No.050『不思議惑星キン・ザ・ザ』

製作年:1986年
監督:ゲオルギー・ダネリヤ
脚本:ゲオルギー・ダネリヤ、レヴァン・ガブリアゼ
ジャンル:おまぬけカルトSF映画

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気の向くままにだらだら書いて50作品目。
目標100作品の半分までやっとこさ来たぜー!
記念の50作目は冷戦時代の旧ソビエト連邦生まれ、四半世紀を超えてなお世界中のファンに愛でられるカルトSF映画で祝いたい。

世界にあまたきらめく文化遺産の中には、「これは一体どういうセンスを持ってる人間が、何を意図してこんなのを作り上げたのか解析不能な
奇想な文化風習・ファッション・建築物」
ってブツにたまに出会う。
いわゆる『探偵!ナイトスクープ』のパラダイス物件ですね。


奇界遺産奇界遺産
(2010/01/20)
佐藤 健寿

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近年ではこの手の素敵な本も出たりしてますが。
この映画の素敵なセットと大道具小道具も、そんな文化遺産に是非加えるべきであります。
まことにステキで文字通り奇想天外なワールドをお楽しみください。

★予告編



ゆるバカカルト狙いな日本版予告編。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

昭和生まれの関西出身者には御馴染みの「パルナスCMソング」のごとくもの哀しいロシア民謡調メロディーをBGMにして、冷戦時代の共産圏にとてもありがちなソビエト連邦の味気無いとある街から話が始まる。

なぜか家に演歌の花道のポスターを飾っている
変な趣味のおっさん建築技師ウラジーミル(スタニスラフ・リュブシン)は、嫁のおつかいで近所のスーパーに行ったところ、チェックの半袖シャツに毛皮のコサック帽って夏だか冬だかわからん恰好をしてる音大生のゲデバン君(レヴァン・ガブリアゼ)に、「裸足の変な人がいる」と声をかけられる。
行ってみるとロシア語ベラベラなのに異星人と名乗る汚ねー恰好のおっさんがいた。
手にはボタン1つで瞬間移動できる機械を持っている。
ここで異星人がうっかりボタンを押しちゃって、2人は宇宙の果ての謎星へとっとと飛ばされちゃった。

着いたところは荒涼とした砂漠。
地球に戻るどころか生き延びるのすら厳しそうだ。
さてどうしようか、ってところで彼方の空からボロいブリキのバケツみたいな飛行物体がやって来た。
記念すべき第一星人遭遇である。

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未知の宇宙文明と遭遇するドリームを木っ端微塵に打ち砕くいい味のおっさん2人組。
左のちっちゃいおっさんがチャトル人のウェフ(エフゲニー・レオーノフ)。
右の鼻にカウベルはめてるおっさんがバッツ人のビー(ユーリ・ヤコヴレフ)。
彼らはだりぃ様子で「クー」と掛け声をかけ、中腰で屈伸ダンスをして謎のご挨拶をしてくる。

嫌な予感がするがしょうがなく助けを求めたところ、こいつらは見た目同様中身も汚ねー奴らだった。
金に汚いわ平気で裏切るわ、気に入らんヤツはトイレ(兼脱出装置)に詰めて砂漠に置き去るわ。
こいつらに頼って地球帰還を目指せばならんとは、なかなか絶望的な状況の地球人コンビだったが、ウラジーミルがたまたま持ってたマッチが、その星では貨幣並みに珍重される資源だとわかり形勢逆転。
「地球に返してくれたら大量のマッチをあげる」と強欲異星人をそそのかして地球帰還の相棒にする。

★水は無いが階級があり、情は無いが銭欲はある

さてこのキン・ザ・ザ星雲プリュク星という星は、ゆるいながらも中々のディストピアっぷりで、謎の君主PJ様が支配する絶対階級社会を築いていた。
例えばウェフは支配者民族のチャトル人だが、被支配者民族のバッツ人であるビーは被支配アイテムの鼻カウベルをつけないといけない。
さらにウェフの上にはエツィロップなる権力者階級がいて、そいつらに全員絶対服従なのだ。
階級の掟に逆らうと即レーザー銃で撃たれたり、棺桶に入れられ冬眠の刑になったりするw

さらに身分関係なく人々はたいがい強欲で冷たく、自分の事しか考えてない奴らばっかりなので、(まだ?)善良な地球人の2人は散々な目に遭う。
ゲデバン君は大事なバイオリンを壊され、ウラジーミルはだまされてマッチを奪われ、大道芸で物乞いしてお恵み頂戴な真似をさせられる。
なんか「冷戦時代の旧ソ連でひどい体験をしたバックパッカーの話」を見てる気分になる。

強欲な星人に砂漠地獄、役立たずで手癖も悪いヘタレ相棒のゲデバン君に手を焼きつつ、ウラジーミルは都らしき場所までたどり着き、地球帰還に必要な情報を着々とゲットする。
あとはバケツ飛行船のボロいとこを直して「加速器」なる装置をゲットすれば帰れるよ!
って佳境で何とウェフ&ビーがトンズラかます。
そりゃないぜ!と頭に来たんでエツィロップに「あいつらワルだ捕まえろ」と偽通報したら、おっさんコンビは速攻捕まって都へ連行されたあげく、予想の斜め上行って棺桶で冬眠終身刑になっちゃった。

おっさんコンビもいなくなり、打つ手が詰まり途方に暮れるウラジーミルの許へ、最初に出会った異星人がいきなり再登場。
おお神の救いか!と思われたがやっぱり問題発覚。
実は瞬間移動装置に制限があり、異星人が2人を送り届けて帰還するには回数不足なのである。
じゃどうすんだー!と再び途方に暮れかけたが異星人はゲデバン君の盗品コレクションを見て「あれ?これ加速器じゃね?」と指摘する。
ん~んだ灯台もと暗しだねー!って事で問題は解決し、結局「おっさんコンビを奪還して4人で飛行船で地球へ行く」計画に話が戻る。

ウラジーミルとゲデバン君は王宮っぽい館に入ると、あっさり~と司令官みたいな人を拘束してスルスル~と王宮内部に到達し、悪の皇帝PJ様とご対面。
しかしなんとPJ様は友沢ミミヨのイラスト系メタボ体型の背中にハートつけてるつぶらな瞳のおっさんで、ピンクのバスルームでお風呂タイムを楽しんでおり、なんとも拍子抜け。
一発脅せばマア怖いと縮み上がって、どーぞどーぞと刑務所への道を通してくれた。

★不毛の暗黒星と銭ゲバ星の哀しい関係

ウェフ&ビーを奪還して宇宙船に加速器つけて、不毛な星からやっと脱出したおっさんカルテット。
さらば宇宙!
…のはずがまた異星人にだまされる。

着いた所は生き物さえいない不毛の星ハヌード。空気さえ無く、酸素マスクが無いと生きれない。
ここがウェフとビーの失われた故郷だという。
プリュク星もハヌード星も緑豊かな惑星だったが、プリュク星は資源を奪い尽くされ砂漠化。ハヌード星は「何か気に入らん」って理由で滅亡。すべて強欲なチャトル人どもの仕業だったそうだ。

一瞬おっさんコンビが可哀想に思えてきたが、行先をハヌード星に変えた理由を聞いて唖然茫然。
なんとキン・ザ・ザ星雲から地球へ行くにはアルファ星なる星を通らないとならないが、そこでは人間はサボテンにされてしまう。
どうあがいても飛行船じゃ地球に帰れないのだ。

「どーせ帰れないんだから4人でここに住もう。空気買って家立てて旅行者捕まえていじめようぜ」
とゲスい提案をするウェフと、ちょっと待てえ話が違う!と憤るウラジーミルは議論した末、サボテン覚悟でアルファ星へ突入する。

アルファ星は自然豊かな緑の理想郷だった。
人々は美しく、知的なナチュラルに暮らしている。
やっとまともな宇宙文明と遭遇を果たしたとおもったが、でもウェフとビーはサボテンになっちゃった。

サボテン化は逃れたウラジーミルとゲデバン君はおっさんコンビを人間に戻せと談判するが、「貪欲病の彼らのせいでキン・ザ・ザは不幸だ。サボテンになって一生を終えた方が良いのだ」とアルファ人はつれない返事をする。
「どの人生が良いかなんて彼らが決める事だろ」と怒るウラジーミル。
平和主義者を気取るナチュラル系インテリ層の選民意識をチクリと批判するやり取りが面白い。

★「無かった事」と「苦労も思い出も残す」どっちがいい?

そこでアルファ星人は、
A.映画冒頭(異星人と初遭遇前)まで時間を戻す
B.映画の途中(異星人と再会前)からやり直す
どちらか選べと突きつける。

Aを選べばおっさんコンビの記憶も消える。
Bを選べばおっさんコンビにまた出逢えるが、またあいつらに振り回されると思う。
どっちがいい?

ウラジーミルとゲデバン君はBを選んだ。
嫌な奴だが命の恩人だしちょっぴり情もある。
なんとも地球人らしい選択である。
時間を巻き戻された2人は再度王宮に潜入して、入浴PJ様と会っておっさんコンビを奪還して、瞬間移動装置を持った異星人と再会する。

さて、この後どうする?
ウラジーミルが出した提案は「瞬間移動装置で4人を地球へ転送する」だった。

地球はエツィロップもいないしマッチも沢山ある。だが二度とキン・ザ・ザに戻れない。
ウェフとビーは考えて「俺らは星に残る」と答えた。
どんなひどい環境の星でも故郷は故郷なのだ。

ウラジーミルは納得し、おっさんコンビと別れてゲデバン君と地球へ戻り一件落着。
最後はまた嫁のおつかいに出たウラジーミルがスーパー前でゲデバン君と再会し、「クー」と挨拶を交わして爽やかに締める。


★感想

行き当たりばったりの連続だが、SFパラレルワールドもののツボを押さえた物語。
当時の旧ソビエト連邦の政治状況への風刺。
子供が真似したくなる「クー」のお辞儀作法。
まぬけでコスっ辛いが憎めないおっさん俳優達。
愛されるカルト映画とは何か?の問いへの解答要素が一杯詰まった映画です。
世界のカルト映画キングと呼ばれるのも納得。

★美術はほんとにアバンギャルドで凄い!

それにしても見るからに低予算な感じだが、工夫して味のあるセットに仕立てた美術センスが断然素晴らしい。
「不毛で汚く世知辛い砂漠の惑星」という設定から生まれた環境デザインなのに、なんとも不思議に品があって魅力的なのだ。

傾向を説明すると、ロシア周辺の民族調と共産主義キッチュとロシアアバンギャルド風味を織り交ぜたメルヘンサイバーパンクと言いますか。
よく見るとどの登場人物の衣装も道具も細かいところまで凝ったデザインなのですが、かつ引きの画面で見ても、アップで隅まで眺めても、フォルムに無駄が無いですね。

ファッションも時代が巡り巡って2013年の今じゃ、おしゃれーとさえ見える絶妙なラインの服ばかり。
若者は危ない目つきでパンクなイケメン美女だらけなのも目の保養。
おっさんになると皆メタボ体型になるようだが。

監督はグルジア出身だそうですが、グルジアなどのロシア周辺の東欧中近東諸国は話も衣装小道具も泥臭い民族調なのに、極めて独創的で突き抜けた前衛センスを持っている映画が時々登場する気がします。
こういうセンスの良さってうらやましい。お国柄なんでしょうか。
(もちろん日本の昭和アバンギャルドも突き抜けてて凄いですがね…)


にしても何故に演歌の花道なのだ。
それが気になる。

(了)
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