No.093『鬼畜』

製作年:1978年
原作:松本清張
監督:野村芳太郎
脚本:井手雅人
ジャンル:修羅場家族の児童虐待サスペンス

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純文学・社会派文学の皮をかぶってて中身は東海ドラマ級に下世話でドロドロしたサスペンス小説が私は大好物ですが、松本清張作品がもひとつ好きではない。
もひとつ波長が合わんのだ。
同じテイストでも有吉佐和子は読みますが。

松本清張原作の映画やドラマも実は食わず嫌いで観てないものが多いですが、緒形拳・岩下志麻・小川真由美がトリオ出演で、社会派という名のホラーの名手・野村芳太郎作品で、芥川也寸志がいい仕事してるとあれば、かぶりつかずにいられないですね。
もちろんドロドロ目的で

じめじめ蒸し暑い日本の夏に見ると不快指数倍増で暑気あたりを起こします。
ご注意くださいw
ついでに小川真由美・岩下志麻のエキサイティング昭和女優演技合戦といえば「小川真由美金魚を食う」ですが、あれは本作では無く『食卓のない家』であります。あちらも必見。

★予告編



「この秋見比べて下さい」が妙に残る予告編。
見比べるって、何と?

★あらすじ(青字はネタばれあり

真夏に浴衣を着たママが3人の幼児を連れ、東武東上線で男衾から川越市へお出かけする姿に、素朴な笛の音がピコピコ鳴ってるタイトルシーン。
昔懐かしい昭和ハートウォーミング風景ですね。
でも浴衣ママが「おらぁ!一発かましたるで!」風情の能面顔で鼻息がやたら荒い小川真由美、行先が緒形拳・岩下志麻夫妻の自宅だってんだから、これだけで怖い怖いw

って訳で映画は冒頭から怒涛のクライマックスw
川越で倒産寸前のしょぼい印刷屋やってる竹下宗吉(緒形拳)一家の火の車マネーから3人の婚外子の養育費をいかに捻出するかを巡り、本妻・岩下志麻VSお妾・小川真由美がドロドロエキサイティングマッチを繰り広げます

うおおおすげー!
ぎゃあああ怖えー!

さすが昭和エキセントリック女優の最高峰マッチ。ドロドロのケタが違います。
真由美が幼い子供をダシに猛攻撃でまくしたて、小無し嫁・志麻の弱点をぐりぐりえぐれば、志麻も「トルコに行って働けばぁ!」「本当にあなたの子かしらぁ!」とリアル鬼面の形相でアジるアジる。
真由美は夜中に狂って絶叫し、志麻は寝床でカミソリの刃をぎらつかせるw
一瞬たりとも目を離せません。

ドロドロマッチの果てにぶちぎれた真由美は翌朝3人の子供を置き去りにして、浴衣なのに緒形拳が走って追いかけても姿さえ見えない猛スピードで逃走する。
最後までホラー。
妾宅を探すが真由美は居ない。蒸発しちゃったんである。
緒形拳は子無し鬼嫁と3人の婚外子、家事で燃えた自宅と借金だらけの印刷屋稼業、ひとりで全部背負う羽目になってしまった。
自業自得といえ、のっけから地獄であります。

★不快指数は青天井、生々しいDQN虐待劇場

岩下志麻嫁(役名は「お梅」。戦後の話なのになんで江戸時代的なレトロ名前なんでしょうか)は「妾の子供の面倒なんか100%見ない」宣言をして放置無視。
しょうがないから緒形拳が、食事も育児も洗濯も仕事の合間に嫁に遠慮しつつ世話をするが、不器用な男手だから当然目が行き届かない。
だから子供達の生活もなんとなくすさんでくる。

いくら放置だからって存在だけでもイラつくのに、躾なってない幼児たちの姿を毎日見せられ志麻は不満MAX。
ガキがメシで遊んで食卓ぐちゃぐちゃにすれば、ガキの口一杯に白飯を突っ込んでいじめる。
ひいい。
ガキの髪が臭ければ頭から粉石鹸をぶちまける。
ガキが遊んでて業務用シートの下敷きになれば、窒息死の可能性あるの承知で夜まで放置。
さらに、旦那の前で子供の顔を懐中電灯で照らして「似てないね。本当にあんたの子?」と嫌がらせジャブを打つのも忘れない。

こんなドロドロの児童虐待ばっかやってるので、映画開始から50分後、抵抗力の弱い乳児末っ子が栄養不良&シート下敷きのせいで死亡。

遂に犠牲者1号が出たが、志麻嫁は弔いの心も無く
「あんただってホッとしてるじゃないか!あの子たち見てると気が狂いそうになるよ!顔見てるとあの女思い出すんだよ!」と泣き叫びながら性欲を昂ぶらせ、激しく一発やる。
しかもピロートークで他のガキも始末しろと命令。
緒形拳旦那もそんなぁヒドイって顔はするものの、頭に乗った3個の漬物石が1個減ったよヤレヤレ、な安堵感をついにじませちゃって承諾する。

うわぁ…
ビッグダディ系DQNリアリティ番組さえお蔵入りになりそうな生々しい夫婦の悪行を、これでもか!これでもか!と畳み掛けます。

★DQN旦那子捨ての旅

旦那はまず真ん中っ子長女(吉沢美幸)を東京タワー見物だよ~と連れてって置き逃げ。
この子はまだ住所も名前も親の名前も言えないあどけない年齢だったから、まんまと成功する。

でも長男(岩瀬浩規)はそうはいかなかった。
そこそこ周りの状況を判断できる6歳の彼は「次は自分だ」と怯えてひとり家出を図るが、巡回警官(田中邦衛w)に連れられ帰ってくる。
警官の尋問に名前も住所もはっきり言えてる長男を見て、夫婦は置き去り計画を断念。

お次は上野見物だよ~と動物園行って不忍池で遊んで、公園の人気無い所でおやつ食べようね、と
青酸カリ入りクリームパンを食べさせる。
でも、さすがに警戒心たっぷりの長男に「苦いー、やだー」と精一杯ゴネられて失敗。

今度こそ失敗できない緒形拳旦那は東尋坊殺人旅行へ父子2人旅に出るが、定番の崖から突き落とし作戦もやはり失敗。
ここぞの場面で鈍臭いのと勇気が出なくて、なし崩しに能登巡りの旅をする羽目になる。
遊覧船に乗ったり、田舎の野道をぶらぶらしたり、旦那が自分の不幸な生い立ちを涙語りしたり。
画面だけ見れば普通に「パパと息子の夏休み・ちょっといい旅能登巡り」なんだが、

なにせ海を見ればジャンジャン♪ジャンジャン♪
いい崖をあればジャンジャン♪ジャンジャン♪
要所でジョーズの「サメが出るぞ」BGMばりにホラー音楽が大音響で煽りまくりますので

心に油断ができません。

こうして延々30分ジョーズ状態が続いた末、やっと夕暮れの崖から息子を突き落として殺人旅行はなんとか目的をクリアします。

ところが。
やはりヘタレDQNの旅が子殺し成功で終わる訳ない。

なんと突き落とされた息子は崖っぷちで松の枝に引っ掛かり生還。
警察に保護されるが、自分の住所も名前も言えるはずなのに完全黙秘。
でもご都合よく警察に来たおっさんが長男がポケットに入れてた石ころを見て、「これ石版印刷の石だよ」と証言し、身元がばれる。
旦那は逮捕されて長男と面会するが、長男は「父ちゃんなんかじゃない」と言い放ち、旦那は泣き崩れて息子に土下座する。
もちろん長男は養護施設に送られて、何の希望も救いも無く話が終わる。


★感想

いやーえげつないですねー。
前半はがっつり情け容赦無い虐待話です。
『Mother』『Woman』辺りの悲惨な母子もの日テレドラマを見慣れてないと相当きついかも。(見慣れてもきついが)
岩下志麻のDQN演技があまりにホラーすぎて、子役がびびって近寄れなくなったらしい。あんな形相で口に飯詰められちゃ納得だわー。

しかし前半が鬼畜に飛ばし過ぎたせいか、後半の能登父子旅で「悪人の魂にも一部の良心」「旦那も父子関係のトラウマ持ちだった」エピソードを盛り込んでますが、前半の悪行があまりにあまりすぎたんで、「今更弁解してもねえ…」とかえって冷める。
緒形拳はいい演技なのに、不思議なものでw

あとラストの長男の完全黙秘は「父親をかばうため」とあらすじに書いてあったが、えーそうなの?ってなんか腑に落ちない。
「こんな男の息子だと認めたくない」という息子の哀しい自尊心だと思ってました。
あれでかばう、はちょっとないかなあ。


子供3人は昔の日本映画の子役らしいあどけない棒演技でしたが、長男役の岩瀬浩規君が小栗旬にちょっと似てて、普通に可愛い顔だがどこか大人をイラッとさせる絶妙なすねっぷりが良かったです。
また、寡黙な印刷会社工員の蟹江敬三が上腕二頭筋がむちむちでセクシーでした。
田中邦衛をはじめ大滝秀治、加藤嘉、浜村純、山谷初男、三谷昇がチョイすぎる役で出てる。好みの曲者だけにもうちょい尺が欲しかったw
あと婦警さん役の大竹しのぶがAKBぽい。リアルに「クラスで10番目に可愛い子」な顔で、女子的正義感が先に立つ言動がちょっとうざいw

★おしゃれすぎて違和感、DQN嫁ファッション

余談ですけどなんだか気になる木。
「経営が傾いた古い印刷屋」であるDQN夫婦は真夏に冷房も無く髪振り乱して仕事してますが、岩下志麻嫁の服が妙に可愛い。
レトロ柄の日本手ぬぐいを首にかけ、ノースリーブの淡色ストライプワンピの上にリネン?のエプロンを腰に巻いてるんだけど、家計が火の車の地方DQNな割におしゃれすぎないか?

(昭和にしては)色味の薄いメイクと相まって、なんだかリンネル系ファッション好きのナチュラルロハス奥様に見えてしまう。
それで児童虐待だからギャップがすごい。

…と思うのは2014年の今観るからであって、当時の昭和はこういうシンプルな綿麻の服が庶民ファッションだったとは承知している。
昭和映画で「おしゃれな奥様」とは髪はパーマでベースが白い濃厚メイクで、レオナール柄のポリエステルワンピ着てハイヒールをきっちり履いてるもんだ。
ナチュラル奥様なんか存在しないのだ。

わかってるんだけどしかし、「今ならプリン頭でしまむらH&Mコーデでジャージとクロックスだよね」と考えると、それはなんだか想像するだけで気持ち悪いなあw
虐待される子供たちも、段々身なりが崩れていく所とか描写が丁寧だけどまだキレイに見える。
21世紀の『ガンモ』や『誰も知らない』なんかほんとリアルきったないもんなー。

20世紀庶民映画と21世紀庶民映画の間にはジャージとファストファッションとクロックスという深くて暗い河が流れてる。
なんてふと偲ばれる違和感でありました。

でもプリン頭のジャージクロックス姿でガキをシバく岩下志麻ってのはすごく観てみたい
H&Mとしまむらで全身揃えた小川真由美も観たいw
どんだけ恐かろうと想像するとワクワクしますね。

(了)

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