No.154 『赤い影』

公開年:1973年
原作:ダフネ・デュ・モーリア『今は見てはいけない』
監督:ニコラス・ローグ
脚本:アラン・スコット、クリス・ブライアント
ジャンル:やってません。めくるめく前衛旅情サスペンスホラー

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その昔お母様は言いました。
暇があればコンビニでサブカルバカ雑誌を買って読み、オカルト特番・深夜のお笑い番組・B級アイドルバカドラマばっか見てるうめめちに、そんなもの読むな見るなと止めなかったが、時どきテレビの前に座らせるとビデオデッキ(懐かしい)のリモコン押して言いました。
「たまにはちゃんとした名画を観ろ」と。

って事で今回は田舎のお母様に親孝行のつもりシリーズ。
エロバカを捨てて名画を観よう。

第1弾。ニコラス・ローグ監督作品。
これまでに紹介したのは「おにぎりみたいな宇宙船」「わくわく動物丸焼きランド」「あひるちゃん風呂で仲良く3P」とかのヘッポコ要素付きやりすぎ前衛お芸術作品だったが、今度は本気で名画である。
タイムアウトロンドンが選ぶイギリス名作映画第1位!
英国映画協会が選ぶイギリス名作映画第8位!
BBCが選ぶイギリス名作映画第3位!その他もろもろ。
本国イギリスじゃ『逢びき』『ケス』『秘密と嘘』『ウィズネイルと僕』と並んで、業界人インテリ御用達の「これを挙げときゃ間違いなし」な玄人好みの名作です。

ただし。
どんだけ名作と讃えられようが、また名作と呼ばれるにふさわしくヘッポコを封印して編集に超絶技巧を凝らし麗しく撮ってようが、所詮ニコラス・ローグはニコラス・ローグ、「文字で書き起こすと単純でつまらない話を見事に正体不明なお芸術に撮る」世界有数の天才めくるめく派監督ニコラス・ローグ様なのだ。
冷静に考えたら「これのどこがイギリスNo.1やねん」とツッコミたくなる話であります。
いや、名画は名画なんだけど。

★予告編



ミステリー色強めでかなり控えめな予告編。
なぜエロシーンが全然無いんだああ!出し惜しみしやがって!

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公はインテリ英国人中年夫婦、ジョン(ドナルド・サザーランド)とローラ(ジュリー・クリスティー)。
2人には息子と娘(金髪美少女)がいたが、数か月前に庭でボール遊びしてたら池ポチャして、娘が取ろうとしたら溺れて死んじゃった。
それから毎日ローラが嘆いて鬱々しっぱなしなので、ジョンは気分転換になればと仕事のベネチア出張に妻を連れて行く。
けれど街には連続通り魔殺人事件が発生中。着いて間もなく犠牲者が出たらしく、ご遺体がパンツ丸出しで運び出されるのを目撃しちゃっていや~んな空気。そして夫婦は旅先で不思議な出来事に見舞われる…というストーリー。

「子供を亡くした中年夫婦のベネチア旅行」と書くと、いかにも「古い海の都で夫婦は不思議な体験と巡り合い、夫婦は悲しみを乗り越える…」って調子の、哲学的な洞察たっぷりなしみじみ系深イイ話が始まりそうだ。
でも全然違うんだけど。

★ラスト前まではただの雰囲気サスペンス映画

レストランで旅行客のおばちゃん姉妹に親切したら、妹(ヒラリー・メイソン)が霊媒師で「あなた夫婦の間に小さな女の子が見える」とか言われて、ローラが動揺して失神する。
ジョンが仕事で教会に行けば(ジョンは水没寸前の古い教会から美術品を救うプロジェクトをしてる)、フラスコ画修復工事の足場が崩れて危機一髪!になる。
通り魔事件といい、オカルトめいたハプニングの連続で旅の出鼻をくじかれる夫婦だが、ジョンはインテリらしく霊媒師だの娘の霊だのバカバカしい!と取り合わない。逆にローラはおばちゃん霊媒師姉妹と仲良くなり、宿へ遊びに行き娘の霊をイタコしてもらっては「不吉だ、ベネチアを離れなさい、危ないと娘さんが告げている」とか言われて、いちいち真に受けてちょっとうざい。

でも娘イタコのおかげでローラは鬱々した心が晴れた様子だし、旅先の解放感もあって2人は
お久しぶりに情熱的な特濃の一発をかます

予定外の子供ってこういうタイミングでうっかり仕込まれがちですよねwでも予定外に来たのは子種じゃなくてまたもハプニング。
息子の寄宿舎学校から「お子さんがケガしました」と電話が掛かってきたので、ローラは慌てて朝一番の飛行機で帰国する。

ところが昼頃ジョンが教会へ向かう途中、喪服着て霊媒師姉妹とゴンドラに乗るローラの姿を目撃してびっくり。
ジョンは「まさか姉妹に洗脳されてさらわれて!」と思い込み警察署へ駆けこむが、警察はやる気無さげだしイライラw自分の宿泊ホテルも姉妹の泊まるホテルにも尋ねるが、嫁も姉妹もいないし、ホテルのビミョーな対応(と陰口に聞こえるイタリア語)にまたイライラw
どうしよう大ピンチ!となったがジョンはふと気づく。

「そういえば俺学校にまだ電話してねーわ」

インテリジョンさん、まさかの大ボケwww
普通いの一番に息子の学校に確認取るだろ!

で、電話したらローラは当然息子と一緒にいるしwケガも全然軽症だった。
ローラは「今晩中にベネチアへ戻りまーす」と返事して、とりあえず一安心。
でもベネチア警察たら第一印象の割に優秀で、霊媒師姉妹はとっとと署に連行されて事情聴取受けてたんで、ジョンは「すみません勘違いでした」と平謝りでおばちゃん達を迎えに行く。

…ってラスト前までこんな感じなんだが。
麗しく蠱惑的な語り口で煽りまくるのでだまされますが、正直霊媒師姉妹を除けばただの海外旅行者あるある話じゃねーか。

今にも何かが起こりそうな雰囲気だけでオカルトシーン全く無し。息子の首がグルーンと回りもせず、霊媒師おばちゃんがナタで惨殺しまくりもせず、濃い一発にご満足でシャワー浴びるローラが襲われメッタ刺しとか一切いたしません。
かといってジョン夫婦の絆や葛藤苦しみが描かれる訳でもなく。
まぁ「何かが起こる雰囲気」だけで映画の9割を引っ張るのは凄いっちゃ凄いが、サスペンスとしても夫婦の物語としても、なんともビミョーな展開である。

ところが真夜中ベネチアに戻ったローラが、旦那と入れ違いで霊媒師姉妹に挨拶に行ったら「だめよ旦那さんを止めて!」と叫ばれて、真っ暗なベネチアの街を走り出した途端に、怒涛のラストが始まります。
すごいです。
ラスト数分でサスペンスホラーが一気に爆発します。
霊媒師姉妹をホテルに送った帰り道、ジョンは赤ずきんレインコートを着た少女を目撃して「まさか娘が!」と錯覚する。間もなくローラが後を追って走る。少女を追って古い建物に入ったジョンが目の前で見てしまった光景は!

★それではどうぞ!



まあ!サムネイルがディスイズ全開オチバレ!
じゃなくてディスイズ人生最期の走馬灯!パーフェクトめくるめく!
噴き出す血がモロ血のり色で何だかなーとは思うがw

って事でつまりジョンは元々「未来を予知する第六感」を持っていた。
そして実は霊媒師おばちゃんに警告されるまでもなく自分で自分の死の予知風景を見てたんだが、気付けなかった。
だから警戒もせず赤ん坊少女タマミな通り魔殺人鬼にうっかりついて行って殺されちゃったんである。
最後は予知通り喪服姿のローラが霊媒師姉妹とゴンドラに乗り、ジョンの亡骸を運ぶ風景が映り、きれいに伏線を全部回収したところでジ・エンド。


★感想

どうっすか

ハートマークつけてみたものの、文字で書いたら本当にしょぼい話ですねー。
『世にも奇妙な物語』の尺で十分なサイズのB級スカスカサスペンスだ。
平成の世の中には冷静に見たら美形と言い難いルックスなのに雰囲気でごまかす「雰囲気イケメン」なるズバリな言葉があるがw、『赤い影』も映像と編集でごまかしてナンボの「雰囲気イケメン映画」だと言える。

ただその雰囲気が、最高に妖しくて素晴らしいの極み。何でも究極を付けるのは陳腐だが、これはガチな意味で「究極の雰囲気イケメン映画」だと認定します。

★血と水と迷宮ベネチアのめくるめく恐怖のアンサンブル

なにせオープニングからニコラス・ローグのめくるめく節が全開で飛ばします。
冒頭の娘が溺れて死んだシーン。雨の庭、池の水草にもまれてくるくる回るボール、娘の赤ずきんレインコート、教会を映したスライドに映る赤いコート、スライドにこぼれる赤ワイン…と映像を次々畳み掛け、ずぶぬれで子供を抱えて絶叫するジョンのスローモーションで悲劇をここぞと煽る煽る。
サスペンスホラーだから血。
メイン舞台が運河の都ベネチアだから水。
発想そのものは単純だけど、くすんだ雨の風景にほとばしる鮮やかな赤、したたる水しずくの美しさ、さりげなく伏線を散りばめた編集の美しさに溜息もんです。

本編のベネチアの街の撮り方も凝っててすばらしすぎる。
といっても「ベネチアの観光名所を映像美でご紹介します」テイストじゃない。曇って薄暗いし寒そうだし、ロケ場所も寂れた裏通りやゴミゴミした路地ばっかりだし、現地の人は不気味だしで、むしろ観光局が見せたくない方面ばっかり撮ってますが、薄気味悪く迷宮みたいな街の空気が何とも魅力的に映るんですよねー。
赤色や水のモチーフの見せ方や伏線の散りばめ方も上手いし、何気ない細かいショットの構成がひとつも手を抜いてなくてきれい。美しいだけじゃなく、観てる人の感覚が重く怖くなるよう工夫されてます。
だから実際は旅行者あるある程度の事件なのに、主人公夫婦がベネチアの街をさまよう、ただそれだけのシーンに流れる空気感だけで途方もなく絶望感に襲われます。

そんな風にビミョーな展開のB級サスペンスに見せかけて、実は計算づくでじわっじわっと観客の心をなぶり殺しにしておいてからの、怒涛のラストですよ。
深夜の静かな場面からめくるめく走馬灯に至るまでのアクセルの踏み具合、ライティング、画面の赤のきかせかた(ローラの赤ブーツが絶妙!)、カメラの揺らし方まで何もかも最高です。
いやあ、ほんと上手いなあ。
これぞめくるめくカメラワークってやつですよ。
鮮烈なショッキングホラー!と言うには画面が古すぎるのと、血のりが血のり色すぎるのと、タマミ年の割に足が速すぎやろ!が欠点だけどwツッコミを差っ引いても映画史に残る名シーンだと思います。

★ジュリー・クリスティの真似できそで出来ない英国インテリ人妻ファッション

もちろんアンソニー・B・リッチモンド撮影監督の腕もすばらしいです。
ニコラス・ローグ&アンソニー・B・リッチモンド監督といえば『地球に落ちて来た男』『ジェラシー』もそうですが、十八番の「必殺!薄幸の麗し美形撮り」が今回も麗しさ炸裂で萌え萌え

『地球に落ちて来た男』のボウイさんの人外すぎる美貌
『ジェラシー』のテレサ・ラッセルの「うおお!エロい!エロい!」と鼻息ムフーンになるファムファタルっぷり。
ついでにアンソニー・B・リッチモンドは絡んでないが『パフォーマンス/青春の罠』のミック・ジャガーの瞳ウルウル少女漫画仕様
そして今作のジュリー・クリスティの憂いに満ちた薄幸の人妻美
どれも甲乙つけがたいなあ。

さて今作のジュリー・クリスティの魅力というと、体当たりの特濃一発シーンばかりが語られがちです。
もちろんエロシーンは中年人妻のエロさ爆発でたまりませんが、服着てるシーンもこれまたステキなんだわって事でファッション馬鹿うめめちは「インテリ人妻ファッション」に釘付けでした。

というのも私モードキャリア系から『頭と品の良さげなプチマダムファッション』に転向しようと企んでましてーw
いかに(そこそこお手頃な軍資金で)いいとこの奥様風に偽装するか。我ながら欲張りなテーマに頭悩ませてた時、「そうだ『赤い影』のジュリー・クリスティをパクろう」と思いついたのですよ。
流行の70年代&英国調で、インテリ階級出身の嫁設定な彼女のファッションはツイード&シンプルニット。
なんてシックですてきなんだろう。理想のプチマダムにぴったり。

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ツイードジャケットにこんなセーターとかキレイすぎるし。

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シンプルなカットソーにアクセ使いも可愛いし。

しかもジュリー・クリスティ身長157㎝だし、なんと私より背が低いw
で、「これは(ハリウッドやアメドラより比較的)私が真似ても無謀じゃないだろう」と思いまして、速攻似たのを買ってコーデしてみたのですが、どーもかなり激しく違う。
あれーなんでだろう?思ったより地味で老けすぎねーか?と着こなし方やアクセ使いをいじってみたんだが、どうにもこうにもパッとせず断念。あわてて顔映りの良いアイテムを買い足すハメになりました。

ってことで私うめめちは貴重な事をひとつ覚えました。

いくら中年だろうがジュリー・クリスティは一般世間にマッパを見せられるレベルの英国人美人女優の「シックで知的な」ファッションを、顔も体型も普通の日本人がまんまパクるとただの地味にくすんた中年おばはんである。

当たり前じゃねーか!な結論なんだが、意外と実行して痛い目みないとわかんないものだねーw
てことで自戒の意味も込めて大文字で書いておくことにする。頭と品の良さげなプチマダムの道はなかなか険しいなあ。

…とグダグダ書いててうっかり肝心の特濃一発エロシーンの感想を忘れてるではないかw
いやー、こちらもいやはや眼福眼福w
つい感想が昭和オヤジになってしまうがwさすがエロシーンの名作トップ10常連だけある。激しい割に撮り方がきれいで品もある。バッチリです。
あまりにがっちり絡んでるんで長年「本当は入れてる」噂が絶えず、後に「本番やってません」と監督が証言するはめになったとかw
一発になだれ込むまでの過程と、事後に余韻に浸りながら化粧してドレス着るシーンを交互に挟む演出を入れて「久しぶりの営み」ムードを煽るんだが、カット割りがうまーい!

とは言えデカい難点はある。
主人公のキーファー父ちゃんサザーランドのルックスがエロシーン向きじゃないw
曲者脇役としてはすんごい存在感のある人ですけど、この映画トータルでも英国インテリ中年の雰囲気は凄く合ってるんだけど、エロだけはなあ…マッパでがっつり絡まれると目が泳ぐw
当時まだ30代らしいですが既に年齢不詳で顔は長すぎるわギョロ目が怖い。顔の長いおじさま&じいさまが好きで、しかも非イケメン脇役中年俳優のエロシーンもばっちりOKな私ですら引くレベルでしたw
まぁエロシーンで男優は添え物ですし、キーファー父ちゃんも極め控え目に撮られてるので、気にしなければ気にならないですが、騎乗位でおやりになるシーンの時、なんかチラッと気になってウッとなるんですよねw我ながらどんな感想だよ。

★気になるあやしい脇役の木

感想がだらけてきたんで、そろそろ恒例のプチネタで締める。
今回の気になる脇役は、ジョンの仕事のプロジェクトに携わるイタリア人司教様役のマッシモ・セラート。イタリアの大女優アンナ・マニャーニを妊娠させた途端、速攻ヤリ捨てで逃げたエピソードが知られてるらしい。最低やなw
数シーンの登場で一応善人役ですが、物腰が聖職者らしからぬうさん臭さ全開ですてきw
まぁ映画でよく観るステレオタイプな「あやしいイタリア人」キャラなんだが、たった数シーンでここまでうさん臭いと逆に気になってしょうがない。特に鼻から下のラインと指にはめたでっかいオニキスリングが、生臭オヤジ欲バリバリであやしすぎるw例えるならみのもんたがコントでもない場面で坊主役で出てきたみたいな場違い感が癖になります。ぜひチェックしてみてください。

(了)
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