No.059『プラハ!』

製作年:2001年
監督:フィリプ・レンチ
脚本:ズデネク・ゼレンカ、フィリプ・レンチ
ジャンル:チェコ版アメリカングラフィティ?

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まだまだ暑いので、さわやか系で。

チェコ現代史で有名な事件『プラハの春』を扱ってます。
でも「1968年チェコスロバキアにおける『プラハの春』とソ連の軍事侵攻をテーマにした映画」と説明されて観るとずっこけます。
ソフィア・コッポラの『マリーアントワネット』を「フランス革命とブルボン王朝最後の王妃の悲劇の生涯をテーマにした映画」で観るのはありえねー!のと同じ理屈です。

映画の9割はプラハの春とかあんまり関係なし。バリバリのガーリーミュージカル映画です。
「プラハの春の悲劇」を映画で観るんだったら『存在の耐えられない軽さ』とかの方が良いです。
USインディバンドのPVみたいなセンスの可愛いレトロファッション&アイテム満載で、ゆる系ガーリームービー好きなら楽しめます。

が、残りの1割に不思議な後味あり。
★予告編



ポップでレトロかわいい予告。
踏み絵にどうぞ。

★あらすじ(青字はネタバレあり

1968年初夏、チェコスロバキア共和国の田舎町。
その数か月前に、チェコはガチガチの社会主義から言論の自由を緩める改革運動が起きていた。いわゆる「プラハの春」である。
という前提で話が始まっている。

街で評判の美少女テレザ(スザンナ・ノリソヴァー)、遊んでる風のブギナ(アルジュヴェタ・スタンコヴァー)、夢見るガリ勉少女ユルチャ(アンナ・ヴェセラー)はハイスクールの仲良し3人組。
今は卒業試験の勉強に励んでるが考えてる事はひとつ。

卒業シーズンのお楽しみ、ロストバージン

美人のテレザは共産党幹部のバカ息子オルダ(マルタン・クバチャーク)に惚れられてるが、あんなガキに処女をあげるなんて勿体ねぇ!
女の一大イベント、ロストバージンの相手はやっぱ危険な香りがするイケメンがいいよねぇー!
なんてノリです。

そんな少女達の前に都合よく現れるのが、軍のイケメン脱走兵シモン(ヤン・レーヴァイ)、銃の名手のニヒルなボブ(ヤロミール・ノセク)、おミソ担当の童顔エマン(ルボ・コステルニー)の3人組。
軍の追っ手を逃れて人目を忍ぶ男3人が街から街へと逃亡生活する、その束の間にボーイ・ミーツ・ガールします。

さらにバカ息子オルダとの恋のさや当てもあるし、テレザの男やもめパパ(トマシュ・ハナーク)が共産党員の美女人妻とデキて略奪同棲するとか、ひと夏の甘酸っぱい恋バナエピソードが花盛り。
「おいおいプラハの春はどこいった」とこっちがツッコみたくなるラブラブ展開だ。

★女子妄想全開!ロストバージンイベント

なにせ、ひと夏の恋バナ話だけでも乙女心をそそるイベント満載。
レトロな遊園地での胸ドキ合コンだの、男子の隠れ家で手作り初体験イベントだの、ラブラブ仕様のあいのりトロッコまで出る始末。
脱走兵の癖に街を堂々と走りやがるwいいのか見つかるぞw

さらに夢見るガールズは、脳内妄想が高ぶると勝手にミュージカル始めちまう。
雨の中、あのひとに恋する気持ちが止まらないアタシ♪
小説のヒーローみたいな理想の男ってどこにいるの♪
遂に見つけた運命のカレシと結婚式するわ♪
って終始こんな調子である。
歌って♪踊って♪恋して♪メイクラブ♪たまに試験勉強♪
チェコ版ハイスクール・ミュージカルとも言える。

で、3人の男女はロストバージンイベントを迎えるんだが、
主役のテレザ&シモンは王道ロマンスだとして、オクテ三枚目のユルチャ&エマンが気が付けば結局一番がっつりやっていたのも想定内として、
一見激しくやりそうなブギナ&ボブが、「バージンって重いんだよ」とボブがウザがる一言で失敗するシーンがちょっと面白かった。
まー重いよね。旅の流れで一発ヤる女としては。


★そういえばその時代の話だったっけ

処女喪失セレモニーが終われば、後は涙のお別れだ。
アメリカへ亡命する旅の途中だった脱走兵3人組は、警察に追われて貨物列車に飛び乗り街を離れる。
だが前夜にテレザととどめの一発をいたしたシモンはすっかり恋に燃え燃えになってしまって、ひとり亡命をあきらめて街へ戻ってくる。
おっと、テレザ&シモンはハッピーエンドか?
と予想つきそうだったラスト10分。

そういえばプラハの春の話だったって事など頭からすっかり抜けた頃に、やっとソ連軍が侵攻開始する。

ラブラブミュージカルの街は戦車に占領され、テレザとパパと略奪人妻の3人は亡命を決意する。
テレザが初彼を想いながら街を離れる頃、シモンは入れ違いに街に来て警察に逮捕され、テレザを想いながら収容所に入れられる。
バックに『花はどこへ行った』がしんみり流れて終わり。

……。
テレザとシモンの再会はどこ行ったって?
そんなものはありません。
ハリウッド映画じゃないんだから。


★感想

「チェコ国民にはプラハの春ってアメリカングラフィティ的なレトロネタになるんだ。へー」
ってのが正直な感想。

女子ファッションはみんなカラフルでガーリー。
東欧の田舎町は動く絵本みたいな風景で、共産主義な小物もレトロなガーリー風味で統一。
どれもこれも明るく可愛い。
青春恋バナにぴったりの舞台設定だ。

一番の見どころは妄想ミュージカルの美術。
シュールでレトロ風味の東欧モダンアートで、要はミシェルゴンドリーのPVっぽい。ダフトパンクのAround The WorldやケミカルブラザーズのLet Forever Beみたいな。
レトロでシュールなガーリーテイストとくれば、00年代にUSインディバンド映画界を席巻したゆるーくひねたポップテイストそのまんまです。
メインの男女6人のルックスもそれっぽいw
00年代の世界共通した時代の空気、ですかねえ。

そんなキュートゆるい世界観でずっときてたから、ラスト10分で田舎道からソ連軍の戦車がワッ!と出てきたのは違和感ありありで驚いた。しかも急転直下シリアスになって終わるという。

ということは、「いきなり戦車が侵攻」ネタとは、チェコ国民にとっては例えば「大正ロマンもののラストは関東大震災でガラガラポンになる」という法則並みに、プラハの春のド定番展開なんでしょうか。
「そろそろ来るぞ来るぞ戦車が!」な感覚で。

さて最後に気になる脇役チェック。
人妻とデキる軽ーいパパ役のトマシュ・ハナークさんセクシーですね。
いかにも女あしらい上手そうだ。
チェコの国内映画やテレビで長く活躍してる俳優さんのようです。
テレザ役のスザンナ・ノリソヴァーと並ぶと、父娘なのに恋人にしか見えんのはご愛嬌ですが。

(了)
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