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No.010『地球に落ちてきた男』

製作年:1977年
監督:ニコラス・ローグ
脚本:ポール・メイヤーズバーグ
ジャンル:難解でちょっと哀愁SF映画

010.jpg

はじめてこの映画を観た時は衝撃だった。
学生時代に小難しいサブカル系映画を漁っててミニシアターやイベントをはしごしてた頃で、この手の前衛カルトなストーリーには
すっかり慣れちゃったと思ってたんだが、予想の上を行く不可解加減だった。

なにせ映画を観てて、
はぁ?
はぁ?
はぁ?
はぁ?
はぁ?の言葉が脳内で凄い勢いで増殖するんである。

それまで見てきたメケメケお芸術映画はセリフがやたら哲学的で小難しくても、エピソードに飛躍がありすぎてても、一応ストーリーらしきものに従って話が進んでいた気がします。
ところがこいつは頭からストーリーが読めん。
散りばめられたエピソードの破片を頭の中でパズルみたくつないで、何とか話をまとめようとしても、次のシーンでまた全然別の方向に飛んでいく。
頭が?マークだらけでも我慢して観てる内に何かもう悲しくさえなってきて、「わけわかめ」と死語をつぶやいてました。

それでも辛抱強く観続けてると、ほとんどラストに近くになってからようよう話の全体像が見えるという実に意地悪い構成になっていた。
さすが英国人が大好きな前衛アート系監督ニコラス・ローグが制作した伝説のカルト映画。
俺をやすやすと理解されてたまるか!なヒネた矜持を感じます。
★予告編



ワケワカメすぎて心躍るwすばらしいクオリティの予告。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

アメリカ南部ニューメキシコ州のど田舎の湖にある日いきなり宇宙船が落ちる。

宇宙船に乗ってた宇宙人(デヴィッド・ボウイ)は、妻子を置いて宇宙を旅する単身赴任の男。
故郷の星が干ばつになり、水を求めて地球に来た。でも水を持って帰ろうにも宇宙船は湖に激突して壊れちゃったんで帰る手段が無い。

earth2.jpg

こんな焼きおにぎりみたいな船じゃ壊れるよね~。

彼は宇宙人仲間も無く単独で来たので、ひとりでおにぎり2号を作るノウハウも無い。
まして宇宙人は地球じゃエレベーターに乗るだけで鼻血出して失神するくらい超カラダ弱い。力仕事なんか超ムリ。

だが幸い彼は頭が良く、いいアイデアを思い付いた。
宇宙の進んだ科学技術を地球人に売り金を儲ける。その金で地球人に宇宙船を作らせればいいのだ。なるほどー。ドラマ『JIN』宇宙人バージョンみたいなもんか。
宇宙人は英国人実業家トミーと名乗り、弁護士(バック・ヘンリー)と大学教授(リップ・トーン)に科学技術を売って事業を始め、うまい具合に大成功する。

★宇宙人正体を現す。でもあんまり変わらない

一方トミーはホテルのベルガールのメリー・ルウ(キャンディ・クラーク)からセックスと酒を覚える。
宇宙人が女と同棲してヤって酒飲んでるうちに、地球人はトミーの指示通りに着々と宇宙船製造を進めて完成させる。
おにぎり2号も無事できたし、そろそろ故郷の星へ帰らなきゃねと意志を固めるトミー。だがそんな肝心な時に限って、うっかり元の宇宙人姿に戻ったところをメリー・ルウに目撃されてしまう。
実はネコ目でハゲの耳なし芳一でしたよ宇宙人。
しかしなんか…特殊メイクなのに違和感全然ない
ボウイさんホントに地球人ですよね?

えらい姿を見られちゃったトミーは、メリー・ルウに正体を打ち明けて別れる。
それで新宇宙船に乗り故郷へ帰ろうとする直前、なんと謎の一団が現れて誘拐されてしまう。実はトミーの会社乗っ取りを企む悪い奴らがいて、弁護士は殺され実権を奪われてしまったのだ。
トミーは秘密のからくり部屋に監禁され、悪い科学者たちの実験体にされてしまう。

★宇宙の男のなかなか哀愁な生き様

それから何年か経ったらしいある日。
トミーのからくり部屋を中年おばちゃんが訪れるんだが、おばちゃんの正体は何とメリー・ルウ。時間を掛けて彼の居場所をようやく探し当てて来たのだ。
実は外の世界では年月が経っているんだが、でもトミーは全然老けてない。実は、彼は地球人より遥かに寿命が長い宇宙人なのだった。

ふたりは再び愛し合うが結局うまくいかない(まぁおばちゃんですし…)。
メリー・ルウは部屋を出ていき、二度と戻らなかった。彼女は教授の妻になって一生を終えた。

そのころ宇宙では、リアル家族は父の帰りをを待ちきれず死んでいた。
もう故郷に帰る意味も無い。

月日はどんどんどんどん過ぎて、悪いやつらもいなくなりトミーがようやく外に出られた頃、世界はすべて変わっていた。
トミーはジジイになった大学教授と会い話をする。何も余分に語られないが、多分宇宙船も金も会社も全部無くなっちゃったんだなと分かる。
故郷もなく今もなく、どこにも帰れないトミーは元宇宙人のただの地球の男になっていた。


ラストシーンが地味ながら見事だ。
ダンディに帽子を被ったトミーが酒に酔い、ゆっくりと首をうなだれる。
デヴィッド・ボウイの表情は帽子に隠れて見えない。だがうなだれた恰好が何ともやるせない。
なんとも哀愁で胸に沁みるシーンでジ・エンド。


★感想

話を整理して書くと面白そうじゃねーかと思うでしょう。
でも実際に映画を観れば、見事にわけわかめなんですわ。

wakame.jpg


わけわかめになる理由その1。
SFシーンがしょぼい。

例えば焼きおにぎりの地球激突シーン。
普通は特撮(今時はCG)を駆使して地球接近の軌跡、激突、宇宙船からの脱出過程を丁寧に描く。
しかしこの映画の場合。
画面に湖が映る。
湖に光が走る。
大きな水しぶきがどっぼーん!
以上。
………。
説明これだけかよ!
SFシーンに説得力皆無な上にアフターフォロー説明も一切無しじゃ何やってんのかわかんねえよ!
まあCG無い時代だ、SFがしょぼいのはしょうがない。じゃあその分宇宙人の心理描写に力入れろや!と思うがしかし。

わけわかめになる理由その2。
宇宙人が無口で趣味嗜好が謎。

トミーは極端に無口で自分を語らない。
古い日本映画で高倉健演じる流れ股旅並みに「宇宙人の自分、不器用ですから…」な男なのだ。またボウイさんの顔が浮世離れすぎてて地球人らしい表情も乏しいwだから彼の境遇や心情の移り変わりは、彼の記憶であろうわずか数シーンの宇宙ショットから類推するしかない。
でも主人公が無口な男設定にするなら、せめて相方の大学教授を説明役にするとか、状況描写を細かく入れてフォローしろや!となるが

わけわかめになる理由その3。
過去・現在・未来・宇宙が時間軸無視で進行する。
カオスなカット割り&意味不明なフラッシュバックが嵐のごとくやってくる。


きちんと繋げばわかるエピソードをミンチにぶった切りわざとずらしてくっつける念の入った意地悪脚本が、観る者をますますドツボに陥れる。
例えば教授と女子学生がセックスするシーン。何故かトミーの能舞台鑑賞と交互に進行する。
トミーがいきなりフラッシュバックに陥り、宇宙の風景?幻視?だかが現れる。
終始こんな感じで何かが唐突に始まりそして状況説明もなく唐突に終わる。

……。
意図がわかんねえよ!
映画はどんどん進むけど、物語が進んでるか退いてるかさっぱりわかんねえよ!
方向音痴が樹海で迷子になった時のような不安で足がすくむ感覚が味わえます。

と、ボロクソに言って今更ですが、これは繰り返し観て良さが分かる映画だ。
唐突に始まり唐突に終わった謎の伏線はラストでほどよく回収されオチがつく。それなりにしっかり練られた脚本なのだ。
1回目は耐えながら観てください。
2回目からちゃんと映画が味わえます。

★気になる俳優、ボウイさんの超地球ダンディ

さて世間には「デヴィッド・ボウイ以外見るところなし」とよく酷評される映画だが(そう言われてもしょうがない部分はある)、確かにデヴィッド・ボウイは良い役者ですなあ。

まず常人離れしたルックスが宇宙人にぴったり。
宇宙人と地球の女の全裸エロシーン。ピンクレディー「UFO」の歌詞にある♪地球の男に飽きたところよ♪の逆バージョンですが、
デヴィッド・ボウイがふりチン丸見えで女と絡んでる。なのにフェロモンが皆無だ
えーとボウイさん一応地球人ですよね?
地球人の男女のノーマルセックスに見えないが。おきれいすぎてマネキンみてーだ。
もの凄い倒錯感である。

また、見てて楽しいのがボウイさんの代名詞である70年代グラムファッション。
ほんのり東洋風に仕立てており、山本寛斎・高田賢三・三宅一生センスを感じる。デザインが凝っててどれも可愛い。
東洋風すぎてまるでフーテンの寅さんがステテコ履いてる状態な服まであるがご愛嬌w

さらに映画での「男のたたずまい」が良いのです。
余計なセリフが無く(なさ過ぎる)、自分の正体を隠すため意思表示を控える(控えすぎて何考えてるかわからない)、「宇宙人の自分、不器用ですから…」な役どころだが、故郷から遠く離れた見知らぬ異星で、なからずも一生を終えざるを得ない男のやるせなさ、哀しみがじわーっと滲み出る。
見た目中性的、でも中身ダンディです。

SFシーンは確かにしょぼいが、同じくカルトSF名作『不思議惑星キン・ザ・ザ』に通じるレトロな味わいもあり、ローグ作品のめくるめく映像美を損なうものでなく、とぼけた可笑しみも味も可愛さもある。
なかなかどうしてカルト映画界の良作なのですよ。
なんか変な映画見たい!でもちょっと泣きたい!と思う方は是非どうぞ。

(了)
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