No.124『処刑の島』

公開年:1966年
原作:武田泰淳原作『流人島にて』
監督:篠田正浩
脚本:石原慎太郎
ジャンル:復讐はそれでいいのか?ヌーベル文芸映画

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東宝DVDセレクション化おめでとう企画。

孤島や断崖絶壁には絶対住みたくないが、孤島や断崖絶壁が舞台の映画はいいですよ。
何たってロケーションがドラマチックで美しい。
しかし断崖の風景が美しい映画といえば『ライアンの娘』とかおすすめしたいところだが、デヴィッド・リーンの大作映画は敷居が高い。
私はじっと座って長時間映画を観るのが嫌なのだw
連続90分が我慢の限度だ。3時間超える映画など観てられっかw
という事で八丈島ロケ&戸田重昌美術効果で独特に陰鬱な空気感が美しい(そして上映時間が短い)こちらの映画はいかがでしょう。

私にとって篠田正浩監督作品といえば松竹ヌーヴェルヴァーグが暴走した『卑弥呼』ですが、『処刑の島』は暴走オヤジ石原慎太郎脚本でありながら『卑弥呼』ほどネタ映画じゃないw
単なる残念なオチの昭和文芸映画であります。
★予告編



大映映画だったのか!個人的に驚き。予告編観るまでずっと松竹映画だと思ってた。
映画会社のマークって毎回見てるようで全然覚えてないからねー。

★あらすじ(青字はネタバレあり

太平洋に浮かぶ孤島・八丈島が舞台。
自称ミシンのセールスマン・三郎(新田昌玄)がオオタケという男を探しに島にやって来た。

と、島の民宿経営者夫婦や元小学校長の黒木ジーサン(信欣三)に騙ってるが、三郎が島に来た本当の目的は復讐。
少年時代いじめられた恨みを晴らしに来たのだ。

★ウツボはいじめの便利アイテム

八丈島は戦前までは囚人の流刑地だったそうで、その流れで少年感化院が戦後も残っていた。

「感化院」とは今で言う児童自立支援施設ですが、昭和スケバン不良映画の世界では少年院と並んでハードなイジメとエロスの園でおなじみですね
感化院送りの児童を支援する大人達も本来は善意・良識・慈愛に満ちた人々のはずだが、着流し姿の佐藤慶&ヘンテコパーマの小松方正がバカ笑いしてジープで脱走少年を追い回す風景はとても善意・良識・慈愛ある大人にゃ見えませんねw

って感じに南国リゾートの爽やかさなど皆無なイヤーに閉塞的な気味悪さが漂う島で、三郎は黒木ジーサンからオオタケ情報を引き出す。

オオタケ(三国連太郎)は元軍人。退役後に幼い一人娘・亜矢を連れて本土から移住してきた。
彼は八丈島の本島から少し離れた八丈小島に住み、家畜を飼い自給自足生活しつつ感化院の教官を務めていた。
と言うとご立派な人だが、それじゃ三国連太郎起用の意味が無いw
オオタケは感化院の少年達を鞭でしばいてマイ奴隷にして、一日中家畜の世話にこきつかう極悪教官であった。

教官がこれだから当然少年達にもいじめが横行していた。
それも島のあちこちにいるウツボでバシバシぶったりムリヤリウツボを食わしたりするハードなものだった。
しかしウツボの活用法がエグいですなw
イジメの便利アイテム化しています。
ひどいイジメに耐えかねた生徒は再三脱走を試みるが、天然のアルカトラズ要塞みたいな絶海の離れ小島なので、まぁ成功する前に100%捕まる。そしてお仕置きで全身血みどろになるまで鞭でしばかれるのだ。
中には崖から海に投げ落とされて死んだ子もいたらしい。

そんな悪教官だったオオタケも今は隠居して、離れ小島で娘と2人で大人しく暮らしているらしい。
とか何とか一通りしゃべり倒した黒木ジーサンは、最後にようやくお約束通り「まさか君はあの死んだはずの少年では!」と三郎の正体に気付く。ベタやなーw

★復讐の前座はきっちり落とし前つけたが

もちろん三郎は島でいじめ抜かれた末に、オオタケに海に投げ落とされた少年だった。
「死んだ」のは嘘で、奇蹟的に生き延びて島から脱出できた彼は雌伏20年を経て、過去の因縁相手3人に恨みの鉄槌を下しに戻ってきた。

1人目はオオタケ。
2人目は自分を裏切った感化院仲間「マツイ」。オオタケに悪戯して罪を三郎になすりつけた卑怯な奴。
3人目は自分の両親兄弟を殺した軍の憲兵「ケヌマ」。三郎の父は左巻きのアナーキストだったので、一家惨殺の目に遭い生き残った三郎も島流しになったのだ。

って事で三郎はまずは前座に「マツイ」へ復讐スタート。
感化院を卒業後、着流し姿の土建屋ワル社長・佐藤慶へ進化した彼は民宿経営者から三郎の噂を聞き、子分の小松方正と一緒にジープで襲ってきた。
熱帯雨林でサファリアクション映画な死闘を繰り広げた末に、三郎はマツイ佐藤慶を崖から車ごと落として殺し、小松方正を木に縛りビシバシしばきまくる。

1発目倒して次はオオタケを血祭りに上げるべくいよいよ八丈小島行きの船に乗る三郎だが、港で神秘的な美貌の娘(岩下志麻)と出遭う。
彼女は成長したオオタケ娘の亜矢だった。

★なんで本命の結末があれなんだよ

彼女になつかれて気分は複雑な三郎だが、いや初志貫徹!復讐せねば!と心に決めてオオタケの家を訪れる。

小島の崖にあるボロい小屋のオオタケ家は
戸田重昌美術監督のボロい小屋シリーズですから
リアリズムもくそも無い前衛モダン空間だったw

それはともかく、昔の面影も無く老いてしおらしくなったオオタケは、ボロい小屋で仏像作りして暮らしていた。
三郎はしおらしいオオタケとまずは普通に会話して仏像をもらって帰り、付着した指紋を鑑定して新事実発見。
オオタケはやっぱりというか両親殺しの「ケヌマ」と偶然にも同一人物だったのだ!
復讐二発が一発で済んで良かったね、っておいおいwそんなひねりも無く安直なーw

オオタケを再訪した三郎は彼の悪行をなじり、復讐果たしてやるーとドスを振りかざす。
でも父をかばって亜矢が立ちはだかる。悪い奴でも亜矢にとっては大事なパパなのだ。
復讐するか?娘の心に免じて許すか?
土壇場で葛藤する三郎。
さあどうする?

そこで意を決した三郎はオオタケの手を机に置かせてドスでザックリ!
うあああーと断末魔の声を上げる三国連太郎の手から切り落とされたパチもんの指が転がる。

で。

三郎はオオタケ(ケヌマ)の指を1本詰めると記念に指を持ち帰り、俺の復讐は終わったぜと満足するのだった。
おわり。


★感想

えー。
そんな中途半端なー。
指詰めりゃ気が済むのかよ復讐ってー。ヤクザの足抜け儀式程度じゃないですか。
最初に死んだマツイの方が罪は軽いのに殺され損じゃないですかー。

という結末は大いに文句がありますし、なんか脚本の詰めが雑で強引な気もしますが
魅力のある作品です。
特に前半の少年時代回想シーンはインディペンデント系社会派イギリス映画(ケン・ローチとかあそこらへん)っぽい鬱屈な匂いががたちこめていて、そそるものがあります。

★島の絶景と戸田重昌美術が絶妙にマッチ

一番の見どころは八丈小島の絶景です。
日本離れしてるけど沖縄や奄美のようにトロピカルじゃなく、のどかな癒し系でもなく、人を寄せ付けがたいエッジが立っている。アラン島に似た風吹きすさぶ孤島って空気がいい。
あんな所に人が住んでた(しかも小中学校まであった)のはびっくり。崖と海しかないじゃないか。さぞかし健脚な子供が育っただろうと思う。

崖っぺりの緑の野原の撮り方が、またいい。
画面に青い草の匂いが立ち込めて、観てて息がむせそう。
撮影監督はうめめちの好きな鈴木達夫です。エロの無いシーンがそこはかとなくエロチック

しかも、インパクトある孤島の絶景と戸田重昌美術がエッジの立った前衛同士なのにマッチしてる。
戸田美術ではおなじみの不気味アイテム
「唐突に日の丸(今回はリンカーンの肖像と跳び箱付き)」
「無駄に広い劇的空間(夫婦経営のしょぼい宿のどこにあんなモダンでだだっ広いラウンジがあるんだよ)」
「ボロい小屋の扉を開けたら異空間(どんだけ広い掘っ立て小屋なんだ?余裕で2LDKはあるぞ)」も
日本の風景をバックにすると違和感ありありですが、八丈島だと普通に風景に溶け込んで見えるw

同じくど田舎の島娘センスとまるでかけ離れた岩下志麻のシックモダンなファッションも風景に合ってるし、少女モデルぽくてかわいい。
短髪のイメージがあまり無い人だけど、前髪ぱっつんボブも似合うなあ。
でもザ・昭和女優なやりすぎ演技は今回は無いので、それ目当てだと物足りないかもw

主役の新田昌玄が生真面目な新劇系演技で、もうちょい非道な影の滲む顔相だと良かったですが、当ブログ常連の三国連太郎、佐藤慶、小松方正、船頭役でちょろっと出てくる殿山泰司も、いつも通り曲者で楽しめて、役者はおおむね満足でした。日和見主義者な黒木ジーサン役の信欣三も善人顔の底に暗さ、冷たさがあって印象に残りました。
しかし今回は八丈島のインパクトに気圧されたか、全体的に演技の毒が薄めな気もするが。
絶景は偉大なり。ってとこでしょうか。

(了)
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