No.134『パフォーマンス/青春の罠』

公開年:1969年
監督:ドナルド・キャメル、ニコラス・ローグ
脚本:ドナルド・キャメル
ジャンル:ギャングとロックスターの頽廃隠れ家映画

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秋の英国祭その2。
英国インテリ大好きなニコラス・ローグ作品。
No.132『華氏451』じゃ物足りねー!とご不満の、ゴリゴリ硬派な前衛めくるめく派におすすめ。

同じニコラス・ローグ撮影作品でも『華氏451』にはトリュフォー監督という良識派ストッパーがいましたが、今作はケネス・アンガーの伝説の悪魔崇拝映画『ルシファー・ライジング』に出演歴があるアレな思考の持ち主ドナルド・キャメル監督と共同作品ですから、前衛めくるめくを止める者無し。

「仲間を裏切り追われるギャングが、ひょんな事からロックスターの隠れ家に逃げ込んて、ロックでサイケな一夜を過ごした」なる単純な話をよくもここまでいじくり倒してドラッギーな映画に仕立てますなwあきれるくらいやりたい放題です。
おかげで映画会社から2年間お蔵入りになり、試写会で途中で席を立つ人が続出するなど、当時は散々な評価だったらしいですがが。

まぁ前衛映画でお蔵入りは勲章ですけどねw
★予告編



オールバックのミック・ジャガーの鼻から上が一瞬妻夫木聡に見える気がする予告編。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

あらすじは前ふりで全部語った気になりますがwもうちょい詳しめに。

ムーグ音たっぷりな謎の前衛BGMに、オープニングからマッパでソフトSMプレイあり。
2つの出来事を同時進行でカットイン。
初っ端から見る者の不安感を煽りまくりな俺様前衛スタイルでガンガン飛ばしますが、ご安心下さい。
最初30分くらいはただの前座だ。ミック・ジャガーは出てきません。
ミックが登場するまで無理に話の筋を追おうとせず、気楽に画面を眺めるなり倍速で飛ばし見するなりしてください。

で、倍速飛ばし中の話がどんなのかと言いますと。

★仲間を裏切り追われるギャングが

SM鬼畜プレイ大好きなギャング構成員のチャス・デブリン(ジェームズ・フォックス)は、ロールスロイスに硫酸かけたり、頭を丸ハゲに剃ったりと容赦無い脅迫をする乱暴者。血の気が余って過去に因縁ある馬券屋を自分の担当じゃないのに勝手に脅迫し、ボスのハリー・フラワーズ(ジョニー・シャノン)に「仕事に私情を持ち込むな」と叱られる。
でも馬券屋から返り討ちに自宅を急襲され、ご自慢のSM用乗馬鞭でバシバシ殴られてカッとなったチャスは馬券屋一味をぶち殺す。

馬券屋の死体はすぐ発見され警察沙汰になる。
このバカのしでかした殺しを発端に一網打尽にお縄になっちゃ困る、と焦ったフラワーズは部下にチャスの始末を指示。
チャスは元仲間と警察に追われて逃亡するが、偶然駅の待合室で出会ったジミヘン風ギタリスト(ベルベットスーツ&レースブラウス着用)が、「俺、自分の部屋を友達に又貸ししよっかなー」と世間話してるのを聞き、ふと思いつく。
「こいつの友達に成りすまして空き部屋に隠れよう」

★ひょんな事からロックスターの隠れ家に逃げ込んで

で、チャスは「ジミヘンギタリストの友達の売れないマジシャン」に化けて謎の屋敷を訪れるんだが、
玄関の鉢植えにあやしいきのこが生えてるし、中に入ると廊下は動物の首の剥製だらけ、ベッドはアラビアンナイト仕様、管理人のねーちゃんは裸にスケスケチュニックと毛皮をまとってお出迎え
お屋敷は怪しさ200%メケメケハウスだった。

家主のターナー様(ミック・ジャガー)はかつて売れ線ロックスターだったが落ち目になったので、不動産買って賃貸で定収入を得ている…と書けば堅実に聞こえるが、要は昔の稼ぎを食い潰してお屋敷に引きこもり、セックス&ドラッグの日々を送っていた。
身の回りの世話&セックスの相手は管理人の金髪ねーちゃんファーバー(キース・リチャーズの元彼女アニタ・パレンバーグ)と黒髪フレンチ小娘ルーシー(ミシェル・ブルトン)が担っている。

朝はシタールの調べをBGMに3Pでお戯れ。
3人仲良くお風呂に入ってヘチマで体を洗い(なぜかアヒルちゃんが置いてある)
体に濡れたお札貼っていちゃいちゃ遊び、
飯は自家製マジックマッシュルームのサラダw
食ってラリって気が向いたら適当に弾き語り。

ゆるーいハーレム生活でうらやましい限りだが、ターナー様はいつもご機嫌斜め。
いかれた即興の鼻歌ソングをくちずさみながら、「俺ん家に売れないマジシャンなんかいらねーんだよ」とチャスにいちゃもんつけてくる。2人は出てけよバカヤロー!出てくかコノヤロー!と言い合いした挙句、チャスは「一晩ごとに賃貸契約を更新する」なる珍条件付きで屋敷に住むことを許される。

★魂の交流を図り

ターナー様&彼女達のドラッギーな暮らしぶりにチャスは「なんだこいつらキメェ」と嫌悪感を抱き、「あいつに言われなくてもこんな腐れ屋敷一晩でとっとと出てったるわー!」と親友に国外脱出用偽造パスポート手配を頼む。もちろん親友は裏切り者で、チャスの企みはフラワーズに筒抜けなんだけれども。

でも自家製マジックマッシュルームサラダのあやしいランチでラリったチャスは(この下宿って三食まかない付きなんだw)、SM鞭でやられた傷を手当てしてもらいながら、気が付けばターナー様&彼女達のいいおもちゃになっていた。
ターナー様のマイロック衣装コレクション&ヅラ&メイクをとっかえひっかえ着せかえごっこさせられて、ポラロイド写真を撮られてる。
熱烈歓迎を受けてるじゃんw
ツンデレやなーターナー様は。

実は長い間スランプに陥ってヒット曲が作れなくなったターナー様。
危険な匂いの男チャスに不穏な予感を抱きつつ、異種人間同士の偶然の巡り合いから生まれる魂のインスピレーションを求めているのだった。
自分でも何書いてんのか訳わかんないがw要するに2人で意気投合したんである。

★ロックでサイケな一夜を過ごした

という事で後はこの手の映画でお約束の、「一夜限りのロケンロールパーティだぜロックでサイケでセクシーベイベー☆タイム」に突入する。
つまりミック・ジャガーのターンである。

ファーバーはわき毛ボーボーなヌードで野放図にセクシー振りまき回るし、
ターナー様は何故かお手製ライトセーバー(なんで自宅にそんなものが)で暴れ出し、ラリったチャスの妄想の中に乱入して歌いまくり。
オールバックのミック・ジャガーが歌えば何故かギャングが脱ぎだし踊り出すwフラワーズもマッパでのりのりw

…という調子で素敵にサイケな夜を過ごしたチャスは、ちゃっかり黒髪小娘ルーシーと一発やって魔法の指輪もらってご満悦。
すっかりお屋敷に馴染んでしまったが、浦島太郎の竜宮城みたいな生活が長く続く訳がない。

翌朝フラワーズとギャング御一行様がきっちりチャスをお迎えに来たんで、チャスは口封じにターナー様を撃ち殺すと、大人しくしょっぴかれていくのでした。

★感想

「文字で書き起こすと単純でつまらない話を見事に正体不明なお芸術に撮る」才能にかけては、ニコラス・ローグ監督は世界有数の天才だと改めて思いました。
「見事に面白い話に撮る」でないのがミソだがw

この映画の敗因は前半のフィルム・ノワールと後半のドリーミーなロックサイケ部分が全然合ってないところ。
「木に竹を接ぐ」と言いたくなるチグハグ加減だ。
どちらも単体では魅惑的なんだけどねえ…

というか製作プロデューサーの目論みは単純に「ミック・ジャガー目当てのロックアイドル映画」で、前半のギャング話はただの導入部扱いなんだろうけど、ギャング部分が所々すごくいい。
構図に凝りすぎて話はまるでわかんないがw
尖ってささくれ立った60年代暴力映画の香りが充満しててたまらない。
チャスが馬券屋に自宅を襲われてパンツ一丁で一味を撃ち殺すシーンなど、「おお!」と唸るくらいカメラワークが上手い。

ああいう緊張感ある暴力性を保ちながらミック・ジャガーも絡む話の流れに持ちこんでたら、前衛ロック・フィルム・ノワールの名作になったのに、後半に入ると急にお耽美ロックで腰砕けw
ギャングとロックの話の配分はあれでいいの?と脚本のつなぎの悪さについ文句が出てしまう。

★ミック・ジャガーがお目目キラキラ☆お耽美顔

でも当たり前だが、本来の目玉である後半の前衛お耽美ロックミュージカル部分も、予想より雰囲気が甘々すぎたが大好きだ。
メケメケ映画ファンはよだれものの暴走っぷり。
鏡からアニメーションまでギミック使い倒した、実験映像の玉手箱やぁ~(彦摩呂風)

ファッションとインテリアも当然バリバリにヒッピーサイケロック全開であります。
黒スキニー&シルバーボヘミアンアクセの正統派ロックファッションはもちろん、下着同然のインナーにファーを直羽織りにスタッズがギラギラなリストバンド(かわいいなー。これほしい)、裸にテロテロ素材のブラウスを羽織るいわゆるジルベール式コーディネート、レインボーのロングガウンコートw
21世紀日本の小市民のよそおいにはまるで参考になりませんがw見飽きる事がございません。

しかし若い頃のミック・ジャガーが、お耽美王子様顔でびっくりしました。
石原さとみどころのボリュームじゃなく普通人の2倍はリップ代使いそうなスーパータラコ唇を隠したら、そこにいるのはジルベールみたいな、瞳の中にお星様や神秘の湖がいて目を伏せると長い睫毛バッサーなキラキラお目目の王子様だ。
いやまじで。

裸で女と絡みがあるセクシーな役なのにセクシーロックンローラーの匂いじゃなく中性的で繊細で憂いあるお耽美ミック。(そしてたまに妻夫木似)
アニタ・パレンバーグとガチで喧嘩したらボコボコに殴られて失神してしまいそうだ。
昔のストーンズの映像を観てもミック・ジャガーにお耽美を感じた事無いけどなー。
『地球に落ちて来た男』のデヴィッド・ボウイのあまりに非人間的性別不明美貌といい、これもニコラス・ローグの映像マジック?

あと肝心の演技についてははぁ、アイドル演技の枠内だが、お歌の時間はさすがに上手かった。
特にストーンズのファンじゃなくてもテキトーな鼻歌だけでも聞き惚れます。

★因果が気になるジェームズ・フォックスのドSプレイ

正直ニコラス・ローグとミック・ジャガーだけを目当てで観た映画だったんですが、クレジット見てあらびっくり。
チャス役はジェームズ・フォックスだったのか。

うめめちがこれまで観た映画ではこの人はサーのつく役どころばっかり演じてたので、貴族専門俳優かと思ってましたが、映画前半はそんな固定概念を覆すようにキレッキレのドSプレイを見せてくれます。
『召使』でダーク・ボガードにいじめられた憂さを晴らしてるようだとも見て取れますがw
貴族もいいけど、悪人もすてきぃー。
シャープで乾いた容貌は『ターミネーター2』の液体金属ロボコップとか演じたら似合うかも。
後半にターナー様のいいおもちゃになってコスプレ人形化するのは笑いましたがwラストシーンでハードボイルドの世界に戻る時のニヒルな佇まいにちょっとしびれました。

★ラストシーンの気になる演出の木

最後にラストシーンの演出で一言。
チャスがギャングに連行されて車に乗り込む。
それだけの何でもないシーンなのに、カメラワークが上手いなああー!
ニコラス・ローグの撮影はちょっとした画面作りが端正で上手い。

しかも車に乗るまでのシーンもいいが、チャスを乗せた車が走り出すシーン!
ガラスに映る顔がジェームズ・フォックスから一瞬ミック・ジャガーに変わる。
手法はいかにも映画的なギミックだけど、この時のミックの表情が物哀しくて、映画の全シーンで一番お耽美で素晴らしい。
これぞめくるめく映像美ですわー。

ほんの一瞬なので気を抜くと見逃します。
ご注意して観てください。

(了)
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