No.022『狂い咲きサンダーロード』

製作年:1980年
監督:石井聰亙
脚本:石井聰亙・平柳益実・秋田光彦
ジャンル:どこまでも突っ走ってやるぜ!バリバリ暴走族特攻隊の超アクション映画

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私の故郷の関西地方某市は半端な田舎っぺ町で暴走にもってこいな幹線道路があり、周辺の市町村から暴走族がやってきてはバイクやシャコタンで走りまくっていた。
♪ぱららぱらりらぱらりらぱ~♪とゴッドファーザーのテーマを高らかに鳴らし、「お前ら止まれー!止まらんかー!このドアホー!」とガラ悪くスピーカーで連呼するパトカーと楽しく追っかけっこをなさっていた。

某市は田舎っぺの割にご立派な歴史があり歴史系イベント日は街宣車大行進でも有名で、昼は軍歌、夜パラリラ。すんげーうるさかった。
うめめちは睡眠不足だとキレる子供だったので「パラリラうるせーよボケ」と彼等を憎んでいた。
おかげでヤンキー指数の高い環境で過ごした割にヤンキー道へと踏み外す事なく成人したが、都会暮らしに慣れた今になって族映画を観ると、「あー懐かしいなーこのうるせーっぷり」とノスタルジーさえ抱いちゃったりするんである。

『狂い咲きサンダーロード』は暴走族映画の中でも最強に尖った映画である。
純粋な暴走族映画よりアナーキー色が強く、80年代のインディーズパンクやアングラテイストがふんだんに入ったカルト映画だ。
でも、スクリーンいっぱいにブルーのネオン文字で
「Crazy Thunder Road」
と斜めにタイトルが出る辺りからして、ダサくてくすぐったくて懐かしい80年代ヤンキーテイストが楽しめる逸品であります。
★予告編



踏み絵にどうぞ。
「ヤングに人気急上昇中」がいいねw

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台は偏見だが北九州っぽい感じがするw架空の街・サイバーシティ。
街の走り屋軍団は新道交法施行で規制が強化されるのをきっかけに、街の暴走族が争いをやめて「エルボー連合」なる平和な走り屋グループへ生まれ変わろうとしていた。
キャッチフレーズは「愛される暴走族」。
のっけからそんなアホなー!な設定である。

そして軍団の中でも鉄人暴走族と恐れられる「魔墓呂死(まぼろし)」(ヤンキーセンス全開のあて字ですなw)のリーダーの健(南条弘二)も、エルボー連合へ参加を決めた。
しかし特攻隊長ジン(山田辰夫)は日和った兄貴分に反発し、スリップノットみたいな奇怪メイク&アクセでキメた過激派メンバーを引き連れリーダーと袂を分かった。

脱退後のジンは「新生・魔墓呂死」を名乗って暴走を繰り返し、エルボー連合の面々へ喧嘩をふっかけやがるので、手を焼いた連合は一致団結してシメる計画を立てる。

ワルと言いつつ義理人情に篤く、面子・協定・ケジメを重んじる俗世以上の縦社会。
その中でジンは浮いていた。
バカでパンクで厨二病で自由すぎるジンの言動は暴走族といえど同調する者は少なかった。
でもメンバーのユキオがエルボー連合にさらわれて火炎放射攻めで過激に拷問されてると知れば、後先考えず殴り込む無謀な熱さがある彼の生き様に、シャブ中のチュウ(戒谷広)・顔はちょっと可愛いエージ(中島陽典)・ヘタレのシゲル(小島正資)、ユキオ(大池雅光)達、少数の特攻隊仲間は好意を寄せていた。

「ユキオを帰してほしければ来い」と言われて、ジンはバール片手にチュウとエージを従え、エルボー連合数十人の待つデスマッチ工場跡へ向かう。
捨て身の殴り込みに行く姿がしびれるーっ!
他のヤンキーヒーローみたいに喧嘩が強くもないが、なんかカッコいいのだ。

★男をオトコにさせるスーパー右翼兄貴登場

だがカッコいいだけじゃ戦は勝てない。
3人VS数十人の決闘じゃ到底勝てる道なく、ユキオも一層激しく拷問されて死んでしまう。
絶体絶命のジンたちの窮地を救ったのが、ヘタレのシゲルが連れてきたスーパー右翼・国防挺身隊主宰の岩見剛(小林稔侍)。
右翼になる前は魔墓呂死の初代リーダーであり、かねてからジンの資質に惚れこんでいた岩見は、街宣車で到着するやいなやピストルぶっ放す掟破りの方法で喧嘩を仲裁する。
彼は「スーパー右翼に入隊させてオトコにさせる」という条件で、敗者の魔墓呂死特攻隊の面々を引き取る。

それからジン・チュウ・エージ・シゲルはスーパー右翼の許で厳しい特訓を受ける日々を送っていたが、アナーキーなジンと右翼思想はウマが合わずジン・チュウ・エージは脱走する。
ジンを大人の男にしてスーパー右翼の新主宰に…と目論む岩見は失望するが、あらぬ方向からの仲間割れが発生する。

ヘタレのシゲル君がスーパー右翼思想に覚醒して岩見と菊花の契りを結び、まぁある意味「オトコ」になっちゃうのだ

なんと!小林稔侍が男と朝チュンですよ!

まさかのクレイジーサンダー展開である。


さて菊花の契りはともかく、脱走したジンに甘くない制裁が待っていた。
誰からも見放され援護の無いはぐれ者達は、ここぞとばかりにエルボー連合に徹底的にボコられる。
エージは植物人間になり、ジンは手足の先を落とされ一生バイクに乗れない体になる。唯一チュウは助かったが、恐怖で族から足を洗って逃げる。

★全身改造ロボコップvs菊花のスーパー右翼

自由も希望もバイクも無く街をさまようジンは「この街の奴ら全員ブッ殺してやるー!」と決意。
シャブ売人小学生・小太郎(大森直人)と指名手配犯のマッドボンバー(吉原正皓)とタッグを組み、自分の体をロボコップ仕様に改造して片っ端から暴走族を皆殺しィィィ!を実行する。
気持ちいいくらいロケットランチャー撃ちまくって走り屋をぶっ飛ばします。

最後はもちろん岩見&シゲルのスーパー右翼ホモコンビと死闘。
スーパー右翼を自称するだけあり、ていうか菊花の契りパワーなのかwコンビはさすがの戦闘力で、ジンは深傷を負いとどめの一発を食らいかけるが、小太郎の援護射撃を受けてなんとか倒す。

傷だらけで満身創痍のジン。それでも小太郎に「バイクに乗せてくれ」と頼む。
ブレーキも握れないのにバイクにまたがり、「そんな体で運転できんのかよ」と訝しむ小太郎に微笑みを返すと、ジンはどことも知れず去っていくのだった。


★みどころ

あらすじの通り、相当無理だらけな話を怒涛のテンションでクレイジーにぶっちぎる映画。

一番のみどころは小林稔侍の朝チュンと言いたいが(しかも爽やかゲイビデオ仕立てなんすよ…)
まともに答えれば山田辰夫の怪演技でしょう。

どんなヤンキー映画の主人公よりルックスは悪く、声はカン高いダミ声。
「日の丸にセ〇ズリこいてんじゃねーよ!」
「百姓!田んぼの真ん中で耕運機でも乗ってろ!」
と過激なセリフの速射砲をぶちまける。
女子中学生売春婦とヤッた帰りは「中学生サイコー♪」とご機嫌で暴走。
低血圧で朝に起こされると不機嫌になる自己中っぷり。
普通の商業映画なら真っ先に殺られる鉄砲玉の顔相だ。ルックスは女はもちろん男からも憧れられる要素ゼロ。言動だって何ひとつ共感する要素も惚れる要素もありませんが、なぜかめっちゃカッコいい。

ジンがいっちゃった眼で奇声を上げて登場すると映画のメーターがグンと上がる。
当時映画館であのテンションを大画面で観て、あんな声を大音量で聞いたんだから、みんな相当肝抜かれただろうなーと思う。
山田辰夫はこの映画で無名の存在だったのに日本アカデミー新人賞を受賞したそうです。
自主制作映画だからできた奇跡の配役だ。

しかも彼の異様なテンションに小林稔侍のスーパー右翼が絡むんだから、映画の中はたちまち魔空間になりますなw
またラストで登場するシャブ売人小学生役の大森直人君がこれまた何ともふてぶてしい佇まいの子で、生まれながらにVシネ俳優な風格さえありました。
くわえ煙草でシャブを射ってあんまり違和感が無い小学生wwwすげーなー。
大人になっても俳優やってるんだろうか。
(後日注。フツーの気の良さそうな顔のおっさんに成長してました。あのふてぶてしい貫禄は人生のどこで浄化されたんだろうw)

あと泉谷しげるがセレクトした80年代のインディーズジャパニーズパンクがセリフもさえぎる勢いで絶えず鳴っててまーうるさいw
あれ系のパンクを当時のヤンキーが聞いてたと思えないし(あいつら音楽センスだけは一般人の道に外れちゃいなかったw)、曲自体も好き系じゃないけれど、映像の不穏なトーンとピッタリ息が合って良かった。

舞台の「暴走族のいる風景」は80年代の雰囲気満点でいいですねー。
ゾクのアジトはプレハブ小屋。壁は暴走族当て字やお〇〇こ模様をカラースプレーで殴り書き。
ゾクのオアシスは、80年代の田舎じゃマストのカフェバー風に改装したカラオケスナック。もちろんスナックのチーママはリーダーの女。
なっつかしー。

★なんだか気になる人生ゲームの木

しかしだな、パンクな抗争話の間に唐突に挟まれるリーダーの健とスナックチーママの恋愛シーンが気になる。

殺伐だらけの過激映画ですから、お色気サービスもさぞかし…だったけど、カラオケビデオばりの安くてボケた映像でガッカリ。
最初は甘~い会話。そこだけ無声映画で字幕入り。
次にベッドで甘々エッチ。
極めつけはベッドで人生ゲームしてるんだよこいつら。3コマ進んで家買って結婚してウフフってな感じで、観てるこっちが気恥ずかしい。ていうか暴走族のくせに健全人生の見本みてーな人生ゲームするなよ…。

でも結局「私といるとこの人ダメになっちゃう」という理由で健はチーママにふられる。
傷心の健がスナックのカウンターで独り黙って酒をあおるシーンがあるんだが、そこは「人生ゲームまでやったのに!」と字幕を入れてほしかったです。

(了)
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