No.019『柳生一族の陰謀』

製作年:1978年
監督:深作欣二
脚本:野上龍雄・松田寛夫・深作欣二
ジャンル:東映大型時代劇

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私はアラサー辺りから古い日本映画を観始めたんけれど、実はそれまで時代劇を観た事がなかった。
子供の頃4世代の大家族で暮らしてたんだが、映画はもちろん水戸黄門や暴れん坊将軍をテレビで観た記憶すら無い。
よく考えると不思議なので家のジジババに聞いてみた。

「うちは商家の武士嫌いだから時代劇は見ない」
「大河ドラマ見てるじゃん」
「大河ドラマは歴史ドラマ。時代劇じゃありません」
「おばーちゃん歌舞伎の追っかけしてるじゃん」
「歌舞伎は町人物と江戸時代以前の時代物中心です!江戸のお武家の時代劇じゃありませーん!」
へー知らなかった。色々ちがうんですねー。勉強になりました。

さて映画の話。正直に告白しますが、よく映画レビューで「萬屋錦之介の演技が古く浮いている」と書いてある。でも
萬屋錦之介のどこがどう浮いているのかわかんない。
周りも十分古くてコテコテで仰々しく見えたのだが。

ってくらい物知らずが書く時代劇レビューだ。
はじめにすみませんと謝っておきます。
★予告編



いかにも昭和大作映画らしい予告編。
わかりやすいけど5分は長いよw

★あらすじ(青字はネタバレあり

時は江戸時代初期。徳川二代将軍秀忠が食あたりで急死した。
秀忠にはボンクラブサイク長男・家光(松方弘樹)とイケメン優等生次男・忠長(西郷輝彦)がいたが、父君も母のお江(山田五十鈴)も長男そっちのけでイケメン次男ばかりを可愛がってた折の急死である。

将軍様の急死に陰謀の匂いを嗅いた家臣、土井利勝(芦田伸介)は真相を図るべく御霊廟に密使を放ち、墓を暴いて(おいw)ご遺体から胃袋を取り出そうとする。
そこへ謎の忍者トリオが登場し胃袋を奪い去る。
忍者の向かう先は将軍家の剣法指南役である柳生但馬守宗矩(萬屋錦之介)の屋敷。懐からバーベキューの串みたいなのを取り出し、胃袋に刺すやいなや断言する。

「これは…毒殺っ!」
串刺しただけで死因が毒殺だと分かるらしい。
どんな串なんだ。

毒殺の証拠をつかんだ柳生但馬守は、家光派の老中・松平伊豆守信綱(高橋悦史)と大奥の春日局(中原早苗)に「秀忠を毒殺したのはあんた達だろう」とカマをかけてゲロを吐かせる。
2人から陰謀の仕切役を奪った柳生但馬守は家光を召集する。
顛末を告げられたヘタレ家光はおろおろして「私は将軍になれないよ」と弱音を吐くが、柳生但馬守は徳川将軍の地位に就く者の宿命と覚悟を諄々説き伏せ、弟の忠長と争う決意をさせる。
修羅場を仕切る柳生但馬守役の萬屋錦之介、冒頭からオンステージである。

★柳生一族VS豪華俳優軍団VS曲者公家バトル

柳生但馬守は徳川幕府の影の黒幕となる野望を達成すべく、息子の十兵衛(千葉真一)、左門友矩(矢吹二朗)、女忍者の茜(志穂美悦子)など柳生一族と、一族のの配下の忍者集団である、左源太(室田日出男)率いる根来衆の力を結集させて、忠長推し勢力一派を謀略の罠にかける、という話であります。

なにせ忠長推しのバックは徳川御三家の尾張大納言義直(三船敏郎)&山田五十鈴の大御所コンビ。
加えて援護射撃には柳生但馬守に並ぶ剣豪・小笠原玄信斎(丹波哲郎)が登場するし、忠長には愛人の出雲の阿国(大原麗子)がいて、その恋人の名護屋山三郎(原田芳雄)もいて、とゴージャスすぎる布陣を構えている。

さらにめんどくさい存在が、将軍家の御家騒動にいっちょかみたいサードパーティー軍団。
「征夷大将軍はオフィシャルには朝廷の一役職ゆえ位に就くには帝の勅許が要る」って事を盾に取り、幕府のお家騒動に乗じて政権奪還を企むお公家トリオが登場する。
食えない風情の九条関白道房(金子信雄)、底意地の悪い小者公家・三条大納言実条(梅津栄)、文武両道の悪役公家・烏丸少将文麿(成田三樹夫)、なんて似ても焼いても食えなそうな曲者メンツが側面から翻弄する。

こいつらオールスターキャストをまとめて謀って陥れなきゃいかんわけで、ストーリーは暗殺に次ぐ暗殺、謀略に次ぐ謀略の連続。評判通りの『仁義無き戦い』チョンマゲバージョンだ。
豪華出演陣が2時間余りでばんばん死ぬ。
剣豪同士の真剣勝負や華麗なチャンバラはもちろん、忍者バトルや馬上暗殺、鉄砲隊の蜂の巣砲撃などJACフル回転の大掛かりなアクションもある。
さらに歌舞伎女形(中村歌六)が女装して江戸城内に忍びこみ将軍暗殺未遂をしでかせば、忠長の臣下・別木庄左衛門(夏八木勲)が一対数十人の無謀な闘いでお討ち死に。
殺しの見せ場てんこ盛りです。

★怒りの千葉ちゃん、まさかの斜め上どんでん返し

とかいう色々なエピソードがあった末に忠長は柳生の罠にはまって自刃させられ、家光は帝の勅許を得て三代将軍となった。
「柳生但馬守の陰謀」めでたくここに達成せり!

だがしかし。
野望の為にちょっとやりすぎた。

目の上のタンコブ公家・三条大納言を暗殺して、しかも罪を忠長になすりつけようと陰謀を廻らして殺害計画を組んだ。
そして暗殺は無事成功して事件の目撃者を皆殺しにした。
はいいが、目撃者のひとり原田芳雄だけをうっかり生き残っちゃったのだ。

というほんの些細な失敗によって、柳生パーティは忠長側に黒子の根来衆の存在を嗅ぎつけられる。
根来衆をつつかれて陰謀が露見するのを恐れた柳生但馬守は、なんと!縁の下の力持ちを散々やった根来衆を村ごと焼き討ち皆殺しにしちゃうのだ。
(でもなんでか真田広之は生き残るが)

赤ん坊まで惨殺死体にされた人々、燃える村。
無残な光景を見た柳生十兵衛は怒りに燃える。
ここで我らがヒーローサニー千葉ちゃんの、何をやらかしてもおかしくないトンデモキャラが一気に活かされるのだ!

復讐を誓った十兵衛は江戸城に忍び込み、不意打ちで父・柳生但馬守の許を訪れる。
おみやげじゃー!とばかりにゴロンと落としたのが、
うっそー!なんと家光公の首!
それも「言われたら松方弘樹に見えるかも?」くらい似てないマネキンばればれのチャチい首!


息子の斜め上の凶行に驚愕した柳生但馬守は「うぉのれぇぇ~」と息子に斬りかかる。
だがバトルの結果斬られたのは「柳生但馬守の腕」という設定の、どこから見てもパチモンの腕!
床に転がるパチモン腕を見て慄く柳生但馬守は、もう片方の腕でマネキン首を抱えて絶叫する。

「くぉれはぁぁ夢じゃ~、夢を見ておるのじゃぁ!何事もぬぁい!何事も起こってはうぉらぁぬぅぅ~!
これはぁ夢でござぁるぅ~!左様ッ!これはぁぁ夢でぇぇござぁるぅぅ~!!」

かくして新将軍家光は亡くなったはずだのだが、柳生但馬守ら家臣と大奥は家光の死を隠し通し、家臣一同で代行政治を行う。
代行政治が上手くいったおかげで「家光将軍の治世」は長き黄金時代となり、徳川300年の繁栄の基礎を築くのでありました。
とナレーションで締めくくりジ・エンド。

★感想

さて感想。
素直に書くと、ああ疲れた。
謀略だらけで見せ場も多くて人も気前よくバンバン死んで各キャラも立ってる。
一見いいことづくめなんだが、登場人物が多過ぎる&大物役者を使い過ぎる&大物用の見せ場エピソードを詰め込み過ぎで、途中で話の展開が散漫になったのが残念。

各人物に見せ場を割り振った分、松平伊豆守や春日局とかの陰謀のキーキャラがまるで柳生但馬守のコマ扱いで退場するし、前哨戦のにらみ合いで散々煽っときながらライバル剣豪の小笠原玄信斎はあっけなく討ち死に、イケメン忠長もあっさり白旗を上げてしまって拍子抜け。
丼ごはんの上に天ぷらを詰め込めるだけ詰め込みまくったメガ天丼のようだw胃もたれ必至w
そりゃ大河ドラマ1クール並みのキャラの数とエピソードを2時間の映画にまとめるなんて無理あるよなー…と後半は少々気持ちが冷める。
ラストのどんでん返しはさすがに面白かったが。

★柳生といえばこの人。伝説のマロ・烏丸少将様

話のいちゃもんはさておき、『柳生一族』の名キャラといえば!
まず語るべきは文武両道の悪役公家、烏丸少将文麿様ですね


見た目はまんまおじゃる丸なお公家さん姿でおっとりしつつ、剣を握れば侍どもをぶった斬る!
ってトンデモ設定と成田三樹夫のルックスが絶妙にマッチ。
雅だがドS気質と気位の高さが伺えるセリフ回しも、ホッホッホッホ~とまろやかに笑う声も素敵。白塗りの下で全然隠れてない自眉もかえって凄みを増している。
まこと素晴らしい。大好きだ。
人気No.1キャラとうたわれるのも納得、いや日本のイカモノ悪役史上に燦然と輝くwと断言して過言でもないスーパーインパクト。見た事無い方は是非1回でいいから観ろと絶賛おすすめしたい。

★そして真田広之の美少年忍者ハヤテ

こちらも見どころ。ショタ好きにはガチ見どころ。
17歳の美少年がピッチピチの太もも露わな衣装でハードなアクションもこなせば、美少女忍者と初々しいキスシーンもある。
いやーたまらないではないか

ていうか真田さん、ジャニーズでも滅多にいないハイレベルの本物の美少年じゃないですか。
アップが若い!お肌ぴちぴち!オーラがキラキラ!
さすが50代で美形俳優やってる人は、少年の頃からレベルが違うもんだと感心します。

★萬屋錦之介の声はミラクルダースベイダー

そして賛否両論らしい御大、萬屋錦之介について。

萬屋錦之介って不思議な声をしてますね。
アメ横のオヤジのダミ声に金属片噛ませてボイスレコーダーかけたような声で(どういう説明だか自分でもわからないが)、「お"ぬぉおぬぉぐぁた~(各々方)、いざぁまいるぁぬくぁ~~~(いざ参らぬか)」って感じの時代劇口調でセリフしゃべられると、古いどうこうより、もう異世界である。

伝統芸能役者の声質でもないし何でしょうかこれ。
ダースベイダーの声を聞いてるようだ。
こんな重厚金属系の変声でも時代劇の空間で響かせるとアラ不思議、どんなトンデモ理論だろうが説得力を帯びるんですね。

それがラストの「夢じゃ、夢じゃ、夢でござる」の昭和時代劇屈指の名セリフにつながった。
おバカな小道具、大仰芝居、トンデモ展開。本来あのラストシーンはどこから斬っても100%お笑いになったはずである。ところが萬屋錦之介がオンステージでねじ伏せて凄絶なラストシーンにしちゃった。
三船敏郎・山田五十鈴の存在感も大物役者陣の演技合戦も仁義無き戦い調の演出も、全部萬屋錦之介のセリフ回しに負けちゃってます。
烏丸少将文麿様はさて置き、サニー千葉ちゃんの暴走もたいがい見どころですが、やっぱりこの映画のど真ん中は萬屋錦之介。素直にすげえと思いました。

ほんとはちょっと笑っちゃったけどwでも凄く見入った。
やっぱり声が凄い。
だってあの変声で絶叫した途端、空間が萬屋錦之介を中心にねじ曲がるんだもの。
役者の放つパワーとはどういうものかが確実に体感できる、うめめちには忘れ難い名ラストシーンなのでした。

(了)
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