No.137『白昼の通り魔』

公開年:1966年
原作:武田泰淳
監督:大島渚
脚本:田村孟
ジャンル:愛と純情と欲望が渦巻く通り魔映画

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「欲望に向かって爆走する人間動物!」って煽り文句が凄いわw
嫌~な感じにギットリ熱い大島渚監督作品。

タイトルは連続通り魔犯罪映画ですが、通り魔犯罪そのものより犯罪の背後にある若い男女2組の恋愛がメインテーマ。
しかも青春のせつない片思いすれ違い。
意外に男の純情が胸キュンで泣ける。

大島作品の「男子の性とセンチメンタルを発露した青春もの」はやっぱり良いですねーな1本。
いや、やってる犯罪はまぎれもなく凶悪な連続通り魔強姦殺人ですけど。
★予告編



これはそそるわー「罪を呼ぶ肌」とか煽り文句がガンガン飛ばしまくり。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

お金持ちの家でのんきに鼻歌歌ってた家政婦のねーちゃん・篠崎シノ(川口小枝)は、突然家に侵入した坊主頭の通り魔に包丁で脅され、緊縛され首絞められ犯される。
その後2階にいた金持ち奥様も惨殺される。
原口刑事(渡辺文雄)率いる捜査班は、巷で起こる連続強姦殺人犯の仕業だと断定。これで11件目の通り魔事件らしい。
しかし犯人の顔をバッチリ見ちゃったシノは、通り魔が幼なじみの小山田英助(佐藤慶)だとすぐに分かった。でも警察に言えずにいた。
だって英助は元カレだったから…

警察には訊問され、お金持ち旦那様(観世栄夫)に「お前のせいで」と責められ切羽詰まったシノは。英助の嫁で幼なじみのマツ子(小山明子)に相談の手紙を書く。
手紙を受け取ったマツ子は村の女教師。通り魔事件の犯人が旦那だとバレたら即クビになる厳しい立場だ。
しかも手紙読んだ時にジャストタイミングで、英助がふらりと田舎に帰って来る。まー!これは怖い。
マツ子は「何もかも知ってるわ」と強気に出て揺さぶってみるが、英助はマツ子の首を軽く絞めただけで、またふらりと出てってしまう。

迷えるマツ子は数年前に死んだ友人、日向源治(戸浦六宏)の墓参りに行き思い出を語る。
そう、すべては彼の自殺が始まりだった…。
すると背後で源治の幻影がぼんやり浮かび、マツ子の話に相槌を打つ。戸浦六宏の顔が不気味にマッチしていい演出。

こうして話は連続通り魔事件の顛末と並行して、数年前にド田舎の村で起こったドロドロ恋愛劇へなだれこむ訳です。
いいねー。エピソードの処理が上手い導入部だ。

★戸浦六宏スネ夫クンの不器用なキスが可愛い

数年前のマツ子はまだ独身で、美人で優等生な村のマドンナ教師(昭和やなー)だった。
「恋愛とは美しい無償の行為なの」なんてお花畑な説教かますところがうざいが、村の生徒や元生徒達に慕われていた。
源治・英助・シノはマツ子の元生徒だった。

源治は村の金持ち一家で村会議員の息子で早い話がスネ夫。村での立場も見た目もリアルスネ夫。マツ子に憧れてるが告白できない童貞君。
英助は昔からバカでガラの悪いヤンキーで、村人に持て余されてる問題児。関西で言うところの「いちびり」気質の嫌な奴だが、通り魔事件を起こすほどの凶悪な犯罪者メンタルでもなかった。
シノはアル中オヤジ(小松方正)に苦労してる貧乏一家のバカねーちゃん。

小さい村だから村人は自然と幼なじみで、昭和の農村らしく共同で細々お金出し合って畑とか養豚とかやって地道に暮らしてたが、ある日大雨で畑が流されちゃって大ピンチ。
マツ子は「こんな時こそ無償の愛でー、みんなで協力してー」と周りに説いて回るが、明日の暮らしもどうする状態の村民が無償の愛だのに耳を貸す訳ねえ。一方シノは「流されちゃったもんはしょーがない。新しくニジマスの養殖でもやるっきゃない!」と頭はポジティブだが資金が無い。
そこへ英助から変な知恵を吹き込まれて、シノは源治に「体をあげるからお金貸して」と告る。若い娘のピチピチバディをダシにした太い作戦だが、童貞スネ夫君はころっとほだされ金を貸し、お礼に童貞卒業させてもらったスネ夫君。いかにも不器用~にキスする姿が可愛いw

2人は村のみんなに隠れて夜中にデートするが、たらしでいちびりの英助が気付かない訳ない。
だって自分が火をつけた訳だしなあ。
「シノが源治をたぶらかしたぞー!あいつら夜中にやってるぞー!」と英助が村中に言いふらしたせいで、シノは村の若者にデート現場を出歯亀されるわ、ビッチ扱いされるわ散々な目に遭う。
でも女はたくましいですねー。シノは「あたし悪い事してないし」と開き直り、もらった金でまじめに事業を進めます。

ちなみにマツ子も噂を聞いて、うっかり興味持って覗きに行っちゃって、帰りに村の公民館に休みに寄った所を英助に待ち伏せされて襲われる(未遂だが)というサブイベントも起きてしまう。

★死ぬなんて試しに言っちゃいけないよ

そして1年後。
源治は親の跡継いで村会議員に立候補するが、ほんとは議員なんてなりたくないので憂鬱気分。
おまけにシノも最近冷たい気がするし…とウジウジ悩んでこじらせた源治は、「やっぱり初心貫徹!初恋の人がいいかも!」とダメ元でマツ子にプロポーズ。
ところが即座にきっぱり断られるw
しかも気を引こうと「じゃあ首吊って死ぬ」と言ったら、軽~く笑われあしらわれる。
悪い女やなー、マツ子。

完璧に振られた源治は「あー死にてー」と愚痴ったところをいちびり英助に煽られ、「くっそー!俺シノと心中して死んでやる!」と
勢いで自爆大炎上。「俺が好きなら一緒に死んでくれるよね?」とシノを無理やり誘って村の外れへ行き、本当に木に縄掛けて首吊っちゃう。
木の幹にまたがって「さあご一緒に!」と笑いかける顔が純朴でせつねえー。
シノも元々金目当てで関係持っただけで、こいつと死ぬ気なんて全然無かったが、ついご一緒に首吊ってしまう。
やっぱり「死ぬ」なんて言葉は嘘でも言っちゃいけないよねー、と思う。言霊に煽られるから。
一方マツ子は「あの子、もしかして本気で死ぬのかも…?」と今更不安になり、「あたしが好きなら心中を止めに行って」と英助にせがむ。
自分で種まいたのに自分で行かねーのかよ。ずるい女だ。
でも女の頼みならホイホイ身が軽い英助は、首吊って虫の息の源治とシノを発見。

今手を伸ばせばどちらか1人助けれるぞ!

英助が手を伸ばしたのは、女たらしですからもちろん女。
でもシノは首を圧迫されたショックで仮死状態。英助は何とか助けようと介抱するが、無抵抗の女の肉体に何かむらっときて…

一発やっちゃうんですね

自分がちょっと血迷ったばっかりに、眼下では自分の彼女が英助にやられながら死んでいく源治。哀れなり。

★残された男と女2人は泥沼の果てに

さて、昔語りと並行して進む連続通り魔事件。
警察が英助を全国指名手配して探す間に、マツ子とシノは夜の心斎橋で再会する。たまたまマツ子が学校の修学旅行の引率で大阪に行く用事があったためだが、夜のナンパ橋で切羽詰まった女2人が語るって。怖くてナンパ野郎も近づけませんわw
シノは直球で「警察に協力しよう」と迫るが、頼りのマツ子にのらくらとかわされ物別れに終わる。
何故マツ子はシノの提案を断ったのか?
実はこの時、両者の頭の中には泥沼の愛の苦悩とジェラシーが潜んでいた!

って事で話はいよいよ核心の「源治の死亡直後に一体何が起こったか」エピソードを明かす。

源治がぶらーんと首吊りしてる木の下で仮死状態のシノは英助にレイプされてたが、実は途中でうっすら気付いてしまったのだ。英助の顔から大量に流れ落ちた汗がシノの顔に降りかかったおかげで…
コトが終わった後、近所の河原で英助はシノに怒涛の勢いで罵倒しまくられる。
得意のイチビリも出せず追い詰められる英助。そりゃそーだ。激怒して当然だ。最低中のサイテーな行為だし。
でもシノはここで間違えてしまった。男に逃げ道を与えず完璧にボコボコにしちゃやっぱいかんのである。

実は英助はほんとにシノが好きだった。
純粋にシノが好きで抱きたかった。
じゃあ源治とくっつけたりビッチの噂流したりしなきゃいいじゃんと思うが、好きな子ほどいじめたくなるのがイチビリのイチビリたる由縁だからしゃーないw
でもシノにボコボコにされ踏みにじられて、若い男の純情と自尊心と性欲とその他もろもろいろんな感情が爆発して、シノと言い合う売り言葉に買い言葉が昂じた英助は遂にモンスター化する。
「死んだ女はただのモノ!」
「俺はバケモノだ!何度でも犯ってやる!」
と己の暗黒面をぶちまける英助にシノはたじろぐ。

この事件をきっかけに英助と絶縁したシノは、村を出て都会で家政婦の仕事して暮らす事になった。
でもシノはずっと後悔してた。自分が怒りに任せて追い詰めてしまったから、英助は連続通り魔犯になっちゃったんだと。

一方でマツ子。
源治の葬式の日、村の有力者が源治の本当の死因を隠して事故死と片づけたのが、「恋愛は美しい無償の行為」主義者として
どうしても許せなかった。それにプロポーズを軽くあしらったのに後悔して、源治の御霊前で切々と想いを語りかけるが、葬式中切々切々語りかけ続けて村人にうざいと叩かれるw
すると英助が助太刀に入ってくれた。
惚れてまうやろーな風情のマツ子。
実はマツ子は英助が好きだったのだ。
しかし葬式後なんと英助本人から「俺、シノを犯した」と告白されて大ショック。動揺して「けだもの!」と言っちゃったマツ子は、モンスター化して開き直った英助に押し倒され、首絞められて失神した隙に犯される。

事後に「お前が結婚したいならすればいい」と冷たくあしらわれたものの、マツ子は強引に英助と結婚する。
しかし新婚早々に英助は嫁捨てて上京し、シリアルキラーになっちゃったのだった。

★峠の釜めし最強伝説!顎が外れるダイ・ハード・エンディング

いやードロドロですねー。
愛憎劇場愛好家にはたまらない、これぞ不毛の愛!な過去を経て、さあクライマックス。

大阪でシノをのらくらかわしたマツ子だが、やっぱり良心の呵責に耐えかねて、修学旅行途中の大阪発東京行き列車の中で(東京・大阪両方巡るって変わった修学旅行だw)渡辺文雄刑事に英助の事を告白する。
だが告白したのもすでに時遅し。もう英助は既に逮捕されてたんである。
東京駅で逮捕の知らせを受けたマツ子は、まず生徒が全員いるか点呼させた後、なんと「さよならっ!」と一声かけてそのまま猛ダッシュで走り去る。
ひっでー!お前引率教師だろうがー!
残されちゃった生徒達どうするよ!
マツ子は生徒を撒いて逃げて逃げて勢いで銀座まで走りまくる。
お前どこまで走るねん!
走りつかれて銀座の街で取ってつけたように倒れたマツ子は、追っかけてきたシノに介抱されるのだった。

時は流れ英助は逮捕されて犯行を自白し、順調に裁判が開かれて順調に死刑判決が出る日を迎える。

その頃マツ子とシノは列車に乗っていた。
行先は故郷の村。
悲愴な面持ちで想いを色々語るマツ子だが、相手のシノはボッケーと駅弁食っている。
しかも峠の釜めしを2人分完食w
これまで映像と演出テクを駆使して魅せた「青春の不毛愛劇場」を覆す食いっぷりw
切羽詰まった場面で神経の図太さを見せるシノと、飯も食わず己の語りの世界に入っちゃって若干うっとり気味なマツ子との性格の対比が描かれるシーンなんだが、
まさかコレが直球オチになろうとは思わなかったわwww

2人は列車を降りて村に帰り、山中を歩き、思い出の首吊りの木の下に着いたところで、マツ子は心中事件から連続通り魔に至るドロドロ愛憎劇場の総括として

女同志で心中を提案。

なんでやねん!
でもどんな無茶な理論でもシノはマツ子に抗い難く、またまた死にたくないのに死ぬ羽目になる。
マツ子から渡された致死量の毒薬を飲み、互いに手足を縛って草むらに横たわり、英助に死刑判決が出たのを知らせる村内放送(そんなの村内放送するなよ!)を聞きながら、シノが英助に犯された場所で死を迎える女達…。

………。

マツ子は即死した。
だがしかし!シノは起き上がり、毒を吐いてノーダメージでご生還するえはないか!
なんと峠の釜めしを食いまくったおかげで毒の効き目が遅れたか鈍ったのだ。

峠の釜めし最強!
2個食べれば致死量の毒も効き目が鈍る!
胃洗浄とかしなくてもノーダメージ!
んなーあほなー。
なんとも顎が外れるオチである。

ブルース・ウィリス以上に鋼の身体と悪運を持ち首吊りにも猛毒にも耐えたダイ・ハード女シノは、「また私だけが生き残った」と独り言を呟きつつ、逞しい腕でマツ子の死体をがっつり肩に担ぎ山を下りるのでありました。


★感想

凄いなあ峠の釜めし。さすが、ますのすし・シウマイ弁当・いかめしと並び讃えられる駅弁界の最強四天王なだけある。
ちなみに私は栗とうずら卵を最初に食べる派だ。

あとあらすじ冒頭でシノは英助の元カレと書いたが違いましたね。
「昔に一発やられた男」でした。訂正します。

さて驚愕の峠の釜めしエンディングは置いといてw「通り魔」の異常行為を前面に出した惹句と裏腹に、映画は「おおヌーヴェルヴァーグ!」な仕上がり。瑞々しい前衛青春物語ですごく好みです。
大島渚監督と高田昭撮影監督がテクニックを駆使して、細かーいカットを凝りに凝った方法で紡いでます。いわゆるめくるめくカメラワーク系ですが、脚本演出が巧みに整理されメインキャラも立ってて、さほど苦悩も苦闘もせず筋を追えます。
当たり前だろって、前衛映画で「筋を追える」のは立派なアドバンテージだw
まぁあまりに凝り過ぎやりすぎ祭りで、最後は観ててだんだん疲れてきますがw
「観てて疲れる」もヌーヴェルヴァーグ系映画のお約束ですね。

★佐藤慶の上手さに痺れ戸浦六宏の笑顔に惚れる

役者陣は「素人枠」シノ役の川口小枝以外は毎度お馴染みのメンバーだらけ。
でもなんか新鮮w
どこが新鮮だ?と考えたら、佐藤慶&戸浦六宏を悪役曲者役おっさん重役では見飽きるほど観てるが、青春恋バナ俳優として観た事無かったからだw
そりゃまぁ恋バナ俳優には意表性ありすぎですねw顔相がワルすぎるしw

しかし「若い男女の繊細な恋バナ」演技でも、佐藤慶はほんとに上手いなあ。
「いちびりな村のはぐれ者で変態性欲持ちだがフツーの思春期青年らしい純情な恋心も持っている」役どころの男心の表現が繊細で瑞々しいんだなあ。やるせないぶっきら棒な色気がフランス映画の青年ぽいぞ。
クライマックスの暗黒面ぶちまけシーンで追い詰められて表情が刻々と移り変わり、モンスター化する所は切なすぎてうわーとなりました。

さらに驚いたのが戸浦六宏。
典型的なかませ犬役だが、あんなスネ夫顔の癖に、純情恋バナ演技が可愛い!心中する時に大きな木の枝にまたがって寂しげな笑顔を見せる姿がせつねえ!元々かませ犬キャラが好きなせいもあるが、うっかり胸キュンしたじゃねえかw

普段が腹に一物ある悪役な人の純情な姿は思った以上に、いやー良かったです。

★大島渚は小山明子の脚が好き

さて男2人を惑わす女性チームは、小山明子は安定のうざい優等生演技。この人は融通効かない優等生が映えますね。
ちなみに今作のカメラはとりわけ執拗に小山明子の脚をなめ撮りしてました。
テーマが「仮死状態で襲われる女」だからか、
喪服で襲われ!
スカートで襲われ!
和装洋装ダブル見せの出血大サービス
むっちりいい肉ついた腰つきにエロい太股!
チラリとのぞく白いレースのスリップ!
パンストにぴっちり覆われた美ふくらはぎ!
嫁の脚が大好きだあああと画面の外から監督の咆哮が聞こえてきそうなエロい映像です。わかりやすくてよろしいw

小山明子エロスとは逆に川口小枝は、若くてだっさい田舎の純朴ねーちゃんのあか抜けない無防備エロスがはまってました。
もう配役した理由は美貌でも演技力でも無く「峠の釜めしを2個食い切る能力」で選んだとしか思えないバカ食いっぷりがよろしいw

しかしこの人、どこの田舎の素人ねーちゃんだ?松田暎子と同じ天井桟敷団員出身かしら?と思っていたらなんと!トンデモエロ前衛映画『華魁』の武智鉄二監督の愛娘だったのね。
さらに高田昭撮影監督も『華魁』の撮影監督だったりする。
なんという華麗なるエロ前衛コネクションw
珍映画マニア以外にはどうでもいい話ですがw

★関係ないけどこちらも大島監督の代表作

とかダラダラ感想を書いてる間に、大島監督と日本文化人史に残る死闘を演じたw野坂昭如先生がお亡くなりになられました。
大島監督にとってはある意味白昼の通り魔だwレフェリー小山明子の肝が据わった姐さんぶりもいい。何度観ても笑えます。ついでにどうぞ。



(了)

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