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No.002『1999年の夏休み』

製作年:1987年
原案:萩尾望都『トーマの心臓』
監督:金子修介
脚本:岸田理生
ジャンル:耽美系SFファンタジーサスペンス

002.jpg

アイドル映画の必殺パターンと言えば何か。
そりゃ「美少女だらけの全寮制寄宿舎もの」だろう。

可愛いアイドルの卵の美少女がいっぱい!清楚な制服から可愛いプライベートのリラックス姿からたっぷり拝めちゃう!たまに風呂場でセミヌードも拝めちゃったりして!うーんウハウハしたい!
なんてアイドルオタクのご期待に添えるどころか、本作はそんな野郎どもの頭から冷や水をぶっかけるがごとき
日本映画史に残る倒錯アバンギャルド映画である。

なにせ元ネタが萩尾望都の名作少女漫画、『トーマの心臓』なんである。
話知らない方に説明すると、ドイツの全寮制高校・ギムナジウムを舞台に「少女のようにセンシティブな美少年達」が繰り広げる元祖ボーイズラブと言われるバリバリ耽美ものだ。
ちなみに同系統の昭和の耽美な名作では『風と木の詩』があるが、『風と木の詩』はエロあり(乳首や大事なところを薔薇で隠す方)、対して『トーマの心臓』はエロは無いがそれはともかくw

そんな設定からして地雷な原作なんですけど、さらに映画では(当時基準で近未来の)1999年の日本の夏に置き換え、しかもアイドル美少女が男装して演じている。
赤毛もの少女漫画×耽美ボーイズラブ×宝塚歌劇団×美少女アイドルですよ。日本サブカル芸術でも特濃な倒錯要素がてんこ盛り。
そういうのがお好きな方にはバイブルのようなお宝映画でしょうが、苦手派には地雷原だらけの背筋も凍るホラー物件なのだ。って事を覚悟してどうぞ。
★予告編



予告編は文学的な香り成分が多め。オチが読めそで読めない作りで、なかなかいい出来です。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

前置きでも書いたが時は近未来1999年、白樺林と湖に囲まれた全寮制男子校の夏休み。
先生も生徒も自宅へ帰っちゃった空っぽの校舎で、3人の美少年な生徒が里帰りせず暮らしている。

15歳のクールな優等生の和彦クン(大寶智子)。
16歳の兄貴肌の直人クン(中野みゆき)。
14歳の甘ったれ坊やの則夫クン(深津絵里)。

夏休みの1か月子供だけで自炊で暮らさせるとは私立の癖に未成年保護監督不行届きはなはだしい学校だが、そういうお約束のつっこみはまぁともかく、彼らは家庭の事情で偶然居残っただけでなく、夏休み前に湖で投身自殺した下級生の悠クン(宮島依里)を巡る禁断の関係でもあった。

というのも、悠クンは和彦クンが好きで勇気を出して告ったが、あっさり拒否されてショックで死んじゃったからだ。
って訳で和彦クンは「自分が拒否ったせいで死んじゃったんだ…」と内心自責の念を抱いている。
そんな和彦クンに直人クンは友人関係を保ちつつ、実は片思いラブだったが、経緯が経緯だけに告れない。
で、則夫クンは悠クンと同級生で仲良しだったので、悠クンと直人クンが和彦クンへに恋してる(恋してた)経緯を知っている。それで和彦クンのモテっぷりになんかジェラシー。

★微妙な関係とぶちこわす爆弾ボーイ登場

自殺少年を巡り複雑な四角関係?を秘めつつのんびり夏休みを過ごす彼らだったが、ある朝寮にとんでもない爆弾少年が現れる。
死んだ悠とうりふたつの美少年・薫クン(宮島依里)が、入寮するのに親も連れず先生に挨拶もせず入学手続きもせず、夏休みにいきなり1人で荷物持って転校してきたのだ。

顔はそっくりでも性格は正反対な天然小悪魔の薫クン。さっそく秘密の関係を暴きだしそうな危ない言動をして、和彦クンの心をバリバリかき乱す。
とても迷惑だけど、でも余りに顔が似てるのでだんだん惹かれてゆく和彦クン。そんな和彦の様子に気づいて「僕がそばにいるのにあいつにばっかり…」とイラつく直人クン。3人の関係があぶなく煮詰まっていくのに僕はひとりで仲間外れなの?と疎外感を抱き、ますますジェラシーを募らせる則夫クン。

外界から隔絶された校舎で一見のんびり好き勝手に夏休みを過ごしながら、4人の少年の愛憎関係はどんどんもつれていき、お互いに葛藤して疑心暗鬼になり、和彦クンは心理的に追い詰められる。

★ラストは原作の雰囲気とかなり違う

そしてとうとう、悠クンが身を投げた湖のほとりで4人がもめるクライマックスを迎える。
ある夜薫クンは湖に浮かび上がった1通の手紙を拾う。それは何と!悠クンが和彦クンへ送った片思いのラブレターだった!
1か月以上湖の底に沈んでたもんが都合よく読める状態できれいに浮かび上がるかよ!って三度目のつっこみはともかくw、薫クンは悠クンの切ない恋心を知って思わず涙する。

そこへ追って来たのが、秘めた恋の嫉妬に狂う直人クン。「お前も和彦をたぶらかすのかぁ!死ねええ!」と薫クンを湖に突き落とそうとする。
その時、もちろんヒーロー和彦クンと、ついでに則夫クンが追ってきた。
「やっぱり僕は薫クンが好きだー!」と気づいた和彦クンは、直人クン&則夫クンのジェラシーコンビに構わず告る。

さて泥沼か?いや一転ハッピーエンドか?
ってところで和彦クンは斜め上にブチ切れる。

「一緒に死のう」

直人クン&則夫クンの前で、2人は湖に飛び込む。
なんと投身自殺アゲイン。しかもダブルで。いやいやなんでそうなる。
心中は半分未遂に終わり、和彦クンは命が助かる。だが薫クンは湖から浮かび上がらなかった。

3人に再び元の夏休みが戻ってきた。
しかし結局は誰も薫クンも悠クンも救えなかったのだ。
あの時僕がああすれば、悲劇にならなかったのに…もう一度、やり直せたならば…

苦しみにもがく彼らの元へまた転校生がやって来る。
その少年を見て彼らは奇跡を確信した。なんと薫クンと優クンにうりふたつな第3の少年(宮島依里)だったのだ。
3人は今度こそ、笑顔で新しい仲間を迎えに行った。
次はハッピーエンドを迎えるために。



★感想

だあああああ。

私はホモ・レズ・オカマもの自体は嫌いではない。でなきゃ『中国の植物学者の娘たち』など観ない。
美少女アイドル映画も好きだ。だがしかし。
ボーイズラブと宝塚が生理的に苦手なのだー!

正直に言えば『トーマの心臓』を読んだけど、どこが名作なのか全然わからず。
同じく『風と木の詩』に至っては、キモい!とにかく主役のジルベールのエロ美少年っぷりがキモい!純愛の相方セルジュもキモい!ついでにジルベールの叔父もキモすぎる!と鳥肌。
そして阪急電車の吊り広告の宝塚歌劇の新作案内を見るだけで鳥肌。ほんまにダメだ耐えれないあれは。

で、この映画である。
脚本が寺山修司チルドレンの岸田理生ゆえ、シナリオはものすごく昭和アングラ演劇テイストが強い。
でも岸田理生脚本は大好きなんだが、それを美少女アイドルが児童劇団口調の棒演技で演じると話は別だ。ぎゃあああ。キモい。棒演技はまだ耐えれるが児童劇団演技は苦手だわー。

こんな自分が『1999年の夏休み』を観た理由は正直どれだけ気持ち悪いブツなのかと興味本位でした。
初めて見た感想は、予想以上に気持ち悪かった。ほんとファンの人すみません。だって男装少女のキスシーンがばっちりあるし。しかも妙に濃厚ー。糸引くくらいにー。だああああ。

とまぁうめめちの苦手な要素ばかりを狙い撃ちにしたような映画にかかわらず、これが意外とアイドル映画として傑作なのだからわかりませんね

★ボーイッシュ可愛い&こだわりフェチがみどころ

どこがアイドル映画として傑作なのか。
まずアイドルのレベルが高い。濃いファンの方には上級生が人気のご様子ですが、うめめちのみどころは下級生の子が美少女ちゃん

宮島依里は子猫っぽいキュートな表情が印象的。小悪魔な役柄にぴったり合ってる。どこか泣きそうな表情が良い。
深津絵里は可愛らしい中に凛とした美がある。当時15歳だったそうですが、うまい具合に少年と少女の狭間にいる雰囲気があって役にぴったり。ことに横顔の佇まいがきれいで、ハッと見とれます。横顔は今もあまりお変わりないですね。

★気になる制服ファッションチェック

さらにアイドル映画に欠かせない制服デザインも、フェチっぽいこだわりがあります。
基本は英国パブリックスクール調なのに、ショーパン&ハイソックスで絶対領域を確保、さらに膝の上に謎のガーターベルト巻き
ショーパンが淡く深みのある素材と色使いだったら、もっと英国感が出て良かったけど。

しかし原作はドイツのギムナジウムなのになぜに英国パブリックスクール?と思ったが、原作のマンガ執筆当時の1974年のお耽美業界はドイツやフランスのギムナジウムが主流だったが、映画製作当時の1987年はそっち方面は下火で、英国イケメンぞろいのパブリックスクール映画が大ブームだったかららしい。
お耽美業界も流行りがあるんですね。

★あえて原作と変えてみたSF設定が癖になる

さらに「上手いアイデアだねー!」と膝を打ったのが、ヨーロッパが舞台の原作の実写映画への落とし込みかた。ヨーロッパから現代日本に翻案するのに、「1999年」という「10年先の近未来SF」に置き換えたのが意外とはまってます。
『時をかける少女』とかもそうですが、日本映画のSF設定って一般向けの娯楽映画よりアイドル映画の方がはまりやすいと思います。

たとえばどの辺がSFかというと、作品中には本筋と全然関係ない謎のプチSF設定が見られる。
冒頭に声だけ登場する「現在の私」は何者か?
生徒たちが日課で行う勉強は何の勉強?教室にあるあのタイプライター状の機械は何の機械?
和彦の両親の死因の「発電所の事故」とは?
学校のあちこちにある謎の仕掛けや標識の意味は?
薫はどうして深夜に母親と長電話するのか?電話は本当に母親とつながってるのか?

これらの謎エピソードにはなんとオチがなく伏線投げっ放し状態で終わるんだが、不思議と謎のままでも気にならない。
しかも和彦クンにふられた悠クンが何度も死んでは生まれ変わり和彦クンの前に登場するという、実は寺山修司直系のアングラ全開オカルトなオチに、静かな説得力を与えている。

またエンディングを原作と変えて「これぞSFアイドルドラマ!」なハッピーエンドにしたので、アングラオカルトオチと合わせ技で良い余韻が生まれてます。
個人的には原作の哲学的なエンディングより心に残りました。

耽美方面が大好きな方は絶賛おすすめ。
うめめちと同じく耽美方面は絶対苦手!!な方にも一応おすすめ・・・かな?
ギャアアア設定とアイドル棒演技に耐えて一見する価値はあると思います。

(了)
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