No.028『赤い風船』

製作年:1956年
監督:アルベール・ラモリス
脚本:アルベール・ラモリス
ジャンル:ほのぼのファンタジー映像詩

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『白い馬』デジタルリマスター版と一緒に入っている。
せっかくなのでついでにレビューする。

『白い馬』の舞台が南フランスの大自然なら、『赤い風船』は古いパリ郊外の街角。
『白い馬』が少年になつく馬なら、『赤い風船』は少年になつく風船。
『白い馬』が白黒映画なら、『赤い風船』は赤色がきれいなカラー映画。

多少の違いはあるものの、極力セリフを排して映像で描く傾向は同じ。
『赤い風船』の方は少年が幼く、風船に馬みたいなデカさや強さが無いせいか、よりほのぼの度が高い仕上がりになってます。
★あらすじ(青字はネタバレあり

パリ郊外のメニルモンタンという下町で、小学生男子(パスカル・ラモリス)が登校途中に赤い風船が街灯に引っかかってるのを見つけた。
少年は街灯によじ登って風船を捕り学校へ行った。

「風船持ってバスに乗っちゃだめ」と車掌に言われればバスをあきらめて歩き、雨が降れば通行人に頼んで風船を傘に入れてもらう。
自分は濡れても風船は濡れちゃだめなの!っつう発想が子供らしいバカで可愛い。

こうして大事に持って帰った風船なのに、ママに「風船を捨てなさい!」と怒られて渋々窓から風船を飛ばす。
しかし風船はなぜか少年から離れず、翌朝ふわりふわりと戻ってくる。
手を離してもわんこみたいに後をついてくる。うーむ可愛い。

登校から下校までつかず離れず絶妙な距離でずっとついてくる風船が、噂にならないはずがない。
街のワルガキどもは少年に次々ちょっかいをかけて最後は大勢で風船を奪いに来た。
ガキどもの追手から必死で逃げ回るが多勢に無勢。風船はワルガキのパチンコ玉に当たりとうとう割れてしまった。

その時パリ中の風船がメニルモンタン目指して飛んでいき、赤い風船の残骸を見て悲しむ少年の周りに集まった。
風船たちは大きなかたまりになると、少年1人を楽に空中散歩させられるサイズのでっかい気球になりました。
こうして風船たちは少年を連れてパリの大空へ飛び立ったのでありました。おわり。

★感想

しかし可愛いな風船
子供と動物が特に好きでない人間が見ても頬がゆるんじゃう完璧キュートだ。
学校の先生に追い払われて飛んで逃げたり、少年に逆らってあっちこっちいったりするが、頃合いを見てふわりと戻ってくるのが心憎い。

風船を飛ばすのにふさわしいロケ地選びから、風船の色艶かたちにいたるまで、監督のディテールへのこだわりが凄まじい。
特に風船の動きが滑らかなのにびっくり。
糸の付け根にピアノ線を絡めて画面の外から操作してると思うんだが、操り手がなかなかの演技派なのだ。
だから風船のくせに忠犬ハチ公度が高く、見てるとつい感情入ってしまう。

ラストシーンの風船飛行のカット割りがファンタジックですね。大好きだ。
少年と一緒に自分も飛んじゃうかとおもった!と言うほど残念ながら子供じゃないですが、腰がふわりと浮く感があったかな。やっぱりこの監督はマジックの使い手だ。

★パリの下町は街がきたねえ

しかし映画の舞台になったメニルモンタン地区は撮影当時は観光客が訪れる場所じゃなく、日本人が「パリ」と聞いて想像するイメージからかなり遠いリアル下町だったそうが
それにしてもきたねーな。
上手く言えば生活感のある街並み。実際は生活感あるにも程があるだろ状態だ。
第2次世界大戦から10年経ってるはずだが、雰囲気は終戦直後のスラム街に近い。家の壁が軒並み穴ぼこだらけってどういうこと。通りはゴミばっか落ちてるし、アスファルトはあちこちヒビ入ってるし。
街だけじゃなく通行人の服装もくすんでいる。主人公の少年の通学服だって子供なのに灰色のジャージにおやじカバンだ。

こんな汚いゴミだらけの灰色の街と戦後復興期のごたごたですさんでる人々の上空を飛んでいくからこそ、風船の色がきらきらまばゆく見えるのだ。
リアル都会だから活きるファンタジーです。

★気になる俳優、パスカル君の幼い含蓄風情

さて『白い馬』に続いて気になる主役の少年。
今回はアルベール・ラモリス監督の息子パスカル・ラモリス君。「白い馬」の主人公の弟役に続いて登場です。
身内を使うと出演料タダだしな。若干親バカも入ってるだろう。なんて世知辛い大人の発想ですね。

そのパスカル君、『白い馬』では幼すぎて「ふわふわ金髪が可愛いフランス人おこちゃま」としか記憶に残らないが、『赤い風船』では少し成長して可愛いだけじゃない表情を見せるようになった。
それが子供なのに意外と苦み走っていて、フランス映画でよく見る「イケメンじゃないがフランスでは重用される渋め俳優」系の顔なのだ。ジャン・レノやジェラール・ドパルデュー系列だ。
小学生の癖にその手の苦みを備えてるたぁ、いかにもフランスだなあと思う。

映画から半世紀余り。パスカル君も成長して渋くていなせなフランスオヤジになったんだろうか。
ちょっと気になる。

(了)
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