間に紛れて移動すると、ボルテックスという謎の村に着いた。

★ヒッピーサイケロハスな楽園、ボルテックス村

英国式庭園に囲まれた美しい村には、「エターナル」と呼ばれる若い美男美女が民主的で高度に進化した生活を営んでいた。
外の住民から巻き上げた穀物でパンを作り、知性の賜物のへんてこアートオブジェを飾り、住民同士はテレパシーを飛ばして交流を図る。
人々は色鮮やかなヒッピー衣装をまとい、時に開放的に半裸で白馬に乗ってたりするが
ディストピア世界だから当然セックス禁止だった。

そんなヒッピーサイケロハス世界に、セックスアピールが服着てるフェロモンMAX男のショーン・コネリーが来たのだ。
いや、服って呼べねーか赤フンドシじゃ
案の定ゼッドは興味津々な村人に捕まり、美女指導者コンスエラ(シャーロット・ランプリング)、遺伝学者メイ(セーラ・ケステルマン)、預言者アバロウ(サリー・アン・ニュートン)たち女リーダー3人組に連行されて、ダッチワイフが乱舞する怪しすぎる研究ルームで脳波から採取した彼の過去をスクリーンに映される。
もちろん殺しまくり!女犯しまくり!な人生でして、エターナルのみなさんは「まぁぁ野蛮っ」と渋い顔。

さらに家畜ばりの檻に入れておもちゃにされるわ、「野蛮男の勃起機能の研究発表会」と称した集まりに連行され、エロ画像を見せられ反応するか実験される。
でもゼッドのちんちんはエロ画像じゃ勃たず、シャーロット・ランプリングに勃っちゃったので潔癖な彼女にますます嫌われる。

スノッブ野郎どもに内心むかつくゼッドだが、彼らはガンとばし殺人なる凶暴必殺技を持っており、殺し屋といえど太刀打ちできなかった。

★エターナルパラダイスの裏の顔

ゼッドはフレッド(ジョン・アルダートン)と名乗る厨二病ぽい兄ちゃんに気に入られ、連れ回されてうっかり村の暗黒面を見てしまう。
ボーッと立ったまま何の反応もない無気力男女や老人ホームに隔離された暴走老人と出会う。
不老不死であるエターナルは村の掟により自分で自由に老いたり死んだりできないらしく、時に生きる目的を見失い無気力状態になる者も出てくるが、そんな無気力状態が続けば生きる屍になっちゃっうらしい。
さらに村の掟に逆らった者は不老不死を取り上げられて「老人の刑」になるらしい。

そしてフレッド兄ちゃんも掟の犠牲者になる。
ある日食事中にフレッドがいらん事を言ったので、「最近彼の言動は目に余る」とコンスエラはみんなに住民裁判を提案する。
村人は立ち上がって「第2段階瞑想」を始め、

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全員フレッドを囲んで手をふりふり~♪
地味に怖いいじめである。

「おめーらのこーいうのがヤなんだよっ!」とすねるフレッドに目もくれず、村人はテレパシーを飛ばしあい裁判する。
下された審判は「老人の刑」。フレッドは一瞬でジジイにさせられてしまう。

「あかん…この世界腐ってる」
ゼッドは内心彼らに見切りをつけて「どうしてこんな腐った世界が存在するのだ?」とひとり考えてたら、ふと過去の記憶を思い出した。
ある日殺戮やってる最中に古い図書館に迷い込み、ふと目にした一冊の書物の題名を。

「『Wizard of OZ(オズの魔法使い)』…
Wi…ZAR…DOZ………

ざ、ザルドスっ!!!

なんでやねーん!ダジャレかよー!


ダジャレ呼ばわりもあんまりなので解説すると、小説『オズの魔法使い』のオズの正体は詐欺師。つまり詐欺師から名付けた「ザルド『オズ』」様はパチもんの神様だったのだ。
神のからくりをあっさり解いたゼッドを恐れ、コンスエラは住民裁判を開き死刑判決を下す。

反逆者として村の治安部隊に追われるゼッドだが、無気力男女小屋に逃げ込み、自慢のフェロモンで無気力人間を目覚めさせて味方にする。
でも目覚めたはいいけどショーン・コネリーのフェロモン特濃な汗を舐めて興奮しまくり、発情しまくりやりまくりってどうよw
どんだけ体内に発情物質入ってんだよショーン・コネリーてw

次にゼッドはなぜか驚愕の花嫁姿wwwに女装して老人ホームにかくまわれ、1人の老人と面会する。
その人はなんとボルテックス村の創始者だった。
創始者すら掟破りだと刑に処してしまう恐怖の独裁社会と化した村を憂い、メイとアバロウは掟に寝返り、ゼッドに村を改革させようと決める。

★メケメケ映像ショーでスーパーマンに変身

彼女達はゼッドに世界の全知識を授ける儀式を行う。
やっぱ儀式っておセックス?と思ったら、コネリーさんのフェロモンな肉体をプロジェクター状態にして次々通り過ぎるメケメケサイケな謎の前衛映像ショーでした。

何だかわけわかめな映像の洗礼を受けて「俺は世界の知識をものにしたー!」ゼッドは、世界で一番かしこい男に大変身。
いつの間にか生き返ったバカ髭野郎のアーサー・フレインの策略も解明しまして、「俺は世界の謎が解けたああー!」となります。
何の謎が解けたんだかは後述しますが、ともあれ村を支配する水晶の球を手に入れて、全知全能の人工知能「タバナクル」と戦う。

知識を授ける儀式がメケメケサイケだったように、人の精神を支配する人工知能相手のラストバトルも超前衛。
マジックミラー♪
前衛ダンス♪
万華鏡♪
と、わけわかめな謎の前衛空間の中でやたら観念的な戦いをして、まぁ勝ちます。

★そして血しぶき皆殺し

ボルテックス村の悪のシステムを破壊し、知力体力フェロモン力の三位一体を身につけた超人ゼッドの力で、掟から解放され村人大喜び。
めでたしめでたし。

なーんてふぬけたハッピーエンドで70年代の前衛SF映画が終わる訳がない。

野蛮な外界から村を守ってた結界が壊れてマッドマックス殺し屋軍団が来襲。
永遠の命に飽きた人々を片っ端から殺しまくる。

阿鼻叫喚の血しぶき殺戮祭りのどさくさに紛れ、ゼッドは最初から狙ってたコンスエラを連れて逃げる。
ツンデレ気質なコンスエラもいつの間にかゼッドのフェロモンに魅かれており、村外れの洞窟で2人はデキる。
2人は夫婦になり子供を作り、永遠の命を失ったコンスエラと一緒に老いて一緒に死にました。
でジ・エンド。


★あらすじだけじゃわけわかめなので解説入れます

映画は1974年製作ですが、なんと世界は20世紀末で滅びます。

日本じゃバブル絶頂期の1990年、絶滅寸前になった人類は、えらいこっちゃ!と最高の知識技術を動員して人工知能を作る。
これが「タバナクル」。
人類は地球のどこかに知的遺産を全部集めた博物館と、タバナクルを守るボルテックス村を作る。
そして少数の選ばれし若者に不老不死の命を与え、人工知能と遺産を守る番人を村に住まわせた。
彼らが「エターナル」。

こうして数百年間タバナクルとエターナルは人類の遺産を守り続ける。

水晶物質を媒体にしたタバナクルは、同じ水晶製の子機を使って瞬時に情報送信できる。
これがエターナルの有するテレパシー。
勉強や議論不要でみんな同じ知識を瞬時にできるから、争いの無い民主的な社会がつくられます。

しかし数百年も毎日毎日同じ村で同じ面子と同じ事して永遠に暮らしてたら理想郷だって飽きてくるし、全員同じレベルで同じリソースを共有してちゃ、個人同士で切磋琢磨しないし進化もしない。
命が永遠なので性欲すら必要ないとセックス機能が後退しちゃった男女からは子供も生まれないし人間の新陳代謝が無い。

って事に気付いて絶望した人々は無気力になり、村に凄まじい頽廃ムードが広がります。
村の規律が内部から滅びると危惧した人工知能は「人々を頽廃させる元凶を隔離しよう!」と、現状を改革しようとする人を老人の刑にして隔離させます。

さて300年の間に、外界では少数の生き残った人類が荒野を耕し穀物を作り産めよ増やせよしてました。
こいつらおバカな新人類が数のパワーで増えまくり、小さなボルテックス村を襲って遺産を奪われちゃ元も子もないので、人工知能は彼らに神様「ザルドス」を作ってあげて崇め奉らせ、穀物を貢がせる仕組みを作りました。
同時に人口抑制のため一部の人類(殺し屋)に武器を与え、定期的に殺戮するシステムを作りました。
で、外の世界はマッドマックスになった訳です。

このザルドス神システムを利用して村の改革を企んだ陰のヒーローが、冒頭に出てくるバカ髭狂言役のザルドス操縦士、アーサー・フレインって訳です。

バカ髭の割になかなかの知恵者だった彼は、「村の内部の人間は精神が人口知能タバナクルと完全に連動してて『変革』行為が不可能。ならば外の人間を教育して、外から変革をやらせりゃいいじゃん」と思いつく。
こうして彼は殺し屋の遺伝子を操作して「ゼッド」を作り、わざと村に侵入させた訳です。
まぁ最初にこいつに殺られたのは想定外だろうけどw


★感想

いやー、ステキぃ
わたしのメケメケハートは大満足。
前衛カルトSF映画の見本のような作品です。

なんであらすじに詳細解説つけたかというと、ヴィジュアルインパクトが凄すぎて話の筋が頭からぶっ飛ぶからです。
だって胸毛・三つ編み・赤フンドシ!ありえない組み合わせの3点セットですよ。
なんて斬新な珍衣装www

頭にザルドス様お面を被った赤フンメンズが軍団で殺戮やってる上空を、どこから見ても安いハリボテのザルドス様がやたら高速で横移動する映像は、一度見たら一生忘れないほど強烈です。
映画史の珍百景に名を連ねそうだw

★サイケロハス村のファッションも必見

さらにフェロモン赤フン軍団と比較するため、ことさら軟弱に描かれるエターナルさんのサイケなロハスファッションも見逃せません。

男子は70年代少女漫画に出てくるような、くるくる巻き毛&スネだしハーフパンツ&乳首すけすけ極薄トップスです。
女子はスター・ウォーズのレイア姫をさらにサイケヒッピーにした感じの極薄ひらひらトップス&マキシドレスです。
シャーロット・ランプリングのスキニーな身体によく似合ってます。
レインボーをあしらったワンピやトップスやニットのデザインが1人1人違うし、最後の洞窟シーンのコートなど、よく見るとすごく凝っている。
ヒッピーテイスト好きな装苑系の人は、参考になるデザインがいっぱい見つかると思う。

でも何故かショーン・コネリーの着てるウェディングドレスだけは古典的デザインの白レースたっぷり可愛いドレスでしたw
なぜにそこだけクラシックにするw

舞台セットも怪しい電波飛ばしまくり。
低予算特撮映画のレトロチープな味わいと70年代サイケインテリアが融合して、破壊的アングラセンスが生み出されてます。
ピラミッド!万華鏡!浄化装置!ダッチワイフ部屋!と何回見ても見飽きません。
あと村で焼いてるパンがおいしそうでした。

前衛映像や小道具そして赤フンドシにどうしても意識が集中してしまいますが、
物語も普通のディストピアSF話ながら、無気力人間やお手手ふりふり瞑想シーンの描写、頽廃しきった殺戮ラストシーンなど、忘れ難い中毒性があります。
ブアマン監督の変人友達・キューブリック監督が話をすごく気に入ってたらしい。
あー好きそーだ。
めちゃくちゃ金と時間かけて凝りまくったキューブリック版も見てみたかったです。

★気になる俳優ショーン・コネリー

さて気になる俳優はもちろん赤フンのお方

ジェームズ・ボンドから卒業してヅラを取り、ハゲをカミングアウトしたばかりの当時44歳。
『アンタッチャブル』『薔薇の名前』で渋~い大御所セクシーハゲ俳優として世界の男性に希望を与えた時期へ移行する前の、ちょうど過渡期にあたります。

演技も老いも頭髪も中途半端な中年俳優の苦悩を背負い、胸毛・三つ編み・赤フンドシというとんでもない3点セットを着せられて、トンデモSF映画に出演する元セクシースター。
普通なら涙を誘う落ちぶれた出来になりますが、生意気なロハス若者に捕まって見世物になり、勃起研究やヘンな実験の被験者になり、半裸姿のままパン焼け給仕しろと命令されて物悲しい表情で応じる被虐的な役と絶妙にマッチ。
思いもかけぬ厭世主義的な深い哀愁を映画に付け加えています。

フェロモン全開の若い時期でも大御所セクシーハゲ期でも出せない、中途半端な時期のショーン・コネリーにしか味わえない深い味わい。
俳優と映画の奇蹟的な出会いってあるんだなと思いました。

(了)

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