No.013『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』

製作年:1969年
原作:江戸川乱歩『パノラマ島奇談』ほか
監督:石井輝男
脚本:石井輝男・掛札昌裕
ジャンル:耽美とロマン!そしてエロティシズム!

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国内版ソフトは無く、海外仕様のDVDしか無い模様。内容が内容だししょうがないですねw

アングラ映画好きには知らぬ者なしの怪作映画。
聖なるクリスマスにこれを語るとは光栄の極みですね。

タイトルに「江戸川乱歩全集」とある通り、『パノラマ島奇談』をベースにして『孤島の鬼』『屋根裏の散歩者』『人間椅子』とかの江戸川乱歩作品の有名どころをぐちゃぐちゃに混ぜたオリジナルストーリー。

乱歩原作の映画はエログロバカの宝庫で、思い返せばけっこう見てるなぁー。美女シリーズも大大好きだし。
監督も石井輝男、実相寺昭雄、増村保造、加藤泰、若松孝二などの奇才ぞろいでどれも見応えたっぷり。うひゃー最高!

なんで乱歩小説の映画化にこぞって乗り出してるかというと、『乱歩』とさえ冠つけとけばエロもグロも変態もやり放題!っつう免罪符の役割があることと、小説自体にも魅惑的な設定だけはあるが、その割に人物の心理や背景をコマコマ突っ込んだ描写が少なく、「俺が萌えるエログロシチュエーション」を映像に盛り込みやすいからだと思われる。

そんな強者揃いの乱歩映画群のなかで本作は制作から40年以上経つ現在でも、
名作度はともかくグロ度・キチ度・バカ度は乱歩映画ナンバーワン
と讃えられる正真正銘のカルトバカ映画であります。
予告編



踏み絵にどうぞ。予告だけでもうお腹いっぱいw
「能登半島でロケーション敢行」ってテロップが出てるが、ロケでやったのか…あのシーンこのシーンを…
ロケ現場見てみたかったw

★あらすじ(青字はネタバレあり

「アングラ映画にまともな話なし」と言われるが、乱歩といえどさすが原作付きの映画だ。途中までは(アングラ映画基準で)まともなミステリー映画っぽく話が進みます。

舞台は大正時代の東京。
医師の人見広介(吉田輝雄)は何故か過去の記憶がほとんど無い。
わずかに残る記憶といえば謎の子守歌メロディと、火曜サスペンス名物・断崖絶壁波ザッパーンな風景、そして
断崖で謎のメダパニダンスを踊る白装束のオヤジである。
こんなオヤジのいる記憶などほじくり返したくないよねー。

そして理由は判らぬが精神病院に入院中である。
乳房丸出しで笑い狂う女達に変態看守、坊主頭のヤバ男と檻の中で同居という、極悪なシチュエーションで暮らしている。まともな神経してるなら「こんな所とっとと逃げたい!」と思うもの。

しかも広介は突然坊主ヤバ男に殺されかけ、返り討ちに闘ってたらうっかり殺害してしまう。
こいつはやべー!と看守の隙を見て脱走する広介。その途中で、謎の子守歌を歌うサーカス団員の美女・初代(由美てる子)と出会う。
子守唄の来歴を詳しく聞こうと声を掛けた瞬間、どこからか飛んできたナイフが刺さり初代は絶命する。
初代殺人容疑をかけられた広介は裏日本へ逃走するが、逃避行中の車内でとある新聞記事に目が留まる。
「資産家・菰田源三郎死去」
掲載された死人の写真はなんと!広介に瓜二つだった。
そこでひらめいた広介は源三郎の墓を暴いて死人と入れ替わり帰宅する。この辺は原作と一緒ですね。
妻・千代子(小畑通子)や使用人を欺いて偽の菰田家当主となり、大金持ちになったついでに自分の記憶を取り戻そうとする。

前半はちょっと強引な展開だが火サス劇場モードのミステリー映画。
若妻千代子の入浴シーンもばっちりあるし、広介に不審感を抱く菰田家の怪しい執事・蛭川役は『天国と地獄の美女』薔薇教祖役の小池朝雄だ。
あれ?意外と普通の江戸川乱歩映画じゃね?

★白装束にワカメの奇才・丈五郎様が遂に登場!

と思ったらヒロインのはずの千代子が死亡する。
さらに菰田源三郎には父・丈五郎なる人物がいて、パノラマ島はすでに丈五郎の手で作られてるらしい。
って訳で広介は丈五郎に会いに、日本海の孤島にあるパノラマ島へ向かう。

そこは記憶に残るあの風景が広がっていた。
断崖絶壁波ザッパーンを背景に、頭の天辺にワカメ貼り付けてメダパニダンスを踊りおちゃめなキツネ憑きポーズを決める、クソ怪しいロン毛の白装束男がいた!
その男の正体こそ、日本が誇るアングラ芸術・暗黒舞踏のパイオニア、土方巽演ずる菰田丈五郎様であります

この丈五郎様の怨念にグイグイ引っ張られ、話は主人公の広介をほっといて奇妙奇天烈アングラ怨念劇へ暴走する。

丈五郎様は生まれつき体に障害があり、周囲に奇形人間と気味悪がられて育った。
それでもまぁ金持ちの跡取りなので、街で評判の美人娘・とき(葵三津子)に一目惚れして金の力で結婚。一応夫婦生活を営み双子の跡取り息子ができるが、ときはキモい旦那を嫌ってイケメンと浮気に走り、ブチギレた丈五郎様は領地の無人島にときを監禁する。

丈五郎様は下男の背むし男に命じて嫁をレイプさせ、食物を与えず虫を食べさせ、
同じく島に監禁して死んだイケメン愛人の死骸を喰らう蟹を甲羅にたまった屍肉ごとむしゃむしゃ食わせたりしていじめ抜く。
ああキモー。


嫁の浮気がきっかけで自分を醜い体にした世界を恨むようになった丈五郎様は当主を息子の源三郎に譲って島に閉じこもり、下男下女の肉体を改造して奇形人間を量産する。
それが恐怖パノラマ島の正体だった。
だが人間改造たって所詮外科手術は素人の丈五郎様は、「やっぱ本格的にやるには専門的知識が必要だよね」とより狂った人間改造を目指すため、双子の息子の片割れを東京の医大へ進学させる。
という訳でジャジャーン!広介と源三郎は双子だった!

★近藤正臣に見えない近藤正臣も登場!

で、色々あったが数奇な運命に導かれて、広介は父のもくろみ通りに医師になって帰郷した訳だが。
殺人犯容疑を掛けられ実の弟を偽装してる身の上ではあるが、かといってこんなクレイジー親父の右腕になって奇形人間を量産するなんてイヤー!と当然広介は拒否する。
しかし島でサーカス初代に似た秀子(由美てる子の二役)と出会い、彼女の身の上を知って心惑ってしまう。
秀子は醜い奇形青年(有名な話だが近藤正臣に見えない近藤正臣w)と手術で無理矢理シャム双生児にされていたのだ。

そこで広介はまっとうな外科手術で秀子と正臣を分離する。
助けられた秀子と広介はなぜか唐突に愛し合い、島でラブラブに同棲して過ごす。
しかし秀子にはやはり出生の秘密があった…
なんとジャジャーン!秀子はときが間男にレイプされてできた娘。広介と異父兄妹だったのだ!

事実を知りおののく広介に丈五郎様はピストルを突き付け、「さあ奇形人間を造るんだ」と脅す。
そこへ、パノラマ島と本土の連絡船の船頭がなぜか参上して高笑い。正体は名探偵・明智小五郎(大木実)だった。
明智は一同の前で菰田一族と広介に残された謎の真相を語った。
その真相とはジャジャーン!
小池朝雄が影の黒幕、かつ土方巽に負けず劣らずど変態
なのだった。まぁ簡単に予想はつくけど。

腹黒変態執事の蛭川は主人の命令に従う振りして、陰で己の変態性欲を満たしてた。
「改造用の若い娘をさらって島に連れて来い」と言われれば首尾よく実行に移すついでに、趣味の女装姿で娘達をいたぶりもてあそんだ。
そんなS性変態プレイも好きなら、実は千代子に片思いしてた蛭川は、愛用の椅子の中に入り込み千代子の肉体の重みに悶絶するM性変態プレイも発揮してた。何気に両刀であるw

さらに蛭川は源三郎の愛人・静子とタッグを組み、菰田家を乗っ取る計画を企んでいた。
まずは当主の源三郎を毒殺する。
次に次期当主になる広介を精神病院に監禁し、病院内でひそかに殺してしまおうとする。まぁ殺害は失敗したんだが、初代殺人容疑を掛けさせて当主になる芽を潰しておく。
しかし計画成功目前で源三郎が墓から生還(実は広介の偽装)となったので、慌てた蛭川一味は寝室の天井裏から寝ている広介の口に毒薬をたらして殺害を試みる。しかし誤って千代子の口に毒薬が入って死亡する。

…と推理を語る明智小五郎。
もちろんここは名探偵役の見せ場なんだが、あろうことか横で丈五郎様がキツネ憑きポーズでフリーズしててそっちに釘付けw
人の話聞くのにキツネ憑きポーズなんて反則だろw

★そしてラストシーンで伝説へ

ともあれ真相がばれた蛭川は崖から飛び降り死亡する。
秘密を暴かれた(割に自分からべらべらしゃべってたが)丈五郎様は、自分のせいで近親相姦に走った息子と娘に(自分でばらしたくせに)なぜか後悔の念を抱き自殺する。

そんな旦那の今わの際に駆け寄ったのが、すっかりババアになった元嫁とき(生きてたのか…こんな環境で…)。
「この人は悪くないわ、浮気した私がすべて悪いの」と嘆く嫁に、「やっぱりお前が忘れられなかった」と告る夫。
この期に及んでなんで純愛シーンになるんだw
丈五郎様は最後はときの愛に包まれて息絶えた。

一方で広介と秀子は、道ならぬ恋を裂かれるくらいならいっそふたりで!とパノラマ島名物の人間花火で心中する。
(後述するが日本映画史に残る伝説の心中シーンである)
変態一家は全員死亡。悲劇の大団円でした。


★感想

いやーさすがカルトの横綱
あらすじだけでもお腹いっぱい!観たらさらに満腹満腹!
昭和日本映画の真摯で過剰に狂ってる空気が味わえる。

映画を観るはるか前から噂には聞いてたが、土方巽丈五郎様のルックスがあまりにディープインパクトすぎる。

画像観るだけでも相当ホラーだが、動く姿はさらに奇怪でメケメケ。
キリストか?モーゼか?いや丈五郎様だ!!!くらいのど迫力。
演技はど素人、セリフは棒読みだが、五臓にズンズン響く声と不気味な一本調子のリズムが妙に洗脳されそう。
登場するだけで映画を異次元にねじまげる半端ないカリスマは是非体験してほしい。
他の石井輝男映画にもチョイ役で出てるので、折を見てまたレビューしようと思います。

★期待通りにアングラ全開。気になるインテリア

そしてパノラマ島の狂いっぷりもハンパない。
先に紹介した土曜ワイド劇場『天国と地獄の美女』で伊東四朗が造った夢のパノラマ島はエロい熱川バナナワニ園だったが、海の底の竜宮城で半裸美女がうねうね踊る姿にはまだ「男の夢の理想郷」ってイメージが感じられた。

しかし土方巽丈五郎様が造ったパノラマ島はさすがアングラバージョンで一味違うぞ。
奇形人間に改造された暗黒舞踏塾生の皆さまが白塗り全裸で雄たけびをあげ踊り狂う、アブノーマルな野生の王国なのだ。
狂った風景が延々と続く地獄のパノラマ島巡りの光景に唖然茫然とするばかり。
超スバラシイ!ビバジャパニーズアングラ!

★気になる俳優、もちろん曲者・小池朝雄

そして今回の気になる木と言えば当然この人。
女装にくわえ煙草で娘をいじめてフッフッフッと悪代官の笑みを浮かべる小池朝雄が最高!!
素晴らしく柄が悪くリアルな倒錯演技。でも昭和が香る年季入った場末のスナックにこんなママいそうだわーwな実在感あるルックスが凄い。
さらに変態女装とコロンボな声が絶妙にマッチングしてるのも凄い。
曲者役者極まれりな怪演技であります。大好きだ。

★さて噂の伝説wwwシーンです

さて最後に語るのは、日本映画史でも屈指の迷シーン、パノラマ島奇談名物・人間花火であります。
『天国と地獄の美女』は血の美女大砲を派手にぶっ放したが、こっちもやっぱり色んな意味でアングラバージョンでした。

画面いっぱいの夕暮れの空に花火が散る。
田舎の村祭りよりしょぼい花火に混じって、どこから見てもマネキンな首や手足が透明テグスに吊られて画面の右へ左へゆーらゆら。
ええ、ばっちりテグス丸わかりです。『柳生一族の陰謀』のラストの首よりマネキンです。

そんな田舎の学芸会の人形芝居ばりにチープな画に
「おかぁさぁーーーん」
「おかぁさぁーーーん」
と心中兄妹の棒読みセリフがリフレイン。


さらに最初に出てきた子守唄BGMが被り、なんだかわからんがぐっと盛り上がる。
次に何がでてくんの?内臓?
という余韻などぶったぎるごとく、画面にドドンと現れる「終」の文字。

ああ、素晴らしい。
低予算なやっつけ小道具、棒読み演技、近親相姦の結末を「お母さん」で締める破天荒な脚本、煽る割には投げっぱなしのオチなし唐突エンド。既成の起承転結などすべてぶち破る、アングラとして完璧な演出です。
日本カルト映画史に輝く名作にふさわしい、チープで笑えてカタルシスなラストシーンでした。

(了)
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