No.128『悲愁物語』

公開年:1977年
原案:梶原一騎
監督:鈴木清順
脚本:大和屋竺
ジャンル:一体何なんだろう

128.jpg

「ツタヤで借りれる面白い映画無い?」
映画好きなら聞かれた経験はあるでしょう。あれ結構迷惑ですよね。
お前がどういう映画を面白く感じるかなんてわかんねえよってねーw

だがたまには私もツタヤヘビーユーザーの端くれとして恩返ししようかと思いまして、「ツタヤで借りれる面白い映画」をお探しの人に、何かおすすめできないかな?と考えました。
でも当ブログで「泣ける映画」をお探しの人や、対して『ショーシャンクの空に』とか勧めてほしい人がいるわきゃーないと思われますんで、お題は「ツタヤで借りれるキチ映画」にしました。

という訳でおすすめ『悲愁物語』。
ちゃんとツタヤで借りれます。
原案・監督・脚本の濃い面子の製作陣を見ただけでいや~な匂いがしますな。
「飯の炊ける匂いで欲情する殺し屋」が主人公の名作『殺しの烙印』作って10年干された鈴木清順が、まったく凝りもせず反省もせず復帰第1作がコレを作ってまた干されたw昭和映画ダメダメ史に残る逸品です。

ちなみにツタヤから金はもらってないぞw
会員費とレンタル代は自腹で払ってます。
★予告編


あんな代物を上手くまとめたもんだなー!と逆に感心してしまう予告編。
普通の昭和文芸映画に見えるじゃないかw
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台はアパレル企業(多分モデルはレナウン)のCMキャンペーンガール選びから始まる。
本命候補のスター体操選手を競合他社に盗られた日栄レーヨン社は、駆け出しだが若くて美人のプロゴルフ選手・桜庭れい子(白木葉子)を発掘して専属契約を結び、ゴリ押しで売れっ子スポーツ選手に育て上げる計画を立てる。
しかし、いくらゴリ押し広告塔でもスポーツ選手はそこそこ実力がなきゃダメな世界。
井上社長(仲谷昇)はゴルフ雑誌編集長でれい子彼氏のアウトローダンディー三宅さん(原田芳雄)に命じて、れい子に『巨人の星』女版みたいな猛特訓をさせる。

若くして両親を亡くし、末端プロゴルファーの収入で中学生の弟(水野哲)を養う苦労人のれい子。
成果を上げなきゃ三宅さんとセックス禁止という禁欲効果と持ち前のハングリー精神のおかげで、厳しい特訓に耐えメキメキと実力を上げる。

★昭和オヤジの妄想たっぷりなCMキャンペーン

そんな梶原一騎式特訓と同時並行して、広告代理店スタッフの田所(岡田真澄)チームによるゴリ押しプロモーションも着々と進められており、れい子は練習の合間はCMポスター撮影に勤しむ。

昭和ボヘミアンスタイルだのマキシワンピだのミニスカハイヒールだの70年代ファッションを次々着て、ゴルフ場でナイスショット!という不自然にも程があるシチュエーションなんだが、極めつけは
ビキニ水着で膝立て座りしてパターのライン読みw
昭和のスケベオヤジの妄想丸出しである。

という調子で色々こき使われながら迎えた日本女子プロゴルフ選手権の大一番。
大会前からゴリ押し効果で注目されてたれい子は先輩選手達のシカト陰口に負けず善戦するが、疲労がたまって勝負所で倒れてしまう。
肝心の本番で疲れるって体調管理してんのかよ三宅!
だが奇跡のイーグルパットが入り逆転優勝。
目標を達成したれい子はセックス禁止令も解除になり、ご褒美エロプレイで燃えに燃えるのだった
美人ゴルフ選手として人気が爆発したれい子は、試合・キャンペーン・テレビ出演と多忙な日々を送る。
何故か「マナーレッスン」と称する頭にリンゴ乗せて笑顔を作る特訓までやってるしw

…と、ここまでの展開は、鈴木清順らしいお芸術ショットが気になる程度の、ただの(少々つまんない)セクシースポ根物語である。

そしたら次は恋・スター生活・ゴルフどれが一番大切?女の幸せとは何?のテンプレエピソードが普通は来るはずだが、
梶原一騎・鈴木清順・大和屋竺がトリオで組んで「女の幸せ」なんて展開になるはずないのだ。

ここから先はなんとゴルフ話がほぼ消滅する。
そしてご近所メンヘラ主婦との死闘篇が始まるのだ。


★江波杏子にストーカーされたらそりゃチビるわ

れい子は念願のマイホームを手に入れて弟と住むが、新興住宅地に建った豪邸はご近所奥様の注目の的。
中にはれい子の芸能人ライフに憧れる奥様もいて、そのひとりがプチ病み主婦・仙波加世(江波杏子)。
加世はれい子出演のテレビ番組の観客に応募したり出待ちしたり、アイドル並みに熱心に追っかけてたが、近所で偶然遭った時れい子につれなくされたばかりに、狂気のストーカーに変身する。

ある夜明け、仕事帰りのれい子を三宅が車で送ってたら
突然加世が現れて当たり屋ダイビングアタック!

加世は足を骨折する重傷を負ったが、それをネタにれい子は毎日ゆすられる。
ある日家に帰ったら加世が侵入してる。
殺されかける。金をゆすられる。髪の毛をはさみでジャキジャキ切られる。日中家に居座られる。勝手に弟のご飯を作られる。
こええええー!
自分の家のリビングで江波杏子が魔女のごとき笑顔でハサミ持って立ってたら、私ならおしっこチビるわw

しかし加世を車ではねた本人の三宅さんはれい子のピンチも気づかず(彼はダンディだが基本鈍い)、アメリカ美人女子プロゴルファーとの親善試合を勝手に計画するし、あの原田芳雄ボイスで渋~く「クールクールで夏が来る」とダジャレをほざいてるw
まったく呑気である。

★ストーカーと双子出演で放送事故発生

れい子はどんどん追い詰められて精神を病みはじめ、自宅で全裸で謎のポーズを決めだす始末。
さすがに鈍い三宅も気づいて加世の家に乗り込み、加世の旦那(小池朝雄)を「俺の女にストーカーするんじゃねえ」とシメる。
一件落着するかと思えたが、翌日三宅の職場に宍戸錠刑事が来てひき逃げ容疑で逮捕w

彼氏の援護を失ったれい子は再び加世に脅され、なんとお昼のワイドショーに2人一緒に生出演。
ゲストに呼んだはずのれい子は沈黙、隣で素人キチ主婦が2人の絆を嬉々としゃべり倒す放送事故が発生する。

放送事故を見たご近所奥様連中は加世をうらやましがり、「あたしらも有名人の甘い汁吸いたーい!」と暴走開始。集団でれい子の豪邸に押しかけ屋敷を占拠し、連日飲み会女子会子連れパーティに明け暮れる。
クローゼットを勝手に開けてゴージャス衣装を着まくり、パター練習場をランウェイに見立てて素人奥様の水着&ドレスファッションショーw
ワキ毛ボーボー奥様が水着ショーでうっふんw
最後はれい子に水着ショーさせて、みんなで水着脱がせて裸にしていじめるw

恐怖の鬼畜宴会の日々に病んだれい子は、自分の家なのに寝室の隅でひとり煙草を吸いながら
「私…しあわせ?」
「しあわせってどんな色かしら…?」
と虚ろな目で自問自答する。

さて広告代理店マネーで保釈された三宅は、れい子を助けようとするが色々ともう後の祭り。
しかも岡田真澄広告マンから接待ゴルフの最中に「日栄レーヨン社はれい子と契約打ち切る」と言われ、「れい子は加世の旦那とセックスしろと強要されている」と知らされて、激高した三宅は何故か岡田真澄と殴り合いw
なんでだよw完全に殴る相手違うだろw
ニヒルでアウトローダンディな原田芳雄がゴルフ場のグリーンで半裸でピンの旗持って血まみれで暴れてダダこねるなんてw
カッコ悪すぎて泣けてくるw

★真正キチな映画はオチもキチ

同じ頃、れい子は加世に脅されて自宅の寝室で小池朝雄旦那に嫌々抱かれていた。
でも寝室の外で監視してた加世がいきなりキチを爆発させてふじこふじこと襲ってくるw
なんだよwお前が命令したんじゃねーかw
旦那が思いの外鼻の下を伸ばしたのが気に入らんかったのだろうかw

すると今まで大人しく耐えていた中学生の弟が、ゴルフクラブ振り回して加世を撲殺。
あわてて寝室から出てきた旦那も撲殺。
どこからか持ってきたピストルでれい子を銃殺。
そして死体だらけの豪邸に火を放つんだが、その様子をれい子ファンのおっさんがれい子に捧げる花持って、ゴルフ練習場の網に絡まり宙吊りの体制で眺めるという謎シーンで締める。
キチな映画はオチもやはりキチでした。
何から何まで狂ってやがるジ・エンド。


★感想

さてこの映画のジャンルは何だろう。
スポ根?バックステージもの?ホラー?
最初観終えても全然わかんなかったんで、3回ぐらい見ながらあれこれ考えました。
結論。スラップスティックコメディかなw

うーん、あらすじをスッキリまとめすぎて、なんか発言小町の投稿みたいになっちゃいましたw
画面からビンビンに香るキチ感が、文章に起こすと薄れてしまって猛反省。
あらすじ書くのって難しいですね。

★前衛を含んで暴走する梶原一騎マッチョイズム

この作品の狂ってるところは、メジャー映画製作配給ではなくATG系のお芸術映画プロダクションでもなく「梶原一騎が『巨人の星』などで稼いだ金で作った自前の映画製作プロダクションで、自分が原案書いてお雇い監督や脚本家に作らせた完全自主制作作品」って要素に起因するところが大きいと思われます。

映画製作は金を出した者が一番偉いですから、梶原一騎の暴走を止める人がどこにもいません。
自分の愛人に「白木葉子」って芸名付けて主演女優にさせて見事な棒演技で演じさせても、プロデューサー兼スポンサーの梶原一騎がご満足ならオールオッケーです。
そんなオールワンマン映画だからゆえ、昔なつかし梶原一騎の昭和男児マッチョイズムが土石流のごとくだだ漏れたれ流しです。

とはいえ一応女ヒロインだから、大リーグ養成ギブスな非科学スポ根描写は控え目。
かわりに作品からビンビンに香るのは、アサヒ芸能やコンビニ極道漫画のエッセンスを3日3晩ぐつぐつ煮詰めて作ったような、むせかえるほど濃い昭和アウトローダンディズム。

一匹狼の男がききわけ無い女の頬を2、3発ぶち叩き、発情した体に着衣のままシャワーの冷水を浴びせ、火照った唇をむさぼりブラウスをこじ開け(もちろんボタンの2個や3個飛ぶ)体をまさぐると、女が「あぁっ抱いてっ好きにして!」と燃えて股開きやられまくり嬲り者になる。
フェミニズムやコンプライアンスなど清々しく欠けた、ビッチと呼ぶにも弱すぎる、強き者の言いなりでずるずる堕ちる売女女性観。
別にフェミニストじゃないが辟易しますw

でも今回斬新だったのが、ヒロインを売女に堕とす強き者が原田芳雄じゃなくストーカー主婦軍団だったところ。
女同士のえげつないキチ暴走がすごくいい。
熱狂的な中年女性ファンが憧れの人に勝手に裏切られたと思い込み恨んで追い詰める『ミザリー』に10年先立つ設定でした。
最初から有名人ヒロインVS主婦軍団で展開してりゃ名作になったかも。

★しかし梶原一騎×鈴木清順は混ぜたら危険

とはいえ梶原一騎風の昭和劇画調ダンディズムは昭和映画じゃ大なり小なり一杯あって驚かないですが、
お雇い脚本家が前衛アウトロー映画作家の大和屋竺で
お雇い監督が鈴木清順なのが悪かったw
梶原一騎イズムは前衛お芸術成分を含むと化学的反応を起こしてキチ化が増す性質のようですw
食物で言うならワインと数の子のマリアージュwDVDパッケージに混ぜたら危険シールを貼ってくれw

例えば、当たり屋事件でれい子が三宅さんとモメて涙を流しながら説得されるシーンがあるんですが、
「ききわけの無い女を男の力で無理やりシメる」梶原マッチョイズムらしい脚本です。
が。
そこで何故か清順の70年代前衛イズムが「ギィ・ブルダン風に撮ってみたい」と刺激されて化学反応を起こしてしまいました。
結果出来上がった代物は、れい子はオープンカーの座席で逆さに引っくり返され、頭を床に沈められて泣き顔も全然見えず、脚はボンネットに投げ出されてパンツ丸出し。
死んだ蛙みたいな格好のパンツ丸出し女を原田芳雄がシメながら説教するというスーパーキチバカショットになりましたw
ひっでーw

一事が万事こんな調子で
日栄レーヨンの社長室は青絨毯にダースベイダーが座りそうな悪役椅子、壁にステンレス鉄板打ち付けたいかがわしい空間。
れい子の家は居間の真ん中にゴルフパター練習場があり、弟の部屋はリビングにたらした縄をよじ登らないといけない謎仕様。
広告代理店のヤリ手営業マンな岡田真澄のゴルフウェアは、スナフキンみたいな帽子にところどころ穴が空いてて髪の毛がボサボサはみ出してるというw

「シチュエーションはアウトローなマッチョダンディで構図は完璧なんだが、それとこれを合わせた結果はわけわかめで独りよがりな前衛という名のおまぬけ」が延々と続く映画、それが『悲愁物語』であります。
そりゃ劇場公開して2週間で打ち切られるわwな悲惨な出来だが、ひとりよがりでおまぬけな前衛お芸術映画がうめめちはもちろん大好きです

★なんだか気になる女優、江波杏子

さて最後に俳優陣。
演技以前の問題である白木葉子はともかく(でも胸はきれいでしたが)、おまぬけ展開の嵐に原田芳雄も岡田真澄も小池朝雄も苦笑しながら演じてる感じでしたが、
江波杏子はガチで怖かったです。
江波杏子といえば女賭博師・昇り竜のお銀ですが、カタギじゃない人よりカタギの主婦を演じた方が、腹の中にドスを呑んでそうで数段怖い。

ストーカー化してからの怪演も怖いけど(リアル妖怪人間ベラだと思いました)、初登場時がこれまた怖い。
普通の主婦の格好して、テレビの公開録画で観客席かられい子を応援してるんですが、普通の笑顔なのに背筋に寒い風が走る。
そして家で普通に家事してる姿が別に何も怖い事してないのにぞくぞくきます。
必見です。

(了)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ: 映画感想 | ジャンル: 映画
No.129『荒野のダッチワイフ』 | Home | No.127『エスパイ』