No.112『哥』

公開年:1972年
監督:石堂淑朗
脚本:実相寺昭雄
ジャンル:リトルモンスター現るブラックホラーコメディ?

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じめっと陰湿な人間関係を描いた「真冬にぴったり!ドロドロ物語」シリーズ。
今回はうめめちが偏愛するゴールデンコンビ、実相寺昭雄監督&石堂淑朗脚本の怪作。
先に紹介した『無常』『曼荼羅』とあわせて「実相寺昭雄ATG三部作」と呼ばれてます。

ということはもちろん。

主人公はダメダメ厨二病人間です!
話がトンデモ斜め上に飛んできます!
やたら壮大な議論もあります!
マニアックなエロもあります!
無駄死にみたいな死人も出ます!
しかも、今回はどこから観てもホラーです!
ご期待くださいw
★予告編



めくるめく実相寺美学たっぷりの予告。マグロな彼をたっぷりとご堪能ください
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

京都・丹波篠山の山林王一族が主人公。
大旦那の森山伊兵衛(嵐寛寿郎)は息子が2人いて、実相寺映画らしく金持ちのボンクラだった。
兄の若旦那・康(岸田森)は弁護士。表面的に社会人だが中身はちょっとダメ人間。
弟の徹(東野英心)は絵描きを辞めて家出して行方知れずのクズっぷり。
そんな森山一族の若旦那兄の自宅兼法律事務所に、大旦那の召使の息子で出生にヒミツがある爽やか美青年・淳(篠田三郎)が、書生見習いで働き始めた頃から話が始まる。

若旦那家の住人メンバーは、すけすけネグリジェの欲求不満嫁(八並映子)、住み込みバイトの司法試験受験生(田村亮)、田村亮とエッチ三昧なミニスカ女中(桜井浩子)。
実相寺濃度が高いメンバーに囲まれて、淳クン絶好のいじめられポジションですなw
繊細なワケアリ美青年の篠田三郎が童貞喪失して悲惨な目に遭うんだなとワクワクしてたら大違い。

なんと淳クンこそ森山家の人々を恐怖に陥れるリトルモンスターだったのです。

★絶食男子の無表情・棒読み・精進すぎる日々

ちょっと笑えば爽やかイケメンだろうに、いつもロボット並みの無表情&棒読みな淳クンの一日は単調だ。
朝起きて仕事して寝るまで一分一秒違わず正確にルーティンワークを粛々と遂行する。
ものすごーくルーティンに几帳面な性格であり、これに反する行為は若旦那でも止めれない。

食事は朝昼晩すべて麦こがし・味噌汁・おしんこ。超ヘルシー精進料理を好んで食べている。肉が食べれないらしい。
自室は断捨離のききすぎたシンプルライフ。
趣味は書道。オフの時間はひたすら写経して外に出れば墓地で墓石の字拓とってる。
と思えば通りすがりの巡礼僧と、死について観念的な禅問答をやっている。

実相寺映画の主人公にしては珍しくまじめな勤労青年だけど不穏なオーラを放つ、草食を越して今どき流行の「絶食」男子だ。
でも自分で好んで絶食ライフを送るだけなら変わった趣味の頑固者だなー、で話は済むんだが、淳クンはちょっとやっかいな使命に燃えていた。

★家と名誉は守るが人は守らなくていい謎使命

実は書生見習いになる前、淳クンは召使ママから「ボンクラ若旦那と行方不明の弟に代わり森山家を守れ」と言付けられていたのだ。

ハイ!ボクが森山家を大事にお守りします!
って事で淳クンは、昼は家をピカピカに磨き、夜は家が火事にならぬよう巡回パトロールして日々使命を忠実に遂行してるんだが、
どーも指示を間違ってインプットしちゃったのかそれともわざとなのか、肝心の若旦那一家は「守るべきものリスト」に入ってないようなのだ。

ある日法律事務所に大型案件が舞い込んだ。
さあ一晩で書類を仕上げなきゃ!と、若旦那とバイト田村亮は必至で仕事。嫁とミニスカ女中も嫌々手伝ってる。
しかし淳クンは5時ジャストで仕事終了。理由は「書生の仕事は9時から5時まで。残業はルーティンワークじゃない」だからw
そんなー、みんな困ってるのに!
でもムリ。
若旦那が雇い主命令だ残業しろと言ってもムリ。懇願する若旦那に対してまるで役所の窓口のごとく「時間外労働など一切認めぬ!」とキッパリ退ける。

で、残された全員が徹夜で残業してると、真夜中の巡回見回りタイムになりまして
江口寿史の地獄少年うしみつくんのごとく淳クンが懐中電灯片手にヒタヒタやってくるw
家の隅から隅まで異常が無いかきっちり点検。もちろん残業中の仕事部屋も電灯照らしてきっちりパトロール。よし異常なし!
満足した淳クンは無表情でヒタヒタ去っていく。部屋の中の人たち完全無視でwww

こえー。
こいつ、「家」以外何も眼中に入ってねえ。
得体のしれない恐怖におののく若旦那達。

★家のためなら相手する。ただしマグロで

さて(淳クンを除く)みんなの徹夜のおかげで大型案件に勝訴して祝賀モードの法律事務所。
ミニスカは勝負黒パンでバイトとエッチにはげみ、欲求不満の嫁も、今日はウチもと目論むが若旦那は酔って爆睡する始末w
悶々する奥様が真夜中に徘徊してると、バイト部屋前でパトロール中の淳クンと鉢合わせ。
懐中電灯に照らされたバイト&ミニスカのエッチに肉欲をグワー!とたぎらせてしまった奥様は、淳クンの部屋を急襲して寝込みを襲う。
もちろん、セックスなどルーティンに入っておらぬ!と断固拒まれるが、そこで嫁が捨て鉢な一言。

「相手せえへんと他所で男作って噂にしてやる」

なんとこれが淳クンの心にクリティカルヒットw
嫁が他所の男と噂になる=森山家の不名誉になると解釈した淳クンは、思考回路に「奥様の欲求不満を鎮めるのはボクの使命だ」とインプットされちゃって、なんとエッチに応じるw
全裸で横たわり無表情で天井をにらむ淳クンに、嫁がまたがり騎乗位でやりまくるスーパーマグロプレイで童貞喪失。

どんな童貞喪失シーンだよw
しかも事後に嫁がいらん事言ったら即平手打ちw
すげーw雇い主の奥様とか何とも思ってねー。

でも平手打ちされてもマグロでも若い男の肉体に恍惚しちゃった嫁は、つい何度も淳クンにまたがりセックスにふける。
だがお盆帰省した途中でラブホに寄ってご休憩したのを、若旦那の同僚弁護士に見られてチクられる。

普通のドラマなら、さあ泥沼修羅場突入か!な場面である。
でも実相寺映画の岸田森は屈折しすぎて嫉妬心に直球メラメラするタイプじゃないので、淳クンと一発やった後の嫁のパンツ脱がして「誰と何してもええが世間の噂になる事だけはするなよ」とかましながら、嫁をバックからやるふりしてバイブ突っ込んで終わりw
だーめーだぁー。

★若旦那が逃げて次は弟のターン

それなりに人間関係が煮詰まってきたところで、さらに問題児がご登場。
元絵描きのボンクラ弟が唐突に帰ってくる。
するといきなり若旦那の頭のチューリップが開く。
「ボク弁護士なんかやめて高等遊民になる!この家なんか徹にあげて京都の都会へ行く!」
なんと仕事やめて嫁連れてとっとと逃げやがったw
田村亮&ミニスカ女中も口止め料200万を貰って出て行き、家は弟と淳クンの男2人きりになる。
弟が何者だろうと森山家を守るミッションのためご奉公ルーティンワークに勤しむ淳クンだが、ボンクラ弟は予想以上のリアルDQN。「社会的モラルのある奴は貧乏人」とのたまい、無軌道ニートライフをおっぱじめる。

まず出てったはずの田村亮を手下にして家の登記書をカタに借金しまくり遊びまくり。
たまたま出会った貧乏おでん屋夫婦を20万でモデルさせて真夜中のハメドリ撮影会をはじめる始末w
そこへ淳クンがパトロールにやってくるw
弟はハメドリ参加を命じるが、当然淳クンは拒否。怒った弟は淳クンを殴る蹴る書をまき散らすが、無表情&棒読みで断固拒否。
淳クン解雇の危機かと思ったら、弟はなんと「追い出しはしねえ。ただし、飯を食うな」と鬼命令をくだす。

★DQN vs.リトルモンスター 麦こがしの死闘

そのころ森山ご本家の大旦那は、縁側で大奥様とのーんびり財産分与の話をして、「3人の息子に等分で分けようかのう」なんて淳クンも実は息子だとネタばらししてたが、そんな事情はお構いなく淳クン本人はひたすら飢えに苦しんでいた。

召使ママの願い空しく家屋はボロボロ廃屋状態。
弟は借金を重ねて毎晩女連れ込んで遊び、弟からも口止め料をせしめようとしたミニスカは逆に黒ブラガーターベルト姿で犯されるし、DQN大暴れで家は無法地帯になっちゃった。

それでも淳クンは栄養失調で動けない体をおして、昼のルーティン夜の見回りを必死で続けていた。
と書けば健気な勤勉青年だが廃屋を能面顔でずるずる這い回る篠田三郎は貞子並みのガチホラー。
得体の知れない死闘っぷりを目の当たりにしてさすがに怖気づいた弟は、とうとう麦こがしを出し「命令を取り消す!飯を食え!」と日和る。

すると淳クンは一言。
「一旦口にした言葉は取り消されへん」
どこまでも拒否るwww

リトルモンスター、自分が生命の危機に瀕しようがインプットしたら消去不可仕様ならしい。

田村亮から話を聞いた若旦那は嫁を連れて淳クンを見舞い、食事をするよう優しく説得する。
しばらく大人しく若旦那夫妻の話聞いてた淳クンだが、キッと嫁を見据えて言う。
「淫売婦」
ひっでーwww
自分が瀕死の瀬戸際に言うセリフかよwww
弟も「女はもともと淫売」と言いだすし、若旦那もフォローの言葉を失い苦笑するだけ。
石堂淑朗先生作品の女性観は相変わらずセクハラばりばりでぶっ飛んでてステキw

★そして最後は平等に失う三兄弟

森山家の財産に寄生し食い潰す気満々の兄弟は、遂に本家の親父の山林売って財産分与してもらう計画を立てる。
ところが「山を売るのはやめてぇ」と淳クンが這いずりながら抵抗開始。「中身はなくても形があったら中身は生命を吹き返すんだぁー」と言い出し、弟とトンデモ論戦を繰り広げる。
石堂淑朗×実相寺昭雄コンビ名物のアレである。
山林王たって京都の田舎の一家の話のはずが、日本が滅びる!世界が滅びる!宇宙がどーとかいう無駄に壮大なスケールまで
展開した末に、最後は淳クンが「そこまで考えるなら何故自殺しないんだ」と問うと「自殺も夢のひとつにすぎない」と弟が返し、淳クンがっくり打ちひしがれる。

兄弟そろってめんどくさー。
と思ったら岸田森は今回は議論に参加せず弟のオンナといちゃついてたwナイスw

最後に若旦那と弟は瀕死の淳クンを連れ出し、山の査定してやるぜー!と里帰りして、広大な山林をうきうき森林浴ピクニック♪
足がついてかず取り残された淳クンの前に、いつぞやの通りすがりの巡礼僧が現れる。
必至で僧を追いかける淳クン。崖を登り、石段を登り、山道を登り、どこまでも五体投地で這って追う。
いつしか手足も血まみれに。それでも無表情で追いかけ続ける。
ターミネーターかよお前はw
しかし無情にも、階段を登りきったところで淳クンはまっさかさまに転げ落ちる。

一方のボンクラ兄弟チームもピクニック中に車が事故って炎上し全員死亡。

翌朝大旦那の屋敷の隅には、白目悶絶顔の淳クンの死体が転がってました。
なんて唖然とする全員死亡ネタでジ・エンド。


★感想

いやはやー、おそろしかー。
頭からケツまでブラックですねー。誰が何と言おうとホラーでブラックコメディ。

「形骸化した旧き日本の政治文化習俗をおちょくる」のが目的のブラックコメディ仕立ての脚本は、昔の左巻き映画でありふれたネタですけど。そして大半は別に面白くないんですけどw
しかし製作者の左巻きな意図から外れちゃってガチでホラー化、ブラック化したものがたまにある。
『哥』だって普通にあらすじや映画評だけ見れば、まさか「篠田三郎が貞子ターミネーターになる」展開になるとは思いませんしw
そういう方向に裏切る作品が滅法好きだ。

その分、石堂淑朗トンデモ理論炸裂シーンは『曼荼羅』の岸田森ユートピア理論や『無常』の田村亮スーパー逆切れタイムに比べて、あっさり終わって物足りない気もします。
死にかけだから途中でワープもしないしねw

★貞子はまっとうな美形が演じるものです

さて、主人公の篠田三郎淳クンは、普通の根暗エロいATG前衛映画の主役としては爽やかで折り目正しく気品ある美形すぎて違和感ありありなんですが、でもホラー映画だからこれでよしw

ていうか『哥』と『リング0バースデイ』を観ればわかる通り、貞子キャラはまっとうな美形が演るものだと確信できます。
雰囲気イケメンや微妙なアイドルはお呼びでないw
白いカッターシャツのさわやか清廉な美青年や白ワンピに黒髪のさわやか清純な美少女が堕ちてこそ日本のホラーモンスター。
と思いますが篠田三郎はともかく仲間由紀恵は井戸からずるずる這い出てないやん?とか、仲間由紀恵の演技を不問に処して良いのか?とか色々あるけど、それはまぁ別問題ですw

ちなみに私の中で貞子はまっとうな美形に演じてほしいが、意外と富江はそこまででもない。
前髪あるからだからか、両性具有設定だからか、白ワンピとセーラー服の違いだろうか。

ついでに微動だにせぬスーパーマグロも映画の中では正統な美少年だけが許さる特権ですw
蛇足ですが。

★横顔きれいな長い顔が好きなのかな

かなり脱線しましたが、映像はいつもの私好みの実相寺作品らしい端正かつ歪んだ感じで、巡礼僧が出るとシャキーン!しますし、日本家屋も日本の山林も毎度ながら美しい。
『曼荼羅』と『無常』でキテた岸田森と田村亮はひねててゆるくてチャラい三枚目キャラで、こっちはこっちでまた胸熱。
『哥』のマイベスト岸田森は、ラストのみんなでピクニックの時に林の中で佇むシーン。
横顔が絶妙に美しい
中井貴一に似てるけど。

という話をしたら「お前の好きな顔の俳優って横顔きれいな長い顔やないか」と指摘され、うーむそうかもと思った次第であります。
横顔は大事だよ。
時として正面顔より重視かも。特に実相寺作品では。

(了)
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