No.004『ピーター・グリーナウェイの枕草子』

製作年:1996年
監督:ピーター・グリーナウェイ
脚本:ピーター・グリーナウェイ
ジャンル:トンデモニッポンなお芸術映画

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残念ながら日本版のDVDが無い。
海外版ならDVDもブルーレイもあるのによう。リージョンコードは違いますけど。


うめめちは前衛アングラサブカルアート映画が好きだ。
「鬼才の異色作」
「テーマは難解だが独自の美学を追及」
「めくるめく映像世界」
なんて解説に書いてあればわくわくしちゃって、内容が何であれとりあえずビデオを借りる。

そしてインチキ日本趣味映画も大好きだ。
インチキとはずいぶん言葉が悪いが、東洋趣味にかぶれたアートなインテリ知識人が「東洋の神秘ニッポン」への妄想と薀蓄をぶちこんだ、映像の盆栽のようなもんです。日本人の目には奇妙奇天烈なイロモノ映画に過ぎないんだが、どこかに無垢な愛を感じちゃったりする。

という事で今回は、前衛アート魂ほとばしる暴走美学と奇天烈日本趣味が両方味わえる、一粒で二度おいしい?お得な映画。
それがやりすぎアート映画界の巨匠、ピーター・グリーナウェイの本作品であります。

★予告編



踏み絵にどうぞ。
予告だけで珍品の香りがぷんぷんします

★あらすじ(青字はネタバレあり

「枕草子」の清少納言と同名のキヨハラ・ナギコは日中ハーフ。
日本人書道家の父(緒方拳)から誕生日に顔に字を書かれる謎の儀式を通じて書の歓びを覚え、中国人の母(ジュディ・オング)からは中国文化を、叔母(吉田日出子)から枕草子の美意識を教わり育った。

だが父は旧家のボンボンの癖に資金面で困ってて、なんとやり手の出版社社長(オイダ・ヨシ)のホモ愛人をやってる。
まあ!緒方拳がおっさんに尻を掘られるなんてっ!
実はこれが目当てで見た。下世話な目的で申し訳ない。

で、金持ちに平気でケツ貸す男の娘だからして、成長したナギコも社長の甥と政略結婚させられる。
しかし甥はリビングの壁に掲げた的に矢をバシバシ打って遊ぶのが大好きなエキセントリック粗暴青年で、キヨハラ家の美意識を理解しない旦那とナギコは毎日夫婦ケンカに明け暮れる。
あげくにケンカで激怒した旦那が自宅に放火して(!)、危険を感じたナギコは逃げるように離婚し香港へ移住する。

★金髪美青年とイタ~いラブラブ三昧

ナギコは香港で日本語を片言しか話せなくなるほど一生懸命働きまくり、モデルの仕事で一発当てる。
美と成功と名誉と富をすべて手に入れた彼女は高級マンションで贅沢に暮らしながら、夜な夜なセレブ御用達クラブで男をナンパして体に筆で字を書く耳なし芳一プレイに耽っていた。

そんなある夜、パーティーで金髪美青年ジェローム(ユアン・マクレガー)と出会い、ナギコは「私の理想のオトコだわ!」と速攻恋に落ちる。
互いの体に書を書きあい春画と同じ体位でエッチしてラブラブした挙句、芸能人カップルにありがちな「私と彼のアートなヌードを万人に見てもらいたいわ」なんてイタいお芸術厨二病な熱意を抱く。
そこで早速耳なし芳一ヌード写真集の企画を立て、自ら出版社へ売り込みに行くがなんと!父のケツを掘った憎き社長と再会する。

そしてなんと!
ユアン・マクレガーも社長のホモ愛人にさせられていた!

日英大物俳優を食った金満社長は、実は耳なし芳一プレイ愛好家(男専門)だった。
若い男の肌に書を書いて魚拓ならぬ人拓を取り紙に写した字をすりすり頬ずりして悦に入る、ものすごく気持ち悪いフェチじじいであった。

ふたりの関係を知ったナギコは絶望して破局。腹いせにナンパした男の肌に書をしたため「人間アート」と題して社長の許へ送り付ける。
一方ジェロームはフラれたナギコと復縁希望で、気をひくためにナギコのマンションに勝手に入り狂言自殺するが
でもちょっと加減を間違えて本当に死んじゃった。
だめじゃんジェローム!ユアンまるでいいとこ無しでご退場。

ジェロームの間抜けな死を見たナギコは、「でもやっぱり彼を愛していたのー!」と嘆き悲しみ、ご遺体の全身に最高にアートな書をしたためて『愛人の書』と名付け埋葬する。
マンションの自室を放火して京都の実家へ帰るが、しかしナギコのお腹には可愛いベイビーが宿っていた。

ここで終わってれば珍妙なメロドラマで済んだ話だが、なんと社長が超・斜め上のフェチグロ行為に及ぶ。
文字の色変えますんで知りたい人だけ読んでください。


ジェロームのアートな埋葬を知った社長は墓暴きを決行する。
ジェロームの死体を取り出し!
全身の皮膚を剥ぎ!
紙どころか皮膚ごとなめして人拓にして、すりすり頬ずりして悶え悦ぶのだった!



おえー…
気持ち悪っ。

★復讐の戦いはメンズヌードだらけの謎バトル

さて「父と恋人の仇を打つ!」と怒れるナギコは社長の許へ人間アート刺客を次々と送り込む。
ここから話がなんと男のすっぽんぽんだらけの復讐メンズヌードバトル展開になっちゃうのだ。
どんなバトルかというと。

なんだ刺客か、脱いでみろ。
おや書が無いじゃないか、え?指に書いてある?
次の刺客はこいつか?
どこにも書いてないじゃないかって、あっなんだと!耳に字が!やられた!
また刺客か。
どこを探しても字が無いぞ。帰れ帰れ!
って油断させて実は舌に字が書いてあるんだよーん!べろーん!

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という感じである。
ギャグかよ。

とまあ『キル・ビル』の100倍東洋趣味をはき間違えたトンデモ死闘を繰り広げた(のか?)結末に、真打ちの刺客・13番目の人間アートが登場する。

題名は『死の書』。
そのまんまだな。

死の男ってどんな裸イケメンかと思えばなんとお相撲さん。
「父や恋人の仇を取る」と恨みつらみの言葉を全身に書かれたお相撲さんに襲われ、怪力プレイでじーさん社長は殺される。


かくして復讐を果たした(のか?)ナギコはジェロームとの子供を無事出産。
京都で子供の顔に字を書いて楽しく暮らすのでした。めでたしめでたし。

★感想

なんつう話だ。いやまじで。
もうトンデモお笑い映画だと腹をくくって観てくださいw

さて自慢の映像美だが、この手のアート映画の旬ってやつは女子のファッションヘアメイクのごとく足が早く、公開当時はピカピカの前衛でも10年も経てば手法が使い古され「うわ~古い」に変わる。

まぁさらに20年経てば今度はレトロキッチュ趣味の映画として再評価される場合もあるが、2012年時点で本作はまだ「うわ~古い」期のようだ。
1画面で2つのエピソードを同時進行させたり文字や意匠をレイヤーで重ねたりするが、やりすぎだ。
登場人物の表情を小窓で配置するレイアウトなんか、バラエティー番組のひな壇芸人用ワイプかよとさえ思える。

とはいえチベット仏教僧の読経の流れる中、黒バックに麗々しく草書が現れるタイトルは荘厳美ですてきぃ
センスが多少古びても、例えばキリスト教美学炸裂の『ベイビー・オブ・マコン』みたいに、アジアの神秘と荘厳美を前面に押し出して話を進めてくれればまだよかったんだけど…

肝心のお話が史上空前にツッコミどころ満載のバカ話だったりするから困るんですwww

鑑賞後は「こんなものに消費した時間とビデオ代を返せー!」と暴れるもよし。映画を観てしまった自分の選択眼に泣くもよし。「いやー清々しくトンデモで面白かった」と笑うもよし。
少なくとも観終えた直後には全身脱力することを100%保証します。
でもやりすぎアート映画やモンド映画に興味があるなら、1回は鑑賞して脱力感を味わってほしい。

★だがしかし、肝心の所がなんだか気になる木

しかしお芸術映画には致命的な弱点もある。

肝心の人間アートの書の出来なんだが、どうにかならんかったのか。

まず期待したほど耳なし芳一シーンがなくてライブ感とか全然無いし。
出来上がりもひどい。字の大きさとテイストがちぐはぐだし。字が変なところでブツ切れになるレイアウトが、上から下へ流れる書の魅力を消してるし。金文字入ってて下品だし。
元ネタ説もある小林正樹の『怪談』第3話・「耳なし芳一の話」をもっと研究しまくって、耳なし芳一プレイにうるさい我々日本人も唸るくらい、アートな人拓に仕上げてほしかったです。

(了)
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