No.046『憂国』

製作年:1966年
原作:三島由紀夫
監督:三島由紀夫
脚本:三島由紀夫
ジャンル:オール三島な前衛ショートムービー

046.jpg

落款ぽい英字タイトルがステキぃ。

昭和文化史にも名前が出てくる、非常に有名な三島由紀夫映画ですが、実物を見たことある人は相当少なかったりする。
なにせATG映画だからなあ。
娯楽作品として見れる『からっ風野郎』と違ってバリバリのお芸術短編映画だ。

ちなみに以下の文章は映画版『憂国』の感想でありまして、三島文学および政治思想への感想ではありません。悪しからずご了承願います。

とわざわざ注釈を入れるってことは?
要はツッコむ気満々ってことです。
★あらすじ(青字はネタバレあり

近衛隊に所属する武山中尉(三島由紀夫)は2.26事件で決起した将校を捕まえろと命令されるが、「そいつら親友だから俺は捕まえるなんて出来ねえ!」と悩んだ末に、新妻の麗子(鶴岡淑子)と心中する。

以上、小説のあらすじでした。
で、映画ではどうなのか。

タイトルロール後に巻物がするする~と出てくる。
上記のあらすじが書いてある。
おい!心中に至る物語が字オンリーだよ!
なんというやっつけ仕事な端折り方なんだ、自分で書いた小説のくせに。俺は心中しか興味ねえってか。
さすがスーパー自己中。これぞ前衛。

映画セットはひとつ。能舞台みたいな自宅だけ。
低予算ATG映画を逆手に取った和風ミニマムな作りですが、野間重雄デザインです。すっきりしてきれい。

心中前夜に麗子が遺書をしたため、形見の品を整理している。
着物とか可愛い文鎮なんかを眺めながら、外出中の旦那を想って愛がうずく麗子。
過剰な仕草・表情を廃した無声映画なんだが、なんか画面から濃ゆ~い情念が匂ってくるわ。
英語題が「Love&Death」だからなあ。

やがて軍服姿の旦那こと三島由紀夫が帰宅する。
何も言わず目と目で覚悟を決める夫と妻。明日は心中すると決めた運命の男女だから、当然最後の夜は悔いの無いように一発おやりになる。
能舞台の家でマッパでまぐわうシーンを延々と映します。

そして自決当日。先生は服着て麗子と神棚に一礼し、準備を整えてイザ短刀を鞘から抜く。
有名な三島先生切腹シーンである。
シチュエーションにこだわり抜いただけあって、切腹の手順から血の吹き出しまで丁寧に描写される。先生も口から泡吹く渾身の演技だ。

先生がこと切れると次は麗子の番。
しずしずと別室へ下がり死出の化粧を整えると、覚悟を決めて旦那の傍へ戻ってくる。
白いお着物が血で染まる様はなかなかの迫力。
麗子は血の海に横たわる旦那の死体に寄り添うと、Love&Deathらしく死の接吻をする。
しかし惜しい!一番盛り上がるクライマックスシーンのはずなのに、先生が息してるの丸見えですよ!
長回しすぎ!映しすぎ!
先生!そこは演出で誤魔化さないと!


なんて観客のツッコミをよそに神聖な愛の儀式を終えた麗子は、旦那が腹を刺した短刀を手に取り、喉をひと突き。
ふたりが身を重ねて横たわった血の海は、いつしか清らかな玉砂利に変わっていました、という演出でジ・エンド。

★感想

一体これは誰に向けて制作したのか?

三島由紀夫が三島自身に向けて作ったものだ。
と断言できる映画です。
ある意味すばらしく潔い。

4年後にかの自決事件を起こした経緯もあり、現在では様々な文学的政治的意味を深読みして語られる映画になりましたが、実際に観てみると文学的政治的意味など頭から飛びます。

とにかく映画の頭からラストまで、三島先生の濃ゆ~いナルシスティックな情念に包まれます。
俺の愛と裸と切腹を見ろ!
ほんとにそれしか描いてない。

いやぁ…もう…うーん…
観る側が照れてしまうくらいのストレートに臆面もなく隙だらけの自萌え加減だ。
この恥ずかしさを何に例えたら良いだろうー?と考えてたら予想外の答えが出た。
プリンスの主演映画『パープルレイン』に似てる。
あれも相当かなりのもんでした。

★さて映画の出来を冷静に評価する

日本流ラブ&デス&エロスの美を伝えたい(特に切腹の美学をたんねんに)意気込みは伝わる気はするが、情念のエロシーンはなんかイマイチだ。
演出が嗚呼、ATG映画だなぁー…とため息。
ライトの加減で嫁のアホ毛がボーボー立ちだ。
日本女性美といえばぬばたまの黒髪でしょうが。資生堂のTSUBAKI並に艶々と撮ってほしかった。

さて役者チェック。
三島先生の軍服は普通に似合ってました。『からっ風野郎』のチンピラよりはお似合いだ。
しかし肝心の先生の演技がやっぱりアレだった。
無声映画だから棒読みセリフも無いし、今回はましかしらと思ったが甘かった。
ラブシーンが…すごくぎこちないです…
「下手な役者がいたすラブシーンは観てるこっちがいたたまれない」の法則再び。もう身悶えするほど恥ずかしくてしゃーない。
しかも今回は増村保造とかプロの監督じゃなくて三島先生の自撮りですから、

yukoku.jpg

裸に軍帽で白ふんどしとか、自分の瞳だけ星キラキラ効果入れるとか、自萌えサービスシーンはちゃっかり入れる。

先生!このシーンは必要ですか!なんで服着る前に軍刀持ってるんですか!凡人な我々の目には、こまわり君に見えますが!
だめだ今回もツッコミが止まらない。

まあ万人におすすめできないが、三島由紀夫の際限ないナルシスに興味があるなら見ても損は無いと言えますな。
と結局はATG映画らしい感想に落ち着くのでした。

(了)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ: 映画感想 | ジャンル: 映画
No.047『宇能鴻一郎の濡れて打つ』 | Home | No.045『からっ風野郎』