No.024『この子の七つのお祝いに』

製作年:1982年
原作:斉藤澪
監督:増村保造
脚本:松木ひろし・増村保造
ジャンル:母娘二代の怨念サスペンス

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♪通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの細道じゃ 天神様の細道じゃ♪

懐かしいですね。小学校で習いました。
でも会社の新人はわらべ歌で遊んだこと無いらしい。
映画のタイトルの意味すらわかんないのか。世代ギャップをひしひしと感じる今日この頃。

さてこの映画は典型的な昭和ホラー映画ですが、平成Jホラーと違うのは、まず怨恨の根に太平洋戦争が見える。世間に戦争の怖い記憶が残ってたんだなと伺える。
そして人々がよく耐える。
数十年に渡ってひたすら忍耐忍耐…なので、怨恨の情が濃ゆくてジメジメ粘ってる。

あと「さぁお待ちかね鮮血だよ!」と言わんばかりに真っ赤っ赤すぎる血が景気良くドバドバ出る。
戦争で狂わされた運命に耐えて耐えて怨んだ主人公が、数十年の怨み骨髄晴らさでおくものか!エイッ!プシュ!血がドバー!
こんなイメージだ。偏見すぎるかな。

本作はしかも母娘二代に渡って耐えて耐えて怨みまくるのだ。そりゃ鮮血も大盤振る舞いで出るわ。
血の苦手な方は辛いかも。
★予告編



DVD告知の予告編。
バリバリホラー煽りなのに、前半はなんでアーバン系BGMなんだろう。

★あらすじ(青字はネタバレあり

マンションの一室で若い女(畑中葉子)が殺された。
現場は鮮血ドバドバの見るからに「惨劇」状態。正体不明の鋭利な刃物で斬られたようだ。
壁に血の手形までベタベタついており、中に犯人と思われるものが混じっていた。
死亡推定時刻直前に女が客用ケーキを購入した事から警察は「犯人は女、動機は怨恨」と断定する。昔は男がケーキ食べるイメージが無かったからかねー。

被害者は総裁候補の政治家を陰で操る辣腕秘書・秦一毅(村井国夫)の元家政婦だった。
秦一毅と妻の青蛾(辺見マリ)を追っていた元新聞記者のフリーライター母田(杉浦直樹)は、たまたま惨劇の日に女から秦夫妻の秘密を聞き出そうとしていた。
その直前に殺人事件が起きたことから母田は、「犯人は秦夫妻の関係者だ」と疑い独自に追い始める。

青蛾は政財界の大物から鑑定を依頼される有名な手相占い師。占いの力で政財界を陰で動かす黒幕だと噂されていた。
なにせ「♪やめてぇ」の辺見マリが白塗り巫女姿の占い師だ。怪しさ満点ではないかw

母田は元後輩で警視庁担当記者の須藤(根津甚八)と会い情報交換を持ちかけるが、須藤が案内したバーで運命の女と出会う。
女はバーの美人ママ・ゆき子(岩下志麻)。いかにも訳アリ女の香り高くご登場である。

一見客だと給仕どころか話もしない超感じ悪いゆき子。いくら美人でもこれじゃー水商売やってけねえだろと心配するほど暗いが須藤は惚れているらしい。
でもゆき子ったら常連客になると掌返したように馴れ馴れしいし、客の密談も勝手に聞くし口まで挟む。
ダメママじゃねえか。
だが店の入り口で母田が持病で倒れると、家へ送り部屋に上がり込んで甲斐甲斐しく看病する。意外に情愛深い姿に母田もフォーリンラブ。やはり男は二面性のある美人のギャップ萌えに弱いんですね。

★岸田今日子と貧乏母子家庭!トラウマすぎる少女物語

ところで映画は畑中葉子殺人事件と並行して「麻矢」という謎の少女の物語を語る。
麻矢の正体は開始早々半バレだが、一応謎だ。

戦後すぐに生まれた麻矢は、母親(岸田今日子)と大森のボロいアパートで二人暮らし。
夜な夜な寝床で通りゃんせの子守唄を歌ってくれる優しい母親だが、夜な夜な母娘を捨てた父親の恨み節を語り聞かせる怖~い母親でもあった。
「あなたのパパは非道い男よ~。大人になったらパパを捜して母の仇を討ちなさい」
世にも恐ろしい岸田今日子語りを麻矢は毎晩頭に刷り込まれる。

ところが彼女が七歳の朝、母親が手首切って自殺した。
ひとつ布団の隣に寝るは血まみれ死体!ひぃぃ怖い。
麻矢は同じアパート住人に引き取られたが、大人になると母親の復讐を誓い失踪した。

さて秦夫妻の謎を追う母田は、会津での取材旅行で遂に謎の真相を突き止めたが、取材帰りにまた発作が起きてゆき子に介抱される。
それで事に及ぶんだが(おい持病はどうした)、ベッドに倒れて抱き合う時に「あなたって暖かいミルクの匂いがする…」とゆき子がつぶやくんである。
男が暖かいミルクの匂いってw
岩下志麻が言うと生々しくホラーだが案の定、翌朝母田は手首切った血まみれ死体で見つかった。
警察は自殺でサクッと片付けたが、取材ノートに会津取材の痕跡が無いのに気づいて須藤は会津へ行き、真相を知る。

★恐怖!ナタと鮮血と女子高生

それは失踪した麻矢のその後だった。
麻矢はゆき子の源氏名で水商売しつつ手相鑑定を勉強し、やがて青蛾と友達になった。
青蛾の占いも実はダミー。本当はゆき子が占っていた。
ゆき子は手相占いがてらに男性の手形を集め、父親と同じ手形と持つ男を探していた。親子3人の手形を残したアルバムが父親の唯一の証跡だったからだ。
元アパート住人が差し出した「高校時代の麻矢の写真」を見て須藤はショックを受ける。

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これが日本映画史に残るトラウマホラー写真「岩下志麻40歳のセーラー服」である。
ひぃぃぃぃ!根津甚八じゃなくてもショックだよ。

そのころ世界のホテル王・高橋(芦田伸介)が秦夫妻に手相鑑定を依頼する。
青蛾から手形を入手したゆき子は、父親の正体が高橋と知る。
やったねシンデレラ!あんたホテル王の娘だよ!じゃなくて復讐に燃え上がる女ゆき子は、既に畑中葉子・杉浦直樹を殺し前科二犯。怨みのパッションがどうにもとまりません。
復讐を思い留めるよう説得する辺見マリを泣きながらナタで阿鼻叫喚血みどろメッタ刺し。
「♪やめてぇ」と歌う暇もなかったよ。

須藤は高橋に「実娘に狙われてるぞ」と警告するが、高橋は逆に過去の真実を告げるために、かつて母娘が暮らしたボロアパートで娘と対峙する決意を固める。

★そしてドロドロ怨念渦巻く真実の蓋が開く

そしてとうとう話は、当時の観客を恐怖のズンドコに落とした日本ホラー映画屈指の狂気エンディングへ突入する。
復讐に燃える娘にナタで狙われながら父親が語る真実とは。

話は終戦直後の中国にさかのぼる。
戦争末期の混乱の中で嫁と生き別れた高橋は「独身だと日本へ帰れない」と噂を聞き、その場でたまたま知り合った真弓という女と偽装結婚する。
始まりは偽装だったが、一緒に暮らして娘の麻矢も生まれ親子で記念の手形も取ったりして、それなりに幸福になるはずだったある日、麻矢がネズミに頭かじられて死んじゃう。
ぎゃああああ!
ネズミて人間の頭かじる生き物だったのかよ!
娘の死はわたしのせいだと自分を責めて精神を病んだ真弓に嫌気が刺し、家へ帰りづらい高橋は、偶然生き別れた元嫁と再会。再び愛し合うようになる。

子供も夫も奪われ独りぼっちの真弓はますます狂い、
一心不乱に恐ろしいスピードで大根に千人針を打ち込むようになる。
ぎゃああああ!怖いよ!!!
鬼気迫る真弓に身の危険すら感じた高橋は、仕事で貯めた全財産を渡して離婚し、元嫁の家へ逃げる。やがて高橋と元嫁には「キエ」という娘が生まれる。

「何ですって!じゃあ私は誰なの!」と驚愕のゆき子。
実は狂った真弓は元嫁の居ぬ間にキエを盗み、自分の娘「麻矢」と偽り育てていたのだ。

母親の振りして毎晩「娘を捨てた父親」の嘘を語り、熱した火鉢串を頬に押し当てて「父親に捨てられた痛み」を体で覚えさせ、離婚でもらった金はあるのに「貧乏なのは父親のせい」と嘆く。
こうして真弓は捨てた男に復讐するため、血のつながらない少女・キえを洗脳して殺人マシンにしたんだ…と高橋は語る。

「そんなっ…信じないわ!」と否定するゆき子に高橋はアルバムの手形を鑑定させる。
赤ん坊の「麻矢」の手形は父親似だったが、「母親」真弓、そしてゆき子本人の手形と別人だった。
ことわざ通りの『灯台もと暗し』。
真実を知ったゆき子は心がゲシュタルト崩壊して完全に狂ってしまいました。ジ・エンド。


★感想

こえー。
こえーよ。

ラストシーンで「通りゃんせ」を歌いながら心がゲシュタルト崩壊する岩下志麻の姿が日本ホラー映画史に残る恐怖演技と言われてますが、確かに怖い。少々やりすぎ劇場だが。
しかし何より一番怖いのは「あたしはお母さんの人形だったのぉ!!」って狂って泣き叫ぶセリフの通りに、岩下志麻が岸田今日子の操るからくり人形にしか見えないってのが何より怖い。

うーんやっぱり岸田今日子すごいわあー。
根は善人だが生まれながらの不幸体質であり、やっとつかんだ幸せも束の間に失われ、不幸スパイラルが昂じて狂う女を演じたら日本のホラー女優史上屈指のはまり役である。

たおやかだが底無しの怖さを忍ばせる表情。
常に小刻みに震える声。
品が良いのにぬえのような佇まい。
どんなに極端なホラー設定でも「岸田今日子ならやりかねん」と思える不思議なナチュラル感。
怪だねえ。そして哀でもある。
この映画も(セーラー服だけじゃなく)ツッコミどころは色々ありますが、岸田今日子の醸し出す不幸スパイラル感を堪能する意味ではとても面白かったです。

昭和女優は良かったと文句言うつもりなど全然ないが(今の女優だって今どきの良さがあり味がある)、岸田今日子の没後に不幸スパイラル女ポジションを継げる女優がいないのは寂しい。
平成の不幸役女優No.1と名高い満島ひかりなら継げるかな?と期待はしておりますが…

今の平成ホラーサスペンス映画に自分が一歩のめり込みにくい理由って、岸田今日子が不在なのも原因のひとつなのかと考える今日この頃でした。

(了)
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