No.158『妖星ゴラス』

公開年:1962年
監督: 本多猪四郎
脚本:木村武
ジャンル:日本人すごい!人類すごい!地球すごい!特撮SF映画

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遅ればせながらあけおめ。
一発目は景気づけに壮大な科学映画でお祝い。
池部良主演!日本人すごい!日本の科学すごい!宇宙の脅威には日本人中心で世界なかよく闘うんだー!
なんだか1年くらい前に似たようなレビューを書いたようなwとってもデジャブw

デジャブついでにその似たような東宝特撮映画『惑星大戦争』の感想で
まぁライバル東映の『宇宙からのメッセージ』だって「星のケツから噴射装置が出て星が丸ごと発進」なんて無謀な事をやらかしてますんで
と書いたんだが、実はご本家東宝にも「星のケツから」設定のSF映画が存在しましたw
しかも極めてクソ真面目にも、東大理学部のご協力のもと「星のケツから」を科学的に考証して作ったそうです。

ちなみに「宇宙から来た小惑星が地球に衝突する設定のSF映画」といえば、有名どころでは『ディープインパクト』と『アルマゲドン』ですが、どちらも地球の対抗策は「惑星に核爆弾をぶちこんで撃退する」です。
に対して本作のテーマは「よける」であります。
「闘わずして『よける』」平和的な手法、それを真面目に考証する姿勢、「考証するべきはそこだけかよ!他にでっかいツッコミどころがあるがそっちはノー考証かよ!」なボケシーン、政治経済面で難しい所は国連様の力で強引に片づける姿勢、精巧ではあるがださいプロダクトデザイン。何とも伝統の日本式SF映画らしい映画ですw

★予告編



清く正しい東宝特撮映画成分100%な予告編。一部笑いどころはありますが。

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台は1979年の当時としては近未来の日本。

オープニングは海辺をドライブするオシャレ者のねーちゃん2人組(白川由美・水野久美)。
いい感じのビーチを見つけて車を止め、水着に持ってないけど泳ごうとする。すると目の前でロケットが発射する。
ロケットの飛行を見送りながらパパや恋人が乗ってるのよー、と言い出すねーちゃん達。
固唾を飲んで祈りながら見ろとは言わないが、大事な人を乗せたロケット発射をビーチで水泳しながら見送ろうとした神経はちょっとわからんwのんきな人達である。

さて打ち上げられたロケット「隼号」は土星探査のため宇宙空間を飛行中に、質量が地球の6000倍ある謎の小惑星を発見する。
白川由美のパパである隼号艦長(田崎潤)は地球の指令本部に惑星の事を報告すると、なんと「土星探査を中断して小惑星調査に切り替えるぞ!」と謎の星めがけてレッツゴーw
そんなあ、国家プロジェクトを艦長の独断であっさりやめていいのかよ!国家予算もかけてるだろに。
で、ロケットは案の定小惑星の引力につかまり墜落する。
小惑星に呑み込まれて逃れられないと知った乗組員達は、墜落の瞬間はみんなで涙の万歳三唱して散る。うーん、特攻メンタルですなあ…

★緊急事態でも予算と国会対策と根回しが必要な日本政府

さて日本では隼号事件をめぐり、政府の要人達が責任のなすりつけ合いをやっていた。
そのとき衝撃のレポートが知らされる。なんと小惑星(「ゴラス」と命名)の軌道を解析した結果、3年後の1982年に地球に衝突する事がわかったのだ!

河野博士(上原謙)と田沢博士(池部良)率いる日本宇宙物理学会チームは「日本どころか地球の危機だ!」と緊急対策を色々検討するが、あれこれ対策を提案しても、日本政府は予算がどーの国会対策がどーのと渋い顔してなかなか動いてくれない。なにせ小型探査機を1機飛ばすだけでも「予算承認が大変なんだよぉー」と大臣がグチる始末である。
ていうかファミリー向け特撮映画で予算計上をどーするとか、国会で野党が「予算の無駄遣いじゃないですかー?」って追及するとか、各省庁への根回し手順の話とか、珍しく現実的なプロセスを踏んでるところが面白いw

そこで田沢博士は国連会議で各国関係者に向けて訴えるが、憂いを帯びたシリアス顔で何を言うかと思ったら、まさかの「星のケツから噴射装置が出て星が丸ごと発進」案w
つまり「地球のケツ・南極に巨大なエンジン噴射装置を作り、エンジンの力で地球の軌道をちょっとずらしてゴラスを避けよう!」であった。
えーっそんなびっくりー。でみんな唖然として「そんなプロジェクトを遂行する技術と資金はどこから持ってくるんだ!」と会議は紛糾する。そりゃそーだ。

しかしアメリカやソ連の科学者たちが賛同してくれて、「星のケツ作戦」は地球の科学技術を総動員した超国家プロジェクトとして各国から資金調達して、とっとと南極に用地を確保して基地を作り始めてしまう。
お役所仕事な日本と違って欧米各国は予算がー、承認がー、でぐずぐずせず、トップダウンでただちに巨額予算が下りてプロジェクトがGOする設定らしい。そんな訳ねーだろと思うが。
しかしパソコンやモニターの無い作戦本部は、やっぱりヴィジュアルがのどか過ぎてまぬけだなw南極基地の模型もレトロ風味で味がある。

一方で「『星のケツ作戦』を採用するかしないかはともかく、ゴラスの詳しい調査が必要だよね」という国連決議が通り、日本政府は国連の御旗を言い訳に、やっと小型探査機飛ばす予算が成立する。
そこで遠藤館長(平田昭彦)やお調子者隊員・金井(久保明)達の精鋭パイロットチームが探査機「鳳号」を操縦して調査に向かう。
ところがゴラスのパワーが想定外に強すぎて調査は難航。子機に乗り込み一番ゴラスに接近した金井はあやうくゴラスの引力に呑み込まれかけ、命は助かったが記憶喪失になってしまう。
しかし子機の回収方法が「子機の先端にワイヤーひっ掛けて引っ張る」って原始的すぎるだろw引力ってワイヤー一本でなんとななる力なのかいw
で、「鳳号」の探査の結果、『アルマゲドン』その他映画が採用した「惑星に核爆弾をぶちこんで撃退する」案は不可能だと否定される。ゴラスがでかすぎて核爆弾程度の威力じゃどうにもならないらしい。地球を救うのは「星のケツ作戦」のみであった。

★地球の危機でもお祝い事は欠かせない律義な日本人

「地球を救え!」と心ひとつになった世界中の国々は総力あげて急ピッチで南極基地建設を進めるが、途中で謎の地震が頻発して落盤事故に見舞われる。随分地盤が弱いんじゃね?いいのかよ?と地震国民は思っちゃうんだが、これがまさかあいつの伏線になろうとはw
でもトラブルは池部良博士のリーダーシップと日本中心の技術力で何とかカバーして、基地は無事に完成する。南極の氷の大地に埋め込まれた無数の巨大エンジンが火を吹き、地球は計算通りに軌道から外れはじめる。

ってそそそんな!軌道外れちゃって本当に大丈夫?気候とか人類の生活とかに影響でないの?
と心配するが、地球のはすでにお祝いモードw
特に日本は「星のケツプロジェクト祝賀パレード」をやってるし、白川由美のおじいちゃん・園田博士(志村喬)が「地球も無事動きだしたぞ~」と安心して正月を満喫する始末w
そんなのんびりお正月してていいのかよw地球の危機でもルーチンのお祝い事は外せないのかw律義だのう。

と、まだ危機は何も始まってないのにまるで危機を脱したようにみんなうかれていたら、予想通りにアクシデントが起こる。
ゴラスが土星の輪とかを飲みこんで成長しすぎて、さらにエンジンの出力を上げないといけなくなったのだ。
田沢博士は「エンジン装置を増設しなければ」と訴えるが、国連の返答は「資金調達がカツカツでこれ以上増やせない」。そりゃ星のケツから365日膨大なエネルギーを発射させてたら資金も無くなるけど、にしてもまた予算の話かよーw

さらにゴラス到達まであと45日!って大詰めの段階で、星のケツプロジェクトは最大の危機を迎える。
なんと!南極の氷の下で眠っていたでかいセイウチがエンジンパワーで目覚めてしまったw
宇宙規模の壮大な科学映画で、謎の落盤事故の原因がでかいセイウチってw(設定は一応怪獣らしいですが)
ぬぼーとした姿に失笑しちゃうが、ルックスはともかくパワーはある怪獣が大暴れして南極基地が破壊されて科学者大慌て。
で、国連軍がレーザービームででかいセイウチを即殺し、最大の危機は去ったかに見えた。しかしセイウチを撃退する36時間エンジンを止めたために、地球はどえらい事になるんである。

★いよいよゴラスがやってきた!

ゴラスは月を飲みこんでヒタヒタ地球に近づいてくる。
すると「36時間エンジン停止」の影響でゴラスの引力を完全に避けきれなかったため、地球のあらゆる場所で風が吹き嵐が起こり、東京はじめ世界の主要沿岸都市は異常な津波に襲われる!
もちろん田沢博士が事前に察知したおかげでみんな避難したんだが、セイウチ1匹で東京もニューヨークも壊滅かよ…おそるべしセイウチ…じゃなくてw、こんな調子で本当にゴラスを避けられるのか?と不安に思いつつ、人類全員が山岳地帯で息をひそめてゴラス最接近の瞬間を迎えた。

って事でいよいよ映画のクライマックスシーン。

赤黒いゴラス(の模型)が宇宙空間で地球(の模型)にすすすーと近寄り

そのまますすすーと地球の横を素通りして

何事も無くすすすーと離れていきました。


これだけかよ!
接近の瞬間色が変わるとか電流が散るとか特殊効果ひとつもつけねーのかよ!
あ、ひとつありました。何故か金井の記憶喪失が治ったwってなんでだよ!

とにかくぎりぎりゴラスと衝突は避けられて、国連の皆さんも南極の科学者達も、やったー!ばんざーい!と大喜び。
日本の科学の力で地球は危機から救われた。
すごいぜ日本!ジ・エンド。
にしたかったが最後の最後にとんでもないオチが待っていた。

なんと「星のケツ作戦」で地球の軌道を変えたはいいが、今度は逆側のケツ・北極に巨大エンジン作って噴射させて元の軌道に戻さなきゃならないらしい。
そりゃそーだ。だけど元に戻す装置ってまだ作ってなかったのかよ!!
最後は津波で水没した東京のど真ん中の東京タワー屋上で、最初に登場したオシャレ者ねーちゃん&白川由美弟が街を見下ろして一言。「また新しい東京を作ればいいさ♪今度はちゃんと都市計画してさ♪」
なんでみんなこんなに軽~く前向きなんだよ!!
ていうか北極の予算は誰がどこから出すんだよ!南極ですら予算カツカツだったのに!探査機1機飛ばすだけで予算国会対策根回し国連の御旗が必要なくせに!他国だって水没した各都市の復興予算も出さなきゃいけないじゃん!もう世界が破産しちゃうだろ!
とまあ、最後は観てる側が金の心配しつつジ・エンド。


★感想

って事で、妙に組織と予算(とでかいセイウチ)について考えさせられる映画でしたw
本年度の予算達成進捗と次年度の予算組みに頭を抱える人が観たら、「俺の会社もザル予算で何とかなるかも」と元気が出るかもしれませんw

制作陣の代わりに言い訳すると「でかいセイウチ」は東宝の偉いさんが「惑星の横を通り過ぎるだけじゃ絵面が地味だから怪獣でも出しとけ」と命令したんで追加したそうだ。いかにも偉いさんが言いそうなセリフですね。バリバリ大人の事情ですね。
確かに「星がすれ違うだけ」なクライマックスの絵面が地味なのは否めないがwでも何もお間抜けなセイウチにしなくてもー。ゴジラにしとけw

★誠実で前向きで勤勉で肝心なとこが抜けてるザ・日本の仕事マン

さてあらすじはありえねえ!ありえねえ!の連続で、こういう壮大なホラ映画は大好きなんですが、と同時に池部良率いる日本のトップ科学者の皆さんのメンタリティにはホラ話で片づけきれない問題があり、あれこれ感慨にふけってしまいます。
といえ池部良は毎度ながら「憂い顔で世界の危機を救うペシミスティックな科学者」ですけど、今作は回りのキャラが不思議なくらい軽~くマイペースに前向きなんで、まぁバランスが取れてると言えましょう。

というか、水没した自分の故郷見て「また新しく作ればいいさ♪」と言えちゃう、半分投げやりだがほがらかな感性は、昭和っていい時代だったんだろうなと思います。素直にうらやましいです。我々にはそんなセリフを口にできるメンタルはゼロですw
しかしながら。あのありえなさ過ぎる「まだ作ってない」オチを前向きに締める科学者さん達の態度にはふと、「昭和の仕事マンなオッサンと仕事した時にこんなオチあったよな…」とリアルな記憶が蘇ってきたw
土壇場で肝心なところが抜けているのが発覚した。最初から詰めておくべき所を全然詰めてなかった。「細かいことはいいからまずやってみなきゃ」と全然見切り発車だった。と判って、ええっどうするよ?と真っ暗になってたら「みんなで今から頑張れば何とかなる」と前向き発言されて怒り爆発。もちろん最後は修羅場w
誠実で前向きで勤勉で肝心なとこが抜けてる人達に何度悩まされた事だろう。何考えてどういう段取りで仕事してんだろ?と当時不思議だったけど、そうかこういうメンタルだったんですね。なんか理解。いや違うと思うがw

しかし「救う計画を道半ばでぶったぎり、世界は壊滅したまま」なオチにして、悲劇感が無いハッピーエンド作りって斬新ですね。「家に帰るまでが遠足です」主義のハリウッドじゃ絶対やらないでしょう。
単に製作予算が足りなかったのかもしれないがwアゴは外れたが面白かったです。

★通りすがりの賢者、天本英世

さて脇役気になる木。
地球の危機だというにのんびり正月を愉しみ、でかいセイウチを退治したら「貴重な生物なのに残念じゃの~」とのたまマイペースな志村喬も印象深いが、やはり気になるといえば天本英世の絶妙な登場でしょう。

ゴラス探査に行く鳳号のパイロットチームが壮行会でキャバクラで盛り上がってたら、通りすがりの客の天本英世がひとこと「宇宙の君らが生き残り地球の俺らがあの世行き、なんてなハッハッハ~」と皮肉る。
それだけのチョイ役なんだが、天本英世の存在感が半端なく強烈です。
何もせずも居るだけで滲み出る胡散臭さと狂気、突き抜けた知性がドスの輝きのごとく光る眼、含みのあるセリフ回し、風のようにチクリとやって風のように去るリアル風来坊。天本英世ほど「通りすがりの賢者」役を演らせたら天下一品な人もいないでしょう。すばらしい。

今このポジションに居る人って誰?結構いないな~。とツラツラ考えてたら、いるじゃありませんか!役者じゃないけど。
ムツゴロウさん畑正憲がw
演技力は度外視するとして、もし映画ドラマで「通りすがりの賢者役・ムツゴロウ」が実現するのなら観てみたい。上手くいけば天本英世の穴が埋まるかもwと期待せざるを得ないくらい、このごろ強烈な脇役に飢えているうめめちなのでした。

(了)

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