No.049 『空気人形』

製作年:2009年
原作:業田良家
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
ジャンル:変態せつない少し理不尽ラブストーリー

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ブログを見た奇特な知り合いから「40番台は裸祭りですか」と言われた。
あらー言われてみれば、三島先生から10歳の子供まで裸だらけじゃないですか。
だから49番目も裸映画で締める。しかも平成のメジャー映画であります。
ちなみにカンヌ受賞おめでとうございます記念。
キャー!時事ネタがメジャーな映画界の話題すぎてまぶしいw

ナチュラルでふんわり甘めな映像。
自然体で力み無い平成演技の役者陣。
無印良品の店のBGMでかかってそうな癒し系フォークロア音楽。

『ほっこりナチュラル』というライオン子供用歯磨き粉並みに甘々~な糖衣でキッツいテーマをコーティングした、毒リリカルな作風で知られる是枝作品。
『夢の島少女』の佐々木昭一郎監督に多大な影響を受けたそうで、映像とか見るからモロそれですが、さらに表面をほっこりマイルド&ナチュラルに磨いた感じです。
昭和メケメケでも前衛キトキトでも全然ない。

正直私の好みとは水と油な映画ですがw一点だけものすごーく気に入ってます。
★予告編



平成映画なメルヘン加減が目にまぶしい予告。
(昭和マニアは)踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

主人公は40代非モテフリーターの秀雄(板尾創路)。
都会の片隅の家賃安そうなアパートでラブドールと暮らしている。

ベッドで毎日寝て起きて夜はセックスして、ヤッた後は出したのをきれいに洗ってあげて、押入にドール服をずらりと並べて毎日着せ替えして遊んでいる。
しかし板尾もラブドールマニア役が何の違和感も無く板についてますな。昔はシンガー板尾王子様だったのにw

「のぞみ」って元カノの名前もつけてるし、彼なりにラブドールをとても可愛がっているらしいんだが、所詮は空気で膨らますタイプのゴム人形。体温も心も意思も無い、生身の女の代用品である。

でも、「のぞみ」のゴム人形姿は仮の顔。
実は秀雄がバイトに行ってる間に、「のぞみ」はゴムと空気の体に心が芽生え、動く人形(ペ・ドゥナ)に変身するのです。

のぞみは秀雄の目を盗んで街の中を歩き、街の人々と触れ合い、近所のレンタルビデオ店でバイトまで始めてしまう。
そこでバイトリーダーの純一さん(ARATA)にせつない恋をするエロチックメルヘンラブストーリーであります。

★結構イラッとくる女だ、のぞみ

しかし動けるようになり自分の意思を持ったのぞみは、次第になかなかな性格を現してくる。
不思議ちゃんで見るからに繊細そうだが、端々で妙に神経図太く空気読めないし、「私は空気人形。空っぽな誰かの代用品」が口癖の自虐的な態度の割に、ちゃっかりバイト先でイケメンゲットするし。

そりゃ40代非モテフリーターオヤジとセックスしてバイト先の愚痴を黙って聞く日々は嫌だろう。
所詮セックスドールに生まれた境遇を恨んで新しい自分探しもしたくなるだろう。
切ないけど、気持ちもわかるけど、しかし…

自虐がくどい。

好きじゃない秀雄の相手してはブツブツ。その割に秀雄が新しいドールに乗り換えてはブツブツ。
レンタルビデオ店長(岩松了)に強要されてスタッフルームの隅でやらされてはブツブツ…

ああ、うぜー!
嫌なら断れ!家出ろ!自活してみろ!
人形だろうが知るか!


とこっちがブツブツ毒吐きたくなるんだが、それはともかく。

レンタルビデオ店で地味に働きつつ、互いに想いを育むのぞみと純一さん。
ところがビデオ棚にぶつかったはずみにビニールの肌に穴が空いてしまった。
へなへな~と腹がしぼむのぞみ。
純一さんに正体を知られるし、人形生命の危機一髪!
でも予想外に純一さんの対応は冷静だった。ヘナヘナの体に息を吹き込んでくれて、のぞみは起死回生の蘇生を果たす。

★純一さんのなかで目覚めるデス&エロス

人工呼吸?事件をきっかけに心が通じてラブゲットを確信したのぞみは家出し、純一さんと本格的に交際スタートする。
ラブドールの自分を制作した人形師(オダギリジョー)と出会ってそれなりに心の拠り所を見つけたし、あぁ、うざい自分探し旅もハッピーエンドかっ!と期待したが、
よく考えたら、あのARATAが素敵なイケメン役のままで終わる訳がないのであります。

素敵な純一さんは妻に死なれたバツイチ男。妻の使ってたバイクのメットを大事に持ってて、のぞみと2ケツする時に被せてあげる、過去の思い出と物は大事にするが女心は微妙に読めない性格のようだ。
自室はとってもきれい好きでシンプルライフ傾向。ドライフラワーを作って飾る趣味がある。
という感じで少々痛い性格だったんだが、のぞみを助けたばかりになんと空気注入プレイに目覚めてしまう。

同棲生活で毎夜注入プレイにいそしみ、愛と空気のエロスに血迷ったのぞみは、「息を吹き込むひとはゲットしたから☆」と生命線の空気ポンプを捨ててしまう。

そして自分の味わってる「注入」の歓びを愛する純一さんと共有したい一心で
(言うたら舐めてもらったお礼に舐める感覚で)
事が終わって眠る純一さんの腹に穴を開け、空気を吹き込むご奉仕プレイに及ぶのだ。

メルヘンからエロス、急転直下スプラッター。
哀れ変態に目覚めてしまったばっかりに、体は人間な純一さんは穴をあけられて絶命する。
空気を吹き込む男もポンプも失ったのぞみは、そのうち自分の体の空気が抜けて、しぼんで命終える運命が待っているのでした。


★感想

是枝作品やっぱダメだわ水と油だわ。
ハアハアしんどい。

当方エロチック映画好きですし、変態フェチな恋愛ものは大好きですし、多少メルヘン臭くても全然OK。
しかしながら個人的に残念なのは、「ラブドール女子&ちょい変態男子の切ないラブストーリー」でストレートに話を進めてくれれば良かったのに、昭和映画好きにはどうにも肌の合わないナチュラルメルヘン風味がチラホラ見える事だ。
しかもそのシーンが無駄に長い。

主人公の自虐メルヘン女子ぶりもうざいが、輪をかけて肌合わないのが、のぞみが街を散歩してる途中で出会い触れ合う「都会で空虚感を抱く孤独な現代人」の描写である。

都会で空虚で孤独ねえ。はぁーーー。
書くだけで嫌な溜息が出ますが、またそのメンツが「普通のOLなのに自宅はゴミ屋敷で過食症」「自分で自分に留守電かける見栄っ張りの独身受付嬢」「家族からハブられ毎日公園のベンチにいる老人が、のぞみと心つながり「いい詩」を口ずさむ」なんて、いかにもあるある~な陳腐さでがっかり。

うわあーダメだ。受け付けねえー。
こういうテイストが好きな人は好きだと思うが、「こういう所をバッサリ切ったら上映時間も1時間ちょいに納まるのになー」とつい考えてしまう。

★でもデス&エロスはたまらない

と色々ぼやきつつリピート視聴してしまうのは、目玉のシーンがエロくてたまらないからだ。

好きな人の目の前でヘナヘナとしぼむのぞみ。本当の姿を見られちゃった、もうお終い…とおもったら、純一さんは困惑しつつも腹に唇を当てて空気を吹き込んでくれて、「このひと、ゴム人形のあたしなんかに空気入れてくれた…」と感動するシーンはガチでエロい。

人間の代用品じゃなく、ひとりの存在として認めてもらえた幸福。
愛する男の息吹が体内に吹き込まれてゆく快楽。
ふたつの歓びをカラダで感じてしまって、ペ・ドゥナが静かに身悶える姿は誠にエロス。

さらに空気注入セックスも、まーなんてエロいことエロいこと。
ふたりのセックスは裸になるまでは普通だが、腹の空気を抜いては息を吹き込み、息遣いに悶えるスタイル。
なんというマニアックな。風船フェチのバリエーションでしょうか、いやいやもっとハードな感じ。
ある意味生命かけてるドスの効いたSMプレイだ。

かなり表現は控え目でありますが、
感じてますし。
悶えてますし。
あえいでますし。
いやぁ変態っ!エロい!艶めかしい!
このエロスシーンさえあれば、他がうざくてもすべて許します。眼福です。

★気になる俳優、ARATAって燃えるゴミ?

さて役者チェック。
まず主人公のラブドールのぞみは、…ペ・ドゥナでよかった…と心から思いました。
ペ・ドゥナのたどたどしいカタコト日本語が程よく浮世離れした質感を作ってて救われた。
どんな演技派で浮世離れした少女系女優でも、日本人女優だったらリアルな嫌味がざらついて、さぞかし共感しづらいキャラになったと思う。

そして今回の気になる木。
空気注入エロスとは別にどうしても語りたいシーンがもう1つある。
たかがメルヘンにツッコむなよと言われても、これをツッコみ味わわずしてどうする。

純一さんが殺害された翌朝に、ゴミ捨て場に死体がゴミ袋に入れられ捨てられてるシーン。
東京都指定の半透明ごみ袋からうっすら見えるARATAの体育座りフルヌード。
このシーンは人形師オダギリジョーがうっかり「人間は燃えるゴミ、人形は燃えないゴミ」と口を滑らせた伏線から来てるんだが


シュールだ。
183㎝の死体がすっぽり入るゴミ袋って何だよ。業務用150リットルか?
しかも手まできっちり抱え込んだ体育座り。ペ・ドゥナひとりでどうやって梱包したんだ。どうやって運んだんだ。

そして疑問がもうひとつ。
ARATAって燃えるゴミでいいのか?分別はそれで正しいのか?

ARATAさん、『ピンポン』のスマイル君とか蜷川幸雄『蛇にピアス』のがっつり脱ぎシーンとかで、いつもうっすら感じてたことなんだが、体に不燃物素材が混じってる気がしてならない。
5%くらいラテックス混合とかしてませんか。
実は体のどこかに洗濯方法の指定タグがついてませんか。
脱いでもビミョーに裸の匂い乏しい裸体。いいカラダなんですがね。
面白い質感である。ちょっと気になる。

(了)
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