No.106『鉄輪』

公開年:1972年
監督:新藤兼人
脚本:新藤兼人
ジャンル:前衛エロチックオカルト、コメディ?

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今からかれこれ2年前。
『うめめちの何だか気になる木』最初の投稿に書いた説明はこうでした。
『万人におすすめする名作じゃございませんが、むしろ駄作・珍作・問題作だらけですが、わたくし管理者『うめめち』の目にはキラキラと光輝いて見える、国内外のステキな映画ドラマ映像作品をつっこみ愛でるレビューブログ』
その名の通り数々の珍作を紹介してきた訳ですけど、

こいつほどブログの説明にピッタリな作品はねえよ!
と胸を張って言える、ある意味王道の作品をご紹介。

名匠・新藤兼人のATG実験映画である本作は、名作、傑作とはお世辞にも言えない。賛否で言えば多分否だらけだと思うw
でも凄いよ!映画丸ごとツッコミだらけだけど、うめめちにはキラキラ輝いて見えるんだよ!

世の中にはこんな映画もあるんだなーと頭の片隅にでも置いていただければ幸いです。
アメイジング・ディスカバリー・ジャパン。
★まず『鉄輪』の説明から

『鉄輪』とは能の演目が元ネタだそうだ。
能を観た事ないですが。
旦那が若い女に乗り換えて、怨み骨髄な元嫁が毎晩丑の刻参りで藁人形に五寸釘打ちまくるんで、陰陽師・安倍晴明が生霊退治に乗り出す話らしい。
キャッチーで下世話なネタですな。

★予告編



どんな映画かよーーくわかる予告編w
踏み絵にどうぞ。
乙羽信子の笑顔に「うっ」とたじろいだら観なくてOKのアラームサインw90分の鑑賞がもちませんw

★あらすじ(青字はネタバレあり

平安時代に夜道を走る白塗りババア(乙羽信子)。
山を!川を!湖を!街中を!無言で走りまくる。
着物姿のババアだから早歩き程度のはずだが、ひたひたひたひたーと忍者のように音も無く、しかも猛スピードに思える勢いで5分くらい一心不乱に走り、真夜中丑の刻の貴船神社に到着。
ババアは藁人形を木にひたすら打ち付ける。
谷啓にチョイ似の無表情だが鬼気迫るオーラで、1本、2本、3本、4本、5本ー!と正確無比に股間めがけて打ちまくり。
こええ。

そんだけ嫁に恨まれてるのも知らないエロ旦那は、若い白塗りねーちゃんとエッチに精を出している。

いきなり時が変わって1972年のマンションの一室。
現代に生まれ変わったエロ旦那(観世栄夫)は、やはり若いねーちゃん(フラワー・メグ)と同棲中。
ねーちゃんは昭和メケメケセンスなインテリアと大量のぬいぐるみと何故か生きたヒヨコに囲まれて、目玉焼きを焼いてフライ返しですくってそのまま食う野生児で、机やソファで謎のすっぽんぽんエクササイズする、頭やばい系の裸族エロバカギャルだ。
でも若い娘の体最高!とメロメロな旦那は毎晩エッチしてばかり。元気だなオヤジ。

しかしババア嫁の怨みも千年の時を経て蘇っていた。
部屋に無言電話が鳴りまくり、玄関に生霊が現れる。
バカ女は時々股間を押さえて悶え苦しむ。
旦那はイライラするばかり。

そんなエロとババアの呪いだけで延々20分経過。
早くも先を観るのが不安になってきます。

★千年分の呪いがバカップルをじわじわ蝕む

現代の旦那とババアは公団住宅暮らし。
旦那はたまに帰宅しては「離婚してくれ」とお願いするが、ババアに鬼の無表情で拒否られ膠着状態のようだ。
バカ女は一応OLだが、すげーつけまのフルメイクでオフィスでぽかーんと口を開けている。

旦那も出勤するから愛の巣マンションは昼間は無人って事で、ババアは昼は公団住宅の階段を5階登って2階下る水前寺清子式エクササイズで体力を鍛え、夜に彼らが帰宅すれば公衆電話から夜通しイタ電アタック。
毎夜鳴り続ける電話に不倫バカップルも日増しに神経をやられはじめる。
でもまぁこいつらも夜にやる事はセックスの他に、1個のリンゴを2人でかじったり、互いの顔に墨でヒゲ書いたりのバカプレイばっかだから、徹夜でイタ電されても何の同情心も沸かないんだがw

一方平安編のババアはひたむきに千年分の呪いを毎晩実行中。何故か口に櫛や葉っぱをくわえてひたひた走り、藁人形の股間に釘をガンガン打ちまくる。
しかし更年期の体力に呪い千年分はきつかったか、無尽蔵パワーに見えたババアも疲れて倒れてしまう。
すると闇の中から神の使いの能楽師が現れ、おおおーおおおーと舞を舞う。
何故かババアも起き上がって自らくるくる舞う。
するとなんと!
ババアの髪とメイクが赤だの青だのパツキンだの、懐かしのヤマンバギャルメイクばりにくるくる変身!
なんでこーなるw

そうこうする内に呪いは着実に効果を上げてるのか、ノイローゼ旦那が平安衣装で公団をうろついたり、警官(戸浦六宏)に巻物投げつけて暴れたり、時代を超えて人々がタイムスリップするようになる。
バカ女は股間押さえて悶えてばかりだし、ババアは口からちゅるちゅる糸を出し始めるし、もうわけわからんw

★リゾートホテルは五寸釘トラップ&悩殺ビキニつき

人間の常識を超えて理不尽に困った時、相談相手は今も昔も変わりなく占いだ。
平安旦那は陰陽師・安倍晴明に助けを求め、現代旦那は占い師(殿山泰司)に手相を見てもらう。
でも晴明には「女の恨みが深く、お前の命もこれまで」と言われるし、殿山泰司はスペシャル延長料金をせびる始末で、あんまり当てにならなさそうなので、旦那とねーちゃんは「とりあえずイタ電からのがれよう」とお忍び旅行に出かける。

人里離れたリゾートホテルで一安心した彼等は、とりあえず、まぁやりまくるw
だがパワーアップした嫁の恨みは「お忍び旅行なんか許すかい!」とGPS機能並みの高性能で居場所を突き止め、ホテルの部屋からビーチサイドまでイタ電アタック。
森の散歩道には五寸釘トラップの罠が張られ、湖を散策すれば生霊が現れ、プールで泳いでてふと辺りに目をやれば
乙羽信子48歳豊満ビキニ姿をご披露してるしwww
なんとまあ心神をえぐる攻撃を次々仕掛けてきて、バカップルもリゾートでリラックスどころか精神崩壊の旅に来たようなもんです。

★鬼ババア、鉄リングババアに進化する

怨みに恨んでとうとう呪いの丑の刻参りを達成したババアは、松ケンサンバばりのギンギラ着物に般若の面、頭にでっかいガスコンロの鉄リングを被り、その上に極太ローソク3本をぶっ立てる最終形態に進化して、鬼嫁の舞をぐるぐる舞う。
こええ!こえええよ!悪夢だよ!

平安編のバカップルは気が付けば寝床の周りを鬼ババアに包囲されて万事休す。
ババアはバカ女の髪を掴んで杖でぶつわ、ヤマンバ緑髪嫁とヤマンバ赤髪嫁同志が勝手にバトルするわ、謎の修羅場を迎える。
現代編のバカップルも気が付けば修羅場。
ホテル丸ごと嫁の呪いで封鎖され、従業員はみな白塗りで鬼嫁の手先になり、電話は鳴りやまず、最後は湖に突き落とされる。

…とここまで煽りに煽っときながら、さあトドメを!って時に安倍晴明の祈祷がやっと効いてくる。
鬼嫁は苦しみ出して「今日はこれまでにしといたるわ」な捨て台詞を吐き姿を変える。

復讐の丑の刻参りから醒めたババア嫁は、ガクン!ゴキン!とサイドを路肩にぶつけまくる超危険運転で旦那とバカ女の元を去り、「おわり」と何かマヌケにかわいくひらがなで書かれたエンドロールを出してあっさり終わる。


★感想

おそろしくつまんない。
でもすごくバカバカしくて面白いwww
二律背反な気持ちに襲われるお芸術映画。

女の恨みが千年の時空を超える話、と書くと壮大な愛憎物語があると思いがちですが、そんなもの映画に一切ありません。
普通のドラマだと深く恨むに至った女心の綾とか丹念に描くもんですが、そこら辺をぶっ飛ばしてひたすらエロとババアの呪いだけの90分。
単純ワンパターンで間延びもはなはだしい。
『世にも奇妙な物語』1話分程度のネタで90分映画作っちゃった、と考えると分かりやすい。

★お芸術映画界のトラウマ女優・乙羽信子劇場

とまぁ話自体は正直一本調子でつまんないですが、幸いにも時々暗闇から恨みたっぷりに現れて画面にカツを注入する人がいるんで飽きません。
もちろんそれは恐怖の呪いババア・乙羽信子。
ガチでこわい。
般若の面より笑顔が怖い。丑の刻に出遭ったらおしっこちびるレベルだ。

大島渚&小山明子、篠田正浩&岩下志麻、吉田喜重&岡田茉莉子などなど、前衛系映画監督が女優妻の主演で撮った映画は妻を容赦なくこき使う作品が多くて面白いw
中でもずば抜けて旦那からこき使われ度数No.1を誇る名女優が、新藤兼人作品における乙羽信子であります。

そりゃもう、ひでえ。ひどすぎる。
暗いっ!貧しいっ!汚いっ!怖いっ!
宝塚出身清純派女優の肩書を殴り捨てるにも程があるだろ!ってトラウマ必至な化物演技は、怖いもの見たさ感覚で癖になるw
ちなみに今作は他より貧しい&汚い度は少なく、つば広帽子&紫ブラウス&純白パンタロンとかメケメケ昭和女優ファッションを着こなしてますが、別の意味でウッと来るビキニ姿がありw観る者の神経が落ち着く暇を与えません。

★指3本分以外はもろ出し☆撮影テクもステキぃ

もうひとつの見どころはフラワー・メグの前衛ヌード。
脱ぎでは強者揃いのATG映画の中にあっても一際誉れ高い作品ですが、予想以上にもろ出しでした。
指3本で映倫NGゾーンだけを隠してますが、残りは大股開きでアップもろ出し。
人差し指と中指の縁でギリ隠してます!レベル。
でも前張り・ボカシを一切使わずクリアなカラー映像で撮ってるのが驚きました。黒田清巳撮影監督のテクが光ってます。


ささやき・ためいき・もだえ+4ささやき・ためいき・もだえ+4
(2003/01/22)
フラワー・メグ

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フラワー・メグは70年代に一瞬だけ芸能活動した幻のお色気ポップスシンガーさん。
裸が衣装!!な感じのひとだったらしいですが、指3本分以外全部もろ出しなすっぽんぽんでも淫靡なエロさが無くて、かなり平成ギャルっぽい。
つけまばっちりの三白眼とぷっくりアヒル口が、ジョージ朝倉の漫画に出てきそうな小悪魔っ子なルックスでかわいい。
レナウンイエイエガール指数の高いインテリアとぬいぐるみだらけの昭和アングラガーリー部屋に、雰囲気がぴったりはまってます。

あとフラワー・メグと一緒に観世栄夫もすっぽんぽんで股間をぬいぐるみで隠してますw
ご贔屓の殿山泰司&戸浦六宏が一瞬しか出てないのは残念ですが、それを補う怪演ぶりを見せてくれます。

しかしこの人もたいがい曲者ですねー。
正直能楽方面のご活躍ぶりは全然知らないですが、ネスカフェゴールドブレンドのCM出演歴があるくらい格調高いイメージな人だっただろうに、映画では変な役で変態衣装またはすっぽんぽんなのは能楽業界的にOKだったんでしょうかw

★しかし、ヘンな映画ですねぇ…

とか色々つっこみポイントを挙げましたが、一言でまとめると「ヘンだ」に尽きるw
まぁ前衛アングラ映画はたいがいヘンですが。
アングラとして正統派といえば確かに正統派。真面目に前衛!お芸術!してる。
そしてガチでホラー。
の癖に10分に1回以上笑ってくれと言わんばかりにツッコミポイントが唐突に出現するというwえもいわれぬヘンな感触があります。

新藤兼人作品はゴリゴリ社会派なイメージが強く、どーも肩肘張って観なきゃいけないんじゃ?と思われがちですが(自分もそう思ってました)、この映画はそんな事全然無いです。
確かに延々と走るとか能の舞が続くとか、お芸術すぎて爆睡を誘うシーンも多々ありますが、バカで下世話でヘンテコガジェット盛り沢山なので、気楽にチャレンジしてみてください。

(了)
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