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No.152 『ブラックムーン』

公開年:1975年
監督: ルイ・マル
脚本:クロード・ネジャール
ジャンル:ルイ・マルからの挑戦状?大人版アリスっぽい前衛ダークファンタジー

152.jpg

芸術の秋ですね。
ファッションの秋ですね。
と去年の秋と全く同じ手抜きモードで始める秋のお芸術特集。
おフランスから初登場、ルイ・マル監督の歯ごたえたっぷり前衛ファンタジー映画です。

最初にテロップで「夢のような旅へどうぞ」とか前置きが入る。
監督からの「お前らをわけわかめにしてやるぜ。覚悟して観ろよ」という親切な挑戦状である。前衛映画ファンへのペアレンタル・アドバイザリーマークみたいなんもんですな。
燃えるじゃねーか。受けて立ってやるw

もちろん映画の中身も、
開始から10分以上ノーセリフ
登場人物にほぼ名前無し
ムカデにヘビにゴッキーにしゃべる一角獣登場
オリジナル版ポスターのデザインがコレ
見事にわけわかめ前衛映画の必須要素だらけですねw

しかしながらスヴェン・ニクヴィスト撮影監督の造り出す、物静かでありながら心がざわめくような、冷え切ってるようでほのかに人や場所の匂いが感じられる空気感が素晴らしい。映画の世界に住んでみたい誘惑に駆られます。
前衛に耐性があってお暇なら、一度味わってみてください。
★あらすじ(青字はネタバレあり

男物ぽいコート着た少女リリー(キャスリン・ハリソン)が田舎の一本道で車を走らせている。
道路を横切るアナグマを轢き殺したりしてますが、運転免許あるんだろうか。
対向車の無い道路を走って走って着いた先は、なんと戦場。
女軍のパツキンねーちゃんソルジャーが男軍の検問に捕まり、マシンガンで片っ端から殺されてる!
ここは「男と女が戦争してる」設定の国らしい。「やばい自分も殺される!」とリリーはあわてて道を外れ、野原をオフロード走行して逃げる。

★戦場は動物王国とマッパの子供

でも逃げる先逃げる先どこも戦争と動物だらけ。
草原には羊がわんさか。でも羊飼いは首吊り自殺してる。
荒野でヘビと女子ゲリラ兵士の集団リンチに出遭う。ガスマスクつけてるし早々に退散する。
でっかいムカデとカマキリとゴッキーが蠢く虫王国。ギャー!
そして振り返ると一角獣発見。なんでやねん。

で、あちこち巡ってようやくメイン舞台の「謎の館」が現れて住人らしき人々を発見する。
しかし馬に乗った美女はともかく、その子供がマッパで走り回るってwシュールでファンタジーな舞台にマッパの子供ってヘンリー・ダーガーの絵みたい。

謎の館は小ぶりで庭も田園風だがインテリアがすってきー。だけど何故か扉は開けっ放しで食堂の料理も作りかけで誰もいない。
台所のカウンターにでっかい牛乳カップがあったので、お腹すいたリリーはとりあえず飲んでみる。すると椅子に座った豚が文句言うw
しかし不思議の国のアリスといい、シュールの国の少女って他人の家の食い物をよく勝手に食ってるイメージがあるw
ロリータの盗み食いはエロポイントなんだろうか。

★ババアは少女の貧乳をチクり、少女はビンタで人殺し、美女は母親に乳をやる

小腹を満たしたリリーが家探ししてみたら、2階の寝室で寝たきりの怪しい老婦人(テレーズ・ギーゼ)を発見する。
彼女はネズミに話しかけてたり、人の記憶を覗けるようなセリフを言ってみたり、謎の通信機でどこかの誰かに報告してたりするが、リリーの事を初対面で本人目の前にいるのに「バカ娘」呼ばわり。「きったないボサボサの金髪」だの「乳が無い」だの言いたい放題w
貧乳で悪かったなクソババア!
といい加減むかついた所へ、寝室の目覚まし時計が次々鳴り始めてイライラMAX。動かないババアの代わりにリリーは部屋中を走って片っ端から時計を窓から投げ捨てたが、一仕事終えて振り向いたら驚きの光景が!

どこからか兵士が侵入してババアの首を絞めている。
リリーが慌てて助けに行くと一瞬で兵士は消えたが、ところが今度はリリーがババアに首絞められる。なんでやねん!やめんかい!ともがいたリリーは咄嗟に手を大きく振ってババアを豪快にビンタ。するとババアの手が止まったのはいいが、

ババア死んじゃった。

あーれー殺しちゃったどうしよう!とパニくるリリーは、庭に兵士ではないイケメン男性がいるのを見つけて館の外へ駆け出し、2階のババアが死んじゃったと話しかける。でもイケメン男性には無言で顔を撫で回されるのみ。
やがて美女とマッパ子供軍団が帰って来て、美女はババアの娘(アレクサンドラ・スチュワート)、イケメン男性は双子の弟(ジョー・ダレッサンドロ)だと判明する。
美貌の姉弟がババアの様子を見にゆき、銃を手渡すとババアはあっさり生き返る。これだけでも一体何やねんだが、美女姉さんはおもむろに服を脱いで乳もろ出しにすると、

ババアにお乳をやる
なーんでやねーん!!

ともあれババアが落ち着いて一安心。と思ったら姉弟はリリーを寝室に閉じ込める。
おいコラ何のつもりや、出せー!とリリーが暴れて(基本リリーはガサツ少女である)ババアは憐みの目で眺められるが、何故か(何故かが多いなこの話)ババアに顔をなでられ手を握られると
2人の心が共鳴しあう
急に仲良しになっちゃって、一緒に謎の詩を唱えたり、リリーのデカパンのゴムが緩んでずり落ちたの見てバカ笑いして写メ撮ってはしゃぐババア。何なんだこいつら。さっきまで首絞めあってたやないか。しかし少女に白のデカパン履かしてずり落とすて、マニアックな趣味ですねルイ・マル監督。
で、館の主のババアとなかよくなり態度がデカくなったリリーは、勝手に人の家の引き出しをガサ入れして替えのパンツを履き、チーズを食い、家族のアルバムを見たりしてダラダラ過ごす。

★演奏するほどメイクが濃くなる謎のファミリー演奏会

さて家の中も飽きたんで、リリーは庭へ出て館の一族とコンタクトを取ろうとするが、美女姉さんにはガン無視され、豚にけつまづかされ、マッパのガキ集団にいじられる。あんまり歓迎されてないらしい。
しかも館の外は男と女戦争が続いており、たまに庭の隅っこに女兵士の死体が転がってる始末。ガサツだが死体は怖いリリーはイケメン弟に泣きついて、庭に穴掘って埋めてもらう。
で、表庭も怖いし裏庭で現れたり消えたりする一角獣を追いかけてると、一角獣に「しつこく追ってくんな」とキレられるwこの映画って人間は無言かキ○○イトークの2択しかないのに、一角獣だけ理路整然としゃべり正論でたしなめるのかw
とはいえ一角獣もこの謎の世界を解説する訳でもなく、「もうこの館の人達にはうんざり。ちょっと154年どっかに行ってくるわ」と溜息ついて姿を消す。

154年後って何やねん、とかツッコミ入れてる内に日が暮れて館の一家は夕食タイム。リリーも肉を一切れ勝手に奪って食いながら2階へ行くと、ババアが「腹が減った」と訴える。
困ったリリーはさっきの見よう見まねでお乳やってみる。
おおぅ乳首が淡いピンク色
ていうか貧乳少女なのに乳出るんかいw

1階に下りると一家はババア抜きでリビングでくつろいでたが、マッパガキから「ピアノを弾け」とせがまれる。でも弾こうと椅子に座るとハリネズミのブービートラップ仕掛けだったw地味な嫌がらせだなーw
で、ガキが仮装して歌い始めてミニ演奏会になるんだが、「トリスタンとイゾルデ」とか演奏するうちに何故か、ほのぼのファミリー演奏会が謎の盛り上がりを見せる。
姉はいきなり謎メイクしはじめて朗々と歌うし、ガキの化粧もどんどん濃くなるし、弟もライオンキングみたいな珍衣装で踊って刀を振り回すし、音楽もどんどんぐああ~と不穏な空気で劇的になるし、な、なんだ?どこへ向かおうとしてんの姉弟?この歌の後にどんなカタルシスなオチが待ってるの?ととまどいながらワクワク待ってたら

単に朝になっただけだった…

おいおい!あんだけ煽っといて「音楽で楽しく一夜を過ごしました~」かよ!と目玉コローンw
だがオチは一瞬がっくりさせて予想外の方向から来た。

部屋に飛び込んできた鷲を、なんと弟が刀で首チョンパ!
弟の行為に姉がキレてナイフ振り回して弟襲撃!
弟は姉を木の棒で滅多打ちにするわ頭突きするわ、姉はデカい石を弟の頭に打ち付けるわ、理由も判らずガチバトルで互いを潰し合う。なんでだよ、さっきまでラブラブだったじゃねーかw

姉弟バトルのついでに戦士がなだれ込んで館は戦場化し、あっという間に庭が兵士と羊で埋め尽くされる。
リリーは2階に避難して、いつの間にかババアが消えて時たまヘビがうねってる(まぁいやだw)ベッドに寝そべり外の様子を見るしかなかった。

やがて戦争が終わって誰も居なくなって静かになった頃、目の前に一角獣が再び現れる。
154年経ったんかいw
そして、リリーが一角獣に「どうぞ」と乳をやろうとするところでジ・エンド。
結局館も住人も戦争も何もかもわけわかめのオチなしで終わるのでした。


★感想

…とまあ一言で不思議の国のアリスな映画でした。

無邪気な少女がシュールな(そして性の隠喩に満ちた)世界を駆け回るコンセプトはアリスまんまですが、リリーはアリスより年食ってますんで、性の隠喩あたりはあからさまだ。
この手の「少年少女の妄想・性のめざめ」ものは小道具あしらいに監督の性嗜好が見えたりするもんですが、そういう意味でルイ・マル監督はいかなる人間か、チェックが面白い映画であります。あらすじの途中でも書いたがヘンリー・ダーガーっぽいお好みで、監督とは結構気が合うかも。あと白のデカパンかw

CGじゃない動物がわらわら動いてて撮影大変だったろうなー、と思います。一角獣は手抜きだったがwしかし海外のクリエイターはゴキブリ好きなのか?アート作品で時々見るんだが。あとよくあんなデカいムカデを見つけてきたなと感心する。
ファッションとインテリアはもちろん可愛かったです。ルイ・マル監督がこの映画の後に撮った『プリティ・ベビー』はど真ん中ロリータファッションですが、それとは違ったテイストの田園風少女趣味でした。特にリリーが最初着てたグレーのマニッシュコートがいい。あれほしい。日本人体型には似合わないけど。

★リリーのドタバタ動きは現実の「おてんば」女子

さて役者チェックですがモブを覗くと4人しかいねえw
脇役マニアには少なすぎて泣けるが、全員変なキャラ作りをせず不思議な世界観に自然に溶け込んでて良かった。
中でも主人公リリー役のキャスリン・ハリソンが新鮮でした。レックス・ハリソンの孫だそうだ。へー。
見た目は典型的なイギリスの10代少女なんだが、動きがすんごいガサツでw

とはいえアリス系作品の少女って「好奇心あふれるおてんば娘」と相場が決まってるんだが(まぁ受け身女子だと冒険出来ないし)、でも人間の役者使って映像化するとたいがい「大人が考える範囲内での『おてんば娘』風のカワイイ演技」に納まるじゃないですか。
しかしリリーは違う。マジでガサツだw
例えば映画の中でリリーが部屋中で鳴る目覚まし時計を片っ端から止めて窓から投げ捨てるシーンがあるが、部屋を走り回り時計を投げる動作が笑っちゃうくらい雑。キャスリン・ハリソンの手足が長くて棒みたい(『ポパイ』のオリーブぽい体型)な上に、動作のキレが漫画みたいにダイナミックだから、ドタバタした動きのドタバタのレベルが異様に高いw
でもそのスーパーガサツな動作が誇張された「ガサツな演技」だけじゃなくて、えらくリアルに「10代女子のふてぶてしいガサツさ」を表現してるのが凄い。あんな感じですよ、制服の下にジャージ履くような女子中高生の普段の気の抜けたガサツさって。
演技の観察眼が上手いのか、単に地が出たのか微妙なとこだけどw面白かったです。

テレーズ・ギーゼは安定した偏屈ババアで上手いし、アレクサンドラ・スチュワートとジョー・ダレッサンドロが美しい!
オチの謎バトルはともかく、凛として神秘的な美男美女だわー。うっとり。
ただ、脱いでないジョー・ダレッサンドロはたまに狩野英孝に見えるw角度的に僕イケメンつけ麺と言いたくなってしまって困る時があるwなんでだろうw

★スヴェン・ニクヴィストの映像世界で寝てみたい

さて気になる木。
スヴェン・ニクヴィスト撮影監督の撮った作品は、観ると映像の中でふとん敷いて寝てみたい誘惑に駆られてしょうがないw「観て心地良く寝たい」じゃなくてもう「入って心地良く寝たい」。
そのせいかベッドが印象的な映画が多い気がする。さすがにただの気のせいか。
『ブラックムーン』のババアのベッドも体をふんわり包み込んでくれそうな空気でいいけど、ふとん敷いて寝てみたいNo.1作品は断然『サクリファイス』。あれはやばい。木の下の草むらでふとん敷いて寝たい。無印の人をダメにするソファなんか持ちこんだら一週間くらい寝続けられると思う。話の内容は寝れるどころじゃないけどw
ご高尚すぎて爆睡必死なタルコフスキー監督作品ですが、こちらもおすすめ。ふとん持参で是非試してみてください。

(了)
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