No.161『野獣の青春』

公開年:1963年
原作:大藪春彦『人狩り』
監督:鈴木清順
脚本: 池田一朗、山崎忠昭
ジャンル:春のカラフル清順祭り!怪しい奴らのクールな前衛ノワール

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引きつづき鈴木清順監督追悼。

今作は大藪春彦の原作付きだから、話は鈴木清順比ではちゃんとしてると思う。前衛美術に興味が無くても話そのものがおもしろーい!
90分の映画にしては中身濃いしテンポ良くサクサク進むし伏線もキッチリ張られてるし、サスペンスドラマとしてまともなオチもある。まともなオチゆえに名物・異次元ファンタジーバトルが無いのが玉に傷だけどw

ちなみに主人公は宍戸錠ですが、キーパーソンはどこからどうみても小林昭二&川地民夫。

小林昭二は、えええー!な役柄。何つうか私の小林昭二観を覆す変態で癖になるw
川地民夫は鈴木清順作品ではお馴染みの顔ですが今回は出演時間の少なさを補って余りある、いつも以上にクッソ怪しいインパクトwこの人の持ち味であろうと私が勝手に思ってる「昭和スタイリッシュな謎のポージング&着こなしセンス」が活きてます。

脇も一癖あるおやじ&チンピラ役者天国で充実してるし、夜の歓楽街が舞台だから女優も怪しい香りたっぷりです。曲者脇役好きなら必見。
★予告編



おいおいラストであのクレジットは思いっきりネタバレしてるだろ!な予告編。
マジックミラーの向こうはヌードショー♪シーンは何回観てもいかがわしくていいね。踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

モノクロ画面で「野獣の青春」の「の」の字だけが赤い(しかもサイズがやたらちっちゃい)、粋でヘンテコなタイトルから映画は始まる。

主人公の水野錠次(宍戸錠。あだなはもちろんジョー)はクールな一匹狼。刑事だったがとある事件ではめられて懲戒解雇&ムショ送りになり、出所後は流しのチンピラをやっている。
しかしジョーを色々世話してくれた元同僚の竹下刑事が、映画冒頭で愛人と心中事件を起こして死んでしまう。もちろんサスペンスだからして心中は嘘で、竹下刑事は闇の組織に殺されたのだ。
そこでジョーは復讐するため、事件に関与してるらしいヤクザ組織に乗り込む、という話。

★まず小林昭二、衝撃の登場

って事で序盤からいきなり、宍戸錠が繁華街でチンピラどもをボコりまくる。
動きキレッキレでガタイが良くて、ヤクザ者の誰よりも雰囲気がバリ怖い。刑事といえ元公務員な役柄をまるで感じさせない暴れん坊将軍オンステージであるw
しこたまチンピラをボコった後は、キャバレーでNo.1嬢をはべらせ豪遊三昧。鏡張りのゴージャスステージでノーブラパンイチでショッキングピンクの羽背負ったヌードダンサーがショータイム♪してるのを横目で見ながら、粋にグラスを傾けるジョー。
う~ん歌舞伎町度10000%。これぞ昭和ダンディー。
しかし女と酒を満喫しときながらジョーは難癖付けて代金踏み倒そうとして、キャバレーの裏の事務所で怖い人にシメられる。が、怖い人より怖い男だから逆にシメ返すw
ジョーとヤクザが殴る蹴るする背後はマジックミラーで華麗なヌードショーが丸見え♪な二重映しセットが美しい。実に鈴木清順らしい画面です。

暴れん坊ジョーの噂はたちまちヤクザ組織・野本組組長(小林昭二)の耳に届き、ジョーは組長の家(謎の洋館)に呼ばれてケンカの腕前を気に入られ、用心棒の仕事をゲットする。この辺は『東京暗黒街・竹の家』っぽい流れだ。
しかしボス役の小林昭二が登場した瞬間が衝撃すぎる。

だってあのおやっさん小林昭二がザアマス眼鏡でオネエ風味言葉で、ふわっふわのペルシャ猫を抱いて登場するんだぜw
しかも手下どもの前で猫にゃんとディープなベロチューしまくる、周囲もドン引きな猫バカ設定。だけど人間にはドSで鞭とナイフプレイが大好きwどういうキャラだよw

ボスもボスなら手下も酒びたりのNo.2(金子信雄。ハゲてない!)や、感情の沸点がどこにあるかよくわかんない謎テンションキャラだらけ。ヤクザの館はさながら変人屋敷だが、さらに怪しいキャラが次々登場します。

★出たー!スキップするカマ坊ちゃん、川地民夫

ジョーはガンマニアの鉄砲玉組員(江角英明)とコンビを組み、高級マンション(これまた不思議な和洋折衷造りの謎セットw)を拠点にお仕事を始めるが、野本組のライバル・三光組組長(信欽三)一派に横槍入れられるわ、謎の売春組織の存在を知るわ、その売春組織の黒幕で野本組長の愛人である『No.6の女』を消してくれとキャバレーのNo.1嬢(香月美奈子。もちろん野本組長の愛人)に頼まれるわ、大忙しのフル回転である。
そんなハードな暴力の合間にも、竹下刑事の四十九日法要に律義に出席して未亡人(渡辺美佐子)に香典を渡し、コールガールを呼んでは心中事件を知ってるかと聞き込みするなど、真相解明の方もしっかりやる。昔は有能な刑事だったっぽい様子が伺えます。

しかし三光組の鉄砲玉役が実弟の郷鍈治てwこんなところで兄弟対決かよw
ちなみに郷鍈治はいつも通りに安定のギラギラです。
そして大手経済ヤクザな野本組がキャバレーなら、貧乏で昔気質な三光組のアジトは映画館の裏。映画のワンシーンと暴れるジョーが二重映しになる光と影の画面処理が美しい。映される映画も男くさい白黒ハードボイルド映画で、艶やかなヌードショーとの対比もお見事。ほれぼれ。

もちろん謎の売春組織には野本組の息が掛かっており、コールガール達は『No.6の女』の手でヤク中にさせられ、薬欲しさに稼いだ金を巻き上げられてるって話じゃーありませんか。
いかにも悪の組織らしいワルっぷりだが、野本組にはさらなるアンタッチャブルな存在がいた。

とある組長の館での日常風景。
コールガールがヤクを求めて床や階段を転げ回っている。
そのコールガールの目の前には、ヤクを包んだオブラートをひらひらさせて♪ランラン♪とスキップしては、時々モデルばりにポージングを決めて挑発する男がいた。
「うふふ~うっふっふ~♪ヤクが欲しいならもっと稼ぎなさぁ~い

実は猫バカ小林昭二組長には、オネエ言葉を継いだ1人息子がいた。
歌舞伎町の悪の華、「すだれの秀」こと野本秀夫たん(川地民夫)である。

秀夫たんは物腰仕草は和製ジルベールな夜の美少年(という設定らしいw)だが、性癖は親譲りのドSで、白い靴下に仕込んだカミソリが武器。禁句はマザー○ァッカーならぬ「お前のかーちゃんパンパン」らしく、かつて禁句を口にした女の顔をすだれ状にメッタ刺しにした事があるらしい。なかなか凶悪である。

で、「『No.6の女』の正体は秀夫たんだ!だってヤツはオネーさんだから!」と主張する江角英明組員の説に乗り、ジョーは秀夫たんと接触する。
が、出会っていきなり「お前のかーちゃんパンパンなんだってな」と禁句で煽るw
キレて速攻仕込みカミソリを取り出し襲い掛かる秀夫たん!
しかし凄腕のジョーには通じず、秀夫たんは組み伏せられて「お前のきれいな顔をすだれにしてやろうか」と脅され、売春組織の情報をゲロりかける。
そこへ息子の危機を察知した猫パパ組長が参上。ジョーは館へ連行されてドS拷問される。

★猫パパ組長、なかなかいい趣味したドS眼鏡だぜ

ジョーが拷問に耐えてた頃、キャバレーNo.1嬢も組長のお仕置きを受けていた。
ベルトで!鞭で!しばきまくられたNo.1嬢は、黒いドレスを破かれ白い肌にミミズ腫れを作った姿で赤い絨毯を転げまわり、隙を見て館を脱出する
ところが外は何故か凄い砂嵐w
嵐の中ススキ野原で倒れるNo.1嬢をなおも鞭でしばく猫パパ組長は、ドSプレイで興奮極まったのか

No.1嬢と砂嵐のど真ん中でやりまくる

そして2人は元サヤにおいおいw
猫パパ組長、なかなかいい趣味したドS眼鏡だぜ…と、どさくさに紛れて脱出したジョーも感心するやらあきれるやらw

さてジョーは用心棒の仕事に戻るが、今度は三光組一味とつるんで野本組の麻薬取引の上前を頂戴する作戦を立てる。
その上でジョーはしれっと猫パパ組長に同行して麻薬取引現場に行くんだが、
取引現場は満開の桜並木の下の矢切の渡しw
そんなメジャーな場所で花見シーズンの真っ昼間に堂々とやる事か麻薬取引ってwあまりにも大胆である。

しかし現場に現れた「麻薬組織の大ボス」の側近の白トレンチの男がジョーを見て、「こいつ前にどこかで会った気がする」と首を傾げる。
実はジョーは刑事時代、竹下刑事と組んで麻薬組織を捜査してたのだ。で、捜査のホシでジョーや竹下刑事を罠に掛けたのが大ボスだったという訳だ。
しかしモヤる白トレンチを置いて取引は順調に終わり、ジョー達用心棒が離れた途端、待ち伏せしてた三光組メンバーがパンスト被って華麗に強盗☆川べりの土手で派手にカーチェイスを繰り広げて金ゲット、麻薬組織は踏んだり蹴ったりの目に遭う。

やったー三光組とジョーで金は山分け☆
のはずだったが上手い事は続かず、白トレンチがようやく「あっあれは!」と思い出して(おせーよw)ジョーの正体がばれる。

洋館で猫パパ組長にまた拷問されるジョーだが、組長に「ジョーを撃て」と命令された江角英明は「大事な相棒を撃てねえよ」と男の友情を発揮して拒否る。
そこで組長は十八番のドSプレイ「ナイフで爪の間を刺す(いってー)」でいじめるが、利き手の薬指を刺されそうになったジョーが「確かに俺は元刑事だが、汚職でクビになったワルだぜ!それでも疑うのかよ!」と逆ギレして暴れ、一同なんか納得して拷問が終わる。
いや、納得するのかよ…

★ヤクザ同士で派手に自爆相討ちだー!と思ったら

ジョーは「金を奪ったのは三光組だ」と告げ口したんで、猫バカ組長は三光組長を誘拐して「誰のタレ込みで麻薬取引を知った」と拷問する。
だが前もってジョーと口裏合わせてた三光組長はゲロ吐かない。

そこで江角英明が鉄砲玉の郷鍈治の家へガサ入れに行くが、郷鍈治は不在で、家には大量の趣味の飛行機模型とギャル嫁(星ナオミ)がいた。
天井から吊られる模型は『殺しの烙印』の蝶々部屋と同じく「監督の趣味だねえ」だが、なんと江角英明がギャル嫁に一目惚れ
こんな緊迫シーンで女に一目惚れしてる場合かよwだが、郷鍈治が帰宅して恋は一瞬で終わる。
郷鍈治vs江角英明の相討ちで郷鍈治が死に江角英明は重症、ギャル嫁も流れ弾に当たって死亡する。
嫁といえ一般人を殺っちゃった!まずい!とジョーは江角英明を連れて逃げるが、警察の捜査網が張られて大ピンチ!なところで、なんと目の前に竹下刑事の家を発見して転がり込む。

未亡人に「私は竹下刑事をハメた麻薬組織への復讐の為に、わざと組織の懐で潜入捜査してるのです」と本当の目的を打ち明けたジョーは、家の電話を借りて猫パパ組長と三光組長へ連絡する。
猫パパ組長には「悪の黒幕三光組が野本組を襲撃しようとしてるぞ」と。
三光組超には「郷鍈治が殺られた。野本組は三光組を潰そうとしてるぞ」と。

という訳でクライマックスは二重スパイのジョーにはめられたヤクザ同士が、ススキ野原でタイマン潰し合い。ドンパチあり!カーチェイスあり!で派手にバトルロワイヤルを繰り広げる。

でもそこにジョーはいなかった。やっぱり企みは猫パパ組長に全部ばれてて、3度目の逆さ吊り拷問をされてたのだw
今度は小林昭二のドS眼鏡も気合が入り、マジで逃げ場が無くジョー危機一髪!
なところで予想外の方向から助っ人が現れる。

三光組長、車に爆弾積んで豪快に自爆攻撃かます。

そこまでするほど不倶戴天の敵だったか?は疑問だが、頑丈なヤクザ屋敷をぶっ壊す威力の爆弾で三光組長は即死(当たり前だ)手下も死者多数、組長の館はガレキと白煙に包まれる。
でも不死身のジョーは生き残り、猫パパ組長と死闘して遂に麻薬組織の真相を突き止める。

ジョーは遂に影の黒幕(だが途中で存在を忘れてた)『No.6の女』のアジトへ向かうが、そこは竹下刑事の未亡人の家。
未亡人は秀夫たんと仲良くキャッキャウフフしてました

実は未亡人こと『No.6の女』は、まだ竹下刑事が生きてた時から猫パパ組長と不倫してた。
それで旦那を裏切り組織に情報を横流しするばかりか、ジョーを罠にハメて失脚させ旦那も組織に始末させたのだ。
当然ジョーの怒りは未亡人に炸裂するが、この期に及んで未亡人は「全部組長に脅されてやらされてたの。私は被害者なの」とのたまう。やっぱ女は土壇場で図々しいw

だけどジョーに煽られて、秀夫たんの前で禁句の「お前のかーちゃんパンパン」をつい言ってしまうw
キレた秀夫たんがカミソリを手にしてギャー!
黒幕女はすだれになり果てたのでした。
最後は再生テープの音声(ジョーが警察に真実を語っている)を聞きながら、モノクロ画面の庭に赤い椿がぽっとり堕ちて、粋なジ・エンド。


★感想

あーおもしろかった
話の進行がストレスフリーでサックサク!てのがいい。なんかネトゲーの感想みたいだがw
お目当ての前衛ヴィジュアルもバッチリですが、普通に映画として撮影・演出が上手い(どういう褒め言葉だ)。宍戸錠のアクションもキレてるし顔はドスがきいてるし、サブキャラも全員胡散臭くてキャラ立ちまくりで、アクションノワール映画として文句なしの出来です。
昭和前衛に興味が無くても絶賛おすすめ。

★不思議モダンに一本取られた気分、襖を開けたらブルー

話とキャラが面白すぎてあまり書いてなかったが、鈴木清順監督&木村威夫美術監督の摩訶不思議な和洋折衷セットは暴走しまくりです。今作はクールな脚本とぴったりマッチしててしびれるー。
まるでサミュエル・フラー監督作品を観てるような、乾いたノワールな空気が心地いいです。宍戸錠のキャラにも合ってます。

冒頭のノーブラダンサーキャバレーの昭和ゴージャスもたまんないですが、上手い!と思ったのが竹下刑事の未亡人の家。
庭の椿の花がタイトルショットの赤い挿し色を連想させつつ、それでもまぁ門があって坪庭がある、外観は普通の一軒家。
入口開けたら普通に玄関、普通の仏間、超普通の台所。なんかサザエさんの家見てるような昭和ど真ん中な間取りです。
で、昭和の台所あるあるな玉のれんくぐってふすま開けたら普通の板張り廊下。

なのに壁がブルー。
いきなり唐突にホームセンターで買ったペンキでDIYで塗りました的なアメリカンブルー。
なんなんだこれ。なぜにそこだけブルーなのだー!!

しかもブルー壁、ただの暴走美術かと思ったら、「実はただのつましい刑事の家じゃねえ」なラストの伏線になるとこが小憎らしい。
こういう遊び心が一杯詰まってるのがうれしい。目に面白い。

★そして衝撃の小林昭二&川地民夫親子

しかし何を差し置いてもこの映画はこの人達のものでしょう。

まず猫パパ小林昭二。
まず登場シーンで猫とベロチューしててびっくり。007のブロフェルドのさらに猫キチバージョンというか。
うめめちは実相寺監督好きですが、別に特撮好きではない。それでも「小林昭二がおやっさん」な知識が自然と頭に入ってる世代です。そんなおやっさんが何故。
俳優キャリアを考えれば悪役でも汚れ役でも別に不思議はないんだけど、ドSプレイの果ての嵐の青カンシーンに至っては「まさか、おやっさんの顔でアレを…」と映像が本物か信じられないくらいショックでw自分でもなんでショックかわかんないけどショックw
個人的に『狂い咲きサンダーロード』の小林念侍の朝チュンに匹敵する衝撃でした。

そしてすだれの秀くんはキャラ作りが秀逸すぎるw
曲者役者好きにはもう最高にたまんない、一部の隙も無い変態シチュエーション&衣装&演技でありますw
初登場シーンの変態モデル立ちキメポーズは観る度に笑っちゃいますが、でもお笑いに走り過ぎずノーリミッターな狂気を感じれるところが上手いと思う。

とりわけジョーと初対面する場面の黄色いジャンパーが絶妙過ぎてやばい。
黒襟のピコッとした立ち具合、絶妙にインして見える裾絞り、赤と黒のラインあり、何もかもイカすwどこであんなデザインのジャンパー見つけてきたんだろうw
私の中で日本映画界の黄色いジャンパーといえば『新宿純愛物語』の仲村トオルの金色ジャンパーだったけど、それに匹敵するバカさ加減です。
でもちょっと欲しいかもw女子が大きめに羽織ったら可愛いと思う。
なんでか初対面の場所(デートクラブ)の紅白電話デザイン(これのデザインもまた前衛おまぬけで素晴らしいw)との調和がバッチリ取れている、謎にグッドデザインな逸品でした。映画ファッションマニアは是非チェックしてみてください。

★おまけ

『東京流れ者』と『野獣の青春』パッケージを海外版ポスターに変えてみた。かーっこいいなー!!
鈴木清順監督作品関連の海外版パッケージは、気合入ったデザインが割とあって嬉しい。
あと蝶々がやたら散っているwあの生贄部屋が好きな人が多いんだなーと思った。

(了)
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