No.129『荒野のダッチワイフ』

公開年:1967年
原案:アンブローズ・ビアス『アウル・クリーク橋の出来事』
監督:大和屋竺
脚本:大和屋竺
ジャンル:めくるめく前衛ハードボイルド映画

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こちらもツタヤで借りれるキチ映画。
『殺しの烙印』『悲愁物語』の脚本を書いた前衛映画作家、大和屋竺の監督作品。

昭和アウトローダンディズム&前衛お芸術のマリアージュwは『悲愁物語』と同じテイストですが、こっちのマリアージュはガチでかっこいい!
暗いキモい昭和前衛映画だがかっこいい!
話はわけわかめだがかっこいい!
会話シーンが平成サブカル演技以上にボソボソ声で何しゃべってんのかわかんないけどかっこいい!
すすめてんのかけなしてんのか微妙な書き方だがw本当は素直におすすめです。
★予告編は無いけどオープニング映像



オヤジ声の読経と山下洋輔のジャズがコラボしたバリバリ昭和前衛なオープニング。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

腕利きの一匹狼な殺し屋ショウ(港雄一)は、タモリメガネ&蝶ネクタイ&案外いい声~♪な不動産屋オヤジ・ナカ(大久保鷹)に頼まれ、誘拐されたナカの彼女を取り戻して誘拐犯を闇に始末する仕事を請け負う。

始めに腕試しとして、一本の木にぶら下がった的を撃って命中させろと命令されるんだが、「俺はあんな木なら13発で倒れる」と豪語して本当に13発で木をぶっ倒すテクを披露する。
しかしいくらなんでも木が細過ぎねーかw
あれじゃ銃で撃たなくても風吹いたら折れるだろw
しかもナカと仕事の話をしてる途中で都合よく誘拐犯グループがわざわざ顔見せに来て、「対決は明日の午後3時だ」と予告までしてくれる。
親切な誘拐犯だな。

★ヤクザよりもお父さんが怖いです

奇しくも誘拐犯のリーダーは因縁の相手。
5年前の午前3時にショウの恋人を殺した男、ヤクザの高(山本昌平)だった。

で、とりあえず詳しい話を聞こうやって事で、ショウはナカの事務所に案内される。
そこで敵から送られた犯行フィルムを見るが予想通り彼女さん(辰巳典子)はチンピラどもにやられまくりのひどい目にあってました。
しかも彼女さんが誘拐されたせいで、彼女のパパ(津崎公平)はノイローゼになってしまい、アウアウアー状態で何故か事務所の片隅で飼われており、時々発作を起こしては謎の医者に注射を打たれたり、ダッチワイフを抱いて独りで人目はばからず盛ってらっしゃるw
ヤクザよりお父様の壊れ方が断然怖いですw

仕事を引き受けたショウは街をうろつき、流しの娼婦(渡みき)の誘いをつれなく断りながら、誘拐犯が根城にするバーへ赴く。
誘拐犯グループはなかなか手強そうな面子だが(なにしろメンバーに麿赤児がいるからなw)、ショウはものともせず高と過去の因縁話をしつつ、ニヒルなかっこよさキメキメに対決宣言をしてバーを去る。

★俺は女とすぐ寝るバカじゃねえ。でも結局一発やる

カッコよく見栄を切ったところで定番登場。
ハードボイルドといえばやはり女だ。

ショウが宿に帰ると、さっきフッた流しの娼婦が何故かベッドで裸で待っていた
仕事早いなwどうやって部屋に入ったんだ。
が、しかしそこはハードボイルドな主人公ですから「俺は裸の女に欲情してすぐ寝るバカじゃねえ!」とばかりに女をバシバシ叩きまくって風呂場のバスタブに突き落とす。
でも男に冷たくあしらわれるほど燃えるのがハードボイルド業界の女でありまして、娼婦はバスタブでエロい鼻歌うたい「抱いて」と迫る。
でもショウは銃相手に目をギラギラさせて、「まるで蛇みてぇに真っ赤に焼けた俺のダムダム弾が、相手の喉笛に食らいついて、引っ掻き回すんだ…俺の体中のゼンマイが巻き上がってギシギシ喚くんだ…」とハードボイルドな独り言をつぶやくばかり。
俺は女より銃に欲情するアウトローなのさ…と言わんばかりだが、そんなカッコいい事を散々呟いときながら

結局一発やる。
おい!やるのかよ!

女はショウの絶倫に「あぁん」とよがりまくりご満足。で、ピロートークはショウと高の因縁の過去をひとくさり。
ベタやなー。
しかし正体不明の女にベラベラしゃべって大丈夫?と思ったら案の定、エッチの間に女に銃の弾抜かれてました。

★殺しのシークエンスはかっこいい。しかしだな

そんなこんなで女とお励みになりすぎてしまい、ハッと気づいて時計見たら3時になってた。
まさか対決の時間忘れて昼までやりまくり?えーっそんなマヌケな話あり?
と思ったらいきなり宿に敵が乱入、撃ちあいになる。
だが女のせいでピストル弾切れ!絶対ピンチ!
な感じのわけわかめな映像が続き、あーこりゃ60~70年代の前衛お芸術映画式めくるめくフラッシュバックの世界かしら、と思ったら主人公が目覚める。
外は普通に朝。
実は夢オチでした!ちゃんちゃん。
でカタつける。
この手のフラッシュバックが出たら前衛映画マニアには先が読めちゃうのが悲しい所だ。でもまぁいい。

予告通り午後三時にバーに現れたショウは、たちどころに敵を3人瞬殺して高を捕まえ、誘拐犯のアジトに乗り込みナカの彼女を奪還する。
この殺人シークエンスはザ・ハードボイルド!カッコイイ!
誘拐犯手下が裸に黒覆面&黒パンツなのがマヌケだがw

ナカの彼女を引っ提げお仕事完了!なショウだが、ナカの事務所へ戻ってきたら雰囲気がなんかあやしい。
彼女は昏睡状態で動かないし、彼女パパはウジ虫入りおにぎり食ってるし。
ショウは高に命じて彼女を愛撫させる。でもダッチワイフのように無反応でナカがっくり。

すると突然ショウの周りの世界が狂いだす。
彼女パパはウジ虫まみれで死んでるし、犯行フィルムが映ってたはずの映写機は虫だの昔の恋人のセクシーショットだのを映してる。
ショウは半狂乱で銃を空撃ちしたり、高を殺したり、「目を覚ましてくれよぉ」とナカ彼女を抱いたりするが、彼女の体すら途中からダッチワイフに変わっていく…

…って所で夢から醒めたショウは宿のベッドの中。
時計の針は3時。

って事はつまり、「夢オチでした!ちゃんちゃん」の後は全部ショウが見た夢の世界で、「まさか対決の時間忘れて昼までやりまくり?えーっそんなマヌケな話あり?」こそが現実だった!

「やばっ!俺寝坊した」と思った瞬間、前と同じく宿に敵が乱入し撃ちあいになる。
ところが娼婦が弾抜いたせいでピストル弾切れ!
ショウと女は高一味にあっけなく殺されましたとさ。


時は飛んでシーンは最初の一本の木がある現場に戻る。
ナカは新しい殺し屋に彼女奪還の仕事を依頼し、一本の木にぶら下がった的を撃てと腕試しさせる。
木、前よりちょっと太くなってるw
殺し屋がスタンダードに的を撃って命中させたので、満足したナカは殺し屋をダッチワイフ娼館へ案内する。
いかがわしい女郎タコ部屋に女子高生やナースやウェディングドレスのコスプレした女郎が並んでるという摩訶不思議なシーンでジ・エンド。

★感想

なんか私が語るとバカコントみたいな話ですが、オチも『世にも奇妙な物語』にありそうなオチですが、
映画はバリバリ前衛でカッコイイです。

いかにも60-70年代のアングラお芸術映画な、めくるめくフラッシュバックショットの世界にクラクラします。
昭和アングラ映画マニアはもちろん必見ですが、「日本映画?暗ぁーださー」な海外映画派でもニコラス・ローグやジョン・ブアマンフリークも必見。
ノワール、アウトロー、ハードボイルド方面好きな方もアートキチ系描写OKならおすすめ。

★甘くない湿らないリアルアウトローな質感がたまらない

でも「日本映画?暗ぁーださー」派には「昭和の暗くてキモいヤクザノワールなネタで、昭和ダンディ&マッチョイズムテイスト全開な脚本で(なにせ『俺のダムダム弾』だからねーw)、おしゃれでもないし何がいい訳?」と疑問に思うかも。

こういう洋画派の方が日本映画を暗ぁーださーと思う原因って、おそらくこうではないかと思うのです。

どんなにハードボイルドをうたった話でも、「禁じられた遊び」調のウェッティなBGMが流れて不幸な生い立ちの純朴な娘さんや子供が現れたり、厳しいけど人情味あるおやっさんの顔が浮かんではぐれ者の乾いた心に灯がともる…なんて心温まる湿り気たっぷりエピソードが挟まれる。
昭和映画あるあるですね。
あれは私もたまに嫌いだw
お約束だし他のジャンルじゃ右から左に流せるけど、ハードボイルド、アウトロー映画だけは嫌だ。でも高倉健も菅原文太も勝新太郎も原田芳雄すら日本のアウトローに漏れなくおまけでついてくるんだなー。
女子雑誌のおまけのファンシーシュシュよりベタ甘く、手編みマフラーのように心の首を真綿で絞めるがごときべたべたじめじめ感たっぷりな、心温まるワンシーン。
どこの誰の何に需要があったんだろう?都会でリアルにすさんだアウトロー心は乾きを求めるんだ、湿り気なんかいらねーよ!といつも思うんですが。
あんなにキチ全開な『悲愁物語』にすらあるんだもの(ヒロイン弟が桜の下で女の子と棒読みで語り合う。使い方が唐突すぎて心温まりもしないがw)。ぐったりするわ。

その点この映画は甘さは皆無。腐っても前衛映画だ(ほめてます)。矜持が高い。
トーンが徹底的にニヒリズムを貫いており、リアルアウトローな乾きが最後まで途切れない。
日本映画だけど日本ぽくない空気感がして、心温まり系が大嫌いなすさんだ都会人も観やすいです。

★昭和脇役俳優好きは必見ですよ

さらに配役がハードボイルドでよろしい。
役者もイケメンスターなど1人も出てこないし、キャラも共感しようもない汚れアウトローだらけ。
だから余計にリアルでクール。
主演の港雄一は、ポルノ系や極道系映画をよく観る方は顔が判るのではないでしょうか。例えば前にレビューした『極道戦国志不動』ではげっひーんな股芸で殺されるエロ組長役をやってらっしゃいますw
他は状況劇場系の方々が多いようです。皆さんイイ顔@根本敬してらっしゃる。
昭和脇役、特に悪役好きはたまらない配役ですよ。

うめめちの好みはヤクザの高役の山本昌平。
日本映画を代表するハードボイルド顔といいますか、暗黒街のワル役者になる為に生まれてきたに違いないドスのきいた姿形(特に眼力)と声をしてます。オチのシーンで無駄なく仕事をこなす仕草がすてきぃ。
私は仕事で画像検索をよく使いますが(今流行りのコピペぱくりじゃありませんがw)
ついでに山本昌平さんで画像検索すると、ヤクザや時代劇や特撮の悪役衣装の御姿でこれでもかー!とにらみをきかせてくれまして、軽くカオス気分になります。
悪役俳優の画像検索は味わい深いですよ。伊藤雄之助、安藤三男さんもおすすめ。

(了)
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