No.034『帝都物語』

製作年:1988年
原作:荒俣宏
監督:実相寺昭雄
脚本:林海象
ジャンル:帝都東京を攻防するオカルトサイキック映画

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時は昭和末期。オカルト番組全盛期で、小中学生はみんなオカルト大好きだった。
いやみんなは言い過ぎだがw超能力やUFOやノストラダムスの大予言だのに感化されたガキが多数いた。そこでこいつらをターゲットに想定した角川文庫のライトノベルが発売されて大当たりした。

陰陽道や奇門遁甲なんてカッコいい専門用語と薀蓄たっぷりの用語解説が一杯書いてあって、千円以上時代をまたぐものすごい大風呂敷を広げた物語で、その割に小学生でもわかりやすい単純なあらすじで、「平安時代から現代日本にいたるまで、一子相伝の秘伝を守る超能力一族がいた!」なんて出自の超能力持ちヒーロー、ヒロインがいて、日本のどこかでスーパーサイキックバトルを繰り広げ、人知れず日本の危機を救ったりしてる伝奇ファンタジー話に、オカルト大好き厨二病なガキどもはワクワクしたもんだった。

荒俣宏『帝都物語』もそのひとつである。
話の大筋はオーソドックスなライトノベルファンタジーだったけど、なにせあの荒俣宏だから薀蓄のレベルが半端ない。
だからまさかあの薀蓄の山を実写化するなんて当時の小学生ですら思ってなかったんだが、まさかの夢の実写化!だったのである。

今この映画を観ると正直なところやっぱりバブルはお金が沢山あったんだなーとしみじみ思う。当時破格の技術と製作費とH・R・ギーガーまで投入して、ドーマンセーマンとか式神とか腹中虫とかをCG無しで映画化しちゃったんだから。
そしてあの実相寺昭雄に破格の製作費を与えられたんだからw
まぁ細かいところは色々文句はあるが思い入れも深い、記念すべきマイ・ファースト・実相寺作品であります。
★予告編



噂の腹中虫もいる。踏み絵にどうぞ。
予告はクリーチャー比率が多め。

★あらすじ(青字はネタバレあり

明治末期の東京。
実業家の渋沢栄一(勝新太郎)は東京を世界一のスーパー帝都へ進化させるべく、当時日本最先端の科学者知識人を集めて「東京改造計画」なるデカイ都市計画を進めていた。

そこへ陰陽師の名家・土御門家の総帥である平井保昌(平幹二朗)がやって来る。
いかにも日本伝統オカルティスト装束の平幹二朗は、「帝都破壊を企む悪者が平将門の霊を起こそうとしている。改造計画に土御門家を加え、東京を霊的に守護せよ」なんて言ってのける。
文明開化の世の中に平将門ってw科学的とは一番遠い距離にあるオカルト行者が何マユツバな話してんねん!
という雰囲気だったが平幹二朗の言う通り、東京某所に謎の日本帝国軍人・加藤保憲(嶋田久作)が現れ、将門を復活させる秘策を実行しようとしていた。

★まず映画版『帝都物語』の長所短所をアバウト解説

…という話から始まる『帝都物語』。
元の小説では明治から昭和末期までかけて加藤保憲VS超能力一族の霊的バトルが延々と続く。
森鴎外・幸田露伴・三島由紀夫から角川春樹!まで歴史の著名人が東京を守るためにこぞって登場し、博物学からオカルトまで薀蓄総動員で展開されるが、映画じゃ大量の登場人物と薀蓄を処理しきれず、メインテーマ以外はばっさりカットされている。

とはいえ冒頭から陰陽道だの式神だのいうオカルト業界の専門用語がバシバシ飛び交い、「加藤保憲はどんな魔人で何故東京を破壊したいの?」という根本的な説明が碌にされずに話が進むので、「『帝都物語』ってどんな話か分かんないからちょっと映画でも見てみようかなー」って調子の初心者は映画冒頭から脱落必至になる、一見さんお断り映画なのだ。

しかも小説愛読者が満足かというとそうでもなく、腹中虫・ドーマンセーマン・式神飛ばし・学天則等々、小説ファンが映像で観たいガジェットは押さえてるが、なにせ脚本の構成が良くない。物語の流れがうまく頭に入らない。
歴史著名人に扮した豪華キャストやガジェットにいちいち時間をさいて見せ場作ってしまったために、メインキャストの立ち位置がぼけちゃったのも残念だ。
豪華キャストと大金を投じた家族向け娯楽映画で、このゴタゴタ脚本はまずいよなぁとは思う。

しかしながら
ライトノベル・漫画の実写化部門では日本映画史上No.1はまり役の呼び声高い、加藤保憲役の嶋田久作の怪演技は本物です。

加藤保憲として顔よし声良し物腰良し!アップも良ければ引きも良し!
廃屋に佇むシルエットの美しさはもう完璧。原作の雰囲気にぴったり合っているのみならず、モダンな実相寺アングルにぴったりはまる。
よくキャスティングしてくださった。ありがとう。
これだけ素晴らしい出来の加藤保憲様だから、かなり強引なストーリーでも加藤様ならやりかねんと納得できるのが救いかな。

★第1部(明治45年)~腹中虫がデロンと!

さてあらすじに戻ると、加藤保憲様の野望は3部構成で描かれる。

まず加藤様は、平将門の子孫で霊を呼び覚ます超能力を秘めた辰宮洋一郎(石田純一)・由佳理(姿晴香)兄妹に目をつける。
加藤様はドロンジョみたいなセクシー部下(中川比佐子)を引き連れて由佳理を誘拐し、
いやらしげな謎の儀式を行ってセックス無しで子供を孕ませる(まぁ!)。
そして由佳理を依童にして将門降霊を狙うが、残念ながら将門は降りてこなかった。

由佳理は辰宮兄ちゃん&友人の鳴滝純一(佐野史郎。由佳理に惚れてる)のコンビに助けられるが、森鴎外(中村嘉葎雄)に頼み堕胎手術を施そうとしたら
なんと美女の口から謎の生物がデロンと吐き出された!

見た目がなんともいやらしい形の生物は、加藤様と由佳理の子づくり儀式を邪魔する奴を退ける式神にして『帝都物語』屈指の人気キモ系クリーチャー、腹中虫だ。
画像は自主規制で貼れないw知りたければぐぐってほしい。
余談だが映画公開時にうめめちの学校で腹中虫ごっこが流行った。魚肉ソーセージやうまい棒を口から半分出して(以下略)トラウマものだが良い思い出ですw

さて計画に失敗した加藤様は腹いせなんだか、「刀で腹切りして流れる血で帝都破壊の日を占う」なんて物騒な方法で未来を占う平幹二朗の腹を軍靴でふんずけるドSっぷりを見せつけ、「次は辰年辰の月辰の日(大正12年9月1日)だ」と予言して姿をくらます。

★第2部(大正12年)~加藤様、大地震を起こす

日本を離れた加藤様は中国・大連で秦の始皇帝ぽい衣裳をまとい(嶋田久作の原哲夫漫画キャラ度数がアップしてる)、ドロンジョ部下や妖しい軍団をある場所に集めて地脈を動かす儀式を行っていた。
大連は東京と地脈が通じる鬼門の地。ここを動かせば東京へトリガーが引けるって理屈だ。

一方東京でも、天才科学者・寺田寅彦が地脈トリガー計画をキャッチして防衛作戦開始。
幸田露伴(高橋幸治)が首塚に奇門遁甲を仕掛けたり、辰宮兄ちゃんが要所に魔除けの狛犬を置いたりして、オカルト防衛線を張っていた。さらにあやしい風水師(桂三枝)が東京の街角を地脈探しにうろついてたり、あやしい辻占い(実は泉鏡花・坂東玉三郎)がひっそりたたずんでるとか、人物が無駄に跋扈して誰が誰だがもうわかんない。

その隙に加藤様&由佳理がセックス無しで孕ませた子供は兄ちゃんと佐野史郎の努力空しくご誕生。女の子で、雪子と名付けられすくすく育っていた。

さらにやっと待望のヒロインもアップを開始する。
加藤様を倒す宿命を授けられたスーパー巫女・目方恵子(原田美枝子)である。

だがみんなで一生懸命築いた小賢しい防衛線を加藤様はあっさり突破し(あっさりすぎるやろ…)、将門復活をチャレンジアゲイン。大連で地脈を動かしトリガーを引いたおかげで、9月1日に関東大震災が発生する。
東京は甚大な被害を受けたが、しかし帝都壊滅に至らなかった。将門はまたも復活しなかったのだ。
どうも寝てるの起こされたくないらしいw

★第3部(昭和2年)~加藤様、娘を誘拐

今度こそ将門復活!と加藤様がまた行方をくらまして秘策を練ってる間に東京は震災から復興していた。第2部ですっかり忘れてた『東京改造計画』が実は続いてたらしいとわかる。
しかし当初の目的って「東京を色んな面で守護されたスーパー帝都にする」だったはずだけど?人が打ってるビリヤードに乱入して勝手に珠打つ傍若無人なニューキャラ早川社長(宍戸錠)が現れて、地下に穴掘って地下鉄を通したりしている。
震災でみーんな壊れちゃったからか、都市計画はなんでもありになってきたようだ。

でも地脈とか色々無視して地下鉄の路線決めちゃったおかげで、地下のある場所で式神が大量発生。作業員が次々襲われて工事が中断する。
でも地下を掘り進まないと地下鉄作れないし、さあ困ったどうしようってとこでジャジャーン!インド人もびっくりなルックスの「日本初のスーパーロボット」学天則がご登場
人がダメなら機械の力、ロボットパワーで式神を蹴散らす作戦に出る。

その頃辰宮兄ちゃんは目方恵子と結婚していて、由佳理の運命の子供の雪子(山本清美)をまるで父親のように可愛がっていた。
ある日親友の佐野志郎が田舎へ帰る見送りがてらに一家でトレンディwに銀ブラしてたら加藤様が登場!
雪子をさらって姿を消す。
目的は雪子を将門復活計画の依童にするため。
「俺と由佳理から生まれたスーパー霊力娘なら、三度目の正直、今度こそ上手くいく!」てか。

出会って瞬時にサイキック化した雪子に満足な加藤様。
その光景を見て「やはり私が加藤を倒さねばならぬ!」と目方恵子は決意する。

恵子は辰宮兄ちゃんに別れを告げると、槍を持って颯爽と白馬にまたがり、なぜか桂三枝の風水師をお供に従えて宿敵・加藤様を倒しに行く。

明治・大正・昭和に渡る加藤様の野望もクライマックス。
東京を守る正義の巫女・目方恵子VSスーパー帝国軍人・加藤保憲様の最後のサイキック攻防戦が始まる!

★残念ラストバトル~ええー、オチってあいつかよ!

さあ、いよいよ帝都決戦!期待ワクワク!なラストバトルシーンに突入するんだが、ああ無念。
懸念だった脚本構成ほか諸々のまずさが露呈する。

(1)加藤様VS目方恵子(なぜか桂三枝つき)対決
(2)学天則が式神アタックに耐えて地下鉄貫通
(3)辰宮一族の絆が将門復活を阻止する

なんとクライマックスシーンが3つに別れちゃうのだ。
普通逆じゃね?
様々な伏線がクライマックスで一本道にまとまらず、互いのパートがバラバラに同時進行するんで盛り上がらねー事この上ない。

しかもメインテーマは実は加藤様対決じゃなかった。
目方恵子が加藤様を倒し将門復活を止める!んじゃない。実は加藤様よりも強力なサイキックパワーを秘めた真の主人公がいたのだ。

なんて言ってもさあ。
実はメインテーマへ至る伏線を青字で書きましたが、1回映画観るだけで誰が分かるんだよこれ。この程度のネタフリでメインテーマにつながるなんて、小説読まなきゃ分からないよなあ。

映画版『帝都物語』の真の主人公とは、魔人加藤様より「霊力が強い」いわれがある人だ。
魔人より強いといえばそりゃもう平将門。将門の血を引く一族の末裔といえば辰宮一族。
というと?
誘拐された由佳理を救う佐野史郎の横にいた男。加藤のライバル目方恵子の隣で話を聞いてた男。トレンディ銀ブラと狛犬建てたしか印象が無い男。
なんと石田純一演ずる辰宮兄ちゃんこそ真の主人公だったのであります

話は明治末期の腹中虫堕胎手術シーンに戻る。
由佳理の堕胎手術は腹中虫に疎外され、あららー失敗しちゃったと思われていた。だが本当は腹中虫は始末されて手術は無事成功していた。
雪子は加藤様との儀式で宿した子じゃなかったのだ。

じゃー誰の子だよ?佐野史郎の子か?いえいえ。
実はシスコンの兄ちゃんが手術の後に由佳理とデキてこさえた子供だった。
雪子は平将門末裔×末裔の組合せによりサイキックパワーが増殖されたのだ。加藤様の霊力を継いだんじゃなかったんだ。
…って、ちょ!なんという鬼畜プレイ…!

つまり『帝都物語』のオチはこうだったんである。
目方恵子がバトルで加藤様を足止めする間に辰宮兄妹(にして夫婦)が首塚へ行き、将門の霊を起こそうとする雪子(実の娘)の超能力を止めようと首塚の墓へ飛び込み、愛の力で雪子を助けて将門復活阻止に成功。
命がけの夫婦愛で東京は壊滅からまぬがれたのでした。
家族の絆って素晴らしいですね。めでたしめでたし。


★感想

そんなぁーあんまりだー。
小説を全巻読んだはずの私さえ映画を観てて「ウソだろ」と一瞬思った。
ガラガラガッシャンと崩れ落ちる喪失感。

あらすじ解説にかこつけた愚痴を長々述べましたが「映画の物語は映像美を見せる口実に過ぎない」と考えれば、冒頭の感想に戻る訳です。
バブル時代って本当にお金あったんですね。ほんとにセットも美術もきっちり金かけて作ってます。話はどーでもいいから金と芸術センスたっぷりの贅沢美を堪能しましょう。
我ながらポジティブシンキングだな。

実相寺監督作品はそもそも豪華キャスト総出演の大作娯楽映画とは作風が合わないと思う。
『帝都物語』でも実相寺監督のキレたエッジがフル発揮されてるとは言い難い(腹中虫はさすがに持ち前のエログロ趣味フル発揮だがw)。
そういう意味では不満ですが、和洋折衷の端正なセンスで、華やかで、麗しい大正ロマン映像美がたーっぷり楽しめます。

特にラストシーンの神田明神のお祭りシーンが素晴らしい。
淡く晴れやかな春の光に満ちた桜並木を色とりどりの晴れ着を来た人々がそぞろ歩き、そこへヨハン・シュトラウスの名曲『こうもり』が流れるんですよ。
坂東玉三郎がきれいに話を締めてくれるし、あぁ大団円!って心晴れ晴れ、気分は最高です。
ま、クライマックスがアレで脱力感はあるけど…

特撮技術も美しく仕上がっている。
今のフルCGに比べるとさすがに技術が古びてて迫力負けはするが、美しい。技術のレトロ感が逆に大正ロマンに溶け込んでいる。
ドーマンセーマンを記した紙が八咫烏に変身したり加藤様が護法童子を繰り出すシーンなど格好良い。
でも将門首塚だけは特撮丸出しセットでご愛嬌w明らかに作りもんの岩から光がでてゴゴゴ…ってwバルタン星人でも出てくるんかと思ったよ。

原田美枝子はキリッとした巫女姿も、はんなり大正風着物の着こなしもも良かったし、なにより美味しいヒロイン役だったのに、思ったより出番が少なくて残念だ。
原田美枝子でVS邪眼のドルジェフ戦をやったら凄かっただろうなー。エログロすぎてR-18指定になりますが。

★なんだか気になる木。石田純一問題を考える

…で、ここからは余談。実は主人公・辰宮兄ちゃん役の石田純一について。
オチがああなった敗因は脚本構成のまずさだが、石田純一の演技下手も影響してないかこれ。

育ちの良いエリートが妹と近親相姦に陥る役どころ。
品も頭も良いが理屈じゃ割り切れない背徳を背負う。不道徳だとわかっちゃいるが妹への愛が止まらない歪んだ男の心情を、端々に漂わせて演じるのが俳優の仕事じゃないか。

しかし、この映画の石田純一はダメダメだ。ただの屈託無いトレンディ俳優をやっていた。
このひとは感情表現に含みが無い。背徳とか愛とかが画面に全く漂ってないぞ。だからオチで余計に「おいおい聞いてねーよ!」ってなるんじゃないか。
その辺りを上手く演る、同年代の二枚目俳優なら他にも大勢いるだろう!
誰が石田純一を選んだんだよ。

って愚痴りたいくらい、『帝都物語』の石田純一の演技は本当にダメだが(しかも他の映画ドラマでも好演してる所見た事無いなー)、この人なんでこんなにのほほんと屈託が無いの?と逆に興味が湧いてきた。
スキャンダルは絶えないし家族関係はドロドロ、「不倫は文化だ」と言い切る図太い神経の持ち主だ。色恋沙汰は芸の肥やしなんて古い事言わないが、ドロドロ私生活がこれだけ演技に出ない人も珍しい。

以前にバラエティ番組でいしだ壱成と親子で出てるのを見たが、ヤク中だった息子が過去の過ちを述べ涙するのを隣で聞くってシチュエーションは、「父親であること」を売りにする芸能人として相当深刻な状況だが、にもかかわらず石田純一はいつもの石田純一だった。息子の涙に感極まった感情をしてたけど、やっぱりのほほんとしてた。
若い嫁にメロメロのオヤジ夫。
舅に頭が上がらないムコ殿。
娘に甘いパパ。
時々でキャラは作るが、どれも感情表現が屈託ない。
バラエティ番組で重宝される理由が良くわかる。今のバラエティ番組ではわかりやすいいじられキャラは歓迎されるが、陰や深刻とかマイナスな雰囲気を引きずられるといじりようが無いんで扱いに困るもの。
だけどなんだかな。何か引っかかる。息子の壱成は陰影バリバリなのに、なんで父親のあいつはあんなにいつも屈託なく人生の背景が浅く見えるのかな。うーん。

今まで石田純一についてあれこれ考えた事など全く無かったが、なんか考えずにはいられないくらい、謎な下手さではありました。
まだ気になるがとりあえず終わる。

(了)
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