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No.029『化粧師/KEWAISHI』

製作年:2002年
原作:石ノ森章太郎『八百八町表裏 化粧師』
監督:田中光敏
脚本:横田与志
ジャンル:コスメでお悩み解決!女の美と自立と涙の大正ロマン

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女という生き物は化粧が好きだ。
とまで断言できないが化粧好きな女は多い。
そして金と暇があればプロのメイクさんに毎日化粧してもらいたいと考えている。

化粧の何が好きかって自分が美しくなるのはもちろん、化粧道具を見てうっとりするのが好きなのだ。
色鮮やかなネイルが入った小瓶。
ほんのり紅色に染まるチークのコンパクト。
回すとくりくり出てくる口紅。
香水のクリスタル瓶。
ちっちゃい眉毛カットはさみ。
どれもこれもキュートすぎて見るだけでアガる。女が化粧品売場で長居するのは、買うのと選ぶのだけが目的じゃありません。

しかし反面、自分で毎日化粧するってすごくメンドクサイのもまた事実だ。
男より早く起き、目も覚めないうちから化粧をしにゃならんのは正直しんどい。
アイラインや眉尻ラインを引くには手元の技術と集中力もいるし、心上の空でもそれなりにできる掃除洗濯と違って、心を無にしなきゃ作業進まない。坊さんが座禅を組むがごとく、化粧には日々の修行根性が必要なのだ。いやまじで。
女性誌のメイクアップ講座がたまに女性論やスピリチュアル方面にいっちゃうのは、メイクが修行に似てるからだと思っている。
とするとメイクを終えて鏡で自分の顔見た時に、うっとりして気持ちパーッとアガるのは座禅効果か。あるいはランナーズハイか。

という前置きはともかく『化粧師』は、プロの天才メイクアップアーチストに綺麗に化粧してもらった女たちが、うっとりして気持ちパーッとアガったついでに本当の自分に気づくって感じの話である。
★あらすじ(青字はネタバレあり

東京の下町に小三馬(椎名桔平)なる化粧師がいた。
寡黙で無愛想だが腕利きで、「化粧を頼めば幸運が来る」キラーコンテンツもあり上流マダムや芸者女優など常連を大勢抱える人気者だ。
だが金の為なら何でもする、法外な料金をふっかける、等々の悪い噂も立っていた。

小三馬を贔屓にする写真屋(佐野史郎)のところへ、ある日結婚写真を撮りに来た訳あり若夫婦。
自分の落ち度で顔半分に火傷を負った嫁を「結婚写真だけは綺麗に撮ってくれ」と頼む旦那に、小三馬はメイク術を駆使して火傷跡を綺麗に消し、晴れ姿の夫婦はうれし涙を流す。
ちなみに通常料金が1回1円、スペシャルメーク2円が相場らしい。

主役をライバルに取られた女優の卵(柴咲コウ)。
噂を聞いて新作オーディションの日に来るが、彼女の悪相を見た小三馬は、「お代は20円だ」とふっかけて追い返す。
でも女優は金持ち旦那と寝まくり20円を貯めて再び来る。いい根性じゃねえか。
小三馬はどぎつい女優メイクを落として可愛いナチュラルメイクに仕立てる。大正時代にナチュラルってアリか?と思うが。監督はどうも愛され系メイクがお好みのようだ。
自分の姿にアガる女優に小三馬は説教する。
「顔は化粧してもみてくれだけじゃ美しくなれない。化粧は心にするもの」
大事なことに気づき涙する女優の背中に「今日のお代は1円だ」と呟く小三馬だった。

パッとしない長屋住まいの旦那(岩城滉一)としゃべれない息子の光夫(秋山拓也)に毎日イライラして怒鳴り散らすヒステリー気味のおっ母さん(岸本加世子)。
光夫は化粧道具に興味があって小三馬と親しくなり、しゃべれない代わりに小三馬の家で母の怖い顔の似顔絵を描いて感情を吐きだしていた。
ある日旦那と夫婦喧嘩するおっ母さんを連れて光夫は小三馬にメイクを頼む。
タダで化粧はおろか美しい着物を着せてもらっていい女に変身したおっ母さんは、小三馬から怖い顔の似顔絵を見せられて、家族を責めてばかりの自分に気づきおいおい泣く。
旦那と寄り添い夫婦愛が戻ったおっ母さんを見て、息子ははじめてしゃべれるようになった。

常連客の呉服屋の後家奥様(いしだあゆみ)の元で奉公している美少女の女中とき(池脇千鶴)。
要領が悪く女中頭にいじめられるが、心清らかな彼女の夢は文字を覚え、街の貧しい子供たちに本を読んであげて夢と希望を与えること。
ある日お使い中に本屋で読本を立ち読みしてたら本屋が「持っていきな」と読本を押し付ける。タダじゃ良心が許さない彼女がなけなしで貯めた代金1円を持ってきても、本屋は頑として受け取らない。
実は近所に住む小三馬が代金を払っていたと、ときは本屋から教えられて感謝する。

★唐突過ぎるよ。いい話クライマックス

前半はこんな感じの「いい話オムニバス」。うーんケツがかゆくなるような。
でも小話オムニバスじゃ映画が散漫になるので、後半は美少女ときが女優を目指す話と、小三馬家の下に住む天ぷら屋のおてんば娘・純江(菅野美穂)の話中心にまとまっていく。

純江は小三馬に惚れてて化粧師になりたいが、化粧師なんてチャラチャラした職業の男が嫌いな職人気質の頑固親父(田中邦衛w)と天ぷら屋の跡継ぎ婿養子が欲しいお母ちゃん(柴田理恵)に反対される役どころ。

一方でときの話。読み語りしていた子供達のバラック小屋がお役人に取り壊されそうになり、ときは取壊し令状を役人からひったくって逃走する。
警察に追われる途中でときは小三馬に匿われ、化粧で別人に仕立てられて無事逃げる。

純江は天ぷら屋の婿養子の縁談が決まり、写真館で結婚写真を撮る。惚れた男の手で綺麗な花嫁姿になったおてんば娘は、ああ自分は嫁にいくんだと実感して思わず涙。
しかし仕事を終え写真館を出た小三馬が、とき隠匿容疑で警察に身柄拘束されてみんなびっくり。
とっさに飛び出て小三馬を弁護する田中邦衛(嫌いだったくせにwやっぱりw)に加勢しようとして、純江は小三馬の秘密をついぶっちゃける。

「このひと耳が聞こえないんです!」

え、何だってー!とびっくりする周りの人々。
ここが一番のクライマックスでバーッと盛り上がるはずが、唐突すぎて何か腰砕け。
仕事仲間でいつも一緒に居る佐野史郎すら気づいてなかったって!いくらなんでも不自然すぎるだろ。
読唇術と気配を読んで凌いでたんだろうけど、ここまで他人に気づかれなくやってれば、実は耳聞こえなくても問題なくね?


な疑問を挟む視聴者を置いて話はサクサク進む。
結局バラック小屋は無くなっちゃったけど、ときの読み語りをきっかけにして貧しい子供たちには希望が残り、化粧品好きの光夫は小三馬の弟子になる。
ときは奉公を辞めて女優を目指し、いしだあゆみ奥様は表だって応援出来ないけれど、お気にの着物をこっそり渡してエールを送る。と、いい話で畳んでジ・エンド。

★感想

どうですか。ちょっといい話。

うめめちは大正ロマン・昭和モダンものが大好きで何でも喜んで観ますが、普段観る映画のタイプがアレなんで、こういう心温まる展開がぬるくてあーもーどうにもむず痒いw

これが実相寺昭雄なら!
完璧な美を追求する化粧師(岸田森)が娘を拉致って己好みにSM調教するかも。
これが篠田正浩なら!
男に裏切られた芸者(岩下志麻)が半狂乱になり化粧師を色仕掛けで落として復讐するかも。
これが増村保造なら!
美人令嬢(若尾文子)の旦那に捨てられた不幸体質のシングルマザー愛人(岸田今日子)が、文子の息子に化粧色粉を飲ませて殺すかも。
想像するとわくわくしますね。それはともかく。

★最大の不満。なんでメインのお化粧シーンが少ねーんだよ

この映画はお化粧道具パーッと見せ&化粧テク披露シーンが少なすぎる!
大体メイク始めてあっという間に完成するし。
ちょっといい話なんかどーでもいいから化粧だ!化粧!メイクシーンを映してくれ!メインはそこじゃねーのかよ!
もっと化粧のうんちくと手元と女がアガる過程をつぶさに見せてくれよ!

とはいえ、色艶やかな着物姿が舞う女部屋のしつらえは華麗で目の保養。
バラック小屋に住む子供達からいしだあゆみ奥様まで可愛い大正着物が満載ですし、印象派のように淡く柔らかな陽光差す撮影が大正ロマンの華やかモダンな装いに合っている。
昨今の大河ドラマもこれくらい綺麗ならねえ…w

★役者は可愛くてセクシーでいいかも

さて役者チェック。まず椎名桔平ですから役は寡黙でも期待通りに裸はバッチリ!
秘密の小屋で野草を煎じる時は上半身裸で汗を流して作業しますし。
白ふんどし一丁での乾布摩擦シーンもあるよ!キュッと締まったふんどし尻!うーんナイス。サービスショットですね。

池脇千鶴は素直に可愛かった。
ドジっ子だが心清らかな薄幸美少女役といういかにも朝ドラヒロインだが、はまってた。
この頃はまだ細かったね…

そして天ぷら屋の娘の菅野美穂。
おてんばだけど心揺れる娘役は十八番すぎるってか、チオビタのCMの嫁にしか見えない。今にも「チオ☆」「ビタ★」と言いそうで困る。上手いんだけど。
でもいつものキャラ過ぎて正直存在がうざかったが、クライマックスで結婚写真を撮るシーンで胸元まで白粉はたいて化粧されるシーンの、抜けるように透明な白肌がきたわー。例のヌードあり写真集よりぞくぞくした。
編集ついでに追記。ご結婚おめでとうございます。

音楽はもろアジエンス路線。
映像もきれいだが、大正ロマンものとしては細部の詰めが甘いのが気になった。
いくら化粧師は裏方の男衆だからって、「必殺仕事人」の飾り職人の秀みたいな衣裳はどうよ。頭もオールバックか七三に何故出来ない?椎名桔平もその方が大正男らしく見えるよ。

子供も坊主頭とザンバラなのが混在してる。光夫くんは坊主か刈り上げがよかった。
貧乏だからマメに刈れない設定かもしれないが、じゃあバラック小屋の子供達が坊主・ザンバラ混在なのが理屈に合わん。整合性をとってほしい。

★おまけ 菅井きんを探せ!

これは大役だからわかりやすい。
バラック小屋スラムの重鎮ばあちゃん。馴染みすぎてセットと一体化してた。
自分の見せ場になるとセットからせり出してくる。うおぅ!セットが動いた!な驚きがあるw
推定日本一トタン屋根の似合う女優としてさすがの貫禄であった。

(了)
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