No.055『エコール』

製作年:2004年
原作:フランク・ヴェデキント『ミネハハ』
監督:ルシール・アザリロヴィック
脚本:ルシール・アザリロヴィック
ジャンル:ゴシック耽美サスペンス

055.jpg

映画のリメイクって面白いもので、
同じ舞台設定で
同じ人物が登場して
同じ起承転結の段階を踏み
同じオチで終わるという
ただの作り直しにすぎないはずだが
全然違うやーん!別世界やーん!ってケースがもの凄く多い。

本作『エコール』は『ミネハハ』の元ネタだ。
『エコール』の方が公開が1年早く、微妙な差だが『ミネハハ』がリメイクらしい。

秘密の全寮制寄宿舎で暮らす少女達の「ロリータサスペンスでうっとり(ハァハァ)」話なんて、萌えポイントは明瞭なんだから間違いなく同じテイストに仕上がるんじゃねーか?
と普通に考えたらそうなるはずが、これが全然別物なのである。

違いを簡単に評しますと『ミネハハ』は普通にゴシック趣味のサスペンス映画。
描写はくっきり!はっきり!ばっちり!

『エコール』は前衛お芸術系ゴシック映画。
描写は観念的でもやもや~んとしており、小説の再現度ではファンは満足らしい。
さらにロリータファンには確信犯的な超問題作として、とっても有名です。
★予告編



これはそそられる吊り予告!
ロリータ苦手な方は観れるレベルか踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレ注意

舞台は森に囲まれた秘密の全寮制女子校。
生徒達は7歳で何者かに連れてこられ、外の世界と一切の接触を断って育てられる。

生徒達は女教師エディス(エレーヌ・ド・フジュロル)とバレエ教師エヴァ (マリオン・コティヤール)、女召使に育てられて教育を受け、学校の掟を守り、バレエと礼儀作法と美貌を日々磨き上げる。
花嫁修業に似てるが何か違う。
自分が何者で将来どうなるか生徒には一切何も知らされないが、12歳頃の最上級生になればバレエの舞台に出演して、その後卒業して外の世界へ行ける事だけ知っている。

★『ミネハハ』のあらすじコピペのようで微妙に違う

『ミネハハ』が最上級生のプリマ争いが中心だが、『エコール』は主役のいない群像劇だ。
まず登場するのは7歳のイリス(ゾエ・オークレール)。棺桶に入って学校へ連れてこられ、訳判らぬまま寮生活を送る。

イリスが段々と学校になじむ一方で、同級生ローラ(オルガ・ペタヴィ・ミュレール)はなじめず、学校の規則を破ってばかりいたが、ある日学校のみんなに内緒で湖のボートに乗ったら、船が浸水して溺死する。

10歳の4年生アリス(リア・ブライダロリ)は「バレエ舞台の選抜メンバー(こちらはプリマ不在)になれば外の世界へ出れる」と信じて猛練習するが、メンバーに選ばれなくて絶望するあまり学校の壁を登り脱走する。
でも脱走したはいいが、森へ走り去ったまま行方不明になる。
この学校では掟破りは不幸の元。「服従こそが幸福への道」なのだ。

★秘密の館で歓びの舞を踊る美少女たち

では掟を守った上級生はどうなるかといいますと、
夜な夜な森のどこかの秘密の館に行きまして、秘密の舞台でバレエを踊る。
1回だけじゃなく1年間に何回も踊るらしい。

卒業間近な最上級生のビアンカ(ベランジェール・オーブルージュ)も、選抜メンバーに選ばれ夜の舞台で踊っている。

毎晩毎晩秘密の舞台に立ち謎の客の(おそらく)紳士達を喜ばせてるうち、ビアンカは観客からおひねりの紅薔薇をもらうまでになる。
ここまでくれば学校はもう卒業だ。
そして12歳になり初潮を迎えた最上級生の少女達は寮を出て、秘密の汽車に乗り、外の世界へ旅立つのだった…


って感じで映画はもやもやーんと始まり
もやもやーんと終わる。

★解説

『ミネハハ』みたいにハッキリくっきりじゃなく「わかる人は察してちょうだいね」風に示されるが、一応からくりを解説する。

もちろん正体は『ミネハハ』と同じく「花魁養成校」。
非合法ルートで集めた幼女をその筋の紳士好みに育て、夜な夜な少女バレエショーを開いて見物料を取り、初潮が来ればご贔屓の客へ売りさばく。
見物料と水揚げ代で学校を運営してるらしい。

しかし「公爵様」みたいな大パトロンはいない様子。
年齢も低いし、より非合法の秘密組織っぽい。
勿論掟を破ったり脱走する子にはお仕置きがあり、女教師は生徒時代に脚を折られて学校に閉じ込められたらしい。


★感想

私は10代美少女アイドル映画を観るのは好きだし禁断の恋愛ものも好きなんだけど、リアルロリータはちょっと無理です。

すごく美しい映画ではある。
極細の糸でレース刺繍をちくちく編むように、壊れやすい世界観を丁寧に丁寧に撮っている。

でも、綺麗なんだけどなんだか冒頭で幼女の入った棺桶が地下坑道を運ばれるシーンから、ビアンカが年頃の男の子と出会うラストシーンまで、仄暗く陰惨で冷やりとするものが常に付き纏ってて、ぞわっと毛穴が粟立つ気味悪さが離れないんである。
考えようによっては極上のゴシックホラー映画である。

★ロリータテイスト映画とリアルロリータ映画の違い

個人的に思うに「ロリータっぽい映画」と「真にロリータな映画」の違いとは、『少女』という存在を単に「小さいオンナ」として描くか、「少女という、今は汚れなき美を持つ妖精だが、いずれオンナという汚れた存在に堕ちる運命のもの」として描くかの違いである。

『ミネハハ』はロリータテイスト映画だ。
『ロリータ』『ラマン』『プリティベビー』などメジャーなロリータテイストの映画はほぼ前者だ。
少女の年齢が12歳か17歳かって問題じゃない。
以前レビューした寺山修司の映画にはリアル小学生の全裸シーンはあるが、少女の描写は「小さいオンナ」だ。
(その代わり「少年」描写への思い入れはリアルショタコン映画と言えますが)

でも『エコール』は後者だ。
しかもすごーく確信犯で残酷だ。

まず少女のいたいけな性をこれでもかと強調する、その筋には萌え映像満載なファッション。
「少女全裸シーンがある」ので有名な映画ですが、むしろ着衣の撮り方が目を覆うほど本気でロリータ。
アニエスBデザインの制服は純白づくめの超ミニ。
ミニスカートから覗く、長ーくか細く未成熟な脚を何かと強調しまくるローアングル。
ツインテールや三つ編みを結うリボンは学年ごとに色が違う。
下級生の愛らしい赤やオレンジから、青になり、最上級生のアダルトな紫色になったら卒業の印。
幼児体型で毛の無い身体が透けて見えるバレエの稽古着の純白レオタード。

極めつけはバレエ舞台の蝶々の羽つきロリータ衣装。
この衣装で12歳の少女達に、「稽古した割にはちっとも上達した感じを受けない新春かくし芸番組のアイドル並み」レベルの稚拙さで踊られちゃ、うわああー!いたたまれねえー!と赤面する。


こんなのを金払って見に来る紳士って…
完全に目的は踊りじゃねえだ。あからさまだ。

特に実質主役と言える最上級生のビアンカちゃん。
ロリータ美少女の直球ど真ん中な容姿の彼女が、終盤で少女からオンナに羽化する工程を、まぁーロリロリしく丹念に描くこと。
初潮あり全裸あり。
パンチラ寸前の脚なめカメラあり。
噴水を浴びてブラウス透けるシーンの長回しあり。
大サービスです。

とどめは舞台が終わって寄宿舎へ帰り、ベッドでバレエの客からもらった紅薔薇で太股を撫で、自慰いたしたのかと示唆するシーンまである
ひゃー。よく映倫通ったな。

しかし少女達が妖精のごとく暮らすたいへん清らかな学校生活は、「いずれオンナという存在に堕ちる運命のもの」を示すドス黒い不幸の影が常に寄り添っている。
美少女がオンナになれば美しい未来など無い!
と言わんばかりに暗く哀しい負の暗示のオンパレード。

最上級生がバレエの舞台へ出かける道は、電灯の光を頼りに薄ら暗い森を歩く道。
バレエの技術よりうなじの長さや脚ばかり気にする人心売買なノリの品定めシーン。
卒業生のエヴァ先生は常に思いつめたうるうる顔だし、エディス先生の趣味は蝶々の死骸で標本づくり。病んでいる。

子供の頃にさらわれてこんな陰気な学校で毎日暮らせば、そりゃ逃げたいし親の所へ帰りたい。かといって学校から逃げようとしたら死にますし。
卒業してもしなくても、学校の外に出口は無い。
「いずれ全員残らずオンナになる」という哀しみに閉じ込められちゃうかのように。

私リアルロリータものがどうも無理な理由は、そういう過剰に潔癖で女の不幸を強調する少女ジェンダー幻想?ってやつが重くてキツいのだ。
少女ってそこまで尊く侵しがたい存在かぁ?オンナになるってそこまで不幸な事か?
とまぁ思っちゃう訳です。
これでもいちおう元少女ですが。昔からどーも合わなくて。
大島弓子のこの手の少女感覚あふれた名作少女漫画『バナナブレッドのプディング』を、「うーん…上手いが、正直キツい…」と唸りつつ読むようなものか。

とか文句を言ってますが、ついリピートして観ちゃうくらい映画には独特の中毒性があります。
暗く冷たく薄ら寒くぞーっと気味悪いゴシックロリータ世界観は共感できないが魅力的。
うだるくらい暑い夏の夜に観るといいですよ。
生理的に体の底がスーッと冷えます。

★とっても気になるうめめちのお楽しみポイント

さて最後に今回の木になる木。
断然これだぁ!!
マリオン・コティヤールの薄幸バレエ教師!!

うるうる瞳とピンクと黒のレオタード姿に心わしづかみ
エレーヌ・ド・フジュロルも病み系薄幸女教師姿がぐっとくるルックスで萌える。
ほのか~にふたりの禁断の関係を匂わせるシーンがあってドキドキ。
素敵でした。うっとり。

(了)

関連記事
スポンサーサイト
テーマ: 映画感想 | ジャンル: 映画
No.056『東京暗黒街・竹の家』 | Home | No.054『ミネハハ 秘密の森の少女たち』