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No.091『地獄』

製作年:1960年
監督:中川信夫
脚本:中川信夫、宮川一郎
ジャンル:納涼パノラマホラー映画

091.jpg

「元祖ジャパニーズホラー」と呼ばれる60年代新東宝エログロ映画の代表作です。
昔懐かしい昭和の遊園地のお化け屋敷の香りがします。

原案はなんとダンテ『神曲』。
それに仏教の八大地獄やゲーテの『ファウスト』をまぜこぜして作ったそうな。
登場人物が全員悪の業を背負っており、赤ん坊から老人までスカッと地獄に叩き落とされる。

プリミティブな殴り書き風書道で、画面に「地獄」の2文字がドーン。
百合に囲まれたご遺体に、乳首に薔薇のヌードが乱舞する。
生首、ミイラ、亡霊どもが三途の川で大絶叫。
ホラーもお色気もやるき満々ですよw
★予告編



煽り文句の字体がそそる予告。
エログロ新東宝らしい良クオリティ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公はやたら老けた大学生・清水四郎(天知茂)。
ある日悪魔のように不気味な友人の田村(沼田曜一。トレードマークは赤い薔薇w)と学校帰りにドライブしてたら、田村が通りすがりのチンピラをひき殺してしまう。

清水は自首を勧めるが田村はばっくれる気満々。清水も「俺は運転してないし…ま、いいか」とばっくれを黙認する。
彼は大学教授の娘・幸子(三ツ矢歌子)とデキ婚寸前で、おめでたい未来を前にトラブル起こしたくないのだ。
でも後日「やっぱり人をひき殺してばっくれはダメだ!」と考え直して幸子と一緒に警察行こうとするが、なんと乗ってたタクシーが事故って幸子死亡。

娘を亡くした教授夫妻に責められ意気消沈の清水は、魔がさしてキャバ嬢(小野彰子)と行きずりで一発やる。
だが偶然ねーちゃんはひき殺されたチンピラのオンナ。下種な鬼婆チンピラママ(津路清子)とタッグを組んに、清水をひき逃げ犯と思い込み復讐を狙ってたのである。
そんな裏事情も知らない清水のところに母危篤の電報が届き、あわてて実家に帰省する。

★老人ホームは地獄の三丁目

実家の老人ホーム「天上園」は評判の悪徳ホーム。
園長のパパ(林寛)が入所金や補助金ピンハネして、ひでーボロ屋敷に老人を押し込めていた。三度のごはんに腐った魚を平気で出すし。
劣悪な環境で母も老人たちもボロボロ死ぬが、パパはピンハネ金で2号3号とイチャつきまくり、妻の葬式そっちのけでどんちゃん宴会祭りw

周辺のキャラも淫乱銭ゲバ2号さん(山下明子)に悪徳医師に悪徳刑事に悪徳新聞記者、元贋作師の地獄絵描きと濃い面子だらけ。
そんなリアル生き地獄な環境にも紅一点。地獄絵描きの娘が死んだ幸子と激似美女だった(三ツ矢歌子の二役)。
清水は絵描き娘に恋心を抱くが、恋が実る寸前で不幸スパイラルが幕開けする。

教授夫妻が母の弔問に来る。
復讐をたくらむキャバ嬢&ママコンビも来る。
ひき逃げ犯田村まで清水を追いかけてきて、「ここにいる全員が人殺しだー」と爆弾発言。
この田村の一言が発端で殺人祭りスタート。

キャバ嬢は清水を谷の吊り橋に誘い出し、殺そうとして足を滑らせ滑落死。
淫乱2号さんは納屋で清水を襲ったところをパパに見られて喧嘩になり、階段から落ちて死亡。
教授夫妻は絵描き娘を幸子と間違え発狂した挙句、線路に飛び込み自殺。
チンピラママは復讐の毒入り酒をふるまい、園長パパも悪徳軍団も全員死亡。
清水は田村にピストルで撃たれるが、絵描き娘がかばって身代わり死亡。
自分以外がバタバタ死んでく死神状態の清水も、最後はチンピラママに首絞められて死亡。
老人ホームは地獄の三丁目になっちゃった。

★という前振りで、やっと本編の地獄ツアーが始まった

死んだ悪人どもは三途の川を渡り、まず閻魔大王(嵐寛寿郎)の裁きを受ける。
宙吊りで首に串を刺されながら火の玉パノラマで明瞭にヴィジュアル化された過去の罪状を見せられて、大王様が八大地獄のどの地獄に堕ちるか判決を下すシステムです。わかりやすい。

清水に下された刑は「灼熱地獄」。
地獄のバーナーで軽く身体を焼かれるが、すぐ釈放され地獄巡りツアーの旅に出される。
まぁねえ。そんなに悪事は働いてないし。

まずは地獄のヒーリングスポット賽の河原。
♪ひとつ積んでは父のため~、と幸子が石拾いをやっていた。
なんと地獄で娘「春美」を産んだらしい。
とりあえず記念にキスしてたら、赤ん坊春美が蓮の葉に乗って三途の川を流されてしまった。

春美を追って六道の辻に迷い込んだ清水。
亡者の群れが人海戦術でぐるぐる迷ってる。
(『THX-1138』に似たシーンがあったような…w)
ここで老人ホームの皆さんと教授夫妻と再会。
なんで教授が地獄行き?な所へ田村登場。戦争で戦友の飲み水を奪い殺した罪だと、ご丁寧に解説してくれる。

お次は名前から汚い系の「尿泥地獄」
亡者が死人の膿や死泥をすすってる。やだー。
ここにいるのはひき逃げチンピラと鬼婆ママ。教授も死泥をすすってます。

★阿鼻叫喚系メインアトラクション遂に登場

だんだんいや~な雰囲気が盛り上がってきたところで、登場しました恐怖の「等活地獄」!
殺されては生き返りまた殺されて生き返る、死の苦しみがリフレインするスプラッタ地獄!

悪徳医師は生きたままノコギリ挽き!
悪徳刑事は手錠かけられ斧で手をザックリと!
淫乱2号さんは首ギロチン!園長パパは全身皮はぎ!
血と臓物の中からむきだしの心臓ぴくぴくと!

ギャー!グロい!

しかしグロスプラッター祭りの間に女体うねうね裸踊りが入るのが新東宝らしいw
サービスなんだか何なんだかw

あまりな残状にダッシュで逃げた清水だが、お次は「血の池地獄」。もちろん血まみれ。
なぜか絵描きがマイペースで地獄絵描いてる。
ここで清水は火車に寝かされる春美を発見。助けたいが手が届かずどうしようもない。

やだー!どうしよう!と走り回ったが行きついた先は「針山地獄」。
足にずぶずぶ突き刺さる針野原!これは痛い。

★無間地獄で意外な罪人発見

あちこち迷って遂に着いたところが、地獄巡りツアーのラストスポット「無限地獄」。
地獄界最強の地獄だそうですが、なぜか絵描き娘と再会する。
ついすけべ心が出てキスしかける清水だが(こんな地獄でよくすけべになれるな…)、すかさず田村が邪魔しに現れて、「抱きたいんだろ抱けよ!そうすればお前も俺と同じ地獄の虫になれるぜ」と謎発言をかます。
そして意外にも善玉キャラだったはずのお母さんが地獄に登場。

実は母は婚前から地獄絵描きとデキていた。
絵描きの子を妊娠したが、隠して園長パパに嫁ぎ、子供を産んだ。
その子供が絵描き娘。清水と異父兄妹なのだ。


まさかのドロドロ悲劇に泣き崩れる娘と母と、不気味に嘲笑う田村。
「悪魔!死神!」となじる絵描き娘。仏教の地獄で悪魔はねーだろと思いますが。
色々ありすぎてもう何が何だか頭が大混乱状態の清水に、田村は「俺と一緒に来るんだ」と迫る。
しかし阿鼻叫喚の地獄で一番悪人のコイツがなんで自由に地獄ツアーしてんの?と疑問だった部分に、とうとうカタルシスが訪れる。

田村は無間地獄の鬼に全身ミイラ男にされて、生きたまま骨身をバキバキ砕かれる刑になりました。
めでたしめでたし。

こうして地獄ツアーを終えた清水は、地獄火車から春美を救う最後の大仕事に再チャレンジ。
車輪の上を這って近づき、赤ん坊に精一杯手を伸ばす。
でもなかなか届かない。
車輪の軸をつたって行けばよくねーか?と思うんだが。
まぁお約束のイライラクライマックス様式美ですが、ようやく春美に手が届くか?どうか?って土壇場で、映画最大の謎が訪れる。

★唐突にあのエンディングが待っていた

なぜか場面が老人ホームの大量殺人現場に戻る。
死体だらけの静かでのどかな館。自殺してる地獄絵描きと燃える地獄絵。顔を寄せ合い死んでいる清水と絵描き娘。

死にゆく瞬間、清水の脳裏からようやく地獄の風景が去ったのか、
清水は唐突に幸子&絵描き娘に呼ばれて別世界へいざなわれる。
そこはスモークたきまくりの天上?風景。
閻魔大王も地獄の悪人達も誰もいない。赤ん坊もいないし、幸子も瓜二つ娘も消える。
ひたすら無の空間が清水を待っている…

まさかの夢オチエンディングかよー
やられたー


って頭抱えたところでジ・エンド。


★感想

さて映画の完成披露試写会を観た和製ロジャー・コーマンこと新東宝の名物社長・大蔵貢は、「お前『天国と地獄を映画化する』つったのに地獄しか出てこねえってどういうことじゃー」と監督に怒ったという有名な逸話がありますが、
そりゃ怒るわ。
悪人!惨劇!地獄!悪人!惨劇!地獄!の羅列だけで堂々と押し切った、一点の隙も無いエログロ映画です。

売りは後半の阿鼻叫喚な地獄お裁き風景ですが
今のスプラッターホラーほどリアルじゃなくて、スプラッター嫌いでも(2,3シーンを覗けば)まぁまぁ見やすいです。
昔なつかし昭和遊園地のお化け屋敷のじめじめ湿り気たっぷりホラー&エロスがたっぷり
妖しくうらぶれた雰囲気がたまらないですね。

前半の登場人物がことごとくお仕置きされててスカッとしますし、生前の悪事=地獄の刑罰をわかりやすくリンク付けて解説されますので、将来地獄に行ったときに役に立つかも。
役に立ったからどうだって話ですけど。

★エロサービスは全方位

エログロ描写の「エロ」の方ですが、
半裸でうねうね踊るねーちゃんあり、どぎつい真っ赤な透けランジェリーあり、下から撮ったパンチラショットあり、昭和秘宝館!なサービスたっぷり

不思議なのは小野彰子キャバ嬢のパンチラと一緒に鬼婆チンピラママのババァパンチラショットまであるんだが…
誰に対するサービスなんでしょうか…
さらに老人ホームのご老女がノーブラでうろうろ歩いてるんですが、これも、サービスなんでしょうか…

昭和エロ映画はよくお笑いシーンを兼ねて年増女優のお色気シーンがチラッと出てきます。
ババァ萌えにも配慮した設計と言えますが、でも『地獄』はお笑い抜きで普通にパンチラ、ノーブラであります…
監督の趣味?社長の趣味?でしょうかね。

★天国編は必要?不要?

『地獄』は有名なB級映画だから映画レビューも既にたくさん書かれてますが、
大蔵貢に叱られた天国編抜きエンディングに諸説諸感想入り乱れてるのが面白い。

『地獄』の脚本は新東宝のB級ホラーらしい仕上がりで、どう考えても地獄に行くレベルじゃない人も(赤ん坊とか老人ホームのご老人とか)まとめて地獄に落としたりたりして、ご都合だらけの穴だらけですが
中でも最たる大穴シーンが「結局春美ちゃんを救出途中で放置したとしか思えない夢オチエンディング」です。

地獄入口から延々引っ張り続けた赤ん坊ネタで、しかもクライマックスシーンの救出シーンなのに、すがすがしいまでにオチがつきませんw
しかも子供の「母」である幸子も、天国の入り口で子供の存在なんか忘れた風に笑って立ってるだけですし。

全くもって目玉ドコー?なエンディングですが、感想は大きく分けて「尻切れトンボですっきりしない」派と「あのニヒルな無常観がいいんじゃねえか」派があるようで、実は私も後者派です。
オチは無いけど、なんか許せる。

この世の地獄とあの世の地獄はたっぷり描いた。映画を観てる善良なお前達が行くだろう天国は、死んでからのお楽しみだよ、ってなひねったサービスなんじゃないかと思いました。
エログロ満点の地獄風景の後にどんな昭和秘宝館ムードなメケメケ天国が待ってたんだろう?と想うと少々残念ですが。

★気になる俳優・沼田曜一

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赤い薔薇持ってニンマリ微笑む田村氏。
一度見たら脳裏に焼き付くインパクト。
こういう吹越満系眉毛な人の悪魔の笑顔は心をそそりますね。

しかし田村のキャラ設定もたいがい謎ですね。
彼が何に絶望して、他人の幸せを呪いまくり周囲を片っ端から不幸に落としたがるに至ったか、なんで清水の友人と名乗りながら清水の行く先につきまとい嫌がらせを仕掛けるのか、ていうかなんで清水に執着するのか、映画の中で全く説明されません。

B級ホラー映画に必ずつきもののただの記号的メフィストフェレスキャラだと言えば終わりなんですが、ここは一部レビューで言われてる「田村さんホモだから説」を推したい。
ホモだと思って最初から観ると田村氏のたたずまいにきっちり筋が通る。
それどころか世界の不幸を一身に背負った風な天地茂の青白い苦悩フェイスに、より深い因業の皺が刻まれて見える気までします。
超おすすめ。

(了)
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