No.035『告白的女優論』

製作年:1971年
監督:吉田喜重
脚本:山田正弘・吉田喜重
ジャンル:特濃!芸能界バックステージ実験映画

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春になっても心躍るのは早い日の出と「春」という名前の響きだけで、仕事は山積み花粉症黄砂で体はトラブルだらけ。
春服着たくても寒いしマスク手放せないし、お部屋の窓も開けれません。
憂鬱な寒い気分に、心の潤いメケメケ成分をチャージしたい季節ですね。
そんな時におすすめなのが、メケメケ成分補給に抜群の効果を発揮する『告白的女優論』というATG映画です。

おばちゃん向け通販雑誌の書き出しみたいだがw今回はなにせテーマが「女優」だ。
浅丘ルリ子・岡田茉莉子・有馬稲子の本物の昭和大女優が「女優」役を演じる。
監督が岡田茉莉子の旦那の吉田喜重だ。しかも衣装協力が森英恵だ。
製作キャストからして濃いではないか。

でも松竹ヌーベルヴァーグ監督でATG映画だったら、女優が政治論芸術論を語ったりするんじゃね?と食わず嫌いにしてる方も多かろう。

大丈夫です!コテコテに下世話な話です!

そして少なくともこの映画を観た後は昭和女優ごっこがしたくなること100%保証する。

★まずは映画の仕様説明

「話題の映画『告白的女優論』に出演する3人の女優の撮影前2日間を、なんと極秘密着!赤裸々な私生活を隠し撮りしちゃいましたー!」って感じの芸能ネタノリな話なので
映画全編が隠し撮り風仕様となってます。
どれひとつとして正面からまともに撮ったショット無し。
ヌーベルヴァーグらしいパースを効かせた画面作りが隠し撮り風撮影とマッチして、昭和モダンな切れ味絶品。実相寺アングルマニアにはたまらないですね。

★あらすじ(青字はネタバレあり

映画『告白的女優論』の3人の主演女優を追った、3つのオムニバスストーリーが交互に展開します。
構成は割と単純でキャッチー。

紫色フェチの大女優・一森笙子(岡田茉莉子)は「あたくし失語症だから映画に出ない」と突然言い出し、マネージャー南川(三国連太郎)を慌てさせる。
「夢の中でプラスチックの珠が喉に引っかかったから」って理由らしい。
いきなりトンデモ話全開だ。

マジで夢にこだわる彼女は催眠療法まで受けて、「別居中の旦那が付き人のリエ(太地喜和子)とデキてるところをあたくし見ちゃったの」と衝撃の告白。
そこで笙子に献身的に尽くす南川は色々手を講じて夢をどないか解決しようとしたところ、精神科医の波多(菅貫太郎)が現れて「夢の再現劇をしませんか?」と持ちかける。

売れっ子女優・海堂あき(浅丘ルリ子)はクランクイン2日前なのに、まだ前の映画の撮影中。
その映画はベッドシーンありの不倫もの、しかも監督(木村功)と不倫してるらしいと世間で噂が立ってるらしい。公開されたら話題作になるだろうが、本人は現場で結構大変そう。
監督夫人(稲野和子)が怪しい薬を持ってきてはチクチク嫌味言われるし、あやしいフリーカメラマン(原田芳雄)が周辺をウロチョロ嗅ぎまわるし。

だけど海堂あきは監督とデキちゃいなかった。
ベッドシーンは演じるが、私生活のあきは実はセックス恐怖症だからである。
しかしある夜、帰宅したあきは監督が自分の家に入ってくのを見てしまう。
なんで彼がこんな時間私の家に?と恐る恐る尾行したところ、高校時代からの友達で付き人の京子(赤座美代子)とデキてるところを目撃してショックを受ける。

いかにも薄幸そうな女優・伊作万紀子(有馬稲子)はサングラスに毛皮のコートを羽織ってエリカ様どころじゃないザ・女優な衣装で、専属デザイナー(ってところが昭和芸能界っぽい)で友達のノブ(久保まづるか)と雪国の空港にいた。
向かった先は自分の故郷。
少女時代を過ごした思い出の地を廻りながら、自分の黒歴史をノブに告白しはじめる万紀子。それは「母親(月丘夢路)のオトコ(細川俊之)とデキて心中図ったけど、オトコは死に自分だけ生き残った」というえぐい話だった。

なんで友達を故郷に連れて心中話なんかするのか?
実は万紀子とノブは親友でありながら唐沢(伊藤豪)という男をめぐって三角関係にあり、「私は暗い過去があるから唐沢と結婚しない。ノブに譲る」と宣言するためだと万紀子は言う。

★70年代メケメケ少女漫画センスが凄い

なんかあらすじ読むと「一条ゆかりの昔の少女漫画」みたいですが
その通り!映像はあらすじ以上に一条ゆかり!
70年代少女漫画のものすごいメケメケセンスが実写版で完全再現されてます。

サングラス&毛皮とか真っ赤なロングコートとか、レインボーベルト&ゴブラン柄ショーパンとか、「ザ・デザイナー」なバンダナ&黒パンタロン、とどめに岡田茉莉子の白マフ帽子&紫コート&ロング白手袋!
女優しか着れないファッションてんこ盛り。
昭和モダンだが生活感無さ過ぎる朝倉摂デザインの家がこれまた女優感たっぷり。

そしてただでさえ昭和新劇調芝居はヘビーな上に、女優が「女優」を演じる二重構造のため
演技が全員必要以上にドロドロ濃厚な大芝居。
ゴージャスだがうさんくささ満点だ。
しかし昭和芝居といえ、いささかわざとらしく濃厚すぎないか?

一方で女優陣にケツの毛抜かれた感じな男優陣は
「女優の内面なんか探り出してどうしようっていうんだ」
「女優の言ってる事はみんな嘘だ」
なる冷めたスタンスの意見を語ってる。

つまり前半の話は眉唾半分で見なさいよ、って事ですか。
その通りに女優たちの仰々しい告白はオチで全部ひっくり返される。

★夜中劇場、ぴちぴち短パン、自殺マニア

まず岡田茉莉子編。

大女優・笙子の家で突然夜中に心理劇が行われる事になり、豪邸に関係者が終結する。
太地喜和子は肉体関係を暴かれるのが嫌で途中で自室に引きこもってしまったはずが、扉を開けるとすっぽんぽんでスタンバイw
ノリノリやないかお前w
で、なんか関係者全員が積極的にお芝居に参加して、自分役を演じるうちに、夢の矛盾がどんどん暴かれてゆく。

しかも最後に残った真実がなんと!
治療のために心理劇やろうと言いだしっぺした菅貫太郎医師と笙子の不倫関係だった!
「僕の知らない男関係があったなんて…」
女優・一森笙子に公私のすべてを捧げていたが、一森笙子という女に指一本触れなかった忠犬マネージャー南川は、目の前で男関係を暴露された挙句に、解雇のWパンチを食らって凹む。
それでも「俺を解雇しないでくれー!」と笙子の乗る車を必死に追いすがるが、対向から走ってきたトラックに轢かれ即死する。


次に浅丘ルリ子編。

親友・京子を不倫へ掻き立てたのは、あきへの復讐心だった。
その根底には高校時代に起こったレイプ事件があった。

夏休みに担任教師(川津祐介)の家を訪れたあきと京子はとんでもない目に合う。
なんと教師がぴちぴちランニングと短パンでお出迎えw
とんだ変態教師だが案の定生徒を犯る気満々で、あきが席を外した隙に京子にクロロホルム嗅がせて眠らせる。

京子が犯される様子を目撃したあきは事件を匿名で高校へチクリ、教師は失職して高校を去る。だが失職が原因でレイプ事件の噂は高校中に知れ渡り、京子は生徒たちから後ろ指差される存在になってしまった。
それを恨んでいた訳だ。

そして有馬稲子編。

故郷への告白旅行の翌日、裁断ハサミを手に万紀子を訪ねたデザイナーのノブは「アンタ悲劇のヒロイン面してんじゃねえよ!」と暴露話の連続パンチを見舞う。

実は万紀子は精神的に追い込まれると逆上して死にたがる自殺マニア。
若い俳優とデキてもめてはガス管をひねり、一森笙子に男を奪られたらショックで割れたガラスで手をグサァ。
根底にはステージママだった母親とのピーナッツ母娘な関係と、母娘丼に走った自分への罪悪感があった。
娘に尽くす振りして意識下で娘を追い込む母の記憶シーンがえぐい。母親像を薄ら不気味に演じる月丘夢路が上手いわー。

万紀子が隠した真実の過去を本人の前でぶちまけたノブだったが、最後に「唐沢はあなたを愛してる」と告げて去る。
親友に男を譲るつもりが逆になり、またも精神的に追い込まれた万紀子は「イヤァ!自殺するぅ!」と腕にハサミを当てるが、そこへやっとラストに登場した唐沢に「君が女優なら自殺できない。何故なら死ぬことすら君にとっては演技なのだから」と見破られて死ぬに死ねない。


なんか笑っちゃうほど下世話でお約束展開だ。
どんだけレディコミかよ!ってノリなのに、大女優俳優陣が真面目に演じるギャップが凄い。
と、ここまででも十分濃い展開ですが浅丘ルリ子編のみ、とんでもねえ二段オチがあった。

★牛乳風呂に入り濃硫酸をぶちまける壮絶エンド

親友に裏切られてひとりぼっちの海堂あきは唐突に薄い体で発情しだした。
どうしたんっすか浅丘ルリ子!
クリーニング屋や牛乳屋の男が荷物かついて現れ、「お前の好きな牛乳風呂だ」とバスタブに牛乳ドバドバ。洗ったシーツを何枚も落とされる。
そんなクレイジーな妄想を見ては「ああっ」と悶えるあき。

そこへ「実はお前の過去のスキャンダルネタ握ってるぜ」と原田芳雄カメラマンが脅しに登場する。
だがあきはカメラマンに向かって、あのレイプ事件の真実を暴露する。

「京子はレイプされてなんかなかったわ」
クロロホルムで眠らされた京子を放置して「お前が本命だ」と先生に迫られたあき。
そこでなんと!自分からクロロホルムを嗅いで倒れる!

そんなアホなぁ。
親友の貞操の為に身を呈したのか?
実は襲われたかったのか…?

黒歴史を暴露しながら錯乱モードに入るあきは、「あなたもあたしを襲いに来たんでしょ!それなら、せめてシャワーを浴びて」とカメラマンを浴室に閉じ込める。
そこへ怪しい薬持参でまたまた現れた監督夫人。
「夫はどこ?」と詰め寄る夫人を家の中へ通し、あきはシャワー室で裸のカメラマンを見せると、「キャーッ、だましたわねえ!」と激怒する夫人。
投げつけた薬は実は濃硫酸!
ほんまコテコテですなぁw
夫人の無様な様子を見て高笑いするあきは、錯乱モードの果てに発情モードが頂点に達し、夫人を追い返すと自ら服を脱ぎ捨て裸の原田芳雄カメラマンを襲うのだった。


って調子でドロドロな2日間を過ごした3人の女優。
心身はボロボロに傷ついていたが、「私は女優よ」という矜持を引っ提げて『告白的女優論』の撮影に挑むのだった。
3人が並んで歩くクランクインでエンディング。

★感想

うっとりしました!豪華3女優競演。
こういう特濃キチ映画は昭和女優しかできないですね。
ド派手でこってり濃厚じゃなきゃ、女優タイメン勝負は面白くありません。
くどすぎる場面多すぎだけど昼ドラノリで面白いですよ。吉田喜重作品の難解な作風が苦手な方でもこれは見れます。

3女優対決の勝者は、私の見立てではやはり岡田茉莉子。
旦那が監督のアドバンテージもあるが、全身から発する女優力が凄かった。背後に100本の薔薇でも咲いてんのかってくらい半端ない女優オーラがありました。
浅丘ルリ子もぱっと見可憐な妖精だが、実は妖怪な怖さがあって役に合ってた。
薄幸うす味美人系の有馬稲子はメケメケ派手美貌の2人と比較すると若干ハンデがあったか。でもサングラス&毛皮で空港に現れるシーンはザ・女優オーラを感じました。

脇役で印象的なのは昭和ギャル役の太地喜和子。
字面だと凄い違和感だけどw案外健康的で可愛かった。ショーパンからすらりと飛び出た脚が色っぽい!
あと菅貫太郎のタートルネック姿が可愛くて好きだ。

★最後になんだか気になるツッコミタイム

さて、うめめち的には本編以上に狂ったお楽しみ☆
3女優のエピソードに挟まれるそれぞれの「若い頃のあやまち」シーンが唖然です。
もちろんご本人が演じてますので

「浅丘ルリ子30歳の女子高生」と「有馬稲子39歳のおかっぱ少女」という世にも怖いブツがどさくさに紛れて見れる。

こりゃなかなかマニアックな…必見です。
伝説の『この子の七つのお祝いに』岩下志麻セーラー服には負けますがね。

(了)

追記:
このレビュー書いた日に三国連太郎さんご逝去とは。
驚きました。ご冥福をお祈りいたします。
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