No.036『夢の島少女』

製作年:1974年
監督:佐々木昭一郎
脚本:佐々木昭一郎
ジャンル:難解映像詩系ファンタジードラマ

DVD、VHSとも未販売。
数年前にNHKアーカイヴスで観れましたが、2013年4月現在は放映終了しちゃった様子。

日本のテレビドラマは一部BS・CS放送を除いて誰もが見れる公共放送であります。
そのため老若男女誰でも、食事しながらとか別の作業しながら見てもあらすじを理解できるよう、ドラマの脚本は分かりやすく工夫されています。
「脚本が下手だからわかりづらい」ケースはあるけれど、好きな人だけが金を払って観る映画とは土俵が違いますので、「わからない奴は観るな」と突き放す難解芸術ジャンルのドラマ作品などほぼありません。

でも昭和時代のドラマは、たま~にテレビ放送されてたのが不思議なくらいシュールで難解なブツがあったりする。
NHK単発ドラマとして放送された本作品は、日本のテレビドラマ史の数々の作品の中で最も難解な作品のひとつじゃなかろうか。
食事しながら見てもあらすじは絶対わかんない。集中して見てもわかんないがw
興味があれば探してみてください。
★あらすじ(青字はネタバレあり

舞台は都会の片隅のぼろいアパート。
花屋で働く貧乏青年のケン(横倉健児)は、ある日夢の島の岸壁でぷかぷか浮いてたドザエモン少女・小夜子(中尾幸世)を拾う。

小夜子は記憶喪失で行く当ても無く、ケンは自宅で面倒を見るうちほのかに恋をする。
でも小夜子は断片的に過去を思い出し始めてた。
彼女は秋田県の八森という田舎町で生まれた。両親に捨てられバーチャンと暮らしてたが、高校卒業後に上京し、レストランで働いていた。職場で客の中年男にナンパされ不倫関係になり、ふしだらな大人の自分に罪悪感を抱いていたらしい。

過去の夢を見て泣く小夜子の枕元で、ケンは「何でもします」とポチ宣言をかまして告白。
小夜子はケンのロン毛を櫛でときながらキスをする。
なんかデキちゃってたよこいつら!と思った矢先、ケンが仕事から帰ると小夜子は失踪してた。
小夜子の着てた浴衣に顔を埋めてケンは泣く。田山花袋の『蒲団』ばりに女々しいが気持ちは分かる。

うん。ここまではまだあらすじ追える。
地味だがせつない昔のNHKラブストーリーだ。
ところがケンの涙を境に、話は一気に謎のダークサイドストーリーへ突入する。

★後半は何が謎って何から何まですべて謎!

このダークサイドストーリーがとにかくあらすじを追いづらいのである。
前衛難解映画ばりに、わけわかめ!わけわかめ!シーンの連続だ。
正直、話をちゃんと説明できる自信が無い。

ケンは八森へ旅立ち、町人に小夜子をたずねて回るが、写真見せても誰も知らない。
どこを探しても小夜子はいない。ど田舎の小さい町だから痕跡くらい見つかるだろうに、不思議なくらい何も無い。
道中浜辺でドザエモンを発見する。
小夜子の高校時代の記憶と同じ風景をケンも見る。

一方で小夜子もやっぱり八森へ帰っていた。墓参り?してる様子が映る。
でも過去の夢の中で着てた白いワンピースを着てる。
ケンに拾われた時はオレンジのミニワンピ着て手荷物無し。一緒に暮らす時にケンが用意したのは浴衣。
つまりケンのアパートを出た後で、小夜子は一旦自分の家に戻るか買い直すかして、白ワンピに着替えたって事?

さらに高校時代のセーラー服小夜子の記憶が重なる。
草むらで誰かと追っかけっこして無人の小屋へ入り、小屋で小指を怪我して舐める。
唇も傷ついた?小夜子に声をかける知らない男。
やったのか?それともやられた?ビミョーな空気が漂っている。
そんなほのかな性の記憶の残る小屋にケンが辿りつく。もちろん今は誰もいない。小夜子もいない。

するとケンが火をつけた!
燃えて灰になる小屋…
な、なんで突然放火犯?

舞台は変わり、ケンは東京へ戻りアパートで松葉杖を白くペイントする。
寂れた一本道で通りがかりの車を呼び止める。ヒッチハイクに見せかけて運転手を殴る!
なんと運転手はあの不倫男!?

ここで、あれ?ヒッチハイクシーンのリプレイ。
今度は素直に乗る。
乗って着いたのが不倫男の家?
家で男を襲うケン!ナイフで刺し殺す!死体を埋める!
ちょっと待て。あんたなんでここまで恨み骨髄なんだ。

と思ったらまたリプレイ。またケンの前で車が止まる。助手席から降りてくるオレンジワンピの小夜子を見る。
結局ケンは不倫男をリアルで殺した?それとも頭の中で殺した?どっちなんだ。

街を彷徨う小夜子の姿を思うケン。「どうしたらいいの?」と呟く声が頭にリフレインする。
ケンは小夜子の幻影にとりつかれてるらしい。
ビジネスホテルの一室へ向かうケン。
ドアを開けると小夜子がいた!どうやって見つけた?
小夜子は蓮っ葉に「誰?」と問う。誰ってあんた他人行儀な、だが「僕だよ。僕の気持ち分かる?」とすがりつくケンもどうかしてる。え、いきなり「僕の気持ち分かる?」とか、そこまで深刻な仲になってたか君達?
小夜子は「誰も信用できない」と泣いている。ケンは「かえって来てよ」と頼むが通じる雰囲気じゃない。

どこまで現実でどこから心象風景なのかさっぱり謎。
さらにクライマックスはひときわ謎の嵐だった。

舞台は突然また八森に戻る。
海が見える崖に無言で座るケンと小夜子。ビジホのケンカはどうした?結局元サヤか?にしちゃ様子が妙に静かで様子がおかしい。

坂を上る昔なつかし花嫁行列。
白無垢花嫁は小夜子?にしちゃ変な空気だ。
同じ坂道を上る中学生の行列リプレイ。行列に手を合わせて拝む人々。

ていうか列の真ん中お棺じゃないですか!
とどめに夢の島で行き倒れるケンと小夜子の体。

映像の行間を読んでいけば、「死にました」しかないな。やっぱりそうですかね?
なんでだ。いつだ。どこでだ。なんでケンも道連れだ。
まさか最初から死んでたとか黒いオチはやめてね。

なんて妄想せざるを得ないほど、決定的な事を何も語らないままドラマはラストへ至る。
不穏な空気のダークサイドストーリーから一転、パッハルベルのカノンにのせて2人が夢の島で戯れるシーンを空から撮ってドラマは終わる。

ハッピーエンドか?
でも小夜子のワンピの色が違うけど。
死ぬ間際の夢…なんだろうなあ。
でもケンが小夜子を背負いゴミ島を歩く場面は、ダークな雲間から光が差したようで救われました。


★感想

あらすじ、お分かりいただけたでしょうか。
わかんないでしょう。私もわからんよ。
実際観ても相当手ごわいぞ。

ハンディカメラを使った映像やナチュラル系の演技、ナレーションやセリフでの説明を極力排した脚本は昭和というより平成のJ映画の手触りがして、70年代のテレビドラマ界では新鮮だったに違いない。

小夜子の高校時代や上京後の断片的な映像がニコラス・ローグ並みに時系列バラバラに差し込まれ、映像の隙間はナレーションのかわりにパッハルベルのカノンの旋律や、小夜子が口ずさむ歌などの音楽でつながれる。
彼女の見る夢のかけらを散りばめたみたいだ。
うーむ。詩だねえ。

話が謎でもOK!な方は一度見て損は無いです。
リリカルな映像は昭和映画独特の古さや臭みが無く、平成映画好き派でもさらっと観やすい。
是枝裕和監督に多大な影響を与えたそうだ。あーそういえばそんな感じ。

★気になる女優、17歳の中尾幸世

役者の中ではやはり小夜子役の中尾幸世のインパクトがすごい。
パッと見は地味な容姿ながら芯の強そうな、昔の宮崎あおいのようなラインの「NHK好みの朝ドラ系少女」です。
でもドザエモンシーンで全裸になってるし、年齢の割にガッツある演技をしてます。
時折仄暗く光る目力も強くて良い。

だがガッツも不穏な目力も、映像を通すと溶けてなくなってしまうのがすごく不思議。
すごーく透明。山の雪が解けて生まれた超純水みたいな女優さん。
でも時々うっすらエロい。透明オブラートに包まれたエロチシズムというか。
ものすごく肌が白くて透明で、ちょっとした露出シーンにドキドキします。
なんかロリコンみたいな説明で我ながらやだわ。ドラマ同様魅力を説明しづらいので、機会があれば是非チェックしてほしいです。

(了)
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