No.015『復讐するは我にあり』

製作年:1979年
原作:佐木隆三
監督:今村昌平
脚本:馬場当
ジャンル:殺人・巨乳・ドロドロ愛の社会派サスペンス映画

015.jpg

『ピーター・グリーナウェイの枕草子』では「おカマ掘られる姿が見所」などと紹介し、『ミシマ』では「三島由紀夫に見えない」と文句を言う。
お前は緒方拳をバカにしてるのか!と言われそうなので、三度目の正直でまともな名作を紹介する。

緒方拳の魅力は深刻な役を真面目に演じても唇の端がいたずらっ子ぽく微笑ってるところだ。
心のどこかで「深刻な状況に陥ってる自分」を面白がってる節がある。こういう愛嬌のある役者がうめめちは好きだ。
とりわけ詐欺師を演じたら魅入るほどわくわくしますね。

こんな詐欺師に出会ったら、今作の小川真由美みたくコロリとだまされてしまいそう。
ベタな意見ですまないが「少年っぽい表情が残る、愛嬌のある大人の男」に女はだまされるものなのだ、と思いますです。
★予告編



一瞬の乳に釘付けな予告編。
うーん、揉みがいのありそうな乳だ。私が男なら土下座して拝み倒してわしづかみにしてみたい。

★あらすじ(青字はネタバレあり

原作は「西口彰連続殺人事件」のノンフィクション小説。
映画もノンフィクション度数が高い手法で作られています。

田舎の線路沿いの畑でオッサン(殿山泰司)の刺殺体が見つかった。
オッサンはたばこ専売公社(今で言うJT)の集金人で、ほどなく一緒に集金に回ってた相方の刺殺体も見つかった。
警察が捜査をしたところ犯人は集金人の同僚・榎津巌(緒方拳)だとすぐ割れた。榎津は指名手配され、ほどなく逮捕された。
取調室でふてぶてしい態度を見せる榎津だが、犯行は意外とあっさり自供する。

…という、田舎で起こった殺人事件がとっとと解決されるイントロに始まり、殺人犯・榎津巌の過去と榎津家の奇妙な家族関係、詐欺と殺人を繰り返す逃亡生活、逃亡に巻き込まれた浜松の旅館一家の物語が怒涛のごとく展開する。

榎津は情状酌量の余地無くワルでグッときます。
実は殺人事件が初犯ではなく、少年時代から窃盗恐喝レイプ何でもありな犯罪を重ね、刑務所送りを繰り返していた。
最初の集金人連続殺人からして血みどろメッタ刺し。そんなに刺して何か恨みがあるのかい?と思えば恨み何も無し。ただの金目当ての犯行だったりする。
しかも返り血で汚れた手を自分のションベンで洗うふてぶてしささえみせる始末。
逃亡中も大学教授や弁護士に偽装して善人を騙し、善人が汗水たらして貯めた金を奪い、邪魔なら殺し、金がなくなったらまた詐欺、を何食わぬ顔で繰り返す。

とある刑務所に行って弁護士になりすまし、少年犯の母親をだまして保釈金を盗む。
その帰り道で知り合いになったじーさん弁護士(加藤嘉)をだましてブッ殺して死体をタンスに詰める。でもタンスの蝶番がゆるくて、扉が時々ふらっと開いちゃったりする。
弁護士の金を奪って肉買ってひとりすき焼き食ってる榎津が、死体丸見えに気付き「おや、いかんねぇ」とガムテープで扉にふたををして、またすき焼きを食う。不謹慎だがトボけた味で笑える。徹底してワルだからこそ、ふと見せる緒方拳の愛嬌ある笑顔が効いてくる。

★わけあり旅館で逃亡犯と母娘の愛憎劇場

そうこうして犯罪で金ゲットしながら逃げてる間も警察の捜査は着々と進み、とうとう全国に指名手配犯の捜査網が敷かれる。
ポスターが町中に貼られちゃ簡単にだませなくなるだろう。そこで榎津が隠れ家にしたのが、浜松の旅館街の外れにある小さな宿。訳あり旦那(北村和夫)の妾ハル(小川真由美)が営む、「オンナを呼べる旅館あさの」である。
榎津は「静岡大へ出張に来た京大教授」と偽り宿の一室に居座ると、オンナを呼んではセックス三昧、女主人ハルにも手を出して肉体をメロメロにさせるのだ。

愛欲に溺れてしまったハルは榎津の正体がばれても別れられず、「あなたの子供が産みたい」と言い旅館にかくまってしまう。
してやったりだがこの宿にはひとつウィークポイントがあった。旅館には元殺人犯の厄介ババァ、ハルの母親(清川虹子)が一緒に住んでいたのだ。
母親は競艇びたりで掛け金をすっては娘にせびり、夜な夜な旅館客と商売女のセックスを覗き見するどうしようもないクソババァだった。

娘を不幸に叩き落とす毒母と、母を見捨てたいけど出来ない共依存の娘。
愛憎がとぐろ渦巻く母子関係を手玉に取ってのうのうと旅館に居座る榎津だったが、クソババァが昔犯した殺人話のついでに語った一言がハッと心に刺さる。
「わしは(被害者を)本当に憎くて殺したが、あんたは殺したい人間を殺してねえのか?」

このババァの一言で、過去と現在が交錯する物語の全体像がスパッと開ける。
実は連続殺人犯・榎津の逃亡劇場&旅館の母娘共依存劇場の背後には、映画のメインテーマである榎津のトラウマ、「愛憎が大蛇アナコンダ級にとぐろ渦巻く榎津家の壮絶な家族ドラマ」が三段構えで待ち構えているのだ。
うーん展開がお見事。

★信仰厚きパパが爆乳に悩み悶える

お待ちかねの榎津家のドロドロドラマは、戦後間もない時代にさかのぼる。
長崎五島列島生まれでカトリック信者の巌パパ・鎮男(三国連太郎)は漁師の網元だった。でも戦時中に軍に船を召し上げられたので、船代を元手に故郷を離れ、一家で別府温泉に移住し旅館経営を始める。

パパは妻(ミヤコ蝶々)との仲は冷めていたし、幼い頃から性悪で悪行三昧な1人息子・巌を苦々しく嫌っていた。けれど「汝の敵を愛せよ」が教えのキリスト教信者だから形式上は見捨てない。でも実質は愛さないんだが。
夫婦生活に欲求不満が募って来た母はパパを求める代わりに息子を甘やかし、息子が生来持っていたワルの芽を増幅させる。

ある日榎津家に加津子(倍賞美津子)という妊婦がやって来た。
もちろんお腹の子は巌が孕ませたんだが、パパはカトリックだから堕胎させず2人を結婚させて同居する。
でも子供が生まれてもバカ息子の悪行が治る訳なく、巌は罪を犯して刑務所に送られ留守がちになる。
ならず者の嫁になった加津子はさすがに耐え切れなくて巌と離婚するが、鎮男パパに「戻ってくれぇ」と懇願されて「お義父さんのために」榎津家に帰ってくる。

カトリックに入信した加津子は最初は鎮男パパを義理の父として尊敬していたが、加津子の想いは親子愛の範疇を少しずつ超えていき…とうとう行動に移してしまう

温泉で三国連太郎に肉体関係を迫る倍賞美津子のヌードにすげー釘付け!
すげえええ巨乳!!ダイナマイトエロス!!


鎮男パパはダイナマイト巨乳にぐらぐら惹かれながらも「汝、姦淫するなかれ」の教えを頑なに守り手を出さない。
しかも義理の娘への邪念を断ち切る為、なんと知り合いの別府の駅の鉄道員に頼んで加津子を襲わせるのだ。
なんでだー!?ってくらい酷い仕打ちだが、それでも鎮男パパへの愛を捨てれない加津子。
2人は一発もヤッてないのに、エロスだかアガペーだかが複雑に絡み合う難儀な愛の関係に堕ちてしまう。

そして数年後、何度目かの刑期を終えたバカ息子が帰宅して見たのは、
嫁を襲ったバカ犬を捕まえて庭に穴掘って埋める鎮男パパと、無表情で犬に熱湯かけて殺す加津子の、狂気のツーショットだった…
ワルといえ嫁&実父の強烈な殺犬シーンに巌はショックを受けて家出した。後はトラウマを荒ぶる犯罪衝動に変えて殺人犯まっしぐら。

★刑務所の面会室でパパvs息子ラストバトル

さてメインテーマが語られた後、逃亡話はクライマックスへ突入する。

旅館暮らしもいよいよ難しくなった榎津巌は小川真由美を(お腹の子供ごと)殺すが、失禁して床に倒れる死体に向かって「ありがとな…」と珍しく感謝をつぶやく。ついでにクソババァも殺して旅館の家財道具を質屋に売り払い、資金を手に入れ逃走する。
しかし質屋に物を売り飛ばす様子を、旅館で最初に呼んだオンナが偶然見ちゃったのが運の尽き。
生まれ故郷の九州まで戻ったところで榎津巌は逮捕される。

逮捕後、拘置所で巌は鎮男パパと再会したが最後の親子ケンカをする。
鎮男パパが初めて息子への憎悪を露わにすれば、「コノヤロウ加津子を抱け!」「殺すならお前を殺しゃよかった」と巌は最後の罵倒を浴びせる。
それでも「信仰篤い善き父」の看板が捨てきれない鎮男パパは息子の顔に唾を吐き、自分の手で出来る精一杯の悪業を示して帰る。

鎮男パパが帰ると病気で入院してたはずのミヤコ蝶々ママが帰宅していた。
なんでお前が家におんねん?とうろたえるパパを見て、とどめに「私も女ですたい」と蜂の一刺しで意地を示すミヤコ蝶々。
短い芝居だが圧巻である。

榎津巌の死刑後、鎮男パパと加津子は巌の骨を貰い受けて山に登る。
『復讐するは我にあり』(罪への復讐を行うのは人間ではない、我=神が行うものである)のタイトルに添うなら神の裁きに任せた鎮男パパと加津子が正しいはずだが、白々しい空虚が画面に漂っている。
2人が無表情で山から骨を投げ捨てて映画は終わる。


★感想

いやー凄い映画だった。
最初から最後まで特濃エネルギッシュ!そりゃマーティン・スコセッシから園子温まで褒める訳だわ。

いやぁ、ガチで話が面白いです。
脚本のクオリティが素晴らしい。
過去と現在、主人公と脇キャラのストーリー、3つの話がめまぐるしく入れ替わる構成なのに、話の筋も登場人物のキャラもきっちり追える。
「映画を観ながら話の筋を追うなんて当たり前じゃねーか」と思ってるあなたは是非映画を見てほしい。よくこんな錯綜する話をまとめれるなぁ!と感心する事間違いなし。

どの場面も印象深いけど、特に連続殺人犯誕生のきっかけになる「嫁とパパがバカ犬に熱湯かけて殺す」衝撃トラウマシーンは、榎津一家の芝居が際立って素晴らしかった。

鎮男パパは自分自身では「私はどんな苦難に見舞われようとも、カトリックの教えを貫き正しく生きている清く正しい男だ」と信じている。
しかし苦難の見舞われると自分は手を汚さず、妻や息子や息子の嫁の手を汚させるのもパパである。
船が取られたのは軍のせい。
息子を甘やかし堕落させたのは妻。
犯罪を犯すのは息子。
自分を色欲に惑わせたのは加津子。
犬に熱湯をかけたのは加津子。
パパ自身は何にもしてない。みんな周りが悪いだけ。ああ何て善き人、善き父、偽善者。

巌はそんなパパの偽善を見抜いてショックを受け、心にトラウマを刻んだ訳だが、自分自身ではトラウマがハッキリ認識できないし認めたくもないので、鎮男パパと加津子に散々悪態をついて家を出る。
この辺りの三国廉太郎、緒方拳、倍賞美津子の芝居、そして一部始終を家の中からそっと見ているミヤコ蝶々の芝居の迫力に息をのみました。

物語は山あり谷ありドロドロありですが、画面作りはお芸術に走らず、固いオーソドックスな作りでした。
テロップの入れ方とかが昭和の社会派映画!って味わいで懐かしいですね。

★今村作品お楽しみのエロス描写もばっちり

もちろん今村監督おなじみの熱いエロスもてんこもり。
倍賞美津子ダイナマイト巨乳エロスも勿論ながら、昭和男のガツガツした欲望をねちこく描く今村監督の昭和の香り漂う四畳半セックスをがっつり拝めます。

小川真由美は緒方拳とやってる時の白く熟れたむっちむち肌もエロエロですが、母親の見てる前で旦那にやられるシーンの、脱がされかけたパンストからのぞく太ももがお父さーん辛抱たまりませーん。
なお小川真由美といえば特濃ホラー演技ですが、今回はそっち方面は比較的マイルドです。妖怪八重(@大河ドラマ『武田信玄』)には変身しないし、金魚も食わない(@『食卓の無い家』)ので安心してエロスをお楽しみいただけますw

しかし感想は書いたが、つっこむ所ねえなどうしよう…
凄みはあるが可愛いところもある清川虹子と、ダメな母親だが最後に女を見せたミヤコ蝶々の素晴らしいババァ演技に敬意を表し、「やっぱり今村昌平ってババァ萌えだよね?」と半疑問形でプチつっこみしてお茶を濁して終わりにします。

★おまけ 菅井きんを探せ!

緒形拳に息子の保釈金をだまし取られるかわいそうなおっかさん。
ワンシーンですが貫禄の田舎っぺぶりでした。さすがです。

(了)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ: 映画感想 | ジャンル: 映画
No.016『多摩川少女戦争』 | Home | No.014『怪談/KWAIDAN』