No.011『リリィ・シュシュのすべて』

製作年:2001年
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
ジャンル:いたたた!厨二病まっしぐら★SNS青春映画

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今回はこっ恥ずかしさで身悶えながらレビュー。

少年少女の触れたら壊れそうな繊細な心象風景
平成日本のリアルな現実を描いたストーリー
カリスマ女性シンガーのファンSNSを巡る詩的宇宙
岩井俊二が自ら執筆するネット小説と、小説サイトBBSでのリアルタイムなレスポンスから発展した双方向的な制作過程
ネット世代の新しい《映画》のかたち

いやぁー!らしくねえー!
こんなこと書いてる自分がキモくてキモすぎる!
厨二病アイテムフル装備!自意識過剰パワーMAXフルスロットル!どこから切ってもイタい、イタいよ!


しかれども、こういう身悶えするような厨二病言葉を使わなければ作品世界が説明不能という、レビューする上で厄介な存在が岩井俊二映画でありますw野島伸司ドラマもそうだがw
昭和メケメケ趣味とは日本とブラジルくらい離れてるテイストの映画ですが、面白いところもありますのでよければどうぞ。
★予告編



とりあえず今ドキの青少年の闇を強調してみました、な作りの予告編。
なぜか予告は観たはずだがあまり記憶に残ってない。なんでだろう。

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台は田んぼの真ん中にあぜ道が走る、日本のどこにでもありそうな普通のド田舎。

平凡な田舎もん中学生の美少年・蓮見(市原隼人)は小金持ち自営業者の優等生息子・星野(忍成修吾)と同じ部活になり、はじめは普通に仲良くなる。
部活仲間でつるんで遊んで家に泊まりに行って、カリスマ女性シンガー「リリィ・シュシュ」を一緒に聞いてファンになったりしてた二人だが、ある日星野の実家が倒産する辺りから関係が変わる。

ぐれた星野は通りがかりのチーマーから大金をパクり、蓮見たち友達仲間を連れてなんと中学生同士で沖縄旅行に行く。
旅行自体はまぁのんびりしたいい感じだったが、道中で知り合った通りすがりの旅行者(大沢たかお)が車にはねられて死ぬのを目撃してしまう。

そのショックが原因かどうかしらないが、沖縄から帰って新学期になると星野が本格的に荒れる。
そして明確な理由も無く蓮見をいじめてパシリにする。
蓮見だけでなくクラスメートの女子・津田(蒼井優)や久野(伊藤歩)なども、やがて星野の餌食になりいじめられる。

強制オナニーや万引き強要なんかのいじめ地獄に陥った蓮見だが、ド田舎なので学校以外に逃げ場も無く、自宅でリリィ・シュシュに心の癒しを求めてのめりこむ。
鬱屈の発散方法は、当時全盛期だったパソコンSNS。
蓮見は『リリフィリア』なる何とも厨房なハンドルネームでリリィファンSNSサイトを立ち上げ、同じファンのネット住人と毎晩毎晩「エーテル(リリィファンにおけるオーラのようなもの)」がどうだの魂がどうだのといった、ネット住人同士には最高に熱いが、部外者から観るとキモくて冷える討論を交わして現実逃避する。
中でもハンドルネーム『青猫』と名乗る人と気が合い、ディープな心の痛みを打ち明けて魂の交流を図る。

一方現実では、星野のいじめがエスカレートして犠牲者が出てくる。

元々津田は中年オヤジと援助交際して小遣いを稼いでたが、いじめと援交が原因で心を病み自殺する。
久野は星野実家の工場跡地に連れ込まれ、星野と手下たちにレイプされる。傷ついた久野は自殺はしなかったが、翌日に抗議の自刈り丸坊主で登校して、事態がクラスメートや先生にも明るみになる。


…と大映ドラマに引けを取らない痛々しさ満載なトラウマテンプレシーンが大盤振る舞いいたします。まぁ厨二系青春ドラマの定番展開ですが、「なんだやっぱりオチはこれかいな」と気が萎えてきますw
14歳で妊娠母になるテンプレがOUTで援交IN、酒たばこタンデム走行がOUTでネットIN、と若干いじってるところが平成らしくはありますが。

こういう鬱展開になればラストはもうお分かりの通りです。

ネット友達は実はリアルのいじめっ子でしたオチで、蓮見は『青猫』の正体が星野だと知り、心のよりどころのネット世界でまで星野にもてあそばれてたのかと絶望する。
そして蓮見はリリィ・シュシュのライブ会場の雑踏の中で、ナイフで星野を刺す殺人事件が起こす。
蓮見は群衆にまぎれてうまく逃げれたおかげで警察に捕まらなかったが、ひそかに心の痛みを抱えて生きるのでした、でジ・エンド。


★感想

ヤンキー。
荒れる学校。
いじめ。
妊娠や援助交際。
この手のネガティブネタを扱った学園ドラマは、昭和戦後時代からアイドルドラマの王道だった。
まあ良くちょっとだけ手を変えネタを変え、毎週毎週テレビで「荒れる中高生設定ドラマ」がどれだけ放送されてたことかw

特に90年代の野島伸司ドラマ全盛期辺りは、世間の盛り上がりも厨2病要素も花盛り。
世の中の中学高校生は1クラスに必ずヤンキー・チーマー・援交少女・いじめっ子・いじめられっ子がフルで揃ってんのかよ?と錯覚するくらい、映画やテレビドラマの中の少年少女は問題児だらけだった記憶がある。

なんで90年代はあんなに中高生ドラマが軒並み暗かったんだよ?な原因を考えてみる。
まず昭和の1960~70年代の全共闘ネタが終結、大学生は政治活動なんてしないし、バブルでバイト代がすげーもらえるようになったんで、みんな明るくなっちゃった。
一方中高生はバブルの恩恵なんか全然受けなかったし、酒鬼薔薇事件やコロンバイン高校乱射事件など10代男子が犯人の大事件が発生するし、おっさん雑誌やテレビはキレる若者や援助交際ばっかり報道するし、なんか暗いイメージがついた。

またテレビ業界を見てみると、トレンディドラマがより低年齢化したせいか9時以降の時間帯で10代アイドル俳優主演ドラマが増えた。
うめめちの記憶では昭和の終わりはまだ「中高生主役ドラマは8時代」だった。9時の学園ドラマもあるっちゃあったが主役は先生だった。10時は知らないが(10時以降はテレビ見させてもらえなかったし)。でも平成は9時や10時にガンガン中高生ドラマをやっていた。
まあ若いと人件費削減できるしね。新人俳優やアイドルは制作側の意見をまだ素直に聞くしね。
そんな若いアイドルを主役にして、脇の問題児クラスメイト役はネクストブレイク組を配置、彼等に体当たり過激シーンを演じさせて話題性を作りつつ次世代の主役スターに育て上げるという、「3年B組金八先生方式だが主役は中高生」のヘビーでネガティブな過激学園ドラマが当たった。
『未成年』とか『人間・失格』とか。『神様、もう少しだけ』なんか女子高生が援交で一発やってエイズですよ。

なんて解説委員みたいな説明をしてみたが、重い・暗い・リアル・繊細・ネット・カリスマなんてキーワード入れとけば90年代はウケた訳だ。

岩井俊二ブームが去った今頃思い返すと、あれほど「日本映画のエッジジェネレーション」とか「新時代のカリスマ」とか言われた本作も(うう恥ずかしい。エッジ、カリスマって言葉やたら使われてたなあ)、ネガティブ学園ドラマブームの流れに乗った一作品に過ぎなかったのかなって気がする。

★とか悪口言いうのは簡単ですが

しかし正直に言うと、実は柄になく岩井俊二映画が好きだったりする。
えーなんか意外!と驚かれたりするんだが。

岩井俊二は俳優がまとう空気(エーテルw)をきれいに引き出して魅せる演出家だ。
特に「クラスで良くも悪くもなく普通で目立たないけど心が難しい年頃の中高生」を描写させたら絶品だと思う。

常に理由も無くふて腐れてて、軽くうつむき唇を軽くとがらせてて、わざと手足をぶっきら棒に動かしたりして、自分の内側に籠もってる表情をして、瞳は人形みたいに可愛いけど虚ろで不安で、大人が声かけても聞いてるのか聞いてないのか不機嫌な声で生返事をするそこらへんのガキ。
例えば親が作った昼ごはんのオムライスにケチャップでハートが描かれてるとしたら、「うぜーよババア」と心の中で毒づきながら黙々と食べるようなガキ。
そんな思春期少年少女特有の魅力を堪能するなら、岩井俊二作品の本作はマスト映画であります。

★魔性のエーテルを持つデコトラ少女蒼井優

まず主役から。この映画の頃の市原隼人は本当に良かったなーと思う。
滝沢秀明からショービズ性を抜いた感じの顔とウルウル瞳が可愛い美少年だったのに、『ROOKIES』からアニキ路線になっちゃったなあ。なんであんなになったんだ。残念。

そして『リリィシュシュ』といえば蒼井優。本作の無名少年少女俳優の中で一番注目されて出世頭になりました。
出演シーンはどれもいいですが、特にラブホでおっさんと援交した直後の場面の、生乾きの黒髪姿がど迫力で良かった。
北海のワカメのごとくゆらゆら揺れる生々しいみどりの黒髪。開き直りとも見えるふてぶてしい根性と、相反して次の主観にはパキンと壊れそうな脆さが同居した瞳。
いやーさすが平成の魔性の女。髪の毛と、髪の毛の間からわずかにのぞく目だけでみんな釘付けです。すごいっすわ。

あと本作の蒼井優マストアイテムといえば絶対に!
超重量級携帯ストラップ。

蒼井優の手から千羽鶴状態で垂れ下がってる有象無象のストラップの山は蒼井優の私物らしい。
当時は確かに女子中高生でデコストラップが流行ってたが、こんなデコトラ並みに過激なの見たことなかった。
まるで神社の片隅で細い釘に大量にかかってる絵馬のようだ。携帯よく折れなかったな。すげえ。

『リリィシュシュ』関連本によると、最初の脚本では久野さんが死んで津田ちゃんが生き残る設定だったらしいが、岩井俊二は蒼井優を見て津田ちゃん自殺に脚本を変えたらしい。正しい判断である。
『スワロウテイル』の美少女アゲハちゃん役、伊藤歩は今回も丸坊主にして熱演だったけど、今回は魔性・蒼井優に持ってかれた感じだった。というか正直他の俳優群より体つきが明らかに大人で違和感だった。20才でリアル中学生に交じって演技するのは伊藤歩といえどさすがに厳しかったか。

忍成修吾の独特に尖った顔立ちも役にはまってた(これ以降、なんかキレるイメージがつきすぎちゃって厨二病青年御用達役者になっちゃった気もするが)。
少年少女役者がみんな良かった。

★気になる映像、普通の田んぼ春夏秋冬

そしてメイン舞台となる田んぼ。
四季折々の田んぼの映像が出てくるが、これがすごくいいんです。

メインスチールに使われてる夏の青々した田んぼだけじゃなく、晩秋の野焼きの煙がたなびく田んぼや冬の枯れ田んぼの表情も、なんとも言えない可憐な表情があっていい。

何の変哲も無い、普通の平成の田舎の普通の田んぼやビニールハウスだからいい。
これが「山奥に広がる棚田の美景」とか「郷愁を誘われる田園風景」のように田園の映像美を追求しすぎる作りだったら、中学生達のたたずまいとチグハグになって映画のエーテルが根本から腐ってしまう。

普通の風景を普通に撮るから映える映画もある。
メケメケ好きだけどそう思う。
担当は篠田昇撮影監督です。好きなんですよねえこの人の映像。うめめちの趣味(やりすぎ前衛お芸術w)から外れてますけど。若くして亡くなられたのが惜し過ぎる。

★気になる俳優、田中要次のリアル教師

さて今回の気になる木。田中要次の教師役はなにげに必見ですよ。

教師名物ジャージwの着こなしからだらしなくふんぞり返る椅子の座り具合、腕組みして首をちょっと傾ける仕草まで、田舎の中学校の腐れ教師にしか見えない素晴らしくリアルなたたずまい。
わずか数シーンのチョイ役だけど小者役俳優好きなら必見だと保証する。

(了)
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