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No.032『Walkabout 美しき冒険旅行』

製作年:1971年
原作:ジェームズ・ヴァンス・マーシャル
監督:ニコラス・ローグ
脚本:エドワード・ボンド
ジャンル:アヴァンギャルド冒険映画

032.jpg

後味の悪い映画だ。
どうにも納得いかん映画だ。

でもニコラス・ローグの映画っていつもそんなのばっかりじゃねーか?と言われればまぁその通りです。『地球に落ちてきた男』も哀しいラストシーンだったし、『赤い影』や『ジェラシー』はバッドエンドの極みだし。

でも他の映画は悲惨なオチでも納得感はあるんだが、『Walkabout美しき冒険旅行』だけは消化しづらい後味の悪さがざらりと心に残る。
オチが無いとかありえないという話じゃない。いかにもニコラス・ローグっぽい回りくどい構成だがオチはちゃんとある。だからこそ、「こんなオチってありかよー!」な苦い想いを噛み締めるんである。
それが無きゃ好きな映画なんですが。
★予告編




動物わんさかオーストラリアン野生の王国仕様。
予告だけだとまっとうな青春観光映画に見える。
踏み絵にどうぞ。

★まずはニコラス・ローグ監督作品のおさらい

過去・現在・未来が錯綜する。
話の途中で謎の伏線カットバックシーンがいきなり乱入して、これまた何の注釈もなくいきなり終わる。
わかんなくてハァ?となるが、めげずに我慢強く見ていたら最後の伏線はちゃんと回収される。

冒頭にミーミーうるさいラジオのチューニング音とアボリジニ楽器ディジリドゥーのリズムをBGMに、
学校で発生練習する生徒たちとか、マンションの上から下を眺めた映像とか、意味不明な前衛映像コラージュが次々現れます。
最初から伏線ばりばりですが、まぁ伏線に気を付けないと理解できない話じゃないので、ぼーっと眺めとけばOK。

★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台はいきなりオーストラリアの砂漠。
パパ(ジョン・メイロン)、14歳の姉(ジェニー・アガター)、6歳の弟(リュック・ローグ)は何故か制服姿で砂漠でピクニックしていた。
と思ったらパパが兵隊ごっこする弟に向かって
本物のピストルをいきなりバーン!
何事だぁ!と弟をかばって怯える姉をよそに
パパは車にガソリンまいて自分にバーン!
理由は不明だが車は燃えてるしパパ死んじゃった。

セダンで来た割に見渡しても道路が見えない超秘境の砂漠のど真ん中で、置き去りにされた子供たち。
姉弟は助けを求めて、ひたすら砂漠を歩くはめになる。これはきつい状況ですねー。

どんだけ歩いても見える景色は岩!岩!山!山!砂漠!砂漠!ばかり。
雄大だねえ。オーストラリア観光局のイメージビデオかよ。
ついでにオーストラリア固有の希少動物もサービスでチョイ見せ。砂漠のオアシスにたどりつけば可愛いウォンバットがわざとらしくお出迎え。
ちょっとしたわくわく動物ランドである。

しかしどんだけ美しくても幼い白人姉弟には過酷な紀行だ。食料も水も尽き、強力な太陽光線と暑さでライフポイントをがりがり削られる。
唯一の文明道具はラジオから聞こえる音だけ。つってもここが砂漠のどこなのか教えてくれる訳じゃなし。
精根尽きてもうダメかも…!と姉ちゃんがくじけかけたところで、トカゲを腰にぶらさげたアボリジニの少年(デヴィッド・ガルピリル)が助っ人で現れ、水や食料をゲットしてライフポイントを回復させてくれた。
姉弟と言葉が通じない少年だったが、一緒に木登りや狩り、湖で泳いで仲良くなる。

★少女と少年の胸キュンすれ違い

アボリジニ少年が砂漠でひとりブラブラしてた理由は、部族のしきたりで「大人の男修行」をしてるから。
助けを借りず砂漠を歩きピンチを克服し己の力のみで生きる。それが大人の男だ。
砂漠の民らしいシンプルな哲学である。
って訳で少年は自給自足の生活をしてて、野生ウサギやカンガルーを自分で狩ってさばいて食ってる。
可愛いウォンバットまで丸焼きー!
ぎゃー!わくわく動物ランドが死体丸焼きランドに早変わりである。

さらに、少年の旅にはもうひとつの目的があった。
無駄肉が無いイイ体の少年は、部族でいうお年頃嫁をゲットするのも大人修行の旅の終着点なのだ。
さっそく少年は姉ちゃんの白い肌やすらりと長い脚に心ひかれる。
でも姉ちゃん自身はアボリジニ野生生活への偏見もあり、無邪気な心で少年と友達になる気も無ければ、まして恋の対象にする気持ちは無い。
うーんすれ違い。せつないね。

このまま少年と姉ちゃんが微妙な関係のままで終わり、姉ちゃんは都会へ戻り少年はプチ失恋しました、って流れなら、ほろ苦い青春ビルドゥングスロマンになっただろう。
でもこれはニコラス・ローグ作品。爽やかな青春で終わる訳がねえ。

★胸キュンが一転、そんなぁ!な初恋の終わり

3人の冒険はサクサク進み、遂に人家の跡を発見する。
少年が狩りに出ると舗装された道路があり、ハンターが銃持ってジープを走らせてる。やったー!文明の匂いがするぞー!って事で姉弟の旅の終わりは近くなったが、でも少年とはお別れになる。
ここで少年は決断した。
人家は手を入れたら住める。水の出る井戸もある。
少年は「ここで俺と一緒に住もうよ」と姉に語りかけるが、姉ちゃんはプロポーズの言葉が分からない。
そこで少年はあせって一発勝負に出ちゃった。

walkabout.jpg

少年、骨ホネペイントで両手に花持って踊り出す。

キャー!と驚いて逃げる姉を追いかける少年。弟は「何か目的があるんだよ」となだめるが、姉ちゃん怖くて聞いちゃいねえ。
実は骨ホネダンスはアボリジニの勝負の求愛ダンスなのだが、そんな風習をしらない白人女子高生に理解できるわけがない。ダンスは夕暮れまで続いたが、姉は怯えるばかりで少年に歩み寄ろうとしなかった。

求愛は失敗した。
自活は出来るが心はまだ未熟な少年のこころを支えてたものがバキッと折れてしまい、次の朝、少年は木に縄を引っ掛けて首吊り自殺してた。


2人ぼっちに戻った姉弟は、また制服を着て廃屋を出て道路をとぼとぼ歩き、寂れた炭鉱町にたどり着いた。
建物は残ってるが生活の気配が無い死んだ町。唯一の住人に声を掛けるが門前払いを食らい、炭鉱の集積場跡で所在なくぼーっとたたずむ。
何とも味気無い旅の終わりだった。

その後の姉弟のエピソードは何も無い。
あれだけ不幸な事情で砂漠を延々遭難しながら、親切な村人が警察を呼んでくれるとか、お母さんが迎えに来て姉弟が涙涙とかいう「感動のエンディングシーン」の段取りを全部すっ飛ばし、前半で散りばめた伏線回収のオチをちょこっとつけてジ・エンド。

…え?
拍子抜けするほどオイオイなエンディング。ハリウッドではありえない話の畳み方でありました。


★感想

えーとどこからいこうか。まず、ほめる方面から。
この映画が「伝説のカルト名作」と後世で讃えられるのは、あまりにもカルトに有名なシーンがあるからだ。

世界の美少女フェチには伝説の「ジェニー・アガター16歳全裸水浴シーン」であります。

ロリに興味無くても一度は観ておきたい美映像。
ジョン・バリーの甘美な旋律に身をゆだねて、湖の深い青と水藻の緑の合間に揺蕩う少女の白い体。
ああ美しいひととき。こりゃあ眼福です。

そして映画前半の砂漠シーンの美麗なこと。
あらすじで「オーストラリア観光局のイメージビデオかよ」と書きましたが、景色の見せ方がガチで上手い。砂と空と太陽の美しいコントラストにうっとり。さすが『アラビアのロレンス』撮影監督出身だ。
色鮮やかな鳥や可愛い動物たちも楽しめて満足です。ウォンバットこんにちわシーンは余りに不自然だけどw

しかし前半きれい!可愛い!で撮っといて、後半のわくわく死体丸焼きランドで一転してグロく落とすw意地悪だなー。
カンガルーをさばく少年を見て「やだぁグロい」と眉ひそめるお姉ちゃん。
するとすかさずテレビの料理番組シーンをカットバックで挿入。「今日の料理はカンガルーのソテーです」w
何がグロいんだよ!お前も3分間クッキングで料理して食ってんだろこの肉を!とたたみかける。イギリス人らしいキレの良い皮肉でナイス。

★さて、納得いかねえオチ問題です。

とまぁ映像美も皮肉っぷりも素晴らしいシーンも多いだけに余計腹立つのが話のまとめかたです。
少なくともオチさえ無きゃまだ許せた。
さて、あらすじで「前半で散りばめた伏線回収のオチをちょこっとつけて」とだけ書いた大問題のオチとは何かを説明します。

あの砂漠サバイバルから月日が飛んで飛んで数年後。
姉ちゃんは結婚し、都会のマンションでテレビの3分間クッキング番組を見ながら夕食を作っていた。
今日の料理はカンガルーのソテーw
あの冒頭の謎の前衛コラージュとか謎の料理番組とかのカットバックシーンは、すべて成長した姉ちゃんが見ている日常風景だったのだ。
そこへアボリジニ少年と全然似てない旦那が帰宅する。お帰りなさいのハグをするが、幸せな風景のはずなのに、どうしてか意識が旦那へ向かってない。

遠い目をして砂漠を思い浮かべるお姉ちゃん。
瞳に映るのはあの砂漠のオアシスの美しい湖。そこでは裸の弟が遊んでる。アボリジニ少年も待っている。そしてお姉ちゃんも脱いでいる。
キラキラと輝く3人の笑顔に、ジョン・バリーのせつない旋律が流れ、「失われた時は戻らない」とかいうナレーションがかぶさる。
終わり。


おい。
こんな終わり方でいいのか?

お姉ちゃんの目はなんであんなに虚ろなの?
「あの時少女だった私は砂漠で輝いてたわ」って何なんだよ。勝手に美化したひとりよがりな思い出を紡いでんじゃねえよ。
なんで思い出の中で少年は笑ってんだよ。少年は死んだんだよあんたの前で首吊って。
砂漠の私が輝いてた、忘れられない、んなら都会のマンション捨てて今すぐ帰れよ砂漠へ。旦那と離婚してアボリジニと再婚してこい。

あと弟はどこ行った弟は。
無邪気だった弟は、砂漠の旅で何か得たのか?「弟はその後アボリジニ研究者になり、思い出の砂漠を旅すしていた」とかさぁ。
あえてベタでもいい。砂漠での色々な経験を経て姉弟が成長したと思える、ビルドゥングスロマン的にプラスな方向の後付けエピソードとか無いのか?

アボリジニ少年が1人自殺してんねん。
そこに救いは無いのかい。

なーんか上手く言えない消化不良の後味の悪さ。
お分かりいただけたでしょうか。
60~70年代ヌーヴェルヴァーグ映画にありがちな斜に構えた皮肉な物語は好きだし、「育った環境の違う者同士は結局わかりあえなかった」苦い青春話でもいい。じゃあ、あんな半端にドリーミーなオチをつけなくてもいいんじゃないでしょうか。
ハリウッド映画みたいになんでも強引にハッピーエンドにしろと言わないが、爽やかに終わらせれる映画は素直に爽やかに終わらせてほしいんだと、しみじみ想ううめめちなのでした。

(了)
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テーマ: 映画感想 | ジャンル: 映画
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