No.113『卍』

公開年:1964年
原作:谷崎純一郎
監督:増村保造
脚本:新藤兼人
ジャンル:今日子と文子のドロドロ女子恋道場

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真冬にぴったり!ドロドロ物語シリーズ。
バレンタインだからハートフルでガーリーな恋愛映画がいいですね。

で、『卍』である。
恋愛っちゃ恋愛だがどこがハートフルやねん。
いやいや岸田今日子のハートは激熱よ
熱すぎて時々狂気の国へいってますけど。

ちなみに増村保造監督&新藤兼人脚本作品ですから話がちゃっちゃとテンポ良く進みますし、下世話だけど変態フェチ方面は控え目ですし、大正昭和的レトロガーリーな女子ファッションも楽しめますので、谷崎文学作品の映画って敷居が高そうと敬遠してる初心者におすすめです。
★予告編



今日子と文子の世界がむんむんな予告。あやしさ満点ムードミュージックもステキぃ。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

イケメン弁護士・柿内孝太郎(船越英二)の妻の園子(岸田今日子)は裕福なお嬢様育ちで、金も社会的地位も不自由ないセレブ専業主婦。世間知らずのお嬢様独特に気が強いが、女学生ぽいウブなロマンチストでもある。
そんな彼女は暇つぶしに通ってる美術学校で、謎の小悪魔美女・光子(若尾文子)に出会い恋をする。

最初は恋ってより女子高ノリの萌え~感覚で光子モデルの観音様の絵を描いたりしてたが、増村作品だから展開が早い早い。
映画開始12分で若尾文子がもう脱いでる。
魔性の白肌美&エロスを見せつけられてメロメロになった園子は自分も脱いで抱き合う。

おいっ!もうデキちゃったよ!
残り70分あまりどーすんねん!

★禁断の恋なんだが全然忍んでねえし

2人は若い(&ヒマな)情熱が暴走するままに恋人ごっこに耽る。
もちろん岸田今日子だから狂気モードで重たい。
「みっちゃん」「おねえちゃん」と甘ったる~く呼び合ってラブラブしてみたり、てのひらに光子の名前を赤筆で書きたくり、メケメケ乙女趣味な恋文を出しまくり、女優ファッションで奈良デートして野外キス。
えーとレズビアンって禁断なはずなんだが、当人達は全然忍んでねえし。

こんだけ堂々と暴走したら当然バレるもので、「お前達ただの女の友情じゃ無いよな?」と弁護士旦那も疑い問い詰めるが、園子は超強気。
元々怖いもの無しのお嬢様気質な上に女と女がデキたら図々しくなる法則発動で、「何が悪いのん?」って感じで開き直る。
旦那もどうしようもなくお手上げである。

★バレて別れていいように転がされて

ところが園子のウブな恋の情熱は、小事件発生で頭から冷水をぶっかけられる。
光子に「宿で泥棒に遭った」とSOS出されて駆けつけてったら、そこに居たのは裸の光子と綿貫栄次郎(川津祐介)っつう自称婚約者。
「ひどい!女の愛を裏切ったのね!」
怒り狂う園子は着物と金を手切れにしてCOし、しょーがないからおとなしく旦那とヨリを戻す。

しかし数か月後、光子から再SOSが来る。
綿貫との子供を妊娠しちゃったので以前園子からもらった堕胎薬を飲んだところ、具合が悪くなったというのである。
掛けつけるとそこには「痛ったーい♪」とわざとらしい昭和女優演技で苦しむ光子の姿。介抱してるとやっぱり情が沸いちゃって、恋が再燃する訳ですな。

でもヨリ戻しちゃったら婚約者はどうすんの?ってところで曲者・川津祐介が本領発揮!
2人を口先三寸でうまーくだまして「僕と園子で光子を共有します」なるめちゃくちゃな誓約書を交わさせ、互いの肌をカッターで切り血を飲み合い兄弟の契りの血判状まで作らせる。
何の契りだよw意味わからんw単に女の血を飲みたいだけちゃうんかとw

3人はしばらく三角関係してたが、まぁ当然息詰まり、光子が綿貫と別れたいと言い出して修羅場になる。
でもしたたかな曲者は、なんと契約書を持って旦那の法律事務所を訪ね、「奥様にムリヤリ書かされたんですー」と嫌がらせ作戦に出る。
旦那真っ青。セレブ奥様がレズ不倫に血判状なんて、世間にバレたらスキャンダル間違いなし案件だ。
園子も旦那にとうとう全部ぶっちゃけるが、じゃあセレブな旦那と自分の名声を守るために綿貫や光子と一切手を切るか?というと、それはぁできなぁ~い…とデモデモダッテするw
この往生際の悪さが園子を不幸スパイラルに突き落とすのである。

★目を覚ますと隣は泥沼

綿貫のしつこい曲者アタックから逃れるため、2人は死んだふりして行方くらませちゃえ☆と安直な考えで睡眠薬飲んで狂言自殺を試みる。

で、時が経ち。
園子が半分眠りから覚めると、
隣で一緒に眠ってるはずの光子が

隣で弁護士旦那とセックスしてました。

「お前と間違えてやっちゃった」(嘘つけ!)と最初は平謝りの旦那だがやはり光子の虜になり、弁護士権限で綿貫のイチャモンをさくっと処理して、自分が代わりに光子の下僕化する。
登場人物で一番まともなはずの船越英二旦那が意外と(やっぱり?)一番ダメな変態だった。

夫婦は光子に命じられるままに毎晩睡眠薬を飲み、日に日に体が弱る。
しかも綿貫が血判状をマスコミにちくったせいでスキャンダルになりセレブな地位も失う。
身体共に追い詰められた夫婦は光子のリードで無理心中しようと決意する。
3人はノリノリで死装束に身を包み、光子観音図(作・園子)を拝んで薬を飲み、互いの手を握りながら川の字で死の床につく。

で、時が経ち。
園子は目を覚ましちゃうんである。
光子と旦那は隣でしっかり死んだのに。

最後は生き残ったが恋も名声も失った園子が作家先生に身の上話を打ち明けきって、「なんで私を残して死んだのか。これも貴女の計略か。嗚呼、恋しい恋しいみっちゃん」と未練と嫉妬で悶え泣くシーンでジ・エンド。


★感想

下世話でいいね!
ちゃきちゃきに速くわかりやすく整理された増村監督&新藤兼人脚本のおかげで、ワイドショー的興味を惹かれる話に仕上がってます。レズシーンや変態描写はおとなしいし(フルヌードも替え玉らしいしw)正直文学の香りはあんまりしないけど、どうでもいいよ下世話最高!

★若尾文子様の不条理な小悪魔に魅かれる

ちなみにこんだけわかりやすい脚本なのに、物語の「主犯」ファム・ファタール若尾文子様が何が目当てで岸田今日子を破滅させるのか、最後まで全く描いてないのが不条理で面白い。

岸田今日子の心理は怖いくらいはっきりわかるw
川津祐介のいやらしーい嫌がらせだって、船越英二があっという間に下僕化する過程だって、皆さんの演技力もあって共感はしないが理解できる。
文子様だけ、考えてる事の核がもやっとわからない。

社長令嬢だから金じゃないし、船越旦那とデキるが船越を奪う目的でもない。レズビアンな恋の綾が憎しみに転じた訳でもない。
そもそも恋だって今日子がひとりで「ああ憎たらしい!こんなキレイな体して!うち、あんたを殺してやりたい!」って万事こんな調子でw熱く愛憎しまくってるが、文子様自身はそこまで愛も憎も無さそう。
「岸田今日子を利用してハメて無理心中に至らせる」計略を立ててやり遂げる力がありながら犯行動機が見えない。

元々自滅願望があって周りを巻き込みたかった?ような気がしないでもない。
自分勝手やなー。
でもそこがちょっと『ヴァージン・スーサイズ』的な、「わかんないけどもやっと感じはわかるような」女子の不条理心理があって魅かれる。

★小物からランジェリーまで昭和レトロたっぷり

さてガーリームービーといえばお楽しみの神戸セレブファッション。今日子と文子の昭和女優服がばっちり楽しめる。
洋装も和装も両方カワイイ。大胆なノースリーブあり、レトロ花柄ワンピあり、クラシックな白いレースのランジェリーあり、とっかえひっかえでう~ん満足
周りの美術学校の生徒達から浮きすぎだがw
また、お出かけ時のちょっとしたおもたせや恋文のデザインも凝っててカワイイ。

★気になる俳優・川津祐介

最後に何だか気になる曲者俳優の部屋。
よく知らないけどダイエット体操の人だっけ?程度しか意識しなかった。今もあんまり知らない。

しかし善人役でも悪人役でも観てるとなーんか嫌になる特有の気持ち悪さがあって、毎回見入ってしまう。
顔はきっちりシンメトリーに整ってるし、子犬のポチ系のつぶらな瞳だ。
でも気持ち悪いんですねー。

という点では今回はいつも通りに気持ち悪い、安定の曲者クオリティでした。
これこそ不条理な感想だなw

(了)
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