No.017『薔薇の葬列』

製作年:1969年
監督:松本俊夫
脚本:松本俊夫
ジャンル:アヴァンギャルド新宿二丁目愛憎劇場

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DVDのパッケージは色々パターンがあるけど、リマスター版のパッケージはパゾリーニ映画っぽい感じだが心臓に悪い。閲覧注意。オリジナル版の方がいいのになあ。

さて映画の紹介。テーマは「女子が観やすいATG系前衛映画」。

普通の女子はATGなんか見ないだろ?なツッコミはさて置く。
アナスイとか装苑系ファッションが好きでヴィレッジヴァンガードでマンガ買ってそうな変わってるワタシ大好きな文化系女子が、少し背伸びして観れそうな昭和日本の前衛アングラ映画とは何だろう。

政治ネタは興味ない。
恋愛ネタは無くてもいいがあれば観やすい。
見た目キレイならホモでもレズでも近親相姦でもOK。
「あやしい映画観てる」雰囲気が適度に出てて、今の女子好みの美形・カワイイ子が出てるとか、オシャレ可愛い要素は絶対に欲しい。

で、考えて頭に出てきたのが『薔薇の葬列』だ。パッケージの装丁ももろおしゃれサブカル受け狙いっぽいし。
「60年代アングラって気持ち悪そう」「昭和の日本映画って貧乏臭そう」「みんなオカンセンスの服とか着てそう」って思ってたけど、なんだ案外キュートじゃんみたいな。
ただしアングラなので話は基本ドス黒いですが。恋愛話は分かりやすいしイマドキのサブカル女子系漫画に通じるところもあるよ。
どうですかね。やっぱりちょっときついですかね。
★予告編



いかにもATG実験映画な感じ。踏み絵にどうぞ。
70年センスたっぷりな凄いつけまをじっくりとご覧ください。つけるのはとにかく、どうやってはがしたんだろうと不思議になる。

★あらすじ(青字はネタバレあり)

主人公はゲイバー「ジュネ」(らしい名前だ)のNo.1ゲイボーイ、エディ(ピーター)。
少年時代に色々トラブルがあって10代半ばで故郷を飛び出し上京してこの道に入り、若さと美貌とちょっとしたヒミツの商いでたちまち二丁目の売れっ子ボーイになった。
性格はいかにも調子に乗った水商売オネエらしい感じ。バーのオーナー(土屋嘉男)をママ(小笠原修)から寝取るっつう大した根性の持ち主だ。

エディの日常は60年代の無軌道そのもの。
オーナーとのゲイセックスに耽ったかと思えば、お仕事で外人客とガンガンアフターするし、毎日体張ってます。
裏で麻薬密売してるオーナーから麻薬をくすねて、若い芸術家グループに売って小遣いを稼ぐ。もちろんエディ自身も一緒に麻薬吸って踊って遊んで男女かまわずフリーセックスしまくる日々。

しかし若いエディにオーナーを寝取られたママは「アタシの店もオトコも乗っ取られるわ!」と危機感を抱きタイマン喧嘩を張るが、そんなオカマのキャットファイト程度で図太いエディが身を引く訳がない。
そこでママはズベ公(まぁなんて60年代な響き)を雇いエディを襲撃させるが失敗。逆にオーナーに悪企みがばれて捨てられて、悲しみの余り自殺する。
エディはママの仕切ってた店を手に入れて新しいママに君臨する。

★エディを奈落に突き落とす血のトラウマ

でもオトコを利用してお水の花道をのしあがる一方で、エディは過去のトラウマに苦しんでいた。

エディは幼い頃父親に捨てられた。だから家族写真は父親の顔だけ焼いている。
母子ふたりで暮らした暗い少年時代。いつしか自分のセクシュアリティに気づき、女装の歓びに目覚めたエディは、母の目を盗んで化粧台でこっそり口紅を塗る。
化粧台の鏡にそっとキスするエディ。ナルシスティックで自虐的な姿がせつない。だが母親に見つかり、男の子の癖に汚らわしいと拒絶される。

ある日母と新しい愛人の男のセックスを見たエディは衝動的に2人を殺してしまった。
(登場して1分で殺される小松方正。哀れなり)
逮捕されて少年院でお勤めの後、釈放されたエディは顔も過去も捨てて上京したが…

そんな過去が原因で、エディは絶頂から奈落に突き落とされる。

エディを捨てた父親の正体はオーナーだった。
この辺りは一条ゆかり『デザイナー』ばりの昭和のメケメケ物語らしい展開だ。

エディとの情事直後に偶然家族写真を見て出生の真実を知ったオーナーは、ショックのあまり風呂場で自殺する。
そりゃまあガチの近親相姦ですからねぇ…
オーナーの死体を見て状況を悟ったエディもまたナイフで両目をグサァ!とひと突き!
目から血を流したネグリジェ姿の少年がふらふら白昼の路上に出て行き、通行人が驚いてフリーズするというショッキングなシーンでジ・エンド。


★感想

エディを演じた当時リアル16歳のゲイボーイ、ピーター(池畑慎之介)について。

地唄舞の家元の跡継ぎに生まれ芸を厳しく仕込まれた伝統芸能系お坊ちゃまなのに両親が離婚。
頭が良くてラ・サール中学に入学したのに中2で家出。年齢サバ読んで東京のゴーゴーバーで働いてたという16歳にして波乱万丈の生い立ち。
まさにエディを演じるために生まれてきたような人だなー。
映画では、ドラマ本編の合間にピーター本人や二丁目ゲイボーイのインタビューをサンプリングされてて、ドラマとドキュメンタリーが虚実一体な構成になるリアリティドラマな手法で撮っている。公開当時はすごくリアルでショッキングだったらしい。

映画ではピーターのルックスが絶妙でいいですね。
同じ種族でも三輪様はこの世離れした麗人だけど、ピーターは正直美人じゃない。
いつも金髪ウィッグつけて、特殊メイクかってくらい濃いメイクとつけまで徹底的に顔を改造してる。
映画の途中回想シーンですっぴんで出てくるけど、これがびっくりするくらい顔が違う。
「ハイヒールモモコの素顔は坂田利夫に激似」伝説に匹敵するくらい全然違う。


でもカワイイんだなーこれが。
今のギャルとおんなじポイントの可愛さを持ってる。つけま盛り盛りの目とか、幼い口元とか。
ピーターやゲイボーイ仲間が着てる服も60年代メケメケセンスたっぷりでカワイイし楽しいです。

★前衛だけどチャカチャカした映像もカワイイ

あとこの映画が独特にカワイイのが、過激なゲイセックスや暴力シーンの処理。
セックス&暴力描写はリアル路線ではあるんですが、この映画は『天国と地獄』をBGMにしたり(エロシーンが3時のおやつは文明堂♪だw)漫画ぽいフキダシつけたり早回したりして、わざとコミカルに味付けて生々しさを避けてるところも、サブカル女子に受けそうな感じで可愛い。

このフリーキーなカワイイって何かに似てる。
なんだろうなーと考えて、そうだ沢尻エリカ主演の『ヘルタースケルター』に似てると気づいた。
あれは極端に女子ウケ映画でしたな。大体全身整形女の話に興味あるのも、「映画みましたー」って話してるのも女子しかいないし。

だが今風キュートなところもあるといえど、やっぱり60年代のATG実験映画らしい所もあります。
街に世紀末系パフォーマンス集団が街に現れ、気持ち悪い前衛画家の不気味な画廊に迷い込み、淀川長治が出て「サヨナラ、サヨナラ」と言ったり、若い芸術家が撮ったドラッギーサイケ感覚のサンプリング映像が延々と入ったりする。
当時は現代美術で「ハプニング」という一期一会性の高いパフォーマンスが流行っており、それを映画で表現したような難解なシーンもある。
まぁそうした難解箇所や虚実一体なシーンは「60年代前衛だねー」と流してみれば、話自体は普通にメロドラマ構造だからサクサク進んでわかりやすいです。

という訳でどうですか。
あやしい香りがする禁断の恋バナでカワイイ装備のお芸術映画。女子ウケ要素多くないですか?
『ヘルタースケルター』がウケてる今こそ薦めたいが、DVDがこんなプレミア価格じゃなあ。
再販しないかと希望する次第であります。

しかしいくらオイディプス王の話だからって街で母親を思い出しフラッシュバックしたエディが『アポロンの地獄』のポスターの前で気分悪くなるってのは前衛にしてはどーかね。ベタに説明しすぎやしないかね?と思うが。ちょいツッコミ。

★なんだか気になる昭和の女の笑い声

ついでに何か心に残ったシーン。
少年時代のエディが母親(東恵美子)に不在の父親の事をきいて笑われる。この母親の笑い声が実に上手い。
両目グサァより薄ら怖かった。

ヒステリックで情念や嫉妬深さを込めた、耳がキーンってなるよな甲高い笑い声って今の映画やドラマでまず聞かないですよね。凄く昭和の女っぽいなあと思った。

(了)
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