No.160『東京流れ者』

公開年:1966年
監督:鈴木清順
脚本:川内康範
ジャンル:春のカラフル清順祭り!男と男の前衛ミュージカル流れ旅

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鈴木清順監督追悼。
「めしの炊ける匂いに欲情する男」等々のメケメケ前衛てんこ盛りな珍作品、そして伝説のジジイ棒でも名高い清順監督。ご高齢だから覚悟はしてましたが寂しいですねえ。
なんかワイドショーのコメンテーターみたいな感想だな。

という訳で今回は『東京流れ者』。
偶然にも今年のアカデミー作品賞読み間違えで話題の『ラ・ラ・ランド』の監督ダミアン・チャゼルが、本作の影響を受けたと公言してるらしい。当ブログ名物の「微妙に時事ネタにのっかるパターン」ですね。

どうでもいいあらすじ、完璧な構図のお芸術ショット、暴走する美術、男と男の謎友情、謎空間でファンタジーバトル。
清順監督の才気が全面にほとばしってます。おすすめ。

★予告編



川地民夫の「転がってもスタイリッシュに立つコートの襟」が印象的な予告編。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公の「不死鳥のテツ」こと本堂哲也(渡哲也)は倉田組に所属するヤクザ者。ところが組はおやっさんの倉田元組長(北竜二)の方針でヤクザ稼業から足を洗い、よくわかんないがガンジーばりの無抵抗主義を貫いてるらしい。
だから映画はテツが主題歌『東京流れ者』を歌いながら無抵抗で倉田組のライバル・大塚組員達にボコボコにされるところから始まる。

まず、鈴木清監督ヤクザ映画で注目といえば!主題歌ですね。今回はいかがでしょう。

♪どうせ散るなら男花~ 恋も捨てたぜ義理ゆえに~ ああ東京流れ者~♪

『殺しの烙印』の主題歌『殺しのブルース』に比べちゃかなりまともである。
曲がったネクタイを気にして死んだ~♪とか渡哲也ボイスで歌ってくれるかと思ったのに。ちょっと残念。

さてあらすじ。
テツはおやっさんに習い、カタギになってクラブシンガーの彼女・千春(松原千恵子)と結婚したいと思ってるが、ヤクザ業界はそう簡単に足を洗わせてくれない。
実は当のおやっさんのカタギ稼業(不動産業経営)が上手くいかず、金貸しの吉井(日野道夫)から自社ビルの権利書をカタに多額の事業資金を借りてたからだ。
ライバル大塚組長(江角英明)は、子分の田中(郷鍈治)の彼女でおやっさんの事務所秘書・「マンガ大好き娘」睦子(浜川智子)から情報を入手し、「これは倉田組を殲滅するチャンス!」と吉井を誘拐して権利書を奪おうとする。
おやっさんのピンチを助けようとテツは大塚組のアジトに乗り込んで吉井救出に動くが、吉井はさっくり殺され権利書が奪われる。ついでに千春も誘拐されかけたりして、テツは嫌々ヤクザ抗争に巻き込まれていく。

…という、まぁ普通にヤクザ映画フォーマットにのっとった話です。

★ポップでカラフルに暴走するヤクザ映画。しかも途中でCMタイムあり

しかし鈴木清順監督作品ですから普通のヤクザ映画な訳がない。序盤からあらすじそっちのけで木村威夫美術監督が暴走しちゃって、昭和前衛ワールドを繰り広げます。

ジャズ喫茶の壁はパープル、千春が勤める高級レストランの照明はまっ黄色。ヤクザ映画と思えないカラフル仕様です。
色だけじゃなく柄もヘンだ。不動産業の事務所の壁紙がローマの闘技場模様。何故にコレ。
なんで事務所なのにデスクも棚もなーんにも無くて椅子一脚しかないの?仕事する気あんのかよw
なんでおやっさんの家はテーブルや革のソファーにレースのカバーをかけてる横に武者よろいオブジェがあんの?なんで日本を知らない外国人が作ったみたいなヘンテコリン設計なの?
なんで高級クラブの石像はドーナツ掲げてるの?
なんでジャズ喫茶は水道ガスの配管パイプが客用椅子代わりで座り心地最悪なの?
隅から隅まで謎の仕掛けだらけで見入ってしまいます。

もちろん登場キャラも全員カラフルな昭和スタイリッシュでキメキメ。
渡哲也は(若い!初々しい!)バブル時代の新入社員かと思うようなサックスブルーのスーツ着て、ピーンと硬直するくらい片腕と足を伸ばした不自然過ぎる壁ドンポーズをきめるw
大塚組が雇ったライバル殺し屋「まむしの辰」(川地民夫)はコートをモデルばりの立ち襟肩掛けポーズでキメキメ、郷鍈治は顔の脂テカりまくりのドヤ顔で(別の意味で)キメキメw

さて話に戻ると、テツは権利書を取り戻すため大塚組のアジトに乗り込むが、なんと床がパカッと開いてカラクリ落とし穴仕掛けw特撮番組の悪の館かよw
またテツも無警戒にズカズカ突進して穴に落ちるしwもーちょっと考えろよw

そしてテツが穴にはまってる間におやっさんと大塚組は権利書を巡り交渉決裂、結局ドンパチするが、おやっさんが撃った弾が偶然マンガ娘に当たって死んでしまう。
まぁマンガ娘の死は「吉井と娘の無理心中」って事でうやむやにごまかすが、それをきっかけに?大塚組長はおやっさんと手打ちする一方で邪魔者テツの始末を図る。テツは大塚組一同からこれでもかーこれでもかーと追われるはめになる。

まずはいきなりテツvsまむしの辰の一騎打ち。
ところが決闘シーンは脱線しまくり。
辰は殺し屋の癖にありえないくらい派手なマイカーでやってくるわ、テツは余裕で主題歌『東京流れ者』を歌うわ、車は燃えるわスクラップ工場で潰れるわ(しかしスクラップ工場の社名が「日本カーベキュー」ってwえー加減なw)。
もちろん主人公だからテツが勝つんだが、「無抵抗主義だから」テツは辰をビンタ一発で終了wそんなゆるゆるなーw

で、勝ったけどしつこく大塚組に狙われるテツは、何故か自慢の角刈りをドライヤーでブローしながら(なんと映画の最中にドライヤーのCMがある!そんな無茶なCMタイムあるかw)、「おやっさんに迷惑掛けないため」流れ旅に出るのだ。

★日本のどこへ流れても、兄貴と殺し屋と地元ヤクザがついてくる

そんなこんなで「流れ者」なら雪国はマストだろ、と次の舞台は山形県庄内地方。
テツは到着早々地元警察に捕まるが、倉田組フレンドの地元ヤクザに助けられる。その見返りに助っ人やってくれと頼まれて、テツはドスにハジキに大立ち回りのヤクザバトルに参戦させられる。
もちろん凄腕のテツだから『東京流れ者』を歌いながら(また歌かよ!)さっくり退治する。
そういえばマンガ娘彼氏・郷鍈治もテツを追い暑苦しく参戦してたが、片目を潰されリタイヤする。

やれやれ一仕事片づけたぜ、と思ったら今度は辰が追ってくる。
そこで線路の上で迫りくる汽車をバックにテツと辰が一騎打ちアゲインw
何故にわざわざ線路でやるw当然辰は汽車にひかれるしwでも生きてるしwテツは無意味に上半身裸サービスするし意味わからんw
さらにテツの兄貴分、「流れ星の健」(二谷英明。なんつうネーミングだw流れ星てw)が唐突に助太刀に参上する。
健兄さんは負傷したテツをニヒルな説教しながらかいがいしく手当しちゃうし、男と男のナゾ絆を感じるキャラ登場です。
しかしテツは流れ者の流儀とばかりに兄貴分を別れ、追ってきた千春ともすれ違いで、ひとり次の旅に出る。

『東京流れ者』を歌いながら(しつこい)全国を流れ流れて着いたのは長崎・佐世保。
けれどテツは早々に倉田組フレンドの地元ヤクザ・梅谷兄さん(玉川伊佐男)に歓迎される。
すごいな倉田組ネットワークwテツの情報たちまち筒抜けw辰も健兄さんもただちに追っかけて来るし、これじゃどこへ流れても同じじゃね?
で、佐世保といえば米軍基地ですから、もちろん米軍ご用達バーで軍人が暴れ白人ダンサーはテツに色目を使う定番ネタが始まり、騒ぎのドサクサに乗じてまたテツvs辰vs健兄さん&梅谷兄さん軍団vs暴れる軍人の何が何だかわかんないがセットを破壊しまくるバトルが繰り広げられる。
最後は追い詰められた辰が「3度も狙ってタマ取れないのは殺し屋の恥」と自爆する。

さてその頃倉田のおやっさんは、なんと(予想通り)テツを裏切り、テツ&千春と引き換えに大塚組長から権利書を取り戻していた。
おやっさんは早速梅谷兄さんにテツ殺害指令を出すが、梅谷兄さん&健兄さんはこっそりテツを逃がす。
復讐するため東京へ向かうテツを見送りながら、外れでしんみり語り合う二谷英明と玉川伊佐男。渋いショットだなー。
ちなみに映画には健兄さんのテーマ曲もある。タイトルは「男のエレジー」w渋いが笑えるwぜひ聴いてくださいw

★東京謎空間でラ・ラ・ラ・ファンタジーバトル

って訳でテツは飛行機で東京に直行し(流れ者の割に資金もってるよな)ラストバトルを迎える。

場所は高級クラブ。ドーナツ掲げた謎石像のある真っ白しろなオンステージ(という名のファンタジー空間)で、白いドレスの千春が大塚組長に「お前はもう俺のもの。俺の為に歌うたえやコラ」と脅されていた。
そこへ千春を守りに来たのが郷鍈治(こいついつの間に善人化したんだw)。しかし大塚組長にピストル突きつけられて

いきなりピアノを弾きはじめるwww

まさかの郷鍈治がピアノ演奏w急になんでやねんwまだちあきなおみはデビュー前だったはずだが。
ていうか、こいつは千恵子の伴奏用キャラだったのかってのが本筋より衝撃w

そこへテツが謎の白い廊下を渡って侵入し、奥手からステージ乱入(ライト付き)。すぐさま銃撃戦が始まるが、おやっさんに裏切られて「無抵抗主義もクソもあるかー!」とテツは大塚組の郷鍈治も大塚組長も護衛の連中もバリバリ殺しまくる。
さらにおやっさんのブランデーグラスを砕き割り、「今回で盃、返すぜ」と決め台詞。
おやっさんは自殺し1人取り残された千春がすがるも、「流れ者に女はいらねえ」と突き放して、テツはまたどこかへ流れていくのであった。ジ・エンド。


★感想

ご覧のようにムチャクチャです。
ムチャクチャだけど何故か気分がアガる映画であります。

いくらご自分がガンジーの思想に共感するからって、ヤクザ映画で「無抵抗主義で殺しはしねえ」でラス前まで押し通すっていくらなんでも無理がありますが川内康範先生w
主人公は殴りーの暴れーのだが殺しはしねえ!キリッ!でトドメ刺さないせいで、かえってもめ事が起こるし、周りの人が始末して強引に自殺したり、まぁ結局主人公が殺さなくても死んでるじゃん。
まるでエログロ映画に出ときながら周りの女優が脱ぎ汚れやりながら自分だけ清純派で押し通すヒロインみたいな立場だなw

ちなみに脚本の川内康範先生って誰?な人もいると思いますので一応解説。
森進一と『おふくろさん』でバトった「耳毛の長い変な人」です。
うめめちもあれで先生のキャラを覚えました。あと、あの騒動はトラヤのようかんが味わい深かったなw
ちなみに先生の歌詞世界はめっちゃ昭和くさいwガンジーの教えはどこいった?なドロドロ泥沼歌謡曲が多いです。代表曲のひとつが「あぁん」連発攻撃の『伊勢佐木町ブルース』ですから。「あぁん」部分も川内康範先生の指導らしい。濃いなw
しかし作中で脚本&作詞家特権でやったら自作の歌を流し過ぎw『東京流れ者』、なんと映画で14回も登場したらしいw嫌でもメロディ覚えるわw

かようにアクが強すぎる川内康範先生ですが、梶原一騎先生といいこの手のキャラと混ぜたら妙な化学反応を起こすのが鈴木清順監督。謎ストーリー×暴れる前衛美術がいいマリアージュを起こしてる。
けれど、『悲愁物語』みたく「シチュエーションはアウトローなマッチョダンディで構図は完璧なんだが、それとこれを合わせた結果はわけわかめで独りよがりな前衛という名のおまぬけ」感がまだ少なく、娯楽映画として鑑賞できる範囲にとどめてます。心配なく楽しく観れますよ。

★フォーマルドレスのヘアスタイルに気になる木

…とまあ川内康範先生ネタを書きすぎましたがw、今作のお目当ては美術!『ドグラ・マグラ』のレビューでちょこっと書いた気がする木村威夫美術監督について。
どんなものかはあらすじでも書きましたが、いやーとにかくカラフルモダンで楽しい!
画面の端々まで「何これ?」な仕掛けてんこ盛りで見飽きないです。
清順監督のキメ色「真っ赤」の使い方もしゃれてますが、今作はパープルの色使いがきれい。今年は久しぶりにカラフル大流行だし、うちにモダンなパープル部屋でもしつらえてみようかと思いました。

ただここでちょっと気になる木。美術ファッションについて。
60年代女子ファッション、普段着は文句なしでいい!松原千恵子の柄タイトスカートが欲しすぎる。プライベートのコート姿も可愛い。こういう60年代映画のお嬢スタイルは可愛いと思う。
さらに松原千恵子はクラブ歌手役だからステージ衣装のドレスを斬る。ドレスはいいんだけど、しかしヘアスタイルが変だ。
クラブ風にハーフアップに髪盛ってるんだが、片方だけ中途半端に長ーくたらしててバランスが悪い。謎の新興宗教の巫女さんに見えるw

この映画に限らず日本の昭和映画のヘアスタイルを観ると、当時の世間では流行最先端&ゴージャスヘアスタイルをやってるはずなんだが、ドレスアップスタイルの盛り方が恐ろしいくらいかっこわるい。
前髪の作り方や毛先の処理、カラーリングとか、今の美容技術と段違いでびっくりしてしまう。ヘアアクセもほとんど使えてない。素人がyoutubeでやってるくるりんぱアレンジの方がずっと凝ってるし可愛い。
日本の美容業界は50年間でSFレベルくらい超進化したんだなー!と素直に感心しました。一度チェックしてみてください。

(了)
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